刀幻郷 〜俺と神様の和風異世界英雄譚〜

八風ゆず

文字の大きさ
3 / 4

秋葉の試練

しおりを挟む

「さぁ、試練を始めようかのぅ」

大稲荷は水の地を歩く。
水滴が落ちたかの様に大きな波紋を現す。

俺達もそれについていく。
リン……リン……と、何処からか聞こえてくる巫女鈴の音が大きくなってゆく。
次の瞬間。
秋の葉が俺達を包みこんだ。

風に飛ばされ目に張り付いた紅い紅葉もみじの葉を取ると、さっきまでの印象、季節とは違い、秋の花々と木々が咲き乱れ、いくつもの滝が渓谷のような穴へ虹の橋をかけながら降りてゆく。  

なんだ……これ……。

「どうなってんだ……?」

俺は渓谷のような穴を見ながら言った。
大稲荷は答える。

「ここは幻想の世界。そしてこの秋葉あきばの試練の間はあの場所幻核から北方面じゃ」

幻想の世界……。
俺は大稲荷様を見ていた顔を動かし秋葉の試練場を見る。

「まず、試練について話しておこぅ」

大稲荷は犬のように伏せる。

「この下には厄月やくつきあやかし砂蜘蛛すなくもがおる。其奴そやつを見事殺してみよ……っと言いたいところじゃが……」

大稲荷は俺達の方を向く。

「人間、そして狐。お主らはまだ妖気の使い方を知らんだろう?人間はもっての外じゃ」

大稲荷は美しい大きな顔を俺に近づける。
俺は「……ぉ」っと声が出る。
すると、俺は違和感を覚えた。
……?なんか、身体が軽い……?

「お主に私の妖気をやった。人間にはそれで充分じゃ。もっと欲しければ自分で頑張れ」

「は、はい!」
 
……はずい…。
何もわからず返事してしまった。
神侍は頬を赤くする。
すると、フワッっと本紫の妖気が狐の少女を包んだ。

「えっ!?お、大稲荷様、私は元々有ります。こんな勿体ないこと……」

「いい。人間だけでは不平等じゃろぅ。さぁ、まずはお主らの妖気の使い方を見してもらおう。まずはこれを渡ってみよ」

次の瞬間、渓谷のような穴の上に白と黄金の光が六つ現れ、中から大きな紅葉の葉が幾つも落ちてゆく。幅はただ飛んだだけでは届かなそうだ。
そして、案外端から端が遠い。

「この葉と葉を飛んで端まで行ってみよ。妖気は人の身体能力を使い方次第では底上げすることが出来る。私は先に行っておくから、あちらで待っているぞ」

大稲荷は落ちてゆく葉に乗り、ピョンピョンと端まであっという間に着いた。そして不思議な事に、寸分の狂いなくその葉は今までと同じように落ちてゆく。

嘘だろ……。
「凄すぎる……」
「凄い……」

再び俺と狐の少女は言葉が被る。

身体能力を底上げする……。
どうするんだ?
使い方次第とは言われたけど。

俺は腕を組みながら一定の円を描きながら回る。
その時、狐の少女が「スーッハー……」っと深呼吸をした後、走る。
そして……。

「ハッ!」

飛び立った。
そして、少し葉の軌道は乱れるが、見事落ちず葉を蹴る。

「人間のお方!足と体に妖気を入れて、脚力を強化して、体を軽くすれば………」

そう言いかけ、残り一つを蹴る時だった。

「キャッ!」

葉から滑り落ちた。

「………ッ!?」

「狐さん!」

大稲荷も、狐が落ちることは想定してなかったのか、飛び起き落ちてゆく狐の少女を見る。

やばい、このままだと……。
俺は、足、手、体、頭の頂点から足の指先まで震えていた。
狐の少女を助けなければ行けないという気持ちと、自分も落ちるかもしれないという恐怖に支配された。

いや、流石に大稲荷様が……。 

俺は大稲荷を見た。
大稲荷は顔を歪ませ、震えていた。
穴の中には砂蜘蛛がザラザラと煌めく砂からその禍々しい姿を現す。そこに大稲荷が蒼い狐火を飛ばし、少し怯ませるが、助けに行こうとはしていない。大稲荷様も最善を尽くしているということを理解した。

俺は、震えている足を動かす。
そして目をつむる。
クソッ!……もう、どうにでもなれ……!
目を開く。
俺は飛び立った。
そして、何もできず落ちてゆく。

「あぁ……やっぱりこうなった……」

俺は絶望に落ちた。   

はぁ、俺の人生終わりか。
……?そういえば、龍神様や大稲荷が妖気を具現化してたよな……もしかしたら……。

俺は、妖気を指先に集めた。
そして、五本の指から糸のような妖気を出す。

「……くッ!」

それを右側に生えていた紅葉の木に絡ませ、ぶら下がるように狐の少女の下へ行く。
だが、俺は分かっている。
こんな緻密な妖気操作を長時間は続けられない。
だから……!

神侍は狐の少女を抱きかかえる。

「今のうちに救出だーッ!」

その時、妖気の糸が千切れる。

「……うわぁッ!」

俺は狐の少女を抱きかかえたまま落ちてゆく。
穴に背を向けたまま落ち、羽織と着物、巫女装飾の服が靡く。

「持続的な操作が駄目なら……」
俺は穴に腹を向ける。

俺はまた手に妖気を集め糸を作る。
そして、十字に手を振る。
すると、蜘蛛の巣のような形状で妖気の糸が引っ付く。

「操作せず、貼り付ければいい!」
 
そして糸の上に落ちる。
糸が俺達の重さを跳ね返し、飛び上がる。

これで、後は足に妖気を伝わせれば……!

天高く飛び立ちまた落ちてゆく。
まるでジェットコースターみたいに上がり下がり。
そして、左腕で狐の少女を抱えたまま右手で木を掴む。
そして俺は壁に足を置いた。
歩き出そうとした。
だが、滑った。

「……へ?」

まさか……指先に妖気を伝わせれたことがそもそも奇跡なんじゃ……。
そのまま真っ逆さまに落ちてゆく。

「うわああぁぁぁぁあああ!!」

あ、今度こそ終わった。
あぁ……さっきまでカッコつけてやってたのに……!
こんな、こんなカッコ悪い死に方は……。

「嫌だああぁぁぁーーーッ!」

その時、俺の着物を大稲荷様が咥え、空へ放つ。

「……!?」

クルクルと回りながら落ちてゆくと、大稲荷様の背中へ落ちる。
フサッっとした心地よい感覚に一安心し、緊張が解けため息をつく。

「あ、ありがとうございます」

「いや、それは此方の台詞じゃ。狐を助けてくれて感謝する」

大稲荷は俺の方を向き頭を下げる。

「い、いや、神様が人間の俺なんかに……」

すると、大稲荷は何を言っているのか、わからない様な顔をする。その後、「クックック」と笑う。

「お主が天照様に呼ばれた理由が分かった。本当に感謝する。龍神がいればよかったのじゃが、アヤツは面倒くさがりでな、着いてきてないのじゃ」

そういえばあの時の会話以外龍神様を見てないような……。面倒くさがり、というか大稲荷様を嫌ってるようにしか見えなかったな。「ババア」とか言ってたし。

「いやはや、妖気を貰って間もない人間がああも容易く緻密な操作が出来るとは思わなかったのぉ。時間制限があって制御がまだ途上なのはあれじゃが、よくやったのぉ」

大稲荷は9本の尻尾をバサバサと動かし目を細める。
その時、気絶していた狐の少女が目を覚ます。
狐の少女は勢い良く起き上がる。

「あ、あれ?!私……」

狐の少女は自分の手や尻尾をみたの後、周りを見る。

「狐よ。感謝せぃ。そこの人間がお主を助けたのだ」

「え?」

狐の少女は俺の顔を見る。
……恥ずかしい……。

「えっと……そんなに顔をずっと見られると恥ずかしいんですけど……」

俺は頬をかく。
すると狐の少女は顔を赤らめ、両手で顔を隠す。

「う、うぅ~……。あ、あのぉ……人間のお方」

狐の少女は小さな声で言う。
俺は顔を覗き込む。
狐の少女は両手の人差し指を広げ目をあらわにさせるが、目を逸らす。

「さっき……、偉そうにして、すいませんでした……。あと……ありがとう……御座いました……」

そう、さっき格好をつけてアドバイスをしていたことに恥を感じた。そして、何故か人間の顔がカッコよく、輝いて見える。

「な、なんだ、そんなことですか。別に、なんとも思ってないので大丈夫ですよ」

狐の少女は遂に無言になる。  
そして、大稲荷は俺達を降ろし、立ち上がる。

「二人共よくやったのぉ。これで、第一試練、秋葉の試練は合格じゃ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...