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ダーティ玻璃 Ⅴ : 失恋はウンコ味 3
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11月の中旬。
馬込は《オペレーション・ラストソング》が終了して一段落したことで、結婚式の日取りを決めていたようだった。
まー、タカさんや私たちに連絡してきたのはその1か月前だけどさー。
結婚式までの余裕があればいいってもんじゃないのだよ、馬込。
お前はハーの気持ちなんか気付いちゃいなかったんだろうけどさー。
この1か月、大変だったのだよ。
ハーはちょっとしたことで泣いちゃうし、放っておくわけにも行かずに私も仕事が進まんでなー。
確かに大きな問題が幾つも解決してたからまだ良かったものの。
でも、私たちって結構重要な案件が積み重なってるのだー。
言ってもしょうがないけどさー。
とにかく、馬込と花咲里の結婚式のために、みんなで日本に集まったさー。
馬込と花咲里は、まあ大事だし大好きだからね!
愚痴ってごめんな!
タカさんと私たちと柳ちゃんで先に日本へ行き、それに軍関係者は後でアラスカから。
ロボは真夜ちゃんと真昼ちゃんに預かってもらった。
竹流はアゼルバイジャンから飛んで来る。
亜紀ちゃんはチュニジアからだ。
あー、チュニジア、荒れてんなー。
亜紀ちゃん、細かい折衝とか調停って苦手だもんなー。
そろそろ誰か応援に行かせっかなぁー。
馬込にハーを潰されてなきゃ、やってたんだけどよー。
皇紀ちゃんと風花ちゃんは「絶怒」のみんなと一緒に大阪から新幹線で来た。
軍関係者は後から来るので、私たちは一旦中野の家に集まって、久し振りにあのハマーで出掛けた!
懐かしくて涙が出て来た!
亜紀ちゃんと柳ちゃんも喜んでいたし、ハーもちょっと懐かしそうな顔で笑顔になったよ!
結婚式は3時からだったので、みんなで一緒に昼食を食べる。
タカさんが「般若」を予約していた。
「絶怒」のみんなは遠慮して別行動になった。
皇紀ちゃんと風花ちゃんはもちろん一緒だ。
タカさんが久し振りに来たので、青さんたちが大喜びだった。
私たちも大歓迎された。
「赤虎! 会いたかったぜ!」
「ああ、俺もだ。元気そうで良かったよ」
「お前もな!」
「毎日相変わらず忙しそうだな」
「お前のせいでな!」
「そこは感謝しろ!」
「バカヤロウ!」
青さんはちょっと泣いてた。
霞ちゃんが背中をさすっていた。
テーブルに案内されて、すぐに料理が出て来た。
一杯あるぜー!
「お前ら、披露宴会場じゃあんまし喰うなよな!」
「「「「「「はい!」」」」」」
「はい」
ハーも返事を一緒にするが、やはり暗い。
青さんが私たちのために特別な食事を振る舞ってくれた。
ステーキはもちろんだけど、最近人気のメニューをどんどん持って来て食べてくれと言っていた。
お店のテーブルの3つを繋げての特別席だったが、病院の方々も来ていてタカさんを見て感激していた。
タカさんは愛想よく話している。
タカさんもきっと懐かしいのだ。
涼ちゃんは大学を卒業後に、やはり「般若」の正式な店員となった。
六花さんが自分の住んでいたマンションを涼ちゃんに譲ろうとして、部屋を見た涼ちゃんがびっくりして断ろうとしていた。
六花さんは「じゃあ自分がここに戻るまで」と言って、無償で貸している。
食事をしていると、磯良と早乙女さんたちも来た。
胡蝶まで一緒に来やがった。
まあ、馬込とは「人生研究会」で一緒だったから仕方がねぇ。
早乙女さんたちは、「ハイドラ」が日本でも何度か作戦行動をしていたので、「アドヴェロス」の人たちとも親しくしていたのだ。
「すまない、遅れてしまった」
「別に来なくてもいいから気にしてねぇよ」
「いしがみぃー!」
みんなで笑った。
早乙女さんが握手を求めて、タカさんが笑って手を握った。
普段はタカさんに会えないので、涙を流す程感激している。
タカさんが雪野さんにはハグをして早乙女さんを複雑な顔にさせていた。
怜花ちゃんはタカさんの前で真っ赤な顔をして、タカさんにハグされると喜んで泣きそうになった。
久留守君はすっかり大人びた顔で言った。
「美獣様、そろそろ私もお仕えできそうです」
「そうか。いつも度々呼んで悪いな。でものんびりしててくれ。必要な場合は必ず呼ぶ」
「はい、いつなりとも」
そう言ってから、普通の子どもの顔に戻った。
不思議な子だ。
お子さんは二人だけだった。
小さい子たちは家にいるんだろう。
なんだか懐かしい感じになり、ハーも多少は和んできた。
「馬込君が結婚するって、驚いたよ」
うわぁ。
早乙女さんは全然分かってないからなー。
ハーの方を見ると、やっぱりまたちょっと強張ってる。
でもタカさんは別に止めない。
「結構厳しい任務の部隊なんだろう? 「虎」の軍の他の人たちからも聞いているよ」
「まあな。本隊の背後を護るっていう任務だ。何が起きても絶対に対処して敵を本隊に近付けないっていうなぁ。馬込たちは本当によくやってくれているよ」
「そうなのかぁ、立派だなぁ」
「まあ、別に早乙女がどう思ってても関係ねぇんだがな」
「いしがみぃー!」
タカさんはハーのことは一切気にせずに話していた。
ハンターたちが「ゲート」の多重結界で囲まれた時に、「ハイドラ」に他の妖魔の侵攻を押さえてもらった話などをしている。
タカさんも合わせて会話している。
もちろん、早乙女さんたちにもハーのことは何も話していない。
そうなのだ。
私たちは、戦友の馬込の結婚を祝うために集まっているのだ。
タカさんは口にはしなくとも、そのことをハーに態度で示している。
ハーの問題はハーが乗り越えなければならないのだ。
石神家は、慰め合って弱さを認め合う家じゃない。
優しくはあっても、強さで乗り越えていく家なのだ。
失恋ごときでウジウジするのは違う。
まあ、辛いのは分かるけどさ、ハーがんばれ!
馬込は《オペレーション・ラストソング》が終了して一段落したことで、結婚式の日取りを決めていたようだった。
まー、タカさんや私たちに連絡してきたのはその1か月前だけどさー。
結婚式までの余裕があればいいってもんじゃないのだよ、馬込。
お前はハーの気持ちなんか気付いちゃいなかったんだろうけどさー。
この1か月、大変だったのだよ。
ハーはちょっとしたことで泣いちゃうし、放っておくわけにも行かずに私も仕事が進まんでなー。
確かに大きな問題が幾つも解決してたからまだ良かったものの。
でも、私たちって結構重要な案件が積み重なってるのだー。
言ってもしょうがないけどさー。
とにかく、馬込と花咲里の結婚式のために、みんなで日本に集まったさー。
馬込と花咲里は、まあ大事だし大好きだからね!
愚痴ってごめんな!
タカさんと私たちと柳ちゃんで先に日本へ行き、それに軍関係者は後でアラスカから。
ロボは真夜ちゃんと真昼ちゃんに預かってもらった。
竹流はアゼルバイジャンから飛んで来る。
亜紀ちゃんはチュニジアからだ。
あー、チュニジア、荒れてんなー。
亜紀ちゃん、細かい折衝とか調停って苦手だもんなー。
そろそろ誰か応援に行かせっかなぁー。
馬込にハーを潰されてなきゃ、やってたんだけどよー。
皇紀ちゃんと風花ちゃんは「絶怒」のみんなと一緒に大阪から新幹線で来た。
軍関係者は後から来るので、私たちは一旦中野の家に集まって、久し振りにあのハマーで出掛けた!
懐かしくて涙が出て来た!
亜紀ちゃんと柳ちゃんも喜んでいたし、ハーもちょっと懐かしそうな顔で笑顔になったよ!
結婚式は3時からだったので、みんなで一緒に昼食を食べる。
タカさんが「般若」を予約していた。
「絶怒」のみんなは遠慮して別行動になった。
皇紀ちゃんと風花ちゃんはもちろん一緒だ。
タカさんが久し振りに来たので、青さんたちが大喜びだった。
私たちも大歓迎された。
「赤虎! 会いたかったぜ!」
「ああ、俺もだ。元気そうで良かったよ」
「お前もな!」
「毎日相変わらず忙しそうだな」
「お前のせいでな!」
「そこは感謝しろ!」
「バカヤロウ!」
青さんはちょっと泣いてた。
霞ちゃんが背中をさすっていた。
テーブルに案内されて、すぐに料理が出て来た。
一杯あるぜー!
「お前ら、披露宴会場じゃあんまし喰うなよな!」
「「「「「「はい!」」」」」」
「はい」
ハーも返事を一緒にするが、やはり暗い。
青さんが私たちのために特別な食事を振る舞ってくれた。
ステーキはもちろんだけど、最近人気のメニューをどんどん持って来て食べてくれと言っていた。
お店のテーブルの3つを繋げての特別席だったが、病院の方々も来ていてタカさんを見て感激していた。
タカさんは愛想よく話している。
タカさんもきっと懐かしいのだ。
涼ちゃんは大学を卒業後に、やはり「般若」の正式な店員となった。
六花さんが自分の住んでいたマンションを涼ちゃんに譲ろうとして、部屋を見た涼ちゃんがびっくりして断ろうとしていた。
六花さんは「じゃあ自分がここに戻るまで」と言って、無償で貸している。
食事をしていると、磯良と早乙女さんたちも来た。
胡蝶まで一緒に来やがった。
まあ、馬込とは「人生研究会」で一緒だったから仕方がねぇ。
早乙女さんたちは、「ハイドラ」が日本でも何度か作戦行動をしていたので、「アドヴェロス」の人たちとも親しくしていたのだ。
「すまない、遅れてしまった」
「別に来なくてもいいから気にしてねぇよ」
「いしがみぃー!」
みんなで笑った。
早乙女さんが握手を求めて、タカさんが笑って手を握った。
普段はタカさんに会えないので、涙を流す程感激している。
タカさんが雪野さんにはハグをして早乙女さんを複雑な顔にさせていた。
怜花ちゃんはタカさんの前で真っ赤な顔をして、タカさんにハグされると喜んで泣きそうになった。
久留守君はすっかり大人びた顔で言った。
「美獣様、そろそろ私もお仕えできそうです」
「そうか。いつも度々呼んで悪いな。でものんびりしててくれ。必要な場合は必ず呼ぶ」
「はい、いつなりとも」
そう言ってから、普通の子どもの顔に戻った。
不思議な子だ。
お子さんは二人だけだった。
小さい子たちは家にいるんだろう。
なんだか懐かしい感じになり、ハーも多少は和んできた。
「馬込君が結婚するって、驚いたよ」
うわぁ。
早乙女さんは全然分かってないからなー。
ハーの方を見ると、やっぱりまたちょっと強張ってる。
でもタカさんは別に止めない。
「結構厳しい任務の部隊なんだろう? 「虎」の軍の他の人たちからも聞いているよ」
「まあな。本隊の背後を護るっていう任務だ。何が起きても絶対に対処して敵を本隊に近付けないっていうなぁ。馬込たちは本当によくやってくれているよ」
「そうなのかぁ、立派だなぁ」
「まあ、別に早乙女がどう思ってても関係ねぇんだがな」
「いしがみぃー!」
タカさんはハーのことは一切気にせずに話していた。
ハンターたちが「ゲート」の多重結界で囲まれた時に、「ハイドラ」に他の妖魔の侵攻を押さえてもらった話などをしている。
タカさんも合わせて会話している。
もちろん、早乙女さんたちにもハーのことは何も話していない。
そうなのだ。
私たちは、戦友の馬込の結婚を祝うために集まっているのだ。
タカさんは口にはしなくとも、そのことをハーに態度で示している。
ハーの問題はハーが乗り越えなければならないのだ。
石神家は、慰め合って弱さを認め合う家じゃない。
優しくはあっても、強さで乗り越えていく家なのだ。
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まあ、辛いのは分かるけどさ、ハーがんばれ!
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