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第四章:「大陸統一戦争」
第66話:裏切りの王
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⸻夜明け前。
王都アルゼリアの尖塔の上で、黒い霧が揺れていた。
かつて蓮が追放された王国――その中心にある王城が、今、沈黙の中で息を潜めている。
静寂を破るように、馬車の音が遠くから近づいてくる。
宰相ヴァルガは、窓越しにそれを見下ろしていた。
彼の瞳は濁っていた。
「……“再生の王”か。今さら何を蘇らせようというのだ。」
机の上には一通の報告書が置かれている。
《リサイクル連合 大陸の三分の二を掌握》
《北方帝国・ヴァルヘイム、同盟締結》
「もはや化け物だな。篠原蓮……」
ヴァルガの唇が歪む。
「奴が次に来るのはこの王国だ。ならば――手を打つしかあるまい。」
⸻
同じ頃、王都の外れ。
灯りの消えた路地裏で、ひとりの影が立っていた。
玲奈だった。
彼女は黒い外套を羽織り、懐から封書を取り出す。
宛先には――“篠原蓮”の名。
「……遅くなって、ごめん。」
その声は小さく、けれど確かな決意を帯びていた。
封書の中には、王国から密かに流出した暗殺計画の写し。
その標的には、ひとつの名が記されている。
《再生王・篠原蓮 抹殺指令》
玲奈は歯を噛みしめた。
「やっぱり……動いたんだね、ヴァルガ。」
⸻
王城の地下。
宰相ヴァルガは一人の男と会っていた。
その男の身体には黒い紋章が刻まれている。
女神教会直属の暗殺部隊――“聖影”。
「標的は廃都メルディナの再生者だ。」
ヴァルガの声には迷いがない。
「奴を殺せ。手段は問わん。」
「報酬は?」
暗殺者の声は低く、機械のようだった。
「神の赦しだ。」
「ふむ……それは高くつくな。」
ヴァルガは笑った。
「問題はない。奴が死ねば、この大陸の秩序は戻る。」
⸻
玲奈は既に動いていた。
王都を抜ける夜道を駆け抜け、廃都メルディナへ向かう。
「蓮……お願い、間に合って……!」
彼女の頬を冷たい風が切る。
思い出が脳裏を過る。
かつての教室、悠真の笑顔、蓮を見下していた自分。
そして――蓮の冷たい瞳。
「……あの時、謝っただけじゃ足りないんだ。
今度は、守る番だよ。」
⸻
メルディナ。
夜の静寂を破るように、警鐘が鳴った。
リアが耳を立てる。
「敵襲!? どこからだ!」
セリナが結界を展開しながら答える。
「南門付近! 侵入者数不明!」
蓮が立ち上がる。
「行くぞ。」
彼はすぐさま南門へ向かう。
そこには、既に黒衣の集団が待ち構えていた。
「お前たちは……」
「神の影だ。」
先頭の男が仮面を外す。
その瞳には光がなかった。
「再生の王。貴様の存在は“神の秩序”を乱す。よって、排除する。」
蓮は息を吐いた。
「また“神”か。」
男が短剣を抜く。
その刃は聖属性に輝き、普通の人間なら触れただけで焼かれる。
蓮は掌をかざした。
「《リサイクル・ドライブ》――無効化。」
短剣が砕け散り、金属の粒が光に変わる。
「馬鹿な……!」
男が叫ぶ間もなく、リアが飛びかかった。
「神の犬が、よく吠えるね!」
爪が閃き、仮面の男を叩き倒す。
「他の奴らも片付ける!」
だが、その瞬間――背後の屋根の上から、巨大な光の矢が放たれた。
狙いは、蓮。
「蓮、危ないッ!!」
リアの叫び。
光矢が迫る。
しかし、その軌道の間に――一人の影が飛び込んだ。
閃光。衝撃。
血の匂い。
「……れ、玲奈!?」
蓮が叫ぶ。
彼の前に立ちはだかっていたのは、玲奈だった。
彼女の肩口から、光の矢が貫通していた。
「間に合った……よかった……」
蓮が彼女を抱き留める。
「バカか……何でこんな……!」
玲奈は微笑んだ。
「これが……償い……かな。」
リアが駆け寄る。
「傷が深い! すぐ治癒しなきゃ!」
セリナが魔法を詠唱する。
「《ヒール・リジェネレイト》!」
光が玲奈の身体を包み、血が止まる。
蓮は彼女の手を握った。
「誰の仕業だ。教えてくれ。」
玲奈の唇が震えた。
「王国の……宰相、ヴァルガ。
女神教会と……手を組んでる……」
「……やはり。」
蓮の目が細められる。
セリナが静かに呟く。
「アルゼリアが……完全に教会側に。」
リアが怒りを滲ませた声を上げる。
「じゃあ、もう交渉なんて無理だな。」
蓮は立ち上がった。
「ヴァルガは“秩序”の名の下に戦争を望んでいる。
なら、俺は“再生”の名で止める。」
玲奈がその背中を見上げ、かすかに笑った。
「……あたしも、行くよ。」
「まだ傷が――」
「違う。これでやっと……あなたの隣に立てる気がするの。」
蓮は沈黙した後、小さく頷いた。
「なら、行こう。一緒に。」
⸻
王都アルゼリア。
宰相ヴァルガは報告を受けていた。
「暗殺部隊、全滅です。」
「……ほう。」
「ですが、目撃情報によれば、“聖女”が再生連合側へ寝返ったとのこと。」
ヴァルガの眉がわずかに動いた。
「聖女玲奈が……? ふん、愚か者め。
篠原蓮は、神に逆らう“病”だ。いずれその力は世界を壊す。」
彼は立ち上がり、冷たく笑った。
「ならば、俺が“救世”を果たす番だ。」
⸻
夜。メルディナの広場。
玲奈は焚き火の前で静かに息を吐いた。
リアが横に座る。
「ねえ、痛くないの?」
「平気。……不思議とね、あの時よりも心が軽いの。」
「どの時?」
「蓮を見捨てた時。
あの時、あたしの中で何かが止まってた。」
リアが苦笑する。
「やっぱり人間って、面倒くさいね。」
「そうだね。……でも、そういう“面倒くさい”ところが、人間らしいのかも。」
⸻
蓮は少し離れた場所で、夜空を見上げていた。
セリナが隣に立つ。
「玲奈さん……強いですね。」
「ああ。もう迷ってない。
彼女は“戻ってきた”んだ。」
セリナが頷く。
「これで、あなたの周りには本当の意味で“仲間”しかいませんね。」
蓮は微笑んだ。
「なら、次は俺たちが立ち上がる番だ。
この戦争を、終わらせる。」
王都アルゼリアの尖塔の上で、黒い霧が揺れていた。
かつて蓮が追放された王国――その中心にある王城が、今、沈黙の中で息を潜めている。
静寂を破るように、馬車の音が遠くから近づいてくる。
宰相ヴァルガは、窓越しにそれを見下ろしていた。
彼の瞳は濁っていた。
「……“再生の王”か。今さら何を蘇らせようというのだ。」
机の上には一通の報告書が置かれている。
《リサイクル連合 大陸の三分の二を掌握》
《北方帝国・ヴァルヘイム、同盟締結》
「もはや化け物だな。篠原蓮……」
ヴァルガの唇が歪む。
「奴が次に来るのはこの王国だ。ならば――手を打つしかあるまい。」
⸻
同じ頃、王都の外れ。
灯りの消えた路地裏で、ひとりの影が立っていた。
玲奈だった。
彼女は黒い外套を羽織り、懐から封書を取り出す。
宛先には――“篠原蓮”の名。
「……遅くなって、ごめん。」
その声は小さく、けれど確かな決意を帯びていた。
封書の中には、王国から密かに流出した暗殺計画の写し。
その標的には、ひとつの名が記されている。
《再生王・篠原蓮 抹殺指令》
玲奈は歯を噛みしめた。
「やっぱり……動いたんだね、ヴァルガ。」
⸻
王城の地下。
宰相ヴァルガは一人の男と会っていた。
その男の身体には黒い紋章が刻まれている。
女神教会直属の暗殺部隊――“聖影”。
「標的は廃都メルディナの再生者だ。」
ヴァルガの声には迷いがない。
「奴を殺せ。手段は問わん。」
「報酬は?」
暗殺者の声は低く、機械のようだった。
「神の赦しだ。」
「ふむ……それは高くつくな。」
ヴァルガは笑った。
「問題はない。奴が死ねば、この大陸の秩序は戻る。」
⸻
玲奈は既に動いていた。
王都を抜ける夜道を駆け抜け、廃都メルディナへ向かう。
「蓮……お願い、間に合って……!」
彼女の頬を冷たい風が切る。
思い出が脳裏を過る。
かつての教室、悠真の笑顔、蓮を見下していた自分。
そして――蓮の冷たい瞳。
「……あの時、謝っただけじゃ足りないんだ。
今度は、守る番だよ。」
⸻
メルディナ。
夜の静寂を破るように、警鐘が鳴った。
リアが耳を立てる。
「敵襲!? どこからだ!」
セリナが結界を展開しながら答える。
「南門付近! 侵入者数不明!」
蓮が立ち上がる。
「行くぞ。」
彼はすぐさま南門へ向かう。
そこには、既に黒衣の集団が待ち構えていた。
「お前たちは……」
「神の影だ。」
先頭の男が仮面を外す。
その瞳には光がなかった。
「再生の王。貴様の存在は“神の秩序”を乱す。よって、排除する。」
蓮は息を吐いた。
「また“神”か。」
男が短剣を抜く。
その刃は聖属性に輝き、普通の人間なら触れただけで焼かれる。
蓮は掌をかざした。
「《リサイクル・ドライブ》――無効化。」
短剣が砕け散り、金属の粒が光に変わる。
「馬鹿な……!」
男が叫ぶ間もなく、リアが飛びかかった。
「神の犬が、よく吠えるね!」
爪が閃き、仮面の男を叩き倒す。
「他の奴らも片付ける!」
だが、その瞬間――背後の屋根の上から、巨大な光の矢が放たれた。
狙いは、蓮。
「蓮、危ないッ!!」
リアの叫び。
光矢が迫る。
しかし、その軌道の間に――一人の影が飛び込んだ。
閃光。衝撃。
血の匂い。
「……れ、玲奈!?」
蓮が叫ぶ。
彼の前に立ちはだかっていたのは、玲奈だった。
彼女の肩口から、光の矢が貫通していた。
「間に合った……よかった……」
蓮が彼女を抱き留める。
「バカか……何でこんな……!」
玲奈は微笑んだ。
「これが……償い……かな。」
リアが駆け寄る。
「傷が深い! すぐ治癒しなきゃ!」
セリナが魔法を詠唱する。
「《ヒール・リジェネレイト》!」
光が玲奈の身体を包み、血が止まる。
蓮は彼女の手を握った。
「誰の仕業だ。教えてくれ。」
玲奈の唇が震えた。
「王国の……宰相、ヴァルガ。
女神教会と……手を組んでる……」
「……やはり。」
蓮の目が細められる。
セリナが静かに呟く。
「アルゼリアが……完全に教会側に。」
リアが怒りを滲ませた声を上げる。
「じゃあ、もう交渉なんて無理だな。」
蓮は立ち上がった。
「ヴァルガは“秩序”の名の下に戦争を望んでいる。
なら、俺は“再生”の名で止める。」
玲奈がその背中を見上げ、かすかに笑った。
「……あたしも、行くよ。」
「まだ傷が――」
「違う。これでやっと……あなたの隣に立てる気がするの。」
蓮は沈黙した後、小さく頷いた。
「なら、行こう。一緒に。」
⸻
王都アルゼリア。
宰相ヴァルガは報告を受けていた。
「暗殺部隊、全滅です。」
「……ほう。」
「ですが、目撃情報によれば、“聖女”が再生連合側へ寝返ったとのこと。」
ヴァルガの眉がわずかに動いた。
「聖女玲奈が……? ふん、愚か者め。
篠原蓮は、神に逆らう“病”だ。いずれその力は世界を壊す。」
彼は立ち上がり、冷たく笑った。
「ならば、俺が“救世”を果たす番だ。」
⸻
夜。メルディナの広場。
玲奈は焚き火の前で静かに息を吐いた。
リアが横に座る。
「ねえ、痛くないの?」
「平気。……不思議とね、あの時よりも心が軽いの。」
「どの時?」
「蓮を見捨てた時。
あの時、あたしの中で何かが止まってた。」
リアが苦笑する。
「やっぱり人間って、面倒くさいね。」
「そうだね。……でも、そういう“面倒くさい”ところが、人間らしいのかも。」
⸻
蓮は少し離れた場所で、夜空を見上げていた。
セリナが隣に立つ。
「玲奈さん……強いですね。」
「ああ。もう迷ってない。
彼女は“戻ってきた”んだ。」
セリナが頷く。
「これで、あなたの周りには本当の意味で“仲間”しかいませんね。」
蓮は微笑んだ。
「なら、次は俺たちが立ち上がる番だ。
この戦争を、終わらせる。」
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