イトーヨーカドーありがとう

影燈

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## エピローグ: 時を超えて

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# 消えゆくランドマーク

## エピローグ: 時を超えて

イトーヨーカドーが閉店してから、1年が経った。
上板橋の街並みは少しずつ変わりつつあった。

かつてイトーヨーカドーがあった場所には、
今は近代的な複合施設が建設中だ。

アキラは休日、その工事現場の前に立っていた。

「随分と変わったね」
後ろから声がした。振り返ると、健太が立っていた。

「ああ、本当に」アキラは頷いた。

二人で歩き始める。
行き先は決まっていた。公民館だ。

公民館に到着すると、既に大勢の人が集まっていた。
今日は「イトーヨーカドー1周年メモリアル」の日だった。

入口には、あの「メモリアルウォール」が
誇らしげに飾られている。
新しい思い出の言葉も、少しずつ増えていた。

「アキラくん!」
懐かしい声に振り返ると、佐藤さんが笑顔で手を振っていた。
彼女は今、この地域のコミュニティセンターで働いている。

会場の中央には、閉店時の写真や、
かつての店内の様子を映した映像が流れるスクリーンがあった。

そこかしこで、懐かしそうに写真を見る人々や、
当時を思い出して語り合う姿が見られる。

「ねえ、アキラ」健太が言った。
「あの時のプロジェクトのおかげで、こんなに多くの人が
つながり続けているんだよな」

アキラは静かに頷いた。
確かに、イトーヨーカドーはなくなった。
しかし、そこで育まれた絆は、形を変えて生き続けている。

突然、会場が静かになった。
ステージに、あの伊藤雅俊氏が姿を現したのだ。

「皆様、本日はお集まりいただき、ありがとうございます」
伊藤氏の声が、会場に響く。

「イトーヨーカドーは閉店しましたが、このように
地域の皆様が集い、絆を深め続けていることに、
心から感謝しています」

拍手が沸き起こる。
アキラは、胸が熱くなるのを感じた。

式典が終わり、人々が三々五々帰り始めた頃、
アキラは一人、メモリアルウォールの前に立っていた。

そこに、母の言葉を見つける。
「この店で、初めて赤ちゃんのアキラを抱いて歩いた日のこと。
 いつまでも忘れません」

アキラは微笑んだ。
「ママ、僕たち、ちゃんとやってるよ」

そっとつぶやいた言葉が、優しい風に乗って
どこかへ運ばれていく。

外に出ると、夕焼けが街を赤く染めていた。
新しい複合施設の工事現場も、夕日に照らされて輝いている。

アキラは深呼吸をした。
懐かしい過去と、希望に満ちた未来。
その狭間に立っている自分を感じる。

イトーヨーカドーは確かになくなった。
しかし、それは終わりではなく、新しい始まりだったのだ。

アキラは歩き出す。
明日もまた、新しい1日が始まる。

そして、この街の物語は、
これからもずっと続いていくのだろう。
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