10 / 10
第10話 致命的な致命傷
しおりを挟むいつものやり方で砂漠に着いた俺達は一言も交わさずに砂漠に足を踏み入れる。
砂の中から現れる大量のエイが歓迎してくれた。
『モンスター、こっちよ』
ヴァイパーは呟くやいなや、引き抜いた刀を手に1体ずつ半殺しにしていく。それを追いかけるように動きながら俺がトドメを刺した。
慣れたものだ。適応って怖いと思う。
「もっと効率を上げていいか?」
「あんたにそんなスキルあるの?」
「ある」
刀を鞘に収め、右手を左から右へ払う。
『ダッシュ・ノスオトロス』
唱えると俺達の周りに青い粒子が付き纏うようになる。色にもよるが、なんらかの補助スキルが発動している証らしい。
「これは早くなりそうね」
実際にヴァイパーの攻撃速度は僅かに上がっていた。恐ろしい速さでエイが断末魔を上げていく。
何回かレベルが上がりつつ、数分が経った。補助スキルの効果でいつもより早くエイが全滅する。
いつものように、羽が風を起こす音と砂嵐が巻き起こった。
「アイツよ」
黒い影が見え、嵐が収まるとそこにはハゲタカが。
「またか」
俺は刀の先を敵に向けた後、円を描くように斜め後ろまで振り、鞘に収める。
『パワースラッシュ』
技に呼応して鞘に青いオーラが漂った。
「あなたって唱えないと技も使えないの?」
「え? 唱えなくていいのか?」
「当然でしょ」
早く言ってくれよな。
ハゲタカの走り込みながら全力でコケる体当たりを避けて更にオーラを貯める。
『飛翔龍・ウロボロス』
刀を適当に振り回し、鞘に収めると鞘だけ朱色に染まった。
「なにそれ?」
「ただのパワースラッシュ」
そう、知っていたら適当な言葉を呟いてかっこよく決めれた!
「突かないの?」
「パワースラッシュは補助スキルだぞ」
起き上がるハゲタカを横目に右手を振る。俺とヴァイパーに赤い粒子が付属される、攻撃力アップのノストオロスだ。
「えぇ……?」
「今度は冷静に対処する」
ハゲタカが一歩下がり、顔を空に掲げた。俺はそんな動きにお構いなく距離を詰める。
「待って!」
「大丈夫」
刀を抜き、クロスバスターを狙う。
「それはブレスの予備動作よ!」
「なんだと」
足元に潜り込めそうな辺りでハゲタカの顔が俺を見据えてしまった。そのくちばしからは、黒い煙が溢れている。
「ッ!」
突然吐き出される黒煙のブレス。
斬りかかろうとした寸前に足場の悪い砂を踏みしめ、横に大きく身を投げる。命辛々の緊急回避だ。
胴体で着地した俺は、転がっていく勢いを利用して素早く体制を立て直す。ブレスの停滞力は高くないのか、既に消えていた。
「危ねぇ……あれ食らったらどうなるんだ?」
「毒に犯されるわ」
さすが腐肉を漁ると言われるハゲタカだ。イヤラシイ攻撃をしてきやがる。
まだ相手が動いてこない間に刀を振り回し、鞘に収めて武器を強化する。オーラが赤色に変わった。
『ウロボロス』
俺はようやく振り向いたハゲタカを見ながら更に強化を施した。鞘を包むオーラにイナズマが宿り始め、刀身が真っ赤な結晶に変わる。
必殺技を決める為に駆け寄り、柄に手を添えるとハゲタカが羽ばたいて距離を取ってしまった。
攻撃の気を感じたのか?
バッサバサと苦しそうに滞空している敵を追撃する技はレイドしかないが、あいにく一撃で仕留めれない。
『ウロボロス』
それなら、補助を重ねてひたすら待つ手がある。
「レイド以外で空中攻撃はないのか?」
「ライフルブレード、武器から斬撃の弾丸を放つ技よ」
「覚えてるか分かんねえな……」
それでも俺は試すしかない! ハゲタカに向けて刀を向ける。
「ライフルブレード」
……。
…………。
何も起きなかった。覚えてないようだ。
かっこよく構えている間にハゲタカが翼を傾けて俺に向かってくる。
「まじか!?」
「死んだわね」
少し前の出来事がフラッシュバック。一撃も当ててない今、こいつを一撃で倒せるなんてありえない。
「死んでたまるか!」
怯ませたり叩き落としたり、なんらかの大ダメージを与えれたらなんとかなるかもしれない。レイドを受けきった前例はあるが何かあってもいいだろ。
相手に変化を与えるスキルを覚えてなかったか?
考えろ、まだ終わったわけじゃない……!
――ふと足元のアリンコが、他のアリ達を巣穴に入れないように威嚇している事に気づく。
「ぁあっ! これだあああ!」
「な、なによ? 死ぬ前だからおかしくなった?」
俺はある作戦を思いついた。これならひょっとすると回避できるかもしれない。
「ヴァイパー! ヘイトを集めてくれ!」
「集めるだけしかしないわよ」
「上等だ」
俺はその間にヴァイパーとの距離を少し開ける。大体6メートルくらい走った所で振り返った、ハゲタカは俺を狙っている。
「頼む!」
『モンスター、私を見て……』
ヴァイパーが【名乗り】を唱えた。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
親がうるさいのでVRMMOでソロ成長します
miigumi
ファンタジー
VRが当たり前になった時代。大学生の瑞希は、親の干渉に息苦しさを感じながらも、特にやりたいことも見つからずにいた。
そんなある日、友人に誘われた話題のVRMMO《ルーンスフィア・オンライン》で目にしたのは――「あなたが求める自由を」という言葉。
軽い気持ちでログインしたはずが、気づけば彼女は“ソロ”で世界を駆けることになる。
誰にも縛られない場所で、瑞希は自分の力で強くなることを選んだ。これは、自由を求める彼女のソロ成長物語。
毎日22時投稿します。
俺の伯爵家大掃除
satomi
ファンタジー
伯爵夫人が亡くなり、後妻が連れ子を連れて伯爵家に来た。俺、コーは連れ子も可愛い弟として受け入れていた。しかし、伯爵が亡くなると後妻が大きい顔をするようになった。さらに俺も虐げられるようになったし、可愛がっていた連れ子すら大きな顔をするようになった。
弟は本当に俺と血がつながっているのだろうか?など、学園で同学年にいらっしゃる殿下に相談してみると…
というお話です。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
- - - - - - - - - - - - -
ただいま後日談の加筆を計画中です。
2025/06/22
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる