24 / 31
25 はじめての戦い
しおりを挟む部長の掛け声と共に、鯰が襲いかかってきた。
「きゃっ!」
思わず目を閉じてしまう。
「如月!目を開けろ!」
部長の声に、はっとして目を開く。
鯰が目の前まで迫っていた。
「逃げるな!向き合え!」
部長の言葉に、私は震える足を踏ん張る。
そうだ、逃げちゃダメなんだ。
鯰の目を見つめる。
すると、不思議なことが起こった。
鯰の動きが、スローモーションのように見える。
「力が目覚めたな!」
部長の声が遠くから聞こえる。
私の中に、何か熱いものが込み上げてくる。
それは、身体中を駆け巡り、やがて右手に集中した。
気づくと、私の手には光る刀が握られていた。
「その刀で斬れ!」
部長の声に従い、私は刀を振り下ろす。
刀が鯰を両断した瞬間、鯰は光となって消えていった。
「やった……?」
信じられない気持ちで、自分の手を見つめる。
「よくやった、如月」
闘護部長が近づいてきて、私の肩に手を置いた。
「これが、龍騎士の力……」
「ああ。おまえの中に眠っていた力だ」
そう言った瞬間、地面が大きく揺れ始めた。
「まさか、まだ来るのか!」
部長の声に、私は周囲を見回す。
すると、先ほどの小さな鯰とは比べものにならないほど巨大な影が、地面から現れ始めた。
「如月、下がれ!」
部長が私を後ろに押しやる。
「こいつは規格外だ。おまえにはまだ無理だ」
言い終わるか否か、巨大な鯰が完全にその姿を現した。
それは、まるで小さな山のようだった。
「くそっ、こんな大物が出てくるなんて……」
部長が歯を食いしばる。
「部長、私も……!」
「ダメだ!おまえはまだ……」
部長の言葉が途切れた。
巨大鯰が、その大きな尾で私たちを攻撃してきたのだ。
「如月!」
部長が私を抱きかかえ、攻撃をかわす。
だが、その勢いで二人とも地面に転がった。
「大丈夫か?」
「は、はい……」
立ち上がろうとする私たちに、再び鯰の攻撃が襲いかかる。
「チッ」
部長が舌打ちし、刀を構える。
その刀で鯰の攻撃を受け止めるが、その衝撃で部長の体が大きくのけぞる。
「部長!」
私は慌てて部長に駆け寄る。
「心配するな。これくらい……」
そう言いながらも、部長の額には汗が滲んでいた。
(このままじゃ、部長が……!)
焦りと恐怖で、私の心臓が早鐘を打つ。
そのとき、胸の奥底から何かが込み上げてきた。
(そうだ……私には、ジィがいる!)
「ジィ!」
私の叫び声と共に、空から蒼い光が降り注いだ。
「何!?」
驚く部長の声。
光の中から、ジィが現れた。
大きく成長したジィは、もはや子龍ではなく、威風堂々とした成龍の姿だった。
「ジィ……」
私の呼びかけに、ジィが優しく首をすり寄せてくる。
「まさか、こんなに早く……」
部長が驚きの表情を浮かべる。
「如月、ジィに乗れ!」
「え?」
「龍と騎士が一体となったとき、本当の力が発揮される。さあ、行け!」
部長の言葉に、私は迷わずジィの背に飛び乗った。
その瞬間、私の体に力が漲るのを感じた。
まるで、ジィと私の心が一つになったかのように。
「行くよ、ジィ!」
ジィが大きく羽ばたき、私たちは空高く舞い上がった。
巨大鯰が、私たちに向かって攻撃を仕掛けてくる。
だが、ジィの素早い動きでそれらをすべて回避。
「あそこだ!」
私は鯰の弱点を直感的に感じ取った。
首の付け根にある、小さな光る点。
「ジィ、あそこを狙って!」
ジィが了解したかのように鳴き、一気に急降下。
その勢いのまま、私は刀を構えた。
「はああああっ!」
刀が鯰の弱点を貫いた瞬間、巨大な光が辺りを包み込んだ。
目が眩んで、しばらく何も見えなかった。
やがて光が収まると、鯰の姿はどこにもなかった。
「や、やった……?」
信じられない気持ちで、自分の手を見つめる。
ジィが優しく地上に降り立ち、私はその背から滑り落ちるように降りた。
「如月!」
駆け寄ってくる部長。
「よくやった。まさか、こんなに早く龍との一体化ができるとは……」
部長が感心したように言う。
だが次の瞬間、激しい頭痛に襲われた。
「うっ……」
「如月!どうした!」
部長が慌てて私を支える。
頭の中で、様々な映像が駆け巡る。
見たこともない景色、知らない人々、そして……部長?
いや、違う。闘護さん?
「な……何なの、これ……」
そう言った瞬間、意識が遠のいていった。
************
この作品が少しでも良いと、思ってもらえました、☆や♡で応援お願いいたします。
0
あなたにおすすめの小説
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
『魔力ゼロの欠陥品』と蔑まれた伯爵令嬢、卒業パーティーで婚約破棄された瞬間に古代魔法が覚醒する ~虐げられ続けた三年間、倍返しでは足りない~
スカッと文庫
恋愛
「貴様のような無能、我が国の王妃には相応しくない。婚約を破棄し、学園から追放する!」
王立魔道学園の卒業パーティー。きらびやかなシャンデリアの下、王太子エドワードの声が冷酷に響いた。彼の隣には、愛くるしい表情で私を嵌めた男爵令嬢、ミナが勝ち誇ったように寄り添っている。
伯爵令嬢のリリアーヌは、入学以来三年間、「魔力ゼロの欠陥品」として学園中の嘲笑を浴び続けてきた。
婚約者であるエドワードからは一度も顧みられず、同級生からはゴミのように扱われ、ミナの自作自演による「いじめ」の濡れ衣まで着せられ……。
それでも、父との「力を隠せ」という約束を守るため、泥を啜るような屈辱に耐え抜いてきた。
――だが、国からも学園からも捨てられた今、もうその約束を守る必要はない。
「さようなら、皆様。……私が消えた後、この国がどうなろうと知ったことではありませんわ」
リリアーヌが身につけていた「魔力封印の首飾り」を自ら引き千切った瞬間、会場は漆黒の魔力に包まれた。
彼女は無能などではない。失われた「古代魔法」をその身に宿す、真の魔道の主だったのだ。
絶望する王太子たちを余目に、隣国の伝説の魔術師アルベルトに拾われたリリアーヌ。
彼女の、残酷で、甘美な復讐劇が今、幕を開ける――。
旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~
榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。
ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。
別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら?
ー全50話ー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる