旦那様に「君を愛する気はない」と言い放たれたので、「逃げるのですね?」と言い返したら甘い溺愛が始まりました。

海咲雪

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7.甘くなっていませんか?

セルト様との勝負に負けた翌日。

私はいつも通りリーナに髪を結ってもらいながら、落ち込んだように顔をうつむけていた。

「レシール様、顔を上げてくださらないとお髪を整えにくいですわ」

「だって……!」

「落ち込むなら顔を上げて落ち込んで下さいませ」

「うう……リーナの意地悪……!」

私はリーナの言葉通りに顔を上げると、鏡に自分の顔が正面から映った。

昨日とは違い、いつも通りの表情の私が映っている。

しかし頭に浮かぶのは、昨日の頬を染めて涙を溜めている自分だった。

真っ赤に頬を染めて、肩を震わせている、いつもの私とは程遠い姿。

そんな姿をセルト様に見せてしまったことが恥ずかしくて堪らない。

「こんなことならもっと早くに口付けを済ませておくべきだったわ……! 何より自分から仕掛けるのは得意なのに、相手に攻められると弱くなってしまう私の馬鹿……!」

「レシール様、公爵令嬢らしくない言葉遣いになっております」



「だって、もっと前から沢山口付けをしておけば……!」



ガチャ、と私の自室の扉が開いた。

リーナと二人で扉の方に顔を向けるとセルト様が立っている。

「セルト様……!?」

「すまない、ノックしたのだが返事がなかったので」

しかしセルト様の表情は申し訳なさそうではなく、どう見ても怒っていた。

その怒りの顔を見て、私は自分の先程の言葉を思い出す。



『だって、もっと前から沢山口付けをしておけば……!』



確かに妻が言っていたら駄目なセリフだろうが、私たちは政略結婚のはず。

しかしセルト様の怒りは増していくばかりだった。

「レシール、こちらにおいで」

優しい言葉だが、言葉の威圧感が今までと全く違った。

「えっと、まだ髪を整え終わっていなくて……」

その時、リーナが私の髪から手を離した。

「レシール様、丁度終わりました」

「リーナの裏切り者……!」

私はつい小声でそう述べてしまう。



「レシール」



もう一度、セルト様に名前を呼ばれて私はゆっくりとセルト様に近づいていく。

あと三歩ほどでセルト様のところに行ける、という場所でセルト様が私の腕を掴んでグッと引いた。

「ほら、早くこっちに来て」

「っ!?」

以前までのセルト様にはない甘さを感じてしまう。

しかしセルト様は私の腕を離しては下さらなかった。


「勝負に勝ったのだから私の願いを一つ聞いてくれるのだろう? まだ要望を教えていないのだが」


「どんな要望をなさるおつもりですか……」


「それは一緒に朝食をとりながら教えるよ」


一体、私は何をさせられるのだろうか。

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