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《オペレーション・ゴルディアス》 XⅨ : 決戦 2
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「やっぱ高虎と聖はすげぇな」
「はい」
虎白さんが私に言った。
私にもそれはよく分かる。
「業」の《位相反射》は物凄い技だけど、タカさんと聖さんは完璧に抑えている。
タカさんは詳しい話はしなかったけど、量子力学の応用だとは言っていた。
タカさんは「花岡」の解析の中で、量子力学との関連で考えていた。
「花岡」はルーとハーが最初に解析をして、例えば「虚震花」が反物質での現象だと見抜いた。
タカさんは双子に量子力学の説明をしていって、その結果私たちの「花岡」が大発展した。
タカさんは本当にいろいろなことを知っていて、量子力学のことも随分と研究していたようだ。
だから双子は量子力学を散々学び、私と皇紀も結構学んだ。
「業」の《位相反射》は多分、「観測者問題」と繋がっていると思う。
それは「2スリット実験」で知られるもので、二つのスリットに光を照射する実験だ。
光は波動なので、両方のスリットを通った光は、反対の壁に濃淡の模様を描く。
スリットを通った光が、互いの波の干渉現象が起きて、重なる部分が濃く、打ち消し合った部分が薄くなるのだ。
しかし、同時に光は粒子でもあるので、スリットに光の粒子が通った時に観測する装置を付けると、光はなんと二カ所にだけぶつかるのだ。
要は粒子であれば直進して、同じ個所にだけぶつかるためだ。
つまり、観測すると、光は違った現象に分かれてしまうのだ!
更に、スリットの片側にだけ観測装置を付けた場合、光は片側の決まった場所にだけぶつかるのだぁ!!
観測するかしないか、また観測のやり方で、量子は違う現象を見せることになる。
「業」の《位相反射》は、自分への攻撃を観測することによって「業」の意図通りの現象を起こしているものだと思う。
物凄く難解な能力だけど、量子の世界は本当に不思議だ。
そして双子が持って来たオーデンの詩『見る前に跳べ』は、量子力学の祖マックス・プランクの「黒体放射」を思い出す。
エネルギーは古典物理学の連続的なものではなく、飛び飛びなのだ。
この宇宙では取り出せないエネルギーがある。
もしかしたら、「無意識の攻撃」というのは、その飛び飛びに関係しているのかもしれない。
私には分からない難解な問題だ。
そして、タカさんと聖さんはその難解な《位相反射》をもう無効化しつつある!
タカさんはあの頭の良さで理論的に解析してるんだろうけど、聖さんは本能的にだ。
厳しい戦場を渡り歩く中で培った特殊な感覚だろう。
私は聖さんが頭の悪い人だとは思っていないけど、知識が無いのは確かだ。
でも、真の頭の良さで、聖さんは感覚的に全てのことを平らげているのだと思う。
やっぱり戦闘に関しては相当積み上げて来た人なのだ。
戦場で聖さんほどスゴイ人を私は他に知らない。
虎白さんたち石神家本家の剣聖たちも物凄いが、実戦、しかも絶体絶命の戦場の経験では聖さんの方が圧倒的な数をこなしている。
石神家の方々は元の積み上げで獲得している戦闘力が高いために、却って戦場での経験が積めないのではないだろうか。
聖さんはそれが無かった分、積み上げたものが遙かに高い。
そしてタカさんは超天才だ。
自分では「努力型」だと言っているが、私はタカさんの天才性を疑ったことはない。
タカさんは私を「超天才」と言ってくれるが、タカさんほどではない。
それにタカさんがとんでもない使命を持っている人なのを知っている。
多分、記憶には無いようだけど、前世までの壮絶な経験がタカさんの中には積み上がっているのだ。
「業」は相当強力な妖魔の力を得たらしいが、それが逆に戦場での積み上げを妨げているのではないだろうか。
若い頃の「花岡」や他の武術を得ようとしていた時以降から、「業」は厳しい鍛錬をしていない。
あまりにも巨大な力を得て、「業」はそこからほとんと積み上げていないのだと思う。
タカさんは潰されそうな悲しみを経ながら、必死で今日まで積み上げて来た人だ。
虎影さんを喪い、保奈美さんを喪い、奈津江さんを喪った。
その他にも多くの愛する人間を喪いながら、タカさんは戦い続けて来た。
今は多くの人間から慕われているけど、みんなタカさんのそういう所に魅かれているのだと思う。
誰よりも優しく、強くならなければならなかった人。
「運命なんだ……」
「なんだ、亜紀?」
私の呟きを虎白さんが聞いていた。
「いえ、タカさんはこういう運命なんだなって思って」
「お前、何言ってんだ? 当たり前だろう」
「はい!」
そうだ、ここにいるみんなは分かっているのだ。
「おい、俺たちはよ、怒貪虎さんから言われて散々高虎の面倒を看て来たんだぞ。あいつ、しょっちゅう死に掛けてよ、大変だったぜぇ」
「そうですね」
そのお話は幾つも聞いている。
タカさんはあまりに大きな運命のため、普通の人間の生の中に留まるのが大変だったのだ。
「ほんとによ、何度も焦ったぜ。あいつ自身も死にそうな事件にいつも突っ込んでいくしよ!」
「はい」
虎白さんは言いながら笑っていた。
私にも分かる。
その「大変さ」が、虎白さんの大切な思い出になっているのだ。
「高虎は本当に強くなった。でかい人間になったよ」
「はい」
「業」は何度も身体を作り替え、タカさんと聖さんの攻撃を凌ごうとしている。
でももう、攻撃が出来なくなっている。
「ああ、怒貪虎さんが来たぜ」
「え?」
私には何も感じられなかった。
「世界中で《百鬼夜行》が起きてたんだ。それを全部潰して来た」
「え! そんな報告は無いですよ!」
「怒貪虎さんが瞬殺したからな。そのうちにアラスカも捉えるだろうよ」
「!」
私はすぐに「ヘッジホッグ」に問い合わせた。
もう幾つかは掴んでいたようだけど、「ゲート」の現出と同時に閉じていた現象があったようだ。
《オペレーション・オロチ》の方で混乱していたために、そっちはまだ把握しきっていなかったようだった。
「世界中に《百鬼夜行》が起きたそうですよ!」
「なんだと! ああ、「ゲート」反応は捉えていたが、「業」がそっちの戦闘に集中するために途中で止めたのだと思っていたが」
「怒貪虎さんです! 怒貪虎さんが全部潰して回ってたらしいですよ!」
「なに! 全世界で800万カ所だぞ!」
「え! そんなにですか!」
「全て出現と同時に閉じている。本当に一人でやられたのか!」
「そうですよ!」
「分かった……そちらも解析を続ける」
「はい!」
タカさんと聖さんの動きがどんどん良くなっている。
既に8時間も戦い続け、既に「業」はまだ衰えてはいないが全く反撃出来ないようになっていた。
もうすぐ戦闘が終わるだろう。
「はい」
虎白さんが私に言った。
私にもそれはよく分かる。
「業」の《位相反射》は物凄い技だけど、タカさんと聖さんは完璧に抑えている。
タカさんは詳しい話はしなかったけど、量子力学の応用だとは言っていた。
タカさんは「花岡」の解析の中で、量子力学との関連で考えていた。
「花岡」はルーとハーが最初に解析をして、例えば「虚震花」が反物質での現象だと見抜いた。
タカさんは双子に量子力学の説明をしていって、その結果私たちの「花岡」が大発展した。
タカさんは本当にいろいろなことを知っていて、量子力学のことも随分と研究していたようだ。
だから双子は量子力学を散々学び、私と皇紀も結構学んだ。
「業」の《位相反射》は多分、「観測者問題」と繋がっていると思う。
それは「2スリット実験」で知られるもので、二つのスリットに光を照射する実験だ。
光は波動なので、両方のスリットを通った光は、反対の壁に濃淡の模様を描く。
スリットを通った光が、互いの波の干渉現象が起きて、重なる部分が濃く、打ち消し合った部分が薄くなるのだ。
しかし、同時に光は粒子でもあるので、スリットに光の粒子が通った時に観測する装置を付けると、光はなんと二カ所にだけぶつかるのだ。
要は粒子であれば直進して、同じ個所にだけぶつかるためだ。
つまり、観測すると、光は違った現象に分かれてしまうのだ!
更に、スリットの片側にだけ観測装置を付けた場合、光は片側の決まった場所にだけぶつかるのだぁ!!
観測するかしないか、また観測のやり方で、量子は違う現象を見せることになる。
「業」の《位相反射》は、自分への攻撃を観測することによって「業」の意図通りの現象を起こしているものだと思う。
物凄く難解な能力だけど、量子の世界は本当に不思議だ。
そして双子が持って来たオーデンの詩『見る前に跳べ』は、量子力学の祖マックス・プランクの「黒体放射」を思い出す。
エネルギーは古典物理学の連続的なものではなく、飛び飛びなのだ。
この宇宙では取り出せないエネルギーがある。
もしかしたら、「無意識の攻撃」というのは、その飛び飛びに関係しているのかもしれない。
私には分からない難解な問題だ。
そして、タカさんと聖さんはその難解な《位相反射》をもう無効化しつつある!
タカさんはあの頭の良さで理論的に解析してるんだろうけど、聖さんは本能的にだ。
厳しい戦場を渡り歩く中で培った特殊な感覚だろう。
私は聖さんが頭の悪い人だとは思っていないけど、知識が無いのは確かだ。
でも、真の頭の良さで、聖さんは感覚的に全てのことを平らげているのだと思う。
やっぱり戦闘に関しては相当積み上げて来た人なのだ。
戦場で聖さんほどスゴイ人を私は他に知らない。
虎白さんたち石神家本家の剣聖たちも物凄いが、実戦、しかも絶体絶命の戦場の経験では聖さんの方が圧倒的な数をこなしている。
石神家の方々は元の積み上げで獲得している戦闘力が高いために、却って戦場での経験が積めないのではないだろうか。
聖さんはそれが無かった分、積み上げたものが遙かに高い。
そしてタカさんは超天才だ。
自分では「努力型」だと言っているが、私はタカさんの天才性を疑ったことはない。
タカさんは私を「超天才」と言ってくれるが、タカさんほどではない。
それにタカさんがとんでもない使命を持っている人なのを知っている。
多分、記憶には無いようだけど、前世までの壮絶な経験がタカさんの中には積み上がっているのだ。
「業」は相当強力な妖魔の力を得たらしいが、それが逆に戦場での積み上げを妨げているのではないだろうか。
若い頃の「花岡」や他の武術を得ようとしていた時以降から、「業」は厳しい鍛錬をしていない。
あまりにも巨大な力を得て、「業」はそこからほとんと積み上げていないのだと思う。
タカさんは潰されそうな悲しみを経ながら、必死で今日まで積み上げて来た人だ。
虎影さんを喪い、保奈美さんを喪い、奈津江さんを喪った。
その他にも多くの愛する人間を喪いながら、タカさんは戦い続けて来た。
今は多くの人間から慕われているけど、みんなタカさんのそういう所に魅かれているのだと思う。
誰よりも優しく、強くならなければならなかった人。
「運命なんだ……」
「なんだ、亜紀?」
私の呟きを虎白さんが聞いていた。
「いえ、タカさんはこういう運命なんだなって思って」
「お前、何言ってんだ? 当たり前だろう」
「はい!」
そうだ、ここにいるみんなは分かっているのだ。
「おい、俺たちはよ、怒貪虎さんから言われて散々高虎の面倒を看て来たんだぞ。あいつ、しょっちゅう死に掛けてよ、大変だったぜぇ」
「そうですね」
そのお話は幾つも聞いている。
タカさんはあまりに大きな運命のため、普通の人間の生の中に留まるのが大変だったのだ。
「ほんとによ、何度も焦ったぜ。あいつ自身も死にそうな事件にいつも突っ込んでいくしよ!」
「はい」
虎白さんは言いながら笑っていた。
私にも分かる。
その「大変さ」が、虎白さんの大切な思い出になっているのだ。
「高虎は本当に強くなった。でかい人間になったよ」
「はい」
「業」は何度も身体を作り替え、タカさんと聖さんの攻撃を凌ごうとしている。
でももう、攻撃が出来なくなっている。
「ああ、怒貪虎さんが来たぜ」
「え?」
私には何も感じられなかった。
「世界中で《百鬼夜行》が起きてたんだ。それを全部潰して来た」
「え! そんな報告は無いですよ!」
「怒貪虎さんが瞬殺したからな。そのうちにアラスカも捉えるだろうよ」
「!」
私はすぐに「ヘッジホッグ」に問い合わせた。
もう幾つかは掴んでいたようだけど、「ゲート」の現出と同時に閉じていた現象があったようだ。
《オペレーション・オロチ》の方で混乱していたために、そっちはまだ把握しきっていなかったようだった。
「世界中に《百鬼夜行》が起きたそうですよ!」
「なんだと! ああ、「ゲート」反応は捉えていたが、「業」がそっちの戦闘に集中するために途中で止めたのだと思っていたが」
「怒貪虎さんです! 怒貪虎さんが全部潰して回ってたらしいですよ!」
「なに! 全世界で800万カ所だぞ!」
「え! そんなにですか!」
「全て出現と同時に閉じている。本当に一人でやられたのか!」
「そうですよ!」
「分かった……そちらも解析を続ける」
「はい!」
タカさんと聖さんの動きがどんどん良くなっている。
既に8時間も戦い続け、既に「業」はまだ衰えてはいないが全く反撃出来ないようになっていた。
もうすぐ戦闘が終わるだろう。
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