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第16話:“いいね”の正体
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朝。
オフィスに入った瞬間、周りの空気がざわついているのがわかった。
「おはようございます……」
「おはよう真由! てか、お前すごいな!」
「えっ、なにが!?」
「“理想の上司”が、藤原の投稿に“いいね”してたんだって!」
「……えっ!?」
スマホを取り出し、画面を開く。
確かに、見慣れたアカウント名。
《@WORK_LIFE_BALANCEさんが“いいね”しました》
投稿:@mayu_worklife
「“人を信じる”って、簡単じゃないけど、
その人の言葉を信じたいと思えるって、すごいこと。」
(……っ)
手が震える。
思わず深呼吸。
(見てくれてた……やっぱり、課長)
「も~、社内SNSもざわざわしてるよ! “理想の上司、社内恋バナ説”って!」
「そ、そんなのただの憶測だから!」
「でも“mayu_worklife”って、もう藤原ってバレバレじゃね?」
「なっ、なにそれ、どうして……!」
(しまった……“会社アカウント”と連携してたんだ……!)
⸻
昼。
会議室。
柊が資料をまとめている。
その背中を見ただけで、胸がぎゅっと締まる。
「……課長」
「うん」
「“いいね”……押しました?」
「……見たか」
「そりゃ、見ますよ!」
「そうか」
「“そうか”じゃなくて!」
真由が思わず前のめりになる。
「社内で噂になってるんです。
“また理想の上司と部下が繋がってる”って」
「気にするな」
「気にします!」
「俺は気にしてない」
「だからそういうところが問題なんです!」
柊がふっと笑う。
「……怒ってるのか」
「怒ってません!」
「顔が真っ赤だ」
「違うんです! ただ……」
一拍の間。
彼女の声が少し落ち着く。
「……“いいね”って、なんの意味だったんですか」
「意味?」
「私に向けたもの、なんですか、それともただの反応?」
柊は少し黙ってから、静かに言った。
「“ありがとう”の代わりだ」
「……え?」
「“言葉を信じてくれてありがとう”。
それだけだ」
「……っ」
胸の奥がじんわり熱くなる。
「……課長、ずるいです」
「また言われたな、それ」
「だって、“ありがとう”なんて言われたら……」
「照れるか?」
「……はい」
⸻
夕方。
帰り際、エレベーター前。
成田がひょいと顔を出す。
「なぁ真由~、これ見たか?」
スマホの画面には、
“理想の上司と部下のやり取りまとめ”みたいなスレッド。
そこに、ふたりのアカウントが並んでいた。
《@WORK_LIFE_BALANCE》:「“信じる”って、簡単じゃない。」
《@mayu_worklife》:「でも、それでも信じたい。」
いいね:WORK_LIFE_BALANCE
「うわぁ……もう完全にカップル扱いじゃん」
「やめてくださいよぉ……!」
(ほんとに、どうしていつもこうなるの……)
⸻
夜。
帰宅。
スマホの通知が光る。
《@WORK_LIFE_BALANCE:
“言葉”は誤解されるもの。
でも、誤解されても、伝えたい人がいる。”》
(……あの人、またそんな言い方して)
コメント欄には“藤原さんのこと?”の嵐。
(もう……隠せないな)
返信を書きかけて、指を止める。
(でも、私が返したら、また騒ぎになる……)
そのとき――
DMの通知が入る。
《誠: “ごめん。軽率だった。”》
「……課長」
返信を打つ指が震える。
《藤原: “怒ってません。ただ、もう“軽率”なんて言わないでください。”》
少し間をおいて、返事が届く。
《誠: “わかった。じゃあ、次はちゃんと伝える。”》
(……ちゃんと伝えるって、なにを?)
胸の奥が、少しだけざわめいた。
⸻
翌朝。
オフィスに入ると、
掲示板に貼られた社内ニュースが目に入った。
【社内広報:柊誠による講演企画決定】
『テーマ:「SNSと人の距離」』
(……これって)
「真由、知ってる? 柊さん、社内セミナーで喋るんだって!」
「へ、へぇ……」
「“距離の取り方を間違えた時、人はどうすべきか”ってタイトルらしい」
「っ!」
(それ、絶対……私たちのことだ)
オフィスに入った瞬間、周りの空気がざわついているのがわかった。
「おはようございます……」
「おはよう真由! てか、お前すごいな!」
「えっ、なにが!?」
「“理想の上司”が、藤原の投稿に“いいね”してたんだって!」
「……えっ!?」
スマホを取り出し、画面を開く。
確かに、見慣れたアカウント名。
《@WORK_LIFE_BALANCEさんが“いいね”しました》
投稿:@mayu_worklife
「“人を信じる”って、簡単じゃないけど、
その人の言葉を信じたいと思えるって、すごいこと。」
(……っ)
手が震える。
思わず深呼吸。
(見てくれてた……やっぱり、課長)
「も~、社内SNSもざわざわしてるよ! “理想の上司、社内恋バナ説”って!」
「そ、そんなのただの憶測だから!」
「でも“mayu_worklife”って、もう藤原ってバレバレじゃね?」
「なっ、なにそれ、どうして……!」
(しまった……“会社アカウント”と連携してたんだ……!)
⸻
昼。
会議室。
柊が資料をまとめている。
その背中を見ただけで、胸がぎゅっと締まる。
「……課長」
「うん」
「“いいね”……押しました?」
「……見たか」
「そりゃ、見ますよ!」
「そうか」
「“そうか”じゃなくて!」
真由が思わず前のめりになる。
「社内で噂になってるんです。
“また理想の上司と部下が繋がってる”って」
「気にするな」
「気にします!」
「俺は気にしてない」
「だからそういうところが問題なんです!」
柊がふっと笑う。
「……怒ってるのか」
「怒ってません!」
「顔が真っ赤だ」
「違うんです! ただ……」
一拍の間。
彼女の声が少し落ち着く。
「……“いいね”って、なんの意味だったんですか」
「意味?」
「私に向けたもの、なんですか、それともただの反応?」
柊は少し黙ってから、静かに言った。
「“ありがとう”の代わりだ」
「……え?」
「“言葉を信じてくれてありがとう”。
それだけだ」
「……っ」
胸の奥がじんわり熱くなる。
「……課長、ずるいです」
「また言われたな、それ」
「だって、“ありがとう”なんて言われたら……」
「照れるか?」
「……はい」
⸻
夕方。
帰り際、エレベーター前。
成田がひょいと顔を出す。
「なぁ真由~、これ見たか?」
スマホの画面には、
“理想の上司と部下のやり取りまとめ”みたいなスレッド。
そこに、ふたりのアカウントが並んでいた。
《@WORK_LIFE_BALANCE》:「“信じる”って、簡単じゃない。」
《@mayu_worklife》:「でも、それでも信じたい。」
いいね:WORK_LIFE_BALANCE
「うわぁ……もう完全にカップル扱いじゃん」
「やめてくださいよぉ……!」
(ほんとに、どうしていつもこうなるの……)
⸻
夜。
帰宅。
スマホの通知が光る。
《@WORK_LIFE_BALANCE:
“言葉”は誤解されるもの。
でも、誤解されても、伝えたい人がいる。”》
(……あの人、またそんな言い方して)
コメント欄には“藤原さんのこと?”の嵐。
(もう……隠せないな)
返信を書きかけて、指を止める。
(でも、私が返したら、また騒ぎになる……)
そのとき――
DMの通知が入る。
《誠: “ごめん。軽率だった。”》
「……課長」
返信を打つ指が震える。
《藤原: “怒ってません。ただ、もう“軽率”なんて言わないでください。”》
少し間をおいて、返事が届く。
《誠: “わかった。じゃあ、次はちゃんと伝える。”》
(……ちゃんと伝えるって、なにを?)
胸の奥が、少しだけざわめいた。
⸻
翌朝。
オフィスに入ると、
掲示板に貼られた社内ニュースが目に入った。
【社内広報:柊誠による講演企画決定】
『テーマ:「SNSと人の距離」』
(……これって)
「真由、知ってる? 柊さん、社内セミナーで喋るんだって!」
「へ、へぇ……」
「“距離の取り方を間違えた時、人はどうすべきか”ってタイトルらしい」
「っ!」
(それ、絶対……私たちのことだ)
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