国一番の大悪女は、今から屋敷の外に出て沢山の人達に愛されにいきます

海咲雪

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11.パーティー当日4

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会場では皆、先ほどの出来事もあったのでもう直接的に攻撃する者はいなかった。

クラヴィスがエスコートしてくれたことも大きいだろう。

私のエスコートを終えたクラヴィスは、もう既に会場の真ん中で沢山の令嬢たちに囲まれている。

私との関わりを疑問に思う者も多かったが、元からのクラヴィスの人気の方が大きかったようだった。

壁際で一人でいる私にクロルがすぐに近づいてくる。

「マリーナ様……!先ほどは何も出来ず、申し訳ありません」

「大丈夫と合図を送ったのは私よ。むしろ、駆けつけようとしてくれて感謝しかないわ」

クロルが私のドレスに視線を落とした。

「マリーナ様、そのドレスはどうされたのですか?」

「クラヴィスが用意してくれていたの」

クロルの視線がドレスから外れない。

「クロル? もしかして、あまり似合ってないかしら……? 折角素敵なドレスを用意して頂けたのに、着こなせている自信がなくて」

「いえ、とても良く似合っております。本当に」

クロルはドレスから視線を上げて、私と目を合わせる。


「パーティーが終わるまで、マリーナ様のお側にいることの許可を」


「クロル、貴方は今回サート伯爵家として招待されていて……」


「私はマリーナ様の護衛騎士です。マリーナ様のお側にいても何もおかしくないはずです」


きっとクロルがそう述べてくれるほどに私は心配をかけてしまったのだろう。


「では、お願いするわ。ありがとう、クロル」


パーティーはもう終わりに近づいていた。

しかし、短い間とはいえ、クロルはパーティーが終わるまでずっと側にいてくれていた。

私を守ってくれていた。

会場の窓からは闇夜に輝く美しい月が見えている。

満月ではないのに、いつもより輝いて見えるのは何故だろう。

その日の美しい三日月をきっと私は忘れない気がした。




「お嬢様……!」




寮に戻ると、すぐにリーリルが駆け寄ってきてくれる。

「本当はずっと馬車でお嬢様を待っていようと思ったのですが、そういう訳にも行かず……!クロルから話を聞いた時に、自分に腹が立ちました」

リーリルが今にもこぼれ落ちそうな程、目に涙を溜めて私を見つめている。

「リーリルが気にすることは何もないわ。むしろ、私が謝りたいわ。リーリルが選んでくれたドレスも結ってくれた髪型も全てぐちゃぐちゃにしてしまった」

「そんなことは気にしなくて良いですわ。ところで、このドレスはどうしたのですか?」

「……クラヴィスが用意してくれていて……」

どこか恥ずかしくて、そう小さな声で呟いた私にリーリルが目を輝かせた。

「とてもお嬢様に似合っていますわ!」

リーリルはその後もクラヴィスはドレスを贈ってくれた話を楽しそうに聞いてくれた。

いつも通りの寮でのリーリルとの時間。

その時間を今日も過ごせていることが何より嬉しかった。
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