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《オペレーション・ゴルディアス》 XⅨ : 決戦 3
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傷の再生が追いつかなくなると、「業」は別の妖魔に変身するようだった。
「業」の持つそれなりに強い妖魔の身体らしいが、俺と聖にとっては何のことも無い。
ただ、戦闘は継続していた。
「業」は相変わらず変身を繰り返しているが、もう俺たちへの攻撃は出せずにいた。
俺と聖の攻撃が、「業」の攻撃の兆しを潰しているためだ。
《位相反射》も同じく兆しで使えなくしている。
次第に「業」の顔が強張って来る。
「どうした、俺たちの攻撃は効いてないんだろう?」
俺の剣戟は確実に「業」を苛んで行く。
《位相反射》を使う間もないほどの高速攻撃だ。
先ほどの斬の攻撃で、どれほどの速度で斬ればいいのかを悟っていた。
一定以上の高速の攻撃は、《位相反射》を使えない。
そして聖が「聖光」で「業」の回避する未来位置に弾を撃って行く。
聖ならではの極限の銃技だ。
流石は聖だった。
俺と聖は打ち合わせも何も無く、そういうことが出来るのだ。
「業」は再生を繰り返しながら、痛みで顔を歪めて行く。
斬は身体が引き千切れ臓物を零しながらも、一切の表情を変えなかったが、こいつはそうではない。
他者を痛めつけ蹂躙することばかりやって来たので、自分の痛みを知らない。
それが「邪悪」ということなのだが。
「業」には罪の意識は無いのだ。
だからこいつは奪い取るばかりで、自分が奪われることを知らない。
「弱いな、お前は」
「石神ぃ!」
「おう!」
《残月光》
俺は「虎王」の剣技を使った。
「業」の頭頂から身体が真っ二つに割れて行く。
虎白さんたちの歓声が聞こえ、虎蘭が《戦神舞》を始めた。
「業」は両腕を抱くようにして身体を支え、また再生した。
やはりしぶとい。
だが俺も《位相反射》の理(ことわり)が分かって来た。
「業」は空間を投影し、相手に直結しているようだ。
量子物理学で言うエネルギーの不連続性で自分への攻撃を無の狭間に導き、相手へ向かわせる。
しかしそれは相手の攻撃を受ける部分になる。
だから「業」が認識しない攻撃には空間の直結が出来ないのだ。
そして「虎王」は全てを斬る。
俺がそう認識すれば、空間も何も関係ない。
この世の理すら斬る究極の剣なのだ。
《絶十界》
「業」の身体を今度は天地左右に分割する。
「業」は必死で身体を繋げようとするが、断面が激しく燃え上がった。
「業」が叫ぶ。
俺は「虎王」を鞘に納めた。
《天人五衰》
「花岡」の技だった。
俺が「業」との決戦のために編み出した技だ。
「業」の肉体が崩壊していく。
両足が崩れ、胴体が地面に落ちる。
下腹部が膨張し破裂する。
脊髄が飛び出し、反転して頭部に裏返る。
両腕が破砕し、五指が地面で溶解する。
胸部が爆散し、頭が転がり俺を向いた。
「石神……」
まだ「業」の意識があった。
だが、長くはもたない。
「お前の負けだ、「業」」
「そうか」
「業」の唇がつり上がり、嗤った。
「まだ終わってはいない。《ニルヴァーナ》は世界を覆う」
「無駄だ。世界各地の《ニルヴァーナ》の噴出は、もう終息に向かっている」
「あれはまだほんの一部だ」
「なんだと?」
「俺の妖魔が幾らいると思っているんだ?」
「お前、全部の妖魔に《ニルヴァーナ》を仕込んだのか!」
「そうだ。お前の負けだ。この世界はもうすぐ終わる」
「業」は俺の想定の更に上を行っていた。
だが
「それでも無駄だ。《ニルヴァーナ》のワクチンがある」
「業」が不敵に笑った。
「《万能薬》は制限がある。この世界では限られた数しか生成出来ない」
「あ、何言ってんだ? 俺たちはそんなものは創ってねぇ。ワクチンだよ!」
「業」の顔が歪んだ。
「世界中の人間に配れるのか?」
「そうだよ。だから俺は最終決戦を挑んだ」
「バカな! 数十億もの人間のワクチンをお前は用意したというのか!」
「そうだと言っているだろう。お前は負けたんだぜぇ!」
蓮花が「Ωワクチン」を用意した。
双子が全面的に協力し、膨大な材料と生産工場をフル稼働させたのだ。
皮肉にも「業」が仕掛けた「北京大空洞」が、それを実現させた。
「またお前に負けたのか……」
「業」の両眼が閉じられようとしていた。
「昔のことなんか知らねぇよ。俺はお前が挑んで来るから斃しただけだ」
「お前はいつもそうだ。俺の邪魔をしに現われる」
「そうかよ」
「業」の眼は完全に閉じられた。
「お前はいつも多くの仲間に囲まれている」
「お前は嫌な奴だからな。それでもお前を慕う仲間がいたじゃねぇか」
ミハイルはともかく、宇羅とキリールは少なくとも「業」に心酔していた。
「業」の誘導があったためだが、自分が永遠に滅びる運命を知りながらも最後まで従っていたのだ。
「連れて行かれた」
「なに?」
「眩しく光る者が、宇羅とキリールを連れて行った」
「なんだと!」
「あれはお前の片割れだろう。まあ、俺にはどうでも良いことだ」
「……」
ミハイルはダメだったのだろうが、奈津江が宇羅とキリールを救ったということか。
「業」に対して忠誠を誓ったことが、二人の魂をギリギリで助けたのか。
それは人間的なものだったためだ。
「神までが俺に従ったというのに」
「お前はどこまでも嫌な奴なんだよ」
「お前とは違う、石神」
「そうだ。お前と俺は相反する者だ」
この宇宙では全てに相反するものが存在している。
電子は反電子があり、陽子もそうだ。
男がいて女がいるし、天地があり光と闇がある。
全てが敵対しているわけではないが、電子と反電子はぶつかれば対消滅する。
俺と「業」が戦うのは、そういうことかもしれない。
「業」は邪悪で、まあ俺は善人などではないのだが。
「この宇宙はビッグバンの時には膨大な反電子があった」
「……」
「でもその後に反電子はどんどん少なくなっている。それでも存在はしているがな」
「……」
俺は何を話そうというつもりもなく、「業」に話していた。
もう、こいつの「時」は終わる。
「反対のものがあって、宇宙は創造後に発展していった」
「……」
「それが宇宙の理だ」
「……」
「しかし平等ではない。どちらかが勝って行くことが多い。俺はそれも宇宙の理だと思っている」
「業」は目を閉じかけている。
「お前が常に勝つということを言いたいのか」
「そんなつもりはねぇよ。俺も何度も死に掛けたしな。お前に出会う前からそうだ」
「俺もそうだった」
「なんだと?」
「俺は生まれながらに誰からも愛されず、じじぃは常に俺を殺そうと考えていた」
「……」
今度は俺が黙る番だった。
「まあ、それでも良かったけどな。しかし俺は生き延びた。お前を殺すためにな」
「ああ……」
「業」の目が完全に閉じられた。
「またお前とは戦うのだな」
「俺には分からねぇよ」
「ふん……」
目の前の空間が大きく割れて行った。
高さ3キロもに裂け目は拡がり、奥に暗い場所が見えた。
俺は「業」の頭をそこへ投げ入れた。
しばらく裂け目は口を開いていたが、やがてゆっくりと閉じて行った。
そして目には見えない巨大なものがその空間へ吸い込まれて行った。
聖が俺の隣に飛んで来た。
「トラ、今のはなんだ!」
「あ、知らねぇ。ゴミ回収なんじゃねぇの?」
「おい、トラ!」
本当に分からないが、あれは「業」を迎えに来たのだろう。
「業」が生きているはずもないが、あの暗い場所で「業」は眠り続けるのかもしれない。
いつ目覚めるのかは分からないが、今、この世界での「業」は死んだのだ。
亜紀ちゃんや虎白さんたちが飛んで来た。
虎蘭が俺に抱き着いて大泣きした。
「高虎さん!」
「お前はそればかりだよな」
「高虎さん!」
虎白さんが笑いながら言った。
「おい、終わったな」
「多分。まだ残存勢力はあるでしょうが」
「そうだな。じゃあ、俺らは帰るわ」
石神家の剣聖たちが整列していた。
「石神家当主! 石神高虎様に礼!」
虎白さんの号令で全員が頭を下げた。
「御苦労だった。また呼んだら来てくれ」
『はい!』
全員が飛び去った。
それだけの別れだった。
とんでもない死線を潜り、それを何度でも繰り返す人間たち。
これからも石神家は鍛錬を続けるのだろう。
虎蘭は残っていた。
「お前はどうすんだ?」
「私は高虎さんの傍に」
「そうかよ」
亜紀ちゃんが笑っていた。
「タカさん、これで家に帰れますね!」
「まあ、もうしばらくしたらな」
「はい!」
俺は意識を喪った。
二人の泣き叫ぶ絶叫が聞こえた。
俺は終わったのだと思った。
眩い光に囲まれ、抱かれた。
「高虎」
「ああ、やっと会えたな」
「業」の持つそれなりに強い妖魔の身体らしいが、俺と聖にとっては何のことも無い。
ただ、戦闘は継続していた。
「業」は相変わらず変身を繰り返しているが、もう俺たちへの攻撃は出せずにいた。
俺と聖の攻撃が、「業」の攻撃の兆しを潰しているためだ。
《位相反射》も同じく兆しで使えなくしている。
次第に「業」の顔が強張って来る。
「どうした、俺たちの攻撃は効いてないんだろう?」
俺の剣戟は確実に「業」を苛んで行く。
《位相反射》を使う間もないほどの高速攻撃だ。
先ほどの斬の攻撃で、どれほどの速度で斬ればいいのかを悟っていた。
一定以上の高速の攻撃は、《位相反射》を使えない。
そして聖が「聖光」で「業」の回避する未来位置に弾を撃って行く。
聖ならではの極限の銃技だ。
流石は聖だった。
俺と聖は打ち合わせも何も無く、そういうことが出来るのだ。
「業」は再生を繰り返しながら、痛みで顔を歪めて行く。
斬は身体が引き千切れ臓物を零しながらも、一切の表情を変えなかったが、こいつはそうではない。
他者を痛めつけ蹂躙することばかりやって来たので、自分の痛みを知らない。
それが「邪悪」ということなのだが。
「業」には罪の意識は無いのだ。
だからこいつは奪い取るばかりで、自分が奪われることを知らない。
「弱いな、お前は」
「石神ぃ!」
「おう!」
《残月光》
俺は「虎王」の剣技を使った。
「業」の頭頂から身体が真っ二つに割れて行く。
虎白さんたちの歓声が聞こえ、虎蘭が《戦神舞》を始めた。
「業」は両腕を抱くようにして身体を支え、また再生した。
やはりしぶとい。
だが俺も《位相反射》の理(ことわり)が分かって来た。
「業」は空間を投影し、相手に直結しているようだ。
量子物理学で言うエネルギーの不連続性で自分への攻撃を無の狭間に導き、相手へ向かわせる。
しかしそれは相手の攻撃を受ける部分になる。
だから「業」が認識しない攻撃には空間の直結が出来ないのだ。
そして「虎王」は全てを斬る。
俺がそう認識すれば、空間も何も関係ない。
この世の理すら斬る究極の剣なのだ。
《絶十界》
「業」の身体を今度は天地左右に分割する。
「業」は必死で身体を繋げようとするが、断面が激しく燃え上がった。
「業」が叫ぶ。
俺は「虎王」を鞘に納めた。
《天人五衰》
「花岡」の技だった。
俺が「業」との決戦のために編み出した技だ。
「業」の肉体が崩壊していく。
両足が崩れ、胴体が地面に落ちる。
下腹部が膨張し破裂する。
脊髄が飛び出し、反転して頭部に裏返る。
両腕が破砕し、五指が地面で溶解する。
胸部が爆散し、頭が転がり俺を向いた。
「石神……」
まだ「業」の意識があった。
だが、長くはもたない。
「お前の負けだ、「業」」
「そうか」
「業」の唇がつり上がり、嗤った。
「まだ終わってはいない。《ニルヴァーナ》は世界を覆う」
「無駄だ。世界各地の《ニルヴァーナ》の噴出は、もう終息に向かっている」
「あれはまだほんの一部だ」
「なんだと?」
「俺の妖魔が幾らいると思っているんだ?」
「お前、全部の妖魔に《ニルヴァーナ》を仕込んだのか!」
「そうだ。お前の負けだ。この世界はもうすぐ終わる」
「業」は俺の想定の更に上を行っていた。
だが
「それでも無駄だ。《ニルヴァーナ》のワクチンがある」
「業」が不敵に笑った。
「《万能薬》は制限がある。この世界では限られた数しか生成出来ない」
「あ、何言ってんだ? 俺たちはそんなものは創ってねぇ。ワクチンだよ!」
「業」の顔が歪んだ。
「世界中の人間に配れるのか?」
「そうだよ。だから俺は最終決戦を挑んだ」
「バカな! 数十億もの人間のワクチンをお前は用意したというのか!」
「そうだと言っているだろう。お前は負けたんだぜぇ!」
蓮花が「Ωワクチン」を用意した。
双子が全面的に協力し、膨大な材料と生産工場をフル稼働させたのだ。
皮肉にも「業」が仕掛けた「北京大空洞」が、それを実現させた。
「またお前に負けたのか……」
「業」の両眼が閉じられようとしていた。
「昔のことなんか知らねぇよ。俺はお前が挑んで来るから斃しただけだ」
「お前はいつもそうだ。俺の邪魔をしに現われる」
「そうかよ」
「業」の眼は完全に閉じられた。
「お前はいつも多くの仲間に囲まれている」
「お前は嫌な奴だからな。それでもお前を慕う仲間がいたじゃねぇか」
ミハイルはともかく、宇羅とキリールは少なくとも「業」に心酔していた。
「業」の誘導があったためだが、自分が永遠に滅びる運命を知りながらも最後まで従っていたのだ。
「連れて行かれた」
「なに?」
「眩しく光る者が、宇羅とキリールを連れて行った」
「なんだと!」
「あれはお前の片割れだろう。まあ、俺にはどうでも良いことだ」
「……」
ミハイルはダメだったのだろうが、奈津江が宇羅とキリールを救ったということか。
「業」に対して忠誠を誓ったことが、二人の魂をギリギリで助けたのか。
それは人間的なものだったためだ。
「神までが俺に従ったというのに」
「お前はどこまでも嫌な奴なんだよ」
「お前とは違う、石神」
「そうだ。お前と俺は相反する者だ」
この宇宙では全てに相反するものが存在している。
電子は反電子があり、陽子もそうだ。
男がいて女がいるし、天地があり光と闇がある。
全てが敵対しているわけではないが、電子と反電子はぶつかれば対消滅する。
俺と「業」が戦うのは、そういうことかもしれない。
「業」は邪悪で、まあ俺は善人などではないのだが。
「この宇宙はビッグバンの時には膨大な反電子があった」
「……」
「でもその後に反電子はどんどん少なくなっている。それでも存在はしているがな」
「……」
俺は何を話そうというつもりもなく、「業」に話していた。
もう、こいつの「時」は終わる。
「反対のものがあって、宇宙は創造後に発展していった」
「……」
「それが宇宙の理だ」
「……」
「しかし平等ではない。どちらかが勝って行くことが多い。俺はそれも宇宙の理だと思っている」
「業」は目を閉じかけている。
「お前が常に勝つということを言いたいのか」
「そんなつもりはねぇよ。俺も何度も死に掛けたしな。お前に出会う前からそうだ」
「俺もそうだった」
「なんだと?」
「俺は生まれながらに誰からも愛されず、じじぃは常に俺を殺そうと考えていた」
「……」
今度は俺が黙る番だった。
「まあ、それでも良かったけどな。しかし俺は生き延びた。お前を殺すためにな」
「ああ……」
「業」の目が完全に閉じられた。
「またお前とは戦うのだな」
「俺には分からねぇよ」
「ふん……」
目の前の空間が大きく割れて行った。
高さ3キロもに裂け目は拡がり、奥に暗い場所が見えた。
俺は「業」の頭をそこへ投げ入れた。
しばらく裂け目は口を開いていたが、やがてゆっくりと閉じて行った。
そして目には見えない巨大なものがその空間へ吸い込まれて行った。
聖が俺の隣に飛んで来た。
「トラ、今のはなんだ!」
「あ、知らねぇ。ゴミ回収なんじゃねぇの?」
「おい、トラ!」
本当に分からないが、あれは「業」を迎えに来たのだろう。
「業」が生きているはずもないが、あの暗い場所で「業」は眠り続けるのかもしれない。
いつ目覚めるのかは分からないが、今、この世界での「業」は死んだのだ。
亜紀ちゃんや虎白さんたちが飛んで来た。
虎蘭が俺に抱き着いて大泣きした。
「高虎さん!」
「お前はそればかりだよな」
「高虎さん!」
虎白さんが笑いながら言った。
「おい、終わったな」
「多分。まだ残存勢力はあるでしょうが」
「そうだな。じゃあ、俺らは帰るわ」
石神家の剣聖たちが整列していた。
「石神家当主! 石神高虎様に礼!」
虎白さんの号令で全員が頭を下げた。
「御苦労だった。また呼んだら来てくれ」
『はい!』
全員が飛び去った。
それだけの別れだった。
とんでもない死線を潜り、それを何度でも繰り返す人間たち。
これからも石神家は鍛錬を続けるのだろう。
虎蘭は残っていた。
「お前はどうすんだ?」
「私は高虎さんの傍に」
「そうかよ」
亜紀ちゃんが笑っていた。
「タカさん、これで家に帰れますね!」
「まあ、もうしばらくしたらな」
「はい!」
俺は意識を喪った。
二人の泣き叫ぶ絶叫が聞こえた。
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