13 / 31
第14話 万札無限製造術
しおりを挟む
ペッペっぺっ。
玉藻は机を叩く。叩くたび一万円札が現れた。
「何これ! だめだよ、偽札なんか使っちゃ」
「偽札ではありませんよ」
「え、じゃあ、どこから出てきたの?」
確かにお札を見ると透かしも入ってるし、番号もあるし、本物っぽい。
「お金は巡るものですから、世の中のそのめ巡りの中から適当に出てきます。私たちにとってはこんなものはただの紙切れですよ。人間にとっては大事なツールのようですが」
「そりゃそうだよ。この紙切れを稼ぐために働いているんだもん」
「まあ、それが人の修行の一部なのでしょうね。お金がないから働かなきゃいけないという仕組みは、よくできた修行システムですね」
「修行かあ。確かに、我慢することばかりだし、修行みたいなものなのかもね。でも、玉藻みたいな精霊はお金が必要ないなら、なんで働くの?」
「働く、という認識とはまた少し違う気がしますね。役目に対する概念が違うようです。我々の場合は、この魂に与えられた使命として行っておりますから。むしろ、その役目のために生かされていると言いますか。お役目は宿命ですので、逃げられぬものなのです」
「そうなんだ、立派なんだね」
「そんなことはありません。私は決まりを破った大馬鹿ものですから」
「それで追われてるの?」
「はい」
「でも何か理由があったんでしょう」
「はい。私の中では、許せなかった。龍騎士様というものを、私は知らなかったんです。龍は神獣です。その神に対して、龍騎士様は敬いのかけらもない仕打ちをなされていたことを知った。世を守るためとはいえ、あんなこと、あんな目に、私は龍たちを遭わせたくなかった。だから、全ての龍を解放し、まだ卵だった蒼龍様は私がお持ちして逃げてきたのです」
「なんか、よくわからないけど、もしかしてそれってものすごい大変なことをしたんじゃ……?」
「ええ。捕まれば私の魂は消されるでしょう。人間の知るところの死ではなく、魂ごと消され2度と転生もしない。本当の死、消滅です」
「そんな。でも、玉藻は龍のためにいいことをしたんでしょう? それなら、」
「龍のためでも、人のためにはならない。世のためにもならない。龍騎士様は、龍がいなければ戦えないから。世を守る戦士がいなくなる」
「そういうものなの?」
「はい。ジィ様も本当はどこかの龍騎士様の龍になるはずでした。でも、前のがだめになったから次のなんて、そんな使い捨てみたいに龍を扱うような龍騎士様には絶対に龍を渡したくなかったんです」
「それは、酷いね。でもじゃあ、その龍騎士は今龍がいなくて困ってるの?」
「そのはずですよ。闘いには出られずにいると思います」
「闘うって、何と?」
「いろんな悪いものですよ。龍騎士様たちは鯰と呼んでますが」
「鯰ーー」
「魔物の一種なのですが、地震を起こしたりするので。でも、そもそもそういった魔物は人間の想念が生み出すものですから。歪んだ人間の心が生んだ魔物を倒すために、龍様が戦いに出ねばならないなんて。そんなの勝手です」
「そうだね」
なんだか難しい話だ。
「人間としては、守ってくれてる人がいるのはありがたいけどね」
私は考えがまとまらず苦笑いするしかない。
「今の普通の生活を送れるのは、誰かがどこかで今の普通を守ろうと頑張ってくれてるから。私はそう思っているからさ。龍騎士様がそういう人なら、龍と龍騎士に感謝しちゃうな」
「せめてそう思ってくださる方がいれば、龍様も浮かばれます。でも大方の人はそうではありませんから。今の普通の生活は、当たり前にあるものだと思っています。ある日突然崩れることがあるなんて、夢にも思わないんです」
「そうかもしれないね」
なんだかしんみりしてしまった。
「ありがとね。ご馳走様。片付けは私するね」
「いえ、それも必要ありませんよ」
玉藻がそういうと、目の前の皿が浮かんだかと思うと流しへ飛んでいき、蛇口から勝手に水が出て、スポンジが泡立って勝手に皿洗いを始めた。
「ど、どういうこと」
今まで不思議なものを散々見てきたが、今の状況が一番驚いてるかもしれない。
「精霊術です。物質を操ることなんて簡単なのですよ。物質なんて借り物、まやかしに過ぎませんから」
「すごいんだね」
「そんな感心するほどのことでもないのです。本当は人も皆こういうことはできるはずなのです。ただみんな力の使い方を忘れているだけで」
「そうなんだ……」
「ただ力を使えばやはり疲れますけどね。この部屋に結界も張らせてもらったので、だいぶ消費しました」
玉藻はいうなり、目をトロンとさせる。眠そうに目をこする姿はやはり小さな子どもにしか見えない。
「お風呂は?」
「もう入りました」
「じゃあ歯磨きしてもう寝よう」
「はい」
なんだかお母さんになった気分だ。
静かだと思ったらジィもいつの間にか龍の姿になって眠っている。
これからどうなるのか、不安はあるけど乗りかかった船だし仕方ない。
玉藻とジィをベッドに寝かせて、私も横になる。
セミダブルだから広さは充分だし大丈夫だろう。
電気を消したところで、スマホが鳴った。
届いたメッセージは相手は意外な人物だった。
『問題ないか?』
部長。
いつもクールな部長がこんなふうに部下のことを心配してくれるとは思わなかった。
『こんばんは。今から3人で寝るところでした。ベッドがちょっと狭いけど、問題はありません。おやすみなさい』
私はメッセージを返してスマホの電源を切ると、眠りについた。
翌朝、スマホを見ると着信履歴が部長で埋まっていた。
___________________________
____________________________
この作品が少しでも面白いと思っていただけた場合はフォローや⭐️❤️是非お願いいたします。
玉藻は机を叩く。叩くたび一万円札が現れた。
「何これ! だめだよ、偽札なんか使っちゃ」
「偽札ではありませんよ」
「え、じゃあ、どこから出てきたの?」
確かにお札を見ると透かしも入ってるし、番号もあるし、本物っぽい。
「お金は巡るものですから、世の中のそのめ巡りの中から適当に出てきます。私たちにとってはこんなものはただの紙切れですよ。人間にとっては大事なツールのようですが」
「そりゃそうだよ。この紙切れを稼ぐために働いているんだもん」
「まあ、それが人の修行の一部なのでしょうね。お金がないから働かなきゃいけないという仕組みは、よくできた修行システムですね」
「修行かあ。確かに、我慢することばかりだし、修行みたいなものなのかもね。でも、玉藻みたいな精霊はお金が必要ないなら、なんで働くの?」
「働く、という認識とはまた少し違う気がしますね。役目に対する概念が違うようです。我々の場合は、この魂に与えられた使命として行っておりますから。むしろ、その役目のために生かされていると言いますか。お役目は宿命ですので、逃げられぬものなのです」
「そうなんだ、立派なんだね」
「そんなことはありません。私は決まりを破った大馬鹿ものですから」
「それで追われてるの?」
「はい」
「でも何か理由があったんでしょう」
「はい。私の中では、許せなかった。龍騎士様というものを、私は知らなかったんです。龍は神獣です。その神に対して、龍騎士様は敬いのかけらもない仕打ちをなされていたことを知った。世を守るためとはいえ、あんなこと、あんな目に、私は龍たちを遭わせたくなかった。だから、全ての龍を解放し、まだ卵だった蒼龍様は私がお持ちして逃げてきたのです」
「なんか、よくわからないけど、もしかしてそれってものすごい大変なことをしたんじゃ……?」
「ええ。捕まれば私の魂は消されるでしょう。人間の知るところの死ではなく、魂ごと消され2度と転生もしない。本当の死、消滅です」
「そんな。でも、玉藻は龍のためにいいことをしたんでしょう? それなら、」
「龍のためでも、人のためにはならない。世のためにもならない。龍騎士様は、龍がいなければ戦えないから。世を守る戦士がいなくなる」
「そういうものなの?」
「はい。ジィ様も本当はどこかの龍騎士様の龍になるはずでした。でも、前のがだめになったから次のなんて、そんな使い捨てみたいに龍を扱うような龍騎士様には絶対に龍を渡したくなかったんです」
「それは、酷いね。でもじゃあ、その龍騎士は今龍がいなくて困ってるの?」
「そのはずですよ。闘いには出られずにいると思います」
「闘うって、何と?」
「いろんな悪いものですよ。龍騎士様たちは鯰と呼んでますが」
「鯰ーー」
「魔物の一種なのですが、地震を起こしたりするので。でも、そもそもそういった魔物は人間の想念が生み出すものですから。歪んだ人間の心が生んだ魔物を倒すために、龍様が戦いに出ねばならないなんて。そんなの勝手です」
「そうだね」
なんだか難しい話だ。
「人間としては、守ってくれてる人がいるのはありがたいけどね」
私は考えがまとまらず苦笑いするしかない。
「今の普通の生活を送れるのは、誰かがどこかで今の普通を守ろうと頑張ってくれてるから。私はそう思っているからさ。龍騎士様がそういう人なら、龍と龍騎士に感謝しちゃうな」
「せめてそう思ってくださる方がいれば、龍様も浮かばれます。でも大方の人はそうではありませんから。今の普通の生活は、当たり前にあるものだと思っています。ある日突然崩れることがあるなんて、夢にも思わないんです」
「そうかもしれないね」
なんだかしんみりしてしまった。
「ありがとね。ご馳走様。片付けは私するね」
「いえ、それも必要ありませんよ」
玉藻がそういうと、目の前の皿が浮かんだかと思うと流しへ飛んでいき、蛇口から勝手に水が出て、スポンジが泡立って勝手に皿洗いを始めた。
「ど、どういうこと」
今まで不思議なものを散々見てきたが、今の状況が一番驚いてるかもしれない。
「精霊術です。物質を操ることなんて簡単なのですよ。物質なんて借り物、まやかしに過ぎませんから」
「すごいんだね」
「そんな感心するほどのことでもないのです。本当は人も皆こういうことはできるはずなのです。ただみんな力の使い方を忘れているだけで」
「そうなんだ……」
「ただ力を使えばやはり疲れますけどね。この部屋に結界も張らせてもらったので、だいぶ消費しました」
玉藻はいうなり、目をトロンとさせる。眠そうに目をこする姿はやはり小さな子どもにしか見えない。
「お風呂は?」
「もう入りました」
「じゃあ歯磨きしてもう寝よう」
「はい」
なんだかお母さんになった気分だ。
静かだと思ったらジィもいつの間にか龍の姿になって眠っている。
これからどうなるのか、不安はあるけど乗りかかった船だし仕方ない。
玉藻とジィをベッドに寝かせて、私も横になる。
セミダブルだから広さは充分だし大丈夫だろう。
電気を消したところで、スマホが鳴った。
届いたメッセージは相手は意外な人物だった。
『問題ないか?』
部長。
いつもクールな部長がこんなふうに部下のことを心配してくれるとは思わなかった。
『こんばんは。今から3人で寝るところでした。ベッドがちょっと狭いけど、問題はありません。おやすみなさい』
私はメッセージを返してスマホの電源を切ると、眠りについた。
翌朝、スマホを見ると着信履歴が部長で埋まっていた。
___________________________
____________________________
この作品が少しでも面白いと思っていただけた場合はフォローや⭐️❤️是非お願いいたします。
0
あなたにおすすめの小説
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
『魔力ゼロの欠陥品』と蔑まれた伯爵令嬢、卒業パーティーで婚約破棄された瞬間に古代魔法が覚醒する ~虐げられ続けた三年間、倍返しでは足りない~
スカッと文庫
恋愛
「貴様のような無能、我が国の王妃には相応しくない。婚約を破棄し、学園から追放する!」
王立魔道学園の卒業パーティー。きらびやかなシャンデリアの下、王太子エドワードの声が冷酷に響いた。彼の隣には、愛くるしい表情で私を嵌めた男爵令嬢、ミナが勝ち誇ったように寄り添っている。
伯爵令嬢のリリアーヌは、入学以来三年間、「魔力ゼロの欠陥品」として学園中の嘲笑を浴び続けてきた。
婚約者であるエドワードからは一度も顧みられず、同級生からはゴミのように扱われ、ミナの自作自演による「いじめ」の濡れ衣まで着せられ……。
それでも、父との「力を隠せ」という約束を守るため、泥を啜るような屈辱に耐え抜いてきた。
――だが、国からも学園からも捨てられた今、もうその約束を守る必要はない。
「さようなら、皆様。……私が消えた後、この国がどうなろうと知ったことではありませんわ」
リリアーヌが身につけていた「魔力封印の首飾り」を自ら引き千切った瞬間、会場は漆黒の魔力に包まれた。
彼女は無能などではない。失われた「古代魔法」をその身に宿す、真の魔道の主だったのだ。
絶望する王太子たちを余目に、隣国の伝説の魔術師アルベルトに拾われたリリアーヌ。
彼女の、残酷で、甘美な復讐劇が今、幕を開ける――。
旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~
榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。
ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。
別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら?
ー全50話ー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる