あめのじょう日記

九丸(ひさまる)

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第一章

ヤツがきた。そしてさらわれた。

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 ぬくぬく。
あ~、きもちいいなぁ。
ちょっとイヌの兄弟がやかましいけど、もうなれたし。
となりの兄ちゃんも気持ちよさそうだ。
 このしかくいハコのなかに兄ちゃんといっしょにいるようになってどんくらいだろ?
父ちゃんと母ちゃんにもたまにしかあえないし。
まあ、兄ちゃんがいるからさみしくないけど、たまに母ちゃんのおっぱいすいたいなあ。

 おいらがいるここは、病院というらしい。
おいらたちはここで産まれたみたいだ。
 あるとき、おいらと兄ちゃんと姉ちゃんは、父ちゃん母ちゃんからはなされた。
白いふくきたじいさんに、このしかくいハコにいれられて。
そいつは先生というらしい。
先生は体のワルいところをなおしてくれるみたいだ。

 いつも病院にはいろんなやつらがやってくる。
元気そうなやつもいれば、苦しそうなやつも。
そして、たいていチュウシャというとがったやつをさされる。
おいらたちも二回さされた。
おいらはなんともないけど、兄ちゃんと姉ちゃんはいやがってた。

 あるとき、先生がおいらたちをのぞきにきた。
 いつものように、遊んでつかれて寝てたら、姉ちゃんをもちあげて、どっかにつれてった。姉ちゃんはそれっきり帰ってこなかった。
 おいらと兄ちゃんは、姉ちゃんが帰ってこないから、姉ちゃんをかえせと力いっぱいさけんであばれたけど、ダメだった。
 先生はそんなおいらたちに、
「あの子は、いい飼い主にもらわれていったから、きっと幸せになるよ。おまえたちにもきっとみつけてあげるね」
と頭をなでながらいってきた。
 わけがわからない、おいらと兄ちゃんは、それでも力いっぱいさけんだけど、先生はちょっとかなしそうな、さみしそうな顔して、ずっとおいらたちの頭をなでつづけてた。

 そして、おいらと兄ちゃんはずっとこのしかくいハコのなかにいっしょにいる。
 たまにハコからでて、やかましいイヌの兄弟からかいにいったり、病院にとまりにきてる、よそのヤツのところに遊びにいったり。そいつらはおいらたちみたいに、じゆうに遊べないみたいだ。出るとこのない、でっかいしかくいハコにずっといる。入院っていってたな。ワルいとこがなおるまで出られないみたいだ。

 そろそろねるのもあきたなぁ。でも、兄ちゃんはまだねてるし、おいらだけでイヌの兄弟のとこいってもなあ。まあ、兄ちゃんおきるまで、もうちょっとねるか。
 おいらが、またねようとしたとき、ガチャっとドアがあいて、先生がはいってきた。
 先生はおいらたちのハコをもちあげると、どこかにむかってあるきはじめた。
 おいらは、きっと父ちゃん母ちゃんのとこにいくんだなとおもった。いつもなら、あいにきてくれるんだけど、まあ、あえるんならどっちでもいいや。
おいらはちょっとウキウキしながら、先生のもつハコにゆられてた。
兄ちゃんはまだねたまんまだ。
 しばらくすると、みたことのない部屋に先生がはいっていった。
 おいらはなんかこわくなって、兄ちゃんをおこそうと、背中をおした。
「兄ちゃん、なんかへんだよ!おきなよ!」
兄ちゃんはそれでも気持ちよさそうにねてる。
 先生は、部屋のまんなかにある、おっきなテーブルにおいらたちのハコをおいた。
 兄ちゃんはやっとめをさまして、いつもとちがうようすに、まわりをキョロキョロみまわした。
「おい、どこだここ!」
「おいらもしらないよ!」
おいらたちはくっついて、ちいさくなった。
 おいらたちのようすをみた先生は、おいらたちをなでながら、やさしく声をかけてきた。
「大丈夫だよ、こわがらなくても」
そんなこといっても、こわいものはこわいよ!
おいらと兄ちゃんがうったえても、先生はなでつづけた。
 わけもわからずにふるえてると、いつもごはんをくれるおばちゃんが、部屋にはいってきた。
「先生、お連れしました」
 そういうおばちゃんのうしろから、男がはいってきた。
「はじめまして。佐藤ともうします。高橋さんの紹介で来ました」
男そういって頭をさげた。
「ようこそ。お話はうかがってます。どうぞこちらへ」
 先生がそういうと、男がゆっくりとテーブルにちかづいてきた。
「この子たちですね!いやー、かわいいな!」
おいらたちはふるえてるのに、男はやけにうれしそうだ。
「さあ、ゆっくり見てください」
 先生にいわれる前から、男はおいらたちに顔をちかづけてきた。
「見れば、見るほどかわいいな!」
「この子たちは、産まれてどのくらいですか?」
「ちょうど3ヶ月くらいですね。メスの子は先日引き取られていきました」
「そうなんですね。この子たちはアメショーですか? 柄がそのような」
「親がアメショーなんです。この子たちは登録してないので、厳密に言えばアメショーではないんですが」
「いや、別にそんなの関係ないですよ。だってかわいいですもん。さすが職業かわいい!」
「どうぞ、なでてあげてください」
 先生にいわれた男が、えんりょもなく、おいらたちに手をのばしてきた。
ふるえてかたまってるおいらたちの頭に、男の手がふれてきた。
 おいらはこわがりながら、男をみあげた。
先生よりはだいぶわかくて、先生よりもふとってる。
 おいらはすぐに目をそらした。
兄ちゃんは目をつむってる。
 男はおいらたちの頭をなでた。おもったより、やさしく、ふれるかふれないくらいでなでつづけてる。
「知り合いに頼まれて、見に来ただけだったんですが、う~ん。困りました。うちで引き取りたくなりました」
「高橋さんから聞いてますが、佐藤さんは何匹か飼われてるそうですね」
「そうなんです。今五匹います。多頭飼いなんですけど、みんないい子たちでね。先生の立場なら、普通注意ものですよね」
「まあ、普通ならそうなんですが、高橋さんからある程度の経緯と、佐藤さんの猫達に対する愛情も聞いてますから」
「じゃあ、僕が飼いたいと言っても、先生は反対なさらないと?」
「はい。反対はしないです。ただ心配なのは、先住猫に馴染めるかどうかなんです」
「先生の言うことはもっともです。うちの子達はみんな姉弟ですから仲は良いんですが、新しく来る子は確かに心配です」
 二人ともしばらくだまって、なんか考えてるみたいだった。
 おいらと兄ちゃんはくっついて、あいかわらずふるえてるのに。
「じゃあ、こうしましょう」
 先生が話しはじめた。
「ためしてみて、駄目なようなら、またうちで引き取ります。どうでしょう?」
 なやんでた男の顔が、なんかあかるくなった。
「それでよければ、ぜひ!」
男はうれしそうに先生にいった。
「でも、二匹は無理そうです。かといって、兄弟離すのもかわいそうだし」
こんどはちょっとかなしそうな顔になった。
なんかいそがしいヤツだなぁ。
「中々二匹いっぺんにという人はいないですよ。この子達はかわいいですから、すぐに飼い手はみつかります。あてもこちらにはありますから」
「じゃあ、一匹だけでも大丈夫ですか?」
「もちろん。佐藤さんさえよければ。あなたなら、きっと愛情もって飼ってくれると信じてます」
 男はまたおいらたちに顔をちかづけてきた。
じっとおいらたちをみてる。
「しかし、こっちの子は物凄く美形ですね」
男は兄ちゃんの頭をなでながら先生にいった。
 おいらたちもさすがにきがついた。きっと姉ちゃんみたいにつれさられるんだ。
「そうなんですよ。この子はお母さんに似て、凄く可愛らしい顔立ちなんです」
「じゃあ、こっちの子はお父さん似かな」
「よくおわかりで。この子のお父さんは、まあ、ぶさかわといいますか、とても愛嬌のある顔立ちをしてまして」
 男はこんどはおいらをなではじめた。
「この子、確かに美形じゃないですけど、何か凄く愛嬌がある顔してますね。やっぱり猫はみんな何かしらのかわいさを持って生まれてくるんですね。さすが進化をかわいさに全振りした種!」
 ワケわかんないこといって、おいらの頭をなでつづけてた男が先生にきいた。
「だっこしてもいいですか?」
「どうぞ。抱いてみてください」
 男はおいらの頭から手をはなして、兄ちゃんに手をのばした。
 やめろ! 兄ちゃんになにすんだ!
おいらは男の手にパンチをしたけど、ヤツはきにすることなく、兄ちゃんを両手でもちあげた。
「いや、それにしても本当に美形だ。ここまでだとすごいですね。大丈夫だよ。そんなに怖がらないで。よーしよし」
 男にだかれて兄ちゃんはふるえてる。
ずっと目をつむったままだ。
「ごめんね、怖かったね。もう大丈夫だよ」
 男はそっとおいらのそばに、兄ちゃんをおいた。兄ちゃんはやっと目をあけて、おそるおそる男をみてた。
 男は兄ちゃんの頭をそっとなでて、にっとわらった。
 兄ちゃんから手をはなした男は、こんどはおいらを両手でつつんできた。おいらはジタバタしたけど、ダメだった。
 兄ちゃんがよわよわしく男にていこうしたけど、男は兄ちゃんをみて、
「大丈夫だよ。心配しないで」
といって、おいらを胸にだいた。
 おいらは男をにらんでやったが、男はやさしそうに笑ってるだけだった。
男のあったかい胸にだかれてたら、なんかていこうする気もなくなって、とりあえず、おとなしくすることにした。
 男はやさしそうな顔でおいらをみながら、
「君は美形じゃないけど、本当に愛らしいね」
といった。
 男はしばらくおいらをだいたあと、
「よし」
といって、おいらを兄ちゃんのそばにおいた。
 おいらと兄ちゃんはなんでか、男のことをみあげてた。
ふしぎなかんじだ。胸のあったかさが、なんかきもちよかったからかもしれない。
 男はまた兄ちゃんをだきあげて、胸にギュッとだきしめた。
「ごめんね。君達を引き離しちゃうけど、きっと幸せにするから」
 おいらはこんどは兄ちゃんがさらわれるんだとおもった。
 男は兄ちゃんをまたハコにもどして、こんどはおいらをだきあげて先生にいった。
「決めました。この子にします」
 おいらはワケがわかんなかった。さらわれるのはおいらなの? 兄ちゃんじゃなくて?
「そうですか。わかりました。佐藤さん、この子をよろしくお願いします」
 兄ちゃんは、かかえられたおいらをみあげて、ひっしにさけんでた。
「弟になにすんだ! やめろ! つれてかないで!」
 おいらはおもったんだ。兄ちゃんがさらわれなくてよかった。兄ちゃんとはなれるのはいやだけど、おいらでよかったんだよ。兄ちゃん、父ちゃん母ちゃんとなかよくね。
 おいらは兄ちゃんをみて、
「兄ちゃん、バイバイ」
それしかいえなかった。
 先生は男に、手続きがあるからこちらにきてくださいといって、おいらをだいてる男を部屋の外につれてった。
 出る前に男は兄ちゃんをみて、
「本当にごめんね。でも君の兄弟は必ず大事にするからね」
とかなしそうな顔ではなしかけた。
兄ちゃんの声がいつまでもきこえてきた。


 先生と男のはなしがおわって、おいらはいよいよほんとうにつれさられることになった。
 先生は男にきいた。
「ところで、今日はこちらまでどうやってきましたか?」
 男はちょっと笑ってこたえた。
「実は、まったく引き取るとか考えてなかったので、自転車で来ました。自転車にふたの閉まるカバンがついてるので、キャリー代わりになるんで大丈夫だと思います」
「そうですか。お近くなんですか?」
「はい。自転車で10分くらいです」
「なら大丈夫そうですね」
 男は先生に頭をさげて、おいらをだいて、いつもは部屋の中から見てた、見えるけどしらない場所にいこうとあるきはじめた。
 おいらはちからいっぱいさけんだ。
「兄ちゃん、父ちゃん母ちゃん、それにイヌの兄弟、げんきでね! バイバイ!」
 男はさけんだおいらを胸にだいて、しらない場所にふみだした。

 おいらはいつも見てただけの、しらない場所にはじめて出た。
 そこには見たことのないものばかりだし、かいだことのないにおいや、上のハコからでる風じゃなくて、どこからくるのかわからない風がふいてた。いちばんビックリしたのは上を見あげても、いつも見てたカベがないことだ。
そのかわり、どこまであるのかわからないような、青いところに、白いかたまりがういてた。
おいらはすいこまれそうになりながら、ずっと見てた。
 男はしばらくあるいて、なんかスカスカのかたまりの前でとまった。
そして、それについてるハコのふたをあけた。
「ちょっとの間だから我慢してね」
 おいらはそのハコにいれられた。
いきなり暗くなったから、おいらはビックリしてさけんだ。
「なんだよ! 暗いから出せよ! こんなとこやだよ!」
 おいらがさけんでるのに、男はおかまいなしだ。
そしたら、いきなりガタゴトとうごきだしたのがわかった。
おいらがあばれてるんじゃなくて、うごいてる。
男があるいてるのとはちがう!
 ちょっとするとガタゴトがだいぶおさまって、すーってかんじにかわった。そして、たまにカタコトくらいのかんじに。
 おいらは暗いハコのなかで、あいかわらずあばれてたけど、ハコの上のほうに明るいところがあるのをみつけた。
 おいらは、そこにむかって顔をつきだした。
ぐねぐねおしつけて、やっと顔を出せた。
そしたら、いきなり、すごい風が顔にあたってきた。ビュウビュウ音もすごい。
 おいらは、ビックリして目をつむった。
なんだよ、どうなってるの。
 おいらは、ゆうきをだして、おもいきって目をあけてみた。
なんだこれ!
見たことのないものが、すごいはやさでうごいてる!
おいらの目の前を、しらないかたまりだったり、先生やおばちゃんや、男みたいなのが、つぎからつぎえと流れていった。
 おいらはこわくなって、なんでか男をさがした。
キョロキョロしてたら男の手が見えた。それをたどって上にいったら男の顔があった。
男と目があった。
 男は笑って、おいらにいった。
「ダメだよ、顔だしちゃ。でも、初めて見る外の世界はどうだい? 気持ちいいかな?」
男はすぐに前をむいて、それでもおいらにはなしかけてくる。
「僕はきっと、君達にとっては悪人だね。君を知らない所に連れてくんだからね」
男はちょっとだまってつづけた。
「でもね、だからこそ君を大事にするよ。君達からみたら人間のエゴだろうけど。まあ、仲良く僕とくらそうね」
 男のいってることは、おいらにはわからなかったけど、なんかちょっとあったかくなった。
 おいらは、はじめて見るものから目がはなせなかった。
しかくいうごくかたまりや、下に見えた、しんじられないくらいのいっぱいの水。その水の上をおいらたちは進んでいく。
兄ちゃんにも見せたかったなぁ。
おいらだけごめんね。
 そうおもってたら、いきなりつめたいものが頭にあたった。
「あれ? ちょっと降ってきたね」
頭や顔に、ちいさな水のかたまりがあたる。
上からは水。下にも水。
下の水はいっぱいすぎてこわいけど、上からの水はあんまりこわくないんだとおもった。
 男はおいらにはなしかけてきた。
「そうだ。君の名前を今思いついたよ」
そういっておいらをみて、
「雨の日に僕と出会ったから、君は雨之丞だ! よし。決まり」
「あらためて、よろしくね、雨之丞!」
 こうして、おいらの名前はあめのじょうになった。
男がいうにはアメショーだからではないってさ。
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