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秋葉の試練
しおりを挟む「さぁ、試練を始めようかのぅ」
大稲荷は水の地を歩く。
水滴が落ちたかの様に大きな波紋を現す。
俺達もそれについていく。
リン……リン……と、何処からか聞こえてくる巫女鈴の音が大きくなってゆく。
次の瞬間。
秋の葉が俺達を包みこんだ。
風に飛ばされ目に張り付いた紅い紅葉の葉を取ると、さっきまでの印象、季節とは違い、秋の花々と木々が咲き乱れ、いくつもの滝が渓谷のような穴へ虹の橋をかけながら降りてゆく。
なんだ……これ……。
「どうなってんだ……?」
俺は渓谷のような穴を見ながら言った。
大稲荷は答える。
「ここは幻想の世界。そしてこの秋葉の試練の間はあの場所から北方面じゃ」
幻想の世界……。
俺は大稲荷様を見ていた顔を動かし秋葉の試練場を見る。
「まず、試練について話しておこぅ」
大稲荷は犬のように伏せる。
「この下には厄月の妖、砂蜘蛛がおる。其奴を見事殺してみよ……っと言いたいところじゃが……」
大稲荷は俺達の方を向く。
「人間、そして狐。お主らはまだ妖気の使い方を知らんだろう?人間は似ての外じゃ」
大稲荷は美しい大きな顔を俺に近づける。
俺は「……ぉ」っと声が出る。
すると、俺は違和感を覚えた。
……?なんか、身体が軽い……?
「お主に私の妖気をやった。人間にはそれで充分じゃ。もっと欲しければ自分で頑張れ」
「は、はい!」
……はずい…。
何もわからず返事してしまった。
神侍は頬を赤くする。
すると、フワッっと本紫の妖気が狐の少女を包んだ。
「えっ!?お、大稲荷様、私は元々有ります。こんな勿体ないこと……」
「いい。人間だけでは不平等じゃろぅ。さぁ、まずはお主らの妖気の使い方を見してもらおう。まずはこれを渡ってみよ」
次の瞬間、渓谷のような穴の上に白と黄金の光が六つ現れ、中から大きな紅葉の葉が幾つも落ちてゆく。幅はただ飛んだだけでは届かなそうだ。
そして、案外端から端が遠い。
「この葉と葉を飛んで端まで行ってみよ。妖気は人の身体能力を使い方次第では底上げすることが出来る。私は先に行っておくから、あちらで待っているぞ」
大稲荷は落ちてゆく葉に乗り、ピョンピョンと端まであっという間に着いた。そして不思議な事に、寸分の狂いなくその葉は今までと同じように落ちてゆく。
嘘だろ……。
「凄すぎる……」
「凄い……」
再び俺と狐の少女は言葉が被る。
身体能力を底上げする……。
どうするんだ?
使い方次第とは言われたけど。
俺は腕を組みながら一定の円を描きながら回る。
その時、狐の少女が「スーッハー……」っと深呼吸をした後、走る。
そして……。
「ハッ!」
飛び立った。
そして、少し葉の軌道は乱れるが、見事落ちず葉を蹴る。
「人間のお方!足と体に妖気を入れて、脚力を強化して、体を軽くすれば………」
そう言いかけ、残り一つを蹴る時だった。
「キャッ!」
葉から滑り落ちた。
「………ッ!?」
「狐さん!」
大稲荷も、狐が落ちることは想定してなかったのか、飛び起き落ちてゆく狐の少女を見る。
やばい、このままだと……。
俺は、足、手、体、頭の頂点から足の指先まで震えていた。
狐の少女を助けなければ行けないという気持ちと、自分も落ちるかもしれないという恐怖に支配された。
いや、流石に大稲荷様が……。
俺は大稲荷を見た。
大稲荷は顔を歪ませ、震えていた。
穴の中には砂蜘蛛がザラザラと煌めく砂からその禍々しい姿を現す。そこに大稲荷が蒼い狐火を飛ばし、少し怯ませるが、助けに行こうとはしていない。大稲荷様も最善を尽くしているということを理解した。
俺は、震えている足を動かす。
そして目をつむる。
クソッ!……もう、どうにでもなれ……!
目を開く。
俺は飛び立った。
そして、何もできず落ちてゆく。
「あぁ……やっぱりこうなった……」
俺は絶望に落ちた。
はぁ、俺の人生終わりか。
……?そういえば、龍神様や大稲荷が妖気を具現化してたよな……もしかしたら……。
俺は、妖気を指先に集めた。
そして、五本の指から糸のような妖気を出す。
「……くッ!」
それを右側に生えていた紅葉の木に絡ませ、ぶら下がるように狐の少女の下へ行く。
だが、俺は分かっている。
こんな緻密な妖気操作を長時間は続けられない。
だから……!
神侍は狐の少女を抱きかかえる。
「今のうちに救出だーッ!」
その時、妖気の糸が千切れる。
「……うわぁッ!」
俺は狐の少女を抱きかかえたまま落ちてゆく。
穴に背を向けたまま落ち、羽織と着物、巫女装飾の服が靡く。
「持続的な操作が駄目なら……」
俺は穴に腹を向ける。
俺はまた手に妖気を集め糸を作る。
そして、十字に手を振る。
すると、蜘蛛の巣のような形状で妖気の糸が引っ付く。
「操作せず、貼り付ければいい!」
そして糸の上に落ちる。
糸が俺達の重さを跳ね返し、飛び上がる。
これで、後は足に妖気を伝わせれば……!
天高く飛び立ちまた落ちてゆく。
まるでジェットコースターみたいに上がり下がり。
そして、左腕で狐の少女を抱えたまま右手で木を掴む。
そして俺は壁に足を置いた。
歩き出そうとした。
だが、滑った。
「……へ?」
まさか……指先に妖気を伝わせれたことがそもそも奇跡なんじゃ……。
そのまま真っ逆さまに落ちてゆく。
「うわああぁぁぁぁあああ!!」
あ、今度こそ終わった。
あぁ……さっきまでカッコつけてやってたのに……!
こんな、こんなカッコ悪い死に方は……。
「嫌だああぁぁぁーーーッ!」
その時、俺の着物を大稲荷様が咥え、空へ放つ。
「……!?」
クルクルと回りながら落ちてゆくと、大稲荷様の背中へ落ちる。
フサッっとした心地よい感覚に一安心し、緊張が解けため息をつく。
「あ、ありがとうございます」
「いや、それは此方の台詞じゃ。狐を助けてくれて感謝する」
大稲荷は俺の方を向き頭を下げる。
「い、いや、神様が人間の俺なんかに……」
すると、大稲荷は何を言っているのか、わからない様な顔をする。その後、「クックック」と笑う。
「お主が天照様に呼ばれた理由が分かった。本当に感謝する。龍神がいればよかったのじゃが、アヤツは面倒くさがりでな、着いてきてないのじゃ」
そういえばあの時の会話以外龍神様を見てないような……。面倒くさがり、というか大稲荷様を嫌ってるようにしか見えなかったな。「ババア」とか言ってたし。
「いやはや、妖気を貰って間もない人間がああも容易く緻密な操作が出来るとは思わなかったのぉ。時間制限があって制御がまだ途上なのはあれじゃが、よくやったのぉ」
大稲荷は9本の尻尾をバサバサと動かし目を細める。
その時、気絶していた狐の少女が目を覚ます。
狐の少女は勢い良く起き上がる。
「あ、あれ?!私……」
狐の少女は自分の手や尻尾をみたの後、周りを見る。
「狐よ。感謝せぃ。そこの人間がお主を助けたのだ」
「え?」
狐の少女は俺の顔を見る。
……恥ずかしい……。
「えっと……そんなに顔をずっと見られると恥ずかしいんですけど……」
俺は頬をかく。
すると狐の少女は顔を赤らめ、両手で顔を隠す。
「う、うぅ~……。あ、あのぉ……人間のお方」
狐の少女は小さな声で言う。
俺は顔を覗き込む。
狐の少女は両手の人差し指を広げ目をあらわにさせるが、目を逸らす。
「さっき……、偉そうにして、すいませんでした……。あと……ありがとう……御座いました……」
そう、さっき格好をつけてアドバイスをしていたことに恥を感じた。そして、何故か人間の顔がカッコよく、輝いて見える。
「な、なんだ、そんなことですか。別に、なんとも思ってないので大丈夫ですよ」
狐の少女は遂に無言になる。
そして、大稲荷は俺達を降ろし、立ち上がる。
「二人共よくやったのぉ。これで、第一試練、秋葉の試練は合格じゃ」
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