富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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神剣 大お披露目会

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 道間家の方々と一緒に《御虎シティ》へ旅行に出掛けた1週間後、麗星さんから連絡が来た。

 「虎蘭様、過日は大変に楽しゅうございました!」
 「麗星さん! 私たちも! またご一緒に出掛けたいものです」
 「はい!」

 麗星さんとはすっかり仲良くなった。
 青月と美空も、道間家の子どもたちと一緒に楽しそうだった。
 大勢の兄弟というのも良いものだと思った。
 麗星さんは別れ際には再会を約して下さった。

 「ところで、あの時にお話ししていた神剣の件なのですが」
 「え? ああ、そのようなお話をいたしましたね」
 「よろしければ、一度こちらへいらっしゃいませんか? 是非お見せしたく思いますの」
 「それは本当ですか! 是非に!」

 確かに麗星さんとは「神剣」について話をしたことを思い出した。
 だがこんなにも早く見せていただけるなんて!
 嬉しくて麗星さんとすぐに日にちを打ち合わせた。
 単に私が自分の興味をお話ししただけなのに、麗星さんはちゃんと覚えており手配下さったようだった。
 本当に有難いことだ。
 それにまた麗星さんたちにお会いするのは本当に嬉しい。

 「では、楽しみにお待ちしておりますので」
 「はい、宜しくお願いいたします!」

 通信を切って、私はすぐに高虎さんに連絡した。

 「そうなのかよ!」
 「ええ、こないだの旅行で神剣のお話をしたら、お見せ下さるって」
 
 高虎さんには旅行が楽しかった話をしているが、特に私が麗星さんと仲良くなったことを喜んで下さっている。
 だから神剣を見せていただける話に大喜びされた。
 でも、一つご注意された。

 「そうかぁ、良かったな! あ、お前、絶対に虎白さんとかには話すなよ!」
 「え、どうしてですか?」

 私は話そうと思っていたのだが。
 虎白さんたちは神剣に並々ならぬ興味がある。
 一緒には伺えないが、私が見せてもらえることになった話はしておくつもりだった。

 「あの人らが聞いたら絶対ぇ奪いに行くかんな!」
 「そんなバカな」
 「お前、あの人らと付き合って何年だよ!」
 「ええと……」

 生まれた時から周りにいたが、私が本格的に剣技の練習を始めたのは……

 「それはどうでもいいんだ!」
 「高虎さんが聞いたんじゃありませんか!」
 「だからぁ! 虎白さんたちは剣に関しちゃ善悪はねぇんだ! 神剣なら絶対に手に入れようとする!」

 ああ、そういうお話か。
 まあ、それは確かにそうかもしれないと思った。

 「まあ、そうですかね」
 「だろ! だから言わないで行け!」
 「あの、青月と美空は……」
 「ああ、連れてってもいいよ。だけどあいつら、虎白さんたちに可愛がられてっからなぁ。神剣を観たら口を滑らすかもしれん。まあ、神剣を観るのはお前だけにしろ、それなら一緒でも構わん」
 「はい、分かりました」

 そういうことになった。

 「ああ、やっぱ俺も行くわ」
 「ほんとですかぁ!」

 嬉しい!

 「まあ、俺も観たいしな」
 「嬉しいです!」
 「俺から麗星には連絡しとくよ」
 
 私は高虎さんに日にちを伝え、一緒に行けることになった。
 もう、本当に嬉しい!
 その日が楽しみになった。
 青月と美空にも伝えると喜んでいた。

 「特別に道間家の神剣を見せて頂けるの」
 「そうなんだ!」
 「スゴイことだよね!」
 「ええ、でも神剣を観られるのは私だけ。お前たちはまだ幼いからね」
 「えぇー、残念だな」
 「でもしょうがないね」

 私は高虎さんに言われた通りに子どもたちに、二人は神剣を観られないということを話した。
 でも、子どもたちは道間家に行けるだけで嬉しいようだ。
 
 「天狼兄さんと奈々さんたちにまた会える!」
 「早く行こうよ!」
 「ウフフフフフ」

 二人とも道間家のお子さんたちとはすっかり仲良くなっている。

 「ねえ、どんな神剣なのかな?」
 「お母さんの「常世渡理」みたいな?」
 「お父さんの「虎王」みたいかもしれないよ!」

 青月と美空が興奮している。
 やはり神剣には興味があるようだ。
 
 「ウフフフ、分からないわ。神剣にはいろいろなものがあるからね」
 「そうなんだ!」
 「僕もいつか神剣が欲しいな!」
 「鍛錬をしなさい。縁があれば神剣が認めてくれるわ」
 「すごいなー!」
 「楽しみだなー!」

 二人が神剣のことで興奮していた。
 観られるのは私だけなのだが、そこはあまり拘ってはいないようだ。

 「ん?」

 何か間違ったことをした気がした。
 青月たちは神剣を観せないとちゃんと話したが。

 翌日、虎白さんと虎海さんが遊びに来た。
 よく時間があると虎白さんたちは突然に来てくれる。
 もちろん大歓迎だ。
 私の「型崩し」の指導もしてくれ、青月たちにも指導してくれる。
 二人とも喜び、大好きな虎白さんから離れなかった。
 私は虎海さんと一緒に鍛錬した。
 その日は泊まっていただく予定で、久し振りにのんびりと話した。
 虎白さんが青月と美空と一緒にお風呂に入ってくれた。
 夕食を準備(私は無理なので、デュールゲリエが作ってくれる)し、虎白さんたちと一緒に食べた。
 虎白さんが虎海さんに耳打ちしていた。

 「お前もそろそろ「型崩し」をものにするな」
 「ありがとうございます」
 「まあ、神剣の担い手だ、早く一人前になれ」
 「はい」

 虎白さんたちが立ち上がって言った。

 「じゃあ、これで行くからよ」
 「え、今日は泊って行かれるんじゃ?」
 「ああ、ちょっと急用が出来た、行くぜ」

 先ほど耳打ちをされていたことだろうか。

 「そうなのですか。どこかで襲撃でもありましたか?」
 「いや、そうじゃねぇ。むしろ俺らが襲撃に行くってかな。じゃあ行くな」
 「はい、行ってらっしゃい」

 残念なことだ。
 青月と美空も悲しんでいる。
 でも忙しい方々なので、深くは聞かなかった。




 後で、高虎さんの言った意味が分かった。
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