誰も火力をやりたがらないVRMMO

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第8話 急速レベリング

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 攻撃は常にヴァイパーに向かっていく。その証拠に俺がヴァイパーより前に出てパワースラッシュを使っても見向きもされない。

 控えめに言って存在価値が無くなったように悲しくなった。とはいえ、攻撃を食らったら即座に死ぬ。


 どうすればいいんだ!


「私が攻撃した敵を攻撃しなさい」

「パワースラッシュは?」

「どっちでもいいわ」

 ヴァイパーは鉄刀を引き抜いて素早く走り込むとモンスターに斬撃を与えていく。その個体が死ぬことはなく、見向きもせず次の敵に切りかかった。

「本当にコイツらを俺が倒せるのか……?」
 
「やってみなさいよ」

 攻撃する為に走り始めると足に砂が絡みつく。そのまま足を掬われ、見事にずっこけた。

 ……俺が。

「いってぇ、熱いな!」

「砂漠だから当然でしょう?」

 あたふたしている間に剣が無いことに気づく。手に待って派手にコケた……すなわち吹き飛んだ。


「どこだ!? 剣が!」

「ろくな事しないわね……」

 本当に何処……いやあった。

「あったわ」



 前を見てみると繊細な剣がエイを貫いていた。面白いことにエイは粒子を放って消え始める。



「おいまさか……」


【リュウキのレベルが6になりました! 名乗りを覚えました!】


 倒しちゃった! 剣が飛んだだけで!
 
「おめでとさん」

 まさか敵のHPを1に減らしているとでも言うのか。

 ……強すぎる。


「ポーション飲んどきなさいよ」

「ヴァイパーさん凄い! レベルなんぼなんだ!」

「さん付けが今更ね」

 ポーションを飲んでみると甘ったるい味の後、体の中を冷えていくような爽やかさが駆け巡った。

 飲み物って素晴らしい。

「沢山死にかけがいるから早くしなさい」

 余興に浸る暇はないな。

「ああ、すまん」


 繊細な剣を拾い、鉄の剣も引き抜いた。振り回しながらエイの間を駆け巡るだけで体が光っていく。

 ザクザクと音を立てて粒子を散らすエイを切り捨てて、ヴァイパーの後を追う。それだけでレベルログを見てられないほど上がっていた。

 ふと、一つのレベルアップログに目を留める。視界の端っこにあるせいで空の雲と重なると見えなくなってしまう。



【リュウキのレベルが11になりました! エリアブレイクを所得しました!】


 エリアブレイク……これは範囲技じゃなかろうか!

 絶対そうだ! 強いぞこれは!

 俺はヴァイパーに聞く前に、鉄の剣を逆手に握ると砂の地面に突き立てる。


『エリアブレイク』


 自分の半径30センチくらいの砂が弾けとんだ。

 ……その後は何も起きなかった。




「あれ?」

「あんた馬鹿ね」

「どういう事だ」

 俺は諦めて敵を斬りつけるだけの作業に移った。

「エリアブレイクの攻撃範囲は攻撃力依存なの、攻撃力が低い人の範囲が広いわけないでしょ?」

「説明文ないんだもん! 仕方ないもん!」

 悔しさのあまり、もんもんしながら反論してみる。

「ある訳ないわ、スキルの効果は全て有志が検証してるんだから」


 なんてクソゲーなんだ!


 この怒りをエイにぶつける。冷静になってみると「ケギギィ!」最悪の断末魔を残していた。


「そろそろポーション飲みなさい」

「分かった」

 甘ったるい液体を流し込み、心身を活性化させる。いつまでやるのかわからないがレベルはしっかり上がっていく。


 それでも体が光るのは少し遅れ始めている。いつまで続くのかと、焼け入るような空間に呆れながら終わる事を願い始めていた。







 機械的な作業に数十分が経った。露骨にレベルは上がらなくなり、今のレベルを確認する気も失せそうだ。

「もう少しでボスよ」

「ようやく終わる」


 数が減ったエイの最後の1匹を仕留める。レベルは上がらない。



 地面が揺れ始め、鉄の剣を突き刺して必死に耐える。砂嵐も巻き起こり、黒い影がチラつく。

「いったい何が現れるんだ……」



 砂嵐が収まると、目前にデカい鳥が現れていた。

『ハゲタカよ』


 大きさは俺をガムのように嗜んだドラゴンに近いが、頭は禿げていて威厳は何一つ感じさせない。

 これがここのボス?

「……あんたレベルいくつ?」

「33だ」

「へー、じゃあ戦ってみる?」

「初見じゃ無理だって」


 そうこうしている間にハゲタカが俺に狙いを定めて羽ばたく。ヴァイパーのヘイトを集める効果は確実に切れている、それに本人が気づいてないのはありえないだろう。

 やらなければやられる。ヴァイパーはそれを教えたいのだろうか。

「あんたのセンス見せなさいよ」

 ハゲタカは強靭な足で地面をひと蹴り。その刹那、軽々と宙を舞った。高度が上がっていきそのままでは追撃が困難となる。


「死んでも知らねえからな! 『パワースラッシュ』」

 2本の剣が青いオーラを纏う。


 敵が動かない時間は俺にとって最高の強化タイム、倒すなら先制を取るべきだ。

「レベル上がったのにそれ使うの!?」

「それは俺の勝手だろ」


 さらに唱えると稲妻を宿す。その先は?


「ああ! 本当に死にたいのね! 突き技なんかで……!」

 ふてぶてしい鳥は俺の準備を待たずに一気に突っ込んでくる。

『パワースラッシュ』

 オーラが大きな刃のように固形化する。この蒼剣はあの中ボスを仕留めるのに足りないかもしれない。


 でも2本あるよな、新しいスキルを使う絶好の機会だ。

『レイド』


 槍投げの要領で右手の剣をぶん投げた。俺の手から離れる刹那、キラキラと青い粒子を散らして目標へ飛んでいく。


「こい!」

 俺はハゲタカが倒せなかった事を考慮して、鉄の蒼き剣の先を向ける。



『パワースラッシュ』



 蒼き剣は血を隠す紅き剣となった。











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