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26 記憶の断片
しおりを挟む目を覚ますと、見慣れない天井が広がっていた。
和室のようだ。
「気がついたか」
聞き覚えのある声に顔を向けると、闘護部長が座っていた。
「ここは……?」
「音夢だ。白狐家の屋敷の一室だ」
私はゆっくりと起き上がる。
頭がズキンと痛んだ。
「無理するな」
部長が私の肩に手を置く。
その手の温もりに、どこか懐かしさを感じた。
「部長、私……」
言葉につまる。
あの時見た映像が、まだ頭の中でぐるぐると回っている。
「何か思い出したのか?」
部長の声に、私は顔を上げた。
「はい。でも、はっきりとは……」
「無理に思い出そうとするな。時が来れば、自然と全てを思い出す」
そう言う部長の表情が、どこか寂しげに見えた。
「部長、私と部長は、以前から知り合いだったんですか?」
その質問に、部長は一瞬言葉を詰まらせた。
「ああ」
「でも、どうして……」
「それは」
部長が何か言いかけたその時、部屋の襖が勢いよく開いた。
「瑠生様!」
玉藻が息を切らせて飛び込んできた。
「どうした」
「黒狐の一団が、こちらに向かっているようです!」
「なに!?」
部長が立ち上がる。
「如月、ここで待っていろ」
「でも!」
「まだ体が……」
そう言いかけた部長の言葉を遮るように、外から大きな物音が聞こえた。
「くそっ、もう来たか」
部長が刀を抜く。
その姿を見て、私の中で何かが反応した。
(そうだ、私も戦わなきゃ)
立ち上がろうとした瞬間、激しいめまいに襲われる。
「如月!」
部長が私を支える。
「大丈夫です。私も行きます」
「無理だ。お前はまだ……」
「でも、このままじゃ部長が危険です!」
必死に訴える私に、部長は一瞬迷いの表情を浮かべた。
「わかった。だが無理はするな」
部長の言葉に頷く。
外に出ると、そこには黒い装束に身を包んだ集団がいた。
その中心にいたのは、以前会った刻塚だった。
「やはり、ここに隠れていたか」
刻塚が冷ややかな目で私たちを見る。
「刻塚、どういうつもりだ」
部長が前に出て、私を庇う。
「決まっているだろう。あの娘を連れて行く」
刻塚の言葉に、私の体が震える。
「させるか!」
部長が刀を構える。
その時だった。
私の頭に、鋭い痛みが走った。
(この光景、どこかで……)
そう思った瞬間、記憶の中の映像が鮮明になる。
雨の中、刀を交える二人の男。
その周りで、黒装束の集団が取り囲んでいる。
(まさか、これは……)
「如月!」
部長の声で我に返る。
気づくと、黒装束の一人が私に襲いかかってきていた。
「っ!」
咄嗟に身を翻す。
するとその瞬間、私の手に光る刀が現れた。
「何!?」
驚く刻塚。
「如月、下がれ!」
部長の声。
だが、私の体は勝手に動いていた。
まるで、以前からずっと戦いに慣れているかのように。
「はぁっ!」
私の刀が、黒装束の者たちを次々と倒していく。
「こ、この娘は……」
刻塚が驚きの表情を浮かべる。
「如月、やめろ!」
部長が私を止めようとするが、私の体は止まらない。
気づけば、私は刻塚の目の前に立っていた。
「お前は……まさか」
刻塚の目が、恐怖に見開かれる。
「刻塚。私は……」
その瞬間、全ての記憶が蘇った。
「白狐家の長女、如月キナだ」
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