富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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双子の失恋旅行 Ⅱ

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 《ウラノス》が指定したのはスペインのグラナダだった。
 なんでなのかは全然教えてくれない。
 まー、人任せにしているのだから文句も無いが。
 失恋旅行、やるぞー!

 私たちは荷物をまとめてアンカレッジから飛行機で移動した。
 「飛行」や「タイガーファング」じゃない。
 やっぱ「失恋旅行」は普通の交通機関がいいよね?

 ハーと二人で飛行機の中でしっとりと歌った。

 ♪ 夢なーらば どーれーほど よかったでしょおー 未ーだーに あなーたのことをー ゆーめーにみーるー ♪

 周りの人にヘンな目で見られた。
 米津の名曲、知らんのかよ!

 グラナダには「虎」の軍の拠点があるけど、そこは行かない。
 一応スペイン、ポルトガルを管轄する大きな基地だけど、別に用事は無い。
 私たちは失恋旅行なのだー!
 だからバルセロナの空港からもちゃんと列車で移動した。
 なんか遅っそいし乗り継ぎはあるしだけど、空港やら駅やら景色やら!
 あー、なんか雰囲気あるぞー!
 グラナダに着いたぞー!

 「白い街だね」
 「うん、綺麗だね」

 そういえば観光地なんて全然味わったことはない。
 タカさんが京都とかニューヨークとか何度も連れてってくれたことはあるけど、観光は楽しんだ覚えがない。
 まあ、ヒマがあっても私たちが遊んでいただけなのだが。
 こうやって街を味わうことは、ほとんどやったことないなー。
 《アヴァロン》って世界最高に美しい街なんだけど、あんまし歩いたことないなー。
 私ら、ヘッジホッグに篭ってるもんなー。
 とりあえずハーと二人で街を散策してみた。
 そうすっと、やっぱ観光よりもレストランでの食事になってしまった。

 グラナダは800年も続いた「レコンキスタ(国土回復戦争)」で勝利が決まった土地だ。
 だから街の中にある建物はヨーロッパとイスラムが互いに奪い合ったものがある。
 キリスト教の教会がイスラム教のモスクになり、その反対になり、そういうのが繰り返されている。
 だからなのか、今もスペインの中で最も移民が多く、国籍は混交している。
 お陰でいろんな国のお料理があるよー!
 折角なので最初はスペイン料理のお店で喰いまくり、次にケバブや他の国の食べ物も漁った。
 完全に食べ歩きだ。
 アレ?
 一応、有名なアルハンブラ宮殿に行ってみたさー。

 「なんだ、ダッサ!」
 「もうちょっとなぁ」

 外観から期待薄だ。
 アラスカの《キャッスル》(ディアブロ除く)の方が豪華だぞ!
 レジーナ様のお城はどれも1000倍威厳があるしー。

 だけど中に入ってびっくりしちゃった。

 「「なんだこりゃー!」」

 そうだった。
 イスラムは内装に凝るんだったー!
 素敵な幻想的な空間を満喫して外に出た。
 まーそんだけ。
 
 「「メシだぁー!」」

 取り敢えずまだ夕方の4時なので、軽くつまむ程度にした。
 スペインは夜からだぁー!
 『ラ・チコタ』ってバルに入った。
 ここはバルだけど、結構早い時間から開いてる。
 テラスでエスプレッソとトースト(トマト、チーズ、生ハムなんかの全部乗せにした)10人前とタパス全種を頼んだ。
 お店の人が笑って他のテーブルをくっつけて行った。
 美味しいからビールも頼んだ。
 おつまみに生ハムの盛り合わせ1キロも追加した。
 お店の人が大笑いして、頬にキスをしてくれた。
 お店の前を通る人が、私たちを見て笑っていた。
 私たちも気軽に声を掛ける。

 「「オラー!(こんにちはー)」」
 「オラー!」

 スペインの人はみんな愛想がいい。

 「みんな明るいね」
 「そうだね。でもその明るさが辛いぜー」
 「まったくだぜー」

 口ではそう言ってるけど、二人とも最初とはもう違う。
 二人が永遠に別れない存在だと分かっていることが大きい。
 それにやっぱり磯良も馬込も大事な友達だ。
 だけど心の奥底に何か疼くものが確かにあるんだ。
 それを払拭したくて、失恋旅行に来た。
 まー、けじめのつもりだ。
 疼いたままでもいい。
 タカさんも、そんな思い出はいっぱいあるじゃんかー!
 タカさん、大好きぃー!

 夜の8時になったので、『ラ・チコタ』を出た。
 お店の人が大喜びで明日も来いって言ってくれた。
 まあ、テラスの私たちの「喰い」を見て、お店に入る人が多かったのだ。
 二人で腕を組んで『ミラドール・デ・モライマ』に向かった。
 有名なレストランなので、もちろん予約は済んでる。
 ここでもテラス席を頼んだ。
 アルハンブラ宮殿が見下ろせ、宮殿がライトアップしている。

 「綺麗だね」
 「そだね」

 まー、そこはあんましなんで、また喰いまくったよー!
 予約の時にお店で注文することと、とにかく大量に喰うことだけ伝えてた。
 ウェイターが注文を取りに来た。
 髪の長いイケメンだ。
 スペインの男は何故かロン毛の奴が多い。

 「「オール!」」
 「はい?」

 メニューを開いて指で全体に丸を示した。

 「あとステーキ20人前!」
 「他は喰ってから決める!」
 「……」

 困った顔のウェイターが下がって、最初の皿を持って来た。
 ワインはお任せ。
 自家製ワインがウリなのだが、そんなのは分からん!
 最初はアスパラのチーズ巻だった。

 「「うっめぇー!」」

 ソラマメの目玉焼き乗せとかイベリコ豚のソテーなんかが次々と来る。
 さっきのウェイターが真面目な顔で確認した。
 テーブルごとに担当が決まっているらしく、同じイケメンだ。

 「あの、ステーキは本当に20人前ですか?」
 「うん!」
 「あ、30人に追加!」
 「……途中で辞める場合はお早めに」
 「「はい!」」

 こういうの久し振りだなー。
 でも、30分もすると私たちが「大丈夫」なのが分かって、ウェイターがニコニコ顔で運んで来るようになった。
 オーナーとシェフが途中で挨拶に来て礼を言ってった。
 ステーキは分厚くて良いのだが、上にアスパラが「×」に乗ってて、シシトウとポテトフライも付いてる。
 アスパラだけ乗っけるように頼んで、後からのはシシトウとポテトフライはいらないと言った。
 そうしたらでかい肉だけの皿が来た。
 これでよし!
 途中で来たアンコウの料理が絶品だった。

 「「これ、20人前!」」
 「!」

 まだ驚くかー。
 幾つか気に入ったものをそうやって追加した。

 「おい、ルーとハーか!」
 「「ん?」」

 近付いて来た男に日本語で話し掛けられた。
 振り向いた。




 
 「「マクシミリアンさん!」」

 ほぇぇぇぇー。
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