現代龍騎士の憂鬱~隙のない高スペック部長と隙だらけのだらしない私~

影燈

文字の大きさ
31 / 31

32予想外の展開

しおりを挟む

刻塚の刀が、当主に向かって振り下ろされる。
その瞬間、私の体が勝手に動いた。

「やめて!」

私は刻塚と当主の間に飛び込んでいた。

「如月!」

瑠生の叫び声が聞こえる。

閉じた目をゆっくりと開くと、刻塚の刀が目の前で止まっていた。

「なぜだ……なぜ父上を守る!」

刻塚の声が震えている。

「争いは、もうたくさん」

私はゆっくりと言葉を紡ぐ。

「刻塚、あなたも苦しんでいるのね」

「黙れ!」

刻塚が叫ぶ。

「お前に何がわかる。父上は……父上は……」

刻塚の目に涙が浮かぶ。

「息子よ」

当主が静かに言葉を発する。

「もういい。お前の気持ち、分かった」

「父上……」

刻塚の手から、刀がカランと落ちる。

「私が、間違っていた」

当主が深くため息をつく。

「長年の確執に囚われ、大切なものが見えなくなっていた」

当主は私に向き直る。

「白狐家の姫君、いや、キナ。お前の言葉に、目が覚めた思いだ」

「当主様……」

「刻塚」

当主が息子に向き直る。

「お前を苦しめてしまって、すまなかった」

「父上……!」

刻塚が当主に抱きつく。

その光景を見て、私は思わず微笑んでしまった。

「如月」

背後から瑠生の声。
振り返ると、彼が安堵の表情で私を見つめていた。

「よくやった」

瑠生が私を抱きしめる。

「まったく、ハラハラさせやがって」

不知火が冗談めかして言う。

そのとき、空から鈴の音が響いた。

「これは!」

全員が空を見上げる。
そこには、巨大な白狐が浮かんでいた。

「守護霊狐様!」

私が思わず声を上げる。

白狐は静かに地上に降り立つと、私たちの前に立った。

「よくぞ、この争いに終止符を打った」

白狐の声が、私たちの心に直接響く。

「白狐家と黒狐家は本来、一つの家族。それを忘れてはならぬ」

当主と刻塚が、白狐の前にひざまずく。

「申し訳ありません。私たちの愚かさゆえに……」

白狐は優しく首を振る。

「過ぎたことを悔やんでも仕方がない。これからどう生きるかが大切だ」

白狐の言葉に、全員が頷く。

「さて」

白狐が私に向き直る。

「キナ。お前には、重要な役目がある」

「私に、ですか?」

「そうだ。白狐と黒狐の血を引く者として、二つの家を繋ぐ架け橋となるのだ」

私は瑠生を見る。
彼は優しく微笑み、頷いた。

「はい、わかりました」

私が答えると、白狐は満足げに頷いた。

「よろしい。そして瑠生」

白狐が瑠生に向き直る。

「お前はキナを守り、支える者として相応しい」

瑠生が驚いた表情を浮かべる。

「まさか、認めていただけるとは」

「ふむ。愛は全てを超越する。身分など関係ない」

白狐の言葉に、瑠生の表情が明るくなる。

「ありがとうございます」

白狐は最後に、全員を見渡した。

「これからは協力し合い、本当の敵と戦うのだ。お前たちなら、きっとできる」

そう言うと、白狐は光となって消えていった。

静寂が訪れる。
しかし、それは重苦しいものではなく、新たな始まりを予感させるものだった。

「さあ」

当主が立ち上がる。

「新しい時代の幕開けだ。共に歩もう」

全員が頷き合う。

私は瑠生の手を取った。
彼も、強く握り返してくれる。

これから先の道のりは、決して平坦ではないだろう。
しかし、互いに支え合い、協力し合えば、きっと乗り越えられる。

そう信じて、私たちは新たな一歩を踏み出した。

************
この作品が少しでも良いと、思ってもらえました、☆や♡で応援お願いいたします。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

『魔力ゼロの欠陥品』と蔑まれた伯爵令嬢、卒業パーティーで婚約破棄された瞬間に古代魔法が覚醒する ~虐げられ続けた三年間、倍返しでは足りない~

スカッと文庫
恋愛
「貴様のような無能、我が国の王妃には相応しくない。婚約を破棄し、学園から追放する!」 王立魔道学園の卒業パーティー。きらびやかなシャンデリアの下、王太子エドワードの声が冷酷に響いた。彼の隣には、愛くるしい表情で私を嵌めた男爵令嬢、ミナが勝ち誇ったように寄り添っている。 伯爵令嬢のリリアーヌは、入学以来三年間、「魔力ゼロの欠陥品」として学園中の嘲笑を浴び続けてきた。 婚約者であるエドワードからは一度も顧みられず、同級生からはゴミのように扱われ、ミナの自作自演による「いじめ」の濡れ衣まで着せられ……。 それでも、父との「力を隠せ」という約束を守るため、泥を啜るような屈辱に耐え抜いてきた。 ――だが、国からも学園からも捨てられた今、もうその約束を守る必要はない。 「さようなら、皆様。……私が消えた後、この国がどうなろうと知ったことではありませんわ」 リリアーヌが身につけていた「魔力封印の首飾り」を自ら引き千切った瞬間、会場は漆黒の魔力に包まれた。 彼女は無能などではない。失われた「古代魔法」をその身に宿す、真の魔道の主だったのだ。 絶望する王太子たちを余目に、隣国の伝説の魔術師アルベルトに拾われたリリアーヌ。 彼女の、残酷で、甘美な復讐劇が今、幕を開ける――。

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~

榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。 ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。 別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら? ー全50話ー

処理中です...