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神剣 大お披露目会 Ⅳ
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「タイガーファング」でアラスカから《道間城》へ飛んだ。
青月と美空も一緒だ。
二人とも、今日の旅行を楽しみにしていた。
先日の《御虎シティ》でご一緒して、道間家のお子さんたちと非常に仲良くなっている。
特に長男の天狼さんと長女の奈々さんは青月たちにとても良くして下さり、また会えるのが嬉しいようだ。
もちろん、私もそうだった。
麗星さんのお優しさと、何とも言えない明るさ、それに格式の高い暮らしを感じさせる気品が私には眩しかった。
また麗星さんはとてもお美しい。
私などを褒めて下さるが、私は武骨な女だと自覚している。
でも麗星さんに気に入っていただけたようで、打ち解けて仲良くなることが出来た。
前にも《道間城》には何度も来ているが、本当に広い城だ。
それに威厳があるのが好ましい。
高虎さんが設計したそうだが、道間家のイメージに合ったデザインなのだろう。
西洋風の城ではあったが、道間家には本当に似つかわしいと感ずる。
《道間城》の発着場に降りると、麗星さんと五平所さんが直接出迎えてくれた。
「タイガーファング」から降りる私たちに手を振って下さっている。
麗星さんは煌びやかな銀河をあしらった見事な着物を着ていらした。
私はいつも袴姿で、破れた上着なども気にしていなかったが、高虎さんに言われて少しは服装にも気を遣うようになった。
私はどうでも良いのだけど、青月と美空は高虎さんの子だ。
高虎さんはいつも着る物には拘っている方なので、青月たちにも少しはまともな恰好をさせたいと考えるようになった。
だから私も今日は薄手のゆったりとした革製の黒のジャケットとパンツを履いている。
青月は水色を基調としたススキと月をあしらった着物、美空は白地に孔雀を背にした着物姿だ。
「虎蘭様、ようこそお出でになりましたぁ!」
歓迎して下さる麗星さんに挨拶し、まずは謝罪した。
「麗星さん、本当に先日はうちの者が大変な失礼を」
「いいえ、何ほどのことはございません! さあ、こちらへ!」
麗星さんは微笑んで、そのまま私たちを庭へ案内してくれた。
《道間城》の庭園は素晴らしい。
城の中に幾つもあるが、ここは中でも最も美しい中庭の庭園だ。
和洋の組み合わさった絶妙な配置で、美的センスに乏しい私などにもその美しさが分かる。
《道間城》にいる間は、よくこの中庭で一人で鍛錬をしていた。
演習場もあるのだが、独りでの演舞などはここを選んでいた。
麗星さんが青月と美空の着物を褒めて下さった。
良かった、これらは蓮花さんに頂いた物だ。
蓮花さんは趣味が良い方だった。
私などが何も分からずとも、蓮花さんがいつも考えていろいろと下さるので有難い。
蓮花さんは「石神様のお子様たちの服を考えるのが、わたくしの最高の趣味でございます!」と言って、いつもたくさん下さる。
《御虎シティ》で麗星さんとも話したのだが、蓮花さんの服装のセンスは麗星さんもベタ褒めだった。
二人は親友で、よく服装の話などもしているようだ。
もちろん麗星さんのお子さんたちも、蓮花さんから大量に服を頂いているそうだ。
ちなみに蓮花さんは鷹さんとも親友で、お二人でよく料理を作っているらしい。
頻繁に私たちも蓮花さんにご馳走になっているが、本当に素晴らしい腕前だった。
だから蓮花さんの趣味のために、幾つかの工房があるとのことだった。
お料理は蓮花研究所の厨房だが、服飾デザインの工房、アニマル移動車の工房、植物園(竜胆、デンドロニュウム、シロツメクサ、忘れな草、月見草、月下美人、マリーゴールド等など)、他にも秘密の工房があり、ジェシカさんが探すのが大変らしい。
高虎さんが先に来ていた。
「よう! 来たかぁ!」
高虎さんは明るく笑って手を振っている。
私も駆け寄って抱き着いた。
青月と美空も駆けて来る。
高虎さんが私にキスをし、青月と美空を抱き上げて頬にキスをした。
二人が喜ぶ。
「もう来られていたのですね!」
「ああ、夕べからな」
「神剣の方は?」
「揃ってるぜぇ! 後で観せてやる」
「はい!」
麗星さんがお子さんたちを連れて出て来た。
虎白さんたちの暴走の件もあり、子どもたち全員にも神剣を観せることになっていた。
青月と美空は道間家のお子さんたちを見て喜んで挨拶していた。
それに後ろからも。
「虎白さん!」
「よう」
ストレッチャーに乗った虎白さんたちが来た。
みんなストレッチャーや車椅子で全身に包帯が巻かれている。
手足を石膏などで固定している人も多い。
包帯にはあちこちに血が滲んでいる。
全員がスタンドを脇に立てて点滴を入れている。
まともに動けそうな人はいない。
石神家の鍛錬でも、ここまでになることは少ないのだが、高虎さんが相当怒ったのだろう。
本来は絶対安静になるはずだが、まあこの人たちはどうでもいい。
「また面倒なことになるのは嫌だからな。全員引き連れて来た」
「おい、何も出来ねぇよ」
「信じませんよ!」
「ワハハハハハハ!」
みんな笑っていた。
まあ、タフな人たちだ。
神剣を観られるというので、全身の痛みなどどうでもいい人たちなのだ。
でも笑うと全員が顔をしかめていた。
五平所さんたちがお茶を持って来てくれた。
庭には椅子と大きなテーブルが並べられており、私たちも座らせていただいた。
しばらくみんなで歓談する。
私と麗星さんが高虎さんの両脇に座った。
「久し振りに百家に行ってよ。俺が東の拝殿下を見せて欲しいと言ったら驚かれてなぁ」
「そうなのですか」
「第13層にあるはずだと言うと、真っ青になってた」
「13層?」
高虎さんは、幾つかの神社や仏閣には地下深くの秘密のエリアがあるのだと教えてくれた。
古代からのもので、ごく一部の人間にしか知らされていない。
百家は高虎さんに全面的に協力することを宣言していたが、地下の秘密に関しては明かしていなかった。
それは百家の本当の秘密だったためだ。
「百家では第9層までしか知らなかった。だから俺がその下を開いて行ったんで、びっくりしてたよ」
「高虎さんは知っていたんですか!」
「まあな。小島将軍、まあ怒貪虎さんに前に教えてもらってた」
「怒貪虎さん!」
「ああ、もうすぐ来るぜ。あの人も神剣の主だからなぁ」
「あ! そうでした!」
言っている間に空から怒貪虎さんが降って来た。
五平所さんがすぐにファンタとカールを用意する。
「ケロケロ」
高虎さんが困った顔をしていた。
まだ言葉が分からないらしい。
怒貪虎さんは見たことも無い一振りの剣を持っていた。
いや、あれは剣なのだろうか?
鞘に入ってはいるが、棒のように見える。
みんなでお茶を頂き、青月と美空は道間家の子どもたちと仲良く話している。
京菓子があり、その上等な甘さに幸せになった。
虎白さんたちは、ストローやチューブで何かを飲んでいる。
何も口に出来ない人たちもいる。
さすがに今日はみんな大人しい。
でも、眼光は鋭く、精気が漲っていた。
「さて、そろそろお披露目すっかぁ!」
高虎さんがそう言い、みんなが立ち上がった。
虎白さんたちはそのままだが。
全員目を輝かせている。
もちろん私もそうだ。
まだ見ぬ神剣がこれから観られる。
青月と美空も一緒だ。
二人とも、今日の旅行を楽しみにしていた。
先日の《御虎シティ》でご一緒して、道間家のお子さんたちと非常に仲良くなっている。
特に長男の天狼さんと長女の奈々さんは青月たちにとても良くして下さり、また会えるのが嬉しいようだ。
もちろん、私もそうだった。
麗星さんのお優しさと、何とも言えない明るさ、それに格式の高い暮らしを感じさせる気品が私には眩しかった。
また麗星さんはとてもお美しい。
私などを褒めて下さるが、私は武骨な女だと自覚している。
でも麗星さんに気に入っていただけたようで、打ち解けて仲良くなることが出来た。
前にも《道間城》には何度も来ているが、本当に広い城だ。
それに威厳があるのが好ましい。
高虎さんが設計したそうだが、道間家のイメージに合ったデザインなのだろう。
西洋風の城ではあったが、道間家には本当に似つかわしいと感ずる。
《道間城》の発着場に降りると、麗星さんと五平所さんが直接出迎えてくれた。
「タイガーファング」から降りる私たちに手を振って下さっている。
麗星さんは煌びやかな銀河をあしらった見事な着物を着ていらした。
私はいつも袴姿で、破れた上着なども気にしていなかったが、高虎さんに言われて少しは服装にも気を遣うようになった。
私はどうでも良いのだけど、青月と美空は高虎さんの子だ。
高虎さんはいつも着る物には拘っている方なので、青月たちにも少しはまともな恰好をさせたいと考えるようになった。
だから私も今日は薄手のゆったりとした革製の黒のジャケットとパンツを履いている。
青月は水色を基調としたススキと月をあしらった着物、美空は白地に孔雀を背にした着物姿だ。
「虎蘭様、ようこそお出でになりましたぁ!」
歓迎して下さる麗星さんに挨拶し、まずは謝罪した。
「麗星さん、本当に先日はうちの者が大変な失礼を」
「いいえ、何ほどのことはございません! さあ、こちらへ!」
麗星さんは微笑んで、そのまま私たちを庭へ案内してくれた。
《道間城》の庭園は素晴らしい。
城の中に幾つもあるが、ここは中でも最も美しい中庭の庭園だ。
和洋の組み合わさった絶妙な配置で、美的センスに乏しい私などにもその美しさが分かる。
《道間城》にいる間は、よくこの中庭で一人で鍛錬をしていた。
演習場もあるのだが、独りでの演舞などはここを選んでいた。
麗星さんが青月と美空の着物を褒めて下さった。
良かった、これらは蓮花さんに頂いた物だ。
蓮花さんは趣味が良い方だった。
私などが何も分からずとも、蓮花さんがいつも考えていろいろと下さるので有難い。
蓮花さんは「石神様のお子様たちの服を考えるのが、わたくしの最高の趣味でございます!」と言って、いつもたくさん下さる。
《御虎シティ》で麗星さんとも話したのだが、蓮花さんの服装のセンスは麗星さんもベタ褒めだった。
二人は親友で、よく服装の話などもしているようだ。
もちろん麗星さんのお子さんたちも、蓮花さんから大量に服を頂いているそうだ。
ちなみに蓮花さんは鷹さんとも親友で、お二人でよく料理を作っているらしい。
頻繁に私たちも蓮花さんにご馳走になっているが、本当に素晴らしい腕前だった。
だから蓮花さんの趣味のために、幾つかの工房があるとのことだった。
お料理は蓮花研究所の厨房だが、服飾デザインの工房、アニマル移動車の工房、植物園(竜胆、デンドロニュウム、シロツメクサ、忘れな草、月見草、月下美人、マリーゴールド等など)、他にも秘密の工房があり、ジェシカさんが探すのが大変らしい。
高虎さんが先に来ていた。
「よう! 来たかぁ!」
高虎さんは明るく笑って手を振っている。
私も駆け寄って抱き着いた。
青月と美空も駆けて来る。
高虎さんが私にキスをし、青月と美空を抱き上げて頬にキスをした。
二人が喜ぶ。
「もう来られていたのですね!」
「ああ、夕べからな」
「神剣の方は?」
「揃ってるぜぇ! 後で観せてやる」
「はい!」
麗星さんがお子さんたちを連れて出て来た。
虎白さんたちの暴走の件もあり、子どもたち全員にも神剣を観せることになっていた。
青月と美空は道間家のお子さんたちを見て喜んで挨拶していた。
それに後ろからも。
「虎白さん!」
「よう」
ストレッチャーに乗った虎白さんたちが来た。
みんなストレッチャーや車椅子で全身に包帯が巻かれている。
手足を石膏などで固定している人も多い。
包帯にはあちこちに血が滲んでいる。
全員がスタンドを脇に立てて点滴を入れている。
まともに動けそうな人はいない。
石神家の鍛錬でも、ここまでになることは少ないのだが、高虎さんが相当怒ったのだろう。
本来は絶対安静になるはずだが、まあこの人たちはどうでもいい。
「また面倒なことになるのは嫌だからな。全員引き連れて来た」
「おい、何も出来ねぇよ」
「信じませんよ!」
「ワハハハハハハ!」
みんな笑っていた。
まあ、タフな人たちだ。
神剣を観られるというので、全身の痛みなどどうでもいい人たちなのだ。
でも笑うと全員が顔をしかめていた。
五平所さんたちがお茶を持って来てくれた。
庭には椅子と大きなテーブルが並べられており、私たちも座らせていただいた。
しばらくみんなで歓談する。
私と麗星さんが高虎さんの両脇に座った。
「久し振りに百家に行ってよ。俺が東の拝殿下を見せて欲しいと言ったら驚かれてなぁ」
「そうなのですか」
「第13層にあるはずだと言うと、真っ青になってた」
「13層?」
高虎さんは、幾つかの神社や仏閣には地下深くの秘密のエリアがあるのだと教えてくれた。
古代からのもので、ごく一部の人間にしか知らされていない。
百家は高虎さんに全面的に協力することを宣言していたが、地下の秘密に関しては明かしていなかった。
それは百家の本当の秘密だったためだ。
「百家では第9層までしか知らなかった。だから俺がその下を開いて行ったんで、びっくりしてたよ」
「高虎さんは知っていたんですか!」
「まあな。小島将軍、まあ怒貪虎さんに前に教えてもらってた」
「怒貪虎さん!」
「ああ、もうすぐ来るぜ。あの人も神剣の主だからなぁ」
「あ! そうでした!」
言っている間に空から怒貪虎さんが降って来た。
五平所さんがすぐにファンタとカールを用意する。
「ケロケロ」
高虎さんが困った顔をしていた。
まだ言葉が分からないらしい。
怒貪虎さんは見たことも無い一振りの剣を持っていた。
いや、あれは剣なのだろうか?
鞘に入ってはいるが、棒のように見える。
みんなでお茶を頂き、青月と美空は道間家の子どもたちと仲良く話している。
京菓子があり、その上等な甘さに幸せになった。
虎白さんたちは、ストローやチューブで何かを飲んでいる。
何も口に出来ない人たちもいる。
さすがに今日はみんな大人しい。
でも、眼光は鋭く、精気が漲っていた。
「さて、そろそろお披露目すっかぁ!」
高虎さんがそう言い、みんなが立ち上がった。
虎白さんたちはそのままだが。
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もちろん私もそうだ。
まだ見ぬ神剣がこれから観られる。
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