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双子の失恋旅行
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ハーは馬込に失恋し、私まで磯良に失恋した。
失恋如きで落ち込んではいられない。
何しろ私たちは「虎」の軍で重要な仕事をしているのだぁ!
石神家は失恋如きでウダウダしないのだぁ!
男なんかどうしたぁ!
「「タカさん、失恋旅行に行ってきます」」
「あ?」
でもちょっとだけ許して。
すぐ戻って来るからさ。
タカさんは物凄く嫌そうな顔をしてたけど、頼み込んで何とか二泊三日の旅行に出掛けることにした。
タカさんは渋い顔をして「とっとと行け」と言っていた。
そりゃねー。
ハーとどこに行こうかと相談した。
「日本にする?」
「いや、いろいろ思い出しそうだなー」
「そだね」
いっそ私たちのことを誰も知らない場所に行こうということになった。
どっかいい場所はないかなー。
みんな、失恋の時ってどこに行くんだろ?
フランスに行って栞ちゃんに聞いてみた。
「栞ちゃん、失恋の時ってどうしてた?」
「え、なに!」
栞ちゃんは驚くよりも警戒していた。
いや、罠じゃぇねって。
まー、これまで時々騙してたからなー。
「ほら、栞ちゃんは奈津江さんがいたせいでタカさんと付き合えなかったじゃん」
「あんたたちねぇ、きついこと言うわねぇ」
「ごめんね。失恋初心者だからさ」
「そういう問題?」
栞ちゃんは失恋の先輩だ。
「タカさんのこと、大学の頃からずっと好きだったでしょ?」
「まあ、そりゃそうだけどさ」
「どっかに行ったりした?」
「うーん、行ったかなぁ。私あんまり旅行って興味なかったんだよね」
「そうなんだ」
こいつ、あんまし役に立たなそうだ。
「あ、ドライブは?」
栞ちゃんは殺人ドライバーだ。
「ああ、当時は免許はあったけどペーパーだったからね。あの人と付き合うようになってだよ、練習したの」
「へぇー」
しなきゃ、大勢の人が迷惑しなかったのにね。
こないだのパリの始末も大変だったなー。
「まあ、だからどこにも行かなかったかな。卒業して病院も違ったし、もう会うことはないかと自分でも思ってた」
「寂しいね」
「だけどさ、奇跡が起きたじゃん!」
「ああー」
「だから積極的に接近した。まあ、陽子の無茶な後押しもあったお陰だけどね」
「「アハハハハハ!」」
成就の話を聞きてぇんじゃねぇよ!
こいつはダメだ。
鷹さんは経験あるかなー。
アラスカに戻った。
「鷹さん、鷹さん」
「あ、二人とも来てたの?」
鷹さんは《オペレーション・ラストソング》の救出者のお世話に今は奔走している。
自分たちが連れて来た人たちが困ってないか、いつもあちこちに聞いて回っているのだ。
優しい人だなー。
私とハーは鷹さんに昼食をご馳走になった。
やったぁー!
鷹さんが最近はまってる「毛ガニ蕎麦」だ。
前にうちでタカさんが鷹さんに「ハマグリ蕎麦」を作って、鷹さんはあれからいろいろな具材で蕎麦を研究している。
「毛ガニラーメン」ってあるけど、蕎麦も美味しいそうだ。
毛ガニのインパクトが凄い。
ズルズル……
「美味しいね!」
「毛ガニの出汁がいいね!」
「ありがとう」
タカさんも気に入ったそうで、だから今はブラッシュアップしているらしい。
まあ、美味しいけどその話じゃないんだ。
私たちは失恋旅行のことを鷹さんに聞いた。
「え、やったことないよ!」
「そうなの?」
「だって、失恋したことないし」
「「!」」
なんだよー。
「私って、子どもの頃から家を出ることばっか考えてたからね。恋愛とか興味なかったし」
「でも鷹さんって綺麗じゃん。付き合ったことはあるんでしょ?」
「うーん、中学生以降に何度か告白されたかな」
「それで!」
「でも断ったから。本当に恋愛に興味なかったのよ」
「そっかー」
鷹さんはそんな感じかな。
「でも看護師になって石神先生に出会ったじゃない。そうしたらね……」
いや、だから上手く行った話はいいんだって。
鷹さんに昼食のお礼を言って出て来た。
あー、六花ちゃんも恋愛経験無いしなー。
麗星さんはフランスの男の話が長いから行かない(前に一緒に飲んで聞いた。ほとんど妄想で、本当につまらなかった)。
あとはいるかなー。
失恋経験者、失恋経験者……
「そういえば虎白さんって、奥さん亡くしてるよね」
「そうだけど、絶対稽古しかやってないよ」
「そっか。それに聴けないもんね」
「うん」
死別はダメだー。
悲し過ぎる。
今更に思うと、私たちって全然恋バナしたことないもんなー。
士王の初体験とかは聞くけどー。
誰かおらんかなー。
「ねえ、ルー」
「うん、なーに?」
「最近はさ、AIに質問するのって流行ってるんだって」
「あ、なんか聴いたことあるー」
生成AIとか、チャットGPTとかでみんな楽しんでるそうだ。
もちろんそういうのはデータセットで創り上げられたものだけど。
「私たちってさ、ゴイスーなAI持ってるじゃん」
「そっかぁー!」
「ね! いいんじゃね?」
「やろうよ!」
早速《ウラノス》に聞いてみた。
あー、超量子コンピューターに失恋旅行の行先聞くのって、私たちだけだろうなー。
「…………ということで、私たち、失恋したの」
《はい、存じております》
「あ、やっぱ」
《はい》
そーだよなー、何でも知ってる奴だしなー。
でも、なんか悔しいなー。
ちょっとも慰めてくれないしなー。
「それでね。失恋の痛手を癒すために、どっか旅行に行きたいの」
「ねー、どこがいいかなー」
《なるほど。それでは……》
すぐに場所を指定してくれた。
理由は話してくれない。
でも《ウラノス》がそういう態度の時には、もう100%確実なことなのだ。
だったら行こうじゃないかぁ!
ということで、私とハーは「失恋旅行」に出掛けたよ!
失恋如きで落ち込んではいられない。
何しろ私たちは「虎」の軍で重要な仕事をしているのだぁ!
石神家は失恋如きでウダウダしないのだぁ!
男なんかどうしたぁ!
「「タカさん、失恋旅行に行ってきます」」
「あ?」
でもちょっとだけ許して。
すぐ戻って来るからさ。
タカさんは物凄く嫌そうな顔をしてたけど、頼み込んで何とか二泊三日の旅行に出掛けることにした。
タカさんは渋い顔をして「とっとと行け」と言っていた。
そりゃねー。
ハーとどこに行こうかと相談した。
「日本にする?」
「いや、いろいろ思い出しそうだなー」
「そだね」
いっそ私たちのことを誰も知らない場所に行こうということになった。
どっかいい場所はないかなー。
みんな、失恋の時ってどこに行くんだろ?
フランスに行って栞ちゃんに聞いてみた。
「栞ちゃん、失恋の時ってどうしてた?」
「え、なに!」
栞ちゃんは驚くよりも警戒していた。
いや、罠じゃぇねって。
まー、これまで時々騙してたからなー。
「ほら、栞ちゃんは奈津江さんがいたせいでタカさんと付き合えなかったじゃん」
「あんたたちねぇ、きついこと言うわねぇ」
「ごめんね。失恋初心者だからさ」
「そういう問題?」
栞ちゃんは失恋の先輩だ。
「タカさんのこと、大学の頃からずっと好きだったでしょ?」
「まあ、そりゃそうだけどさ」
「どっかに行ったりした?」
「うーん、行ったかなぁ。私あんまり旅行って興味なかったんだよね」
「そうなんだ」
こいつ、あんまし役に立たなそうだ。
「あ、ドライブは?」
栞ちゃんは殺人ドライバーだ。
「ああ、当時は免許はあったけどペーパーだったからね。あの人と付き合うようになってだよ、練習したの」
「へぇー」
しなきゃ、大勢の人が迷惑しなかったのにね。
こないだのパリの始末も大変だったなー。
「まあ、だからどこにも行かなかったかな。卒業して病院も違ったし、もう会うことはないかと自分でも思ってた」
「寂しいね」
「だけどさ、奇跡が起きたじゃん!」
「ああー」
「だから積極的に接近した。まあ、陽子の無茶な後押しもあったお陰だけどね」
「「アハハハハハ!」」
成就の話を聞きてぇんじゃねぇよ!
こいつはダメだ。
鷹さんは経験あるかなー。
アラスカに戻った。
「鷹さん、鷹さん」
「あ、二人とも来てたの?」
鷹さんは《オペレーション・ラストソング》の救出者のお世話に今は奔走している。
自分たちが連れて来た人たちが困ってないか、いつもあちこちに聞いて回っているのだ。
優しい人だなー。
私とハーは鷹さんに昼食をご馳走になった。
やったぁー!
鷹さんが最近はまってる「毛ガニ蕎麦」だ。
前にうちでタカさんが鷹さんに「ハマグリ蕎麦」を作って、鷹さんはあれからいろいろな具材で蕎麦を研究している。
「毛ガニラーメン」ってあるけど、蕎麦も美味しいそうだ。
毛ガニのインパクトが凄い。
ズルズル……
「美味しいね!」
「毛ガニの出汁がいいね!」
「ありがとう」
タカさんも気に入ったそうで、だから今はブラッシュアップしているらしい。
まあ、美味しいけどその話じゃないんだ。
私たちは失恋旅行のことを鷹さんに聞いた。
「え、やったことないよ!」
「そうなの?」
「だって、失恋したことないし」
「「!」」
なんだよー。
「私って、子どもの頃から家を出ることばっか考えてたからね。恋愛とか興味なかったし」
「でも鷹さんって綺麗じゃん。付き合ったことはあるんでしょ?」
「うーん、中学生以降に何度か告白されたかな」
「それで!」
「でも断ったから。本当に恋愛に興味なかったのよ」
「そっかー」
鷹さんはそんな感じかな。
「でも看護師になって石神先生に出会ったじゃない。そうしたらね……」
いや、だから上手く行った話はいいんだって。
鷹さんに昼食のお礼を言って出て来た。
あー、六花ちゃんも恋愛経験無いしなー。
麗星さんはフランスの男の話が長いから行かない(前に一緒に飲んで聞いた。ほとんど妄想で、本当につまらなかった)。
あとはいるかなー。
失恋経験者、失恋経験者……
「そういえば虎白さんって、奥さん亡くしてるよね」
「そうだけど、絶対稽古しかやってないよ」
「そっか。それに聴けないもんね」
「うん」
死別はダメだー。
悲し過ぎる。
今更に思うと、私たちって全然恋バナしたことないもんなー。
士王の初体験とかは聞くけどー。
誰かおらんかなー。
「ねえ、ルー」
「うん、なーに?」
「最近はさ、AIに質問するのって流行ってるんだって」
「あ、なんか聴いたことあるー」
生成AIとか、チャットGPTとかでみんな楽しんでるそうだ。
もちろんそういうのはデータセットで創り上げられたものだけど。
「私たちってさ、ゴイスーなAI持ってるじゃん」
「そっかぁー!」
「ね! いいんじゃね?」
「やろうよ!」
早速《ウラノス》に聞いてみた。
あー、超量子コンピューターに失恋旅行の行先聞くのって、私たちだけだろうなー。
「…………ということで、私たち、失恋したの」
《はい、存じております》
「あ、やっぱ」
《はい》
そーだよなー、何でも知ってる奴だしなー。
でも、なんか悔しいなー。
ちょっとも慰めてくれないしなー。
「それでね。失恋の痛手を癒すために、どっか旅行に行きたいの」
「ねー、どこがいいかなー」
《なるほど。それでは……》
すぐに場所を指定してくれた。
理由は話してくれない。
でも《ウラノス》がそういう態度の時には、もう100%確実なことなのだ。
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ということで、私とハーは「失恋旅行」に出掛けたよ!
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