僕がスカートを履く理由

タッピー♂

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第三章:揺れる心、選ぶ自由

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「スカートなんてやめた方がいい。お前、完全に浮いてるぞ?」

その日、蒼真は町中で中学時代の同級生・高槻ヒロトに呼び止められた。
ヒロトは別の男子校に進学していたが、たまたま近くを歩いていた蒼真の制服姿を見て声をかけてきたらしい。

「お前さ、男なのに、なんでそんな恰好してんだよ」

「……こっちの学校じゃ普通なんだよ」

そう答えると、ヒロトはあからさまに笑った。

「普通? 気持ち悪っ。SNSにあげたらバズりそうだな、『男子セーラー、発見』ってさ」


次の日から、蒼真の周囲の空気が微妙に変わった。

誰かが校外でこっそり撮った写真が、匿名掲示板に投稿されたらしい。

> 《スカート男子w》
《新手のジェンダー芸人?》
《意識高い系学校こえーよ》



教室では誰も表立って何も言わない。けれど、視線が冷たい。
誰かが笑っただけでも、自分のことを笑われている気がしてならない。


昼休み、蒼真はトイレに隠れるようにして昼食をとっていた。
自分で選んだはずの制服が、急に重く感じる。

「……やっぱ、俺、間違ってたのかもしれない」

そう呟いたとき、ドアの外から声がした。

「蒼真、いるんでしょ?」

扉が開くと、そこにはレンがいた。

「屋上、行こう」


「……最初から分かってたよ。周囲はいつか騒ぐって」

屋上の柵に肘をついて、レンが風に髪をなびかせる。

「僕も中学のとき、スカート履いたら、めちゃくちゃに叩かれた。殴られたこともある。でも、それでも僕は脱がなかった。“お前の価値観で俺を決めんな”って、ずっと思ってた」

蒼真は驚いてレンを見る。
あの柔らかい笑顔の裏に、そんな過去があったとは思わなかった。

「……でも、お前、怖くなかったのか?」

「怖かったよ。でも、スカートを脱ぐことの方が、もっと怖かった。それは“僕”じゃなくなる気がして」


その夜、蒼真は悩んだ。
制服を脱ぎ、箪笥の奥に中学時代のズボンを取り出してみる。

それを手に取った瞬間、ふと鏡に映った自分が、少し寂しそうに見えた。

(俺は、本当に“戻りたい”のか……?)

朝になって、蒼真はゆっくり制服のセーラーに袖を通した。
スカートの裾を直し、鏡の前で一度深呼吸。

> 「……これが、俺の答えだ」




その日、全校朝礼で生徒会が発表した。

「制服自由化に関する提案を、正式に学校へ提出しました。
私たちは、誰もが**“自分に合った服”を選べる学校**を目指します」

その発表を見届けながら、蒼真は初めて堂々と校庭の真ん中を歩いた。
どこからか聞こえた笑い声も、もう気にならない。

それよりも、隣に立つレンの手が少しだけ震えていて、それをそっと握ったことの方が、ずっと大切だった。


> 「スカートは“自由”の象徴なんだ。俺にとってはな」



蒼真は、そう思えるようになっていた。
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