富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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《オペレーションR》

 タカさんは「業」との決戦の後で倒れて意識を喪った。
 「虎病院」で様々な検査をしたが、全身の代謝が極端に落ちていた。
 大院長先生が毎日必死に「手かざし」をし、柏木さんも祈祷を続けてくれた。
 レジーナ様も来てくれた。
 レジーナ様はまだ起き上がるのも辛そうだった。
 やはり「業」に心臓を潰されたことが、大きな負担だったのだ。

 「美獣、もう行くのか」

 「え!」
 「いつもそうだ。美獣は使命を果たすと自分の世界へ戻ってしまう。美獣のいる場所はここではない故にな」
 「そんなこと!」

 レジーナ様はタカさんを悲しそうに見つめていた。

 「じきに美獣の身体は消える。葬儀も満足に行えないことも多かった。こたびは随分と長くもっているな」
 「……」

 それには理由がある……

 「アキーレ、お前はいつも泣くな」
 「泣いてません!」
 「そうだな。今回は泣かずに見送るか」
 「取り戻します!」

 レジーナ様が私を抱き締めてくれた。

 「よい、もう泣け。わらわも寂しい。此度の「カルマ」はこれまでになく強大だった。わらわもこの様だしな。美獣が行けば、わらわもまた眠りに就く」
 「レジーナ様……」

 レジーナ様が眠っているタカさんの頭を抱き、口づけをした。

 「やすらかに過ごせ、美獣。永劫に愛しておるぞ」
 「……」

 レジーナ様の眼から涙が零れていた。
 レジーナ様は、これまで何度、このようにタカさんと別れて来たのだろうか。




 「大銀河連合」のグランマザーさんが来た。

 「石神様は眠られているのですね」
 「はい。あの決戦の日からずっと」
 「そうですか。ご報告があったのですが」
 「私が代わりに伝えます」

 グランマザーさんが私に向いて微笑んだ。

 「それではお願いします。戦闘の続いていたミレー星系での戦闘が終結しました。敵が突然弱体化し、完全に星域を我々が奪還いたしました」
 「そうですか!」
 「今後も石神様に御協力すべく、この星や星系に私たちの者を残します。遠慮なくお使い下さい」
 「ありがとうございます」

 タカさんの容体は代謝機能が低くなっていたものの、死ぬことは無かった。
 ただ、刺激はよくないだろうとみんなに見舞いを遠慮してもらった。
 ほんの一部の人間だけ。
 響子ちゃん、聖さん、栞さんと子どもたち、六花さんと子どもたち、鷹さん、麗星さんと子どもたち、虎蘭さんと子どもたち、柳さんと子どもたちなどだが、まあ結構多いか。
 特に麗星さんとこ。
 御堂さんはいつでも受け入れ。
 結局毎日誰かは来ていた。
 タカさんの身体に触れないことと、あまり大きな声を出さないこと。
 そしてロボと私、皇紀と風花、ルーとハーは毎日来ている。
 ロボはずっとタカさんと一緒。

 今、何が起きているのかは分かっていた。
 あの時と一緒だ。
 保奈美さんと一ヶ月過ごした時だ。
 タカさんはあの時、20年もの年月を保奈美さんと過ごした。
 だから今回は奈津江さんだろう。
 ただ、奈津江さんは特別過ぎてタカさんが戻って来るのかは分からなかった。

 それでも、私たちには一つの計画があった。


 《オペレーションR(リボーン、リライフ、レグザクション、その他の意味)》


 私たちはずっとそれに備えていた。
 「石神家子ども会議」はそのための集まりだった。
 一次は柳さんにも協力してもらっていたが、今は私たち「石神家オリジン」でやっている。
 タカさんを復活させるための計画だった。
 ある特別な空間に私たちの溜めて来たエネルギーを使ってタカさんをこの世に留め、何とか呼び戻そうとしている。
 タカさんがいつかどこかへ行ってしまうことを、私たちは予見していた。
 タカさんを復活させるために、エネルギーを溜めて来たのだ。




 「ねぇ、ルー。そろそろいいんじゃない?」
 「まだ無理っぽい」
 「タカさん、奈津江さんと一緒だからなー」
 「そうだけどさ。前はタカさん、一ヶ月で20年も保奈美さんと過ごしたじゃん。もうそろそろ」
 「奈津江さんだからねー」
 「呼んでるんだけど、まだ無理っぽいね」
 「あんたたちぃー!」

 私たちが溜め込んだ生体エネルギーが、タカさんのエネルギー総量には全然届かないことは分かっていた。
 でも、タカさんはいろんな意味で特別だった。
 光の大天使様の庇護があり、幾度もいろんな存在の助けでタカさんは救われて来た。
 だから、私たちのエネルギーといろいろな奇跡が重なればタカさんを復活させることが出来るかも知れない。
 《オペレーションR》はそういう思いから始まった計画だった。

 最初はルーとハーの特殊能力からの推論だった。
 死者との交流を通して、人間の生命に関する一つの仮説を構築したのだ。
 私たちはタカさんを喪いたくなかった。
 まさか世界最終戦争に突入するとまでは当時は思わなかったが、タカさんを愛する気持ちは1ミリも変わっていない。
 他の人よりも多く食事を摂っていたのは、全て《供物》だったのだ。
 そのエネルギーは私たちの「愛情空間(そう呼んでる)」に貯められ、タカさんに万一のことがあったらそれを使うつもりだったのだ。
 途中で、タカさんがとんでもないエネルギー総量であることが分かり、計画が破綻しかけたが、私たち以外にもタカさんを救う力があることを知って私たちなりに頑張って来たのだ。
 もちろん一番の頼りはロボ。

 「ロボぉー、そろそろじゃないかなー」
 「にゃ」

 毎日ロボに頼んでいるが、まだロボは何もしてくれない。
 でもずっとタカさんの傍にいるので、タカさんがダメなのではないことは分かっていた。










 1年が過ぎた。
 また「石神家オリジン」で集まってる。
 ロボに最高のマグロの刺身を出して頼んだ。

 「ロボぉー、もう240年は向こうで暮らしてるよー」
 「にゃ」

 ロボが起き上がって爪を伸ばした。


 ぷす


 「おい、どうして呼び戻した!」
 「「「「タカさん!」」」」
 「ばかやろう! 奈津江と毎日楽しく……」
 「「「「タカさーん!」」」」

 みんなでタカさんに抱き着いた。

 「待て! 俺の文句を聞けぇ!」
 「タカさん、帰りましょう!」
 「おととい、掃除しといた!」
 「布団も干しましたよ」
 「すぐ「虎温泉」用意する!」

 「おい!」

 「「「「タカさーん!」」」」
 「とにかく状況を聞かせろ!」

 みんなでタカさんが倒れてからのことを話した。
 一遍に私たちがいろんなことを話すので、タカさんが度々怒った。
 みんなで泣きながら、笑いながらとにかく話した。
 随分と長いこと話した。
 奈津江さんと離されたタカさんは大分不機嫌だったが、私たちは一生懸命に話した。

















 タカさんが大笑いしていた。
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みんなの感想(61件)

ミーチャンママ
2025.02.03 ミーチャンママ

いやー、年明けからまだ休みのない私ですが、久々に大笑いしました。うちの家はもうしめてしまった割烹旅館と別に、祖父の代からタクシー会社もやっていまして…。事故報告書を読んでいると、事故原因の欄に「突然電信柱が出てきてぶつかってきた」と書いてあり、「ふざけんなーっ!!」と絶叫しました。運転手不足の折、ドキドキしながら72歳を雇ったところ、右折で事故。ドライブレコーダーを見ながら「何で赤で右折するんだ!!」「私が見たときは確かに青でした」「お前が遠くに見た青は右折するときには立派に赤だ!!ドライブレコーダーにそのまま映ってるだろ!!赤も青も分からない奴なんか車に乗せられるかーっっっ!!」とカンカンに怒って叫んでいる私に、後ろにまだいた警察官2人が高速で激しく頷き、怯えたよう帰っていきました。で、更新のお知らせが。読みながら声を出して笑っていると「事故続きで、ついにおかしくなったんでは?」と社員にも怯えられました。お陰様で気分も変わったので、また頑張りまーす。

2025.02.04 青夜

『ダーティ玻璃』シリーズ、私も書いていて楽しいです。
別にウ〇コが好きなわけでもないのですが。
ああ、事故といえば、昨年の11月に知人がフェラーリ・スーパーファストで事故を起こしました。
首都高での軽トラとの接触事故でフロントが少し削れた程度なのですが。
相手は後ろから突っ込んで来た、こちらは急に車線変更をして来たと。
言い分は違うのでドラレコで確認しようとしたのですが、映ってない。
あれって、定期的に「リフレッシュ」(初期化でしょうか?)しないと不良セクタが溜まってSDカードに記録しなくなるとか。
マニュアルにちゃんと書いてありました。
もちろん保険会社が修理代を出すのですが、修理費が980万円とか……
ああいう高級車は塗装の上に更に傷を防ぐコーティングをしており、それを全体でやり直す費用だけで500万円以上するそうです。
保険会社の人も「初めてです」と言っていたとか。
コワイですねぇ。

解除
ミーチャンママ
2025.02.03 ミーチャンママ

いやー、年明けからまだ休みのない私ですが、久々に大笑いしました。うちの家はもうしめてしまった割烹旅館と別に、祖父の代からタクシー会社もやっていまして…。事故報告書を読んでいると、事故原因の欄に「突然電信柱が出てきてぶつかってきた」と書いてあり、「ふざけんなーっ!!」と絶叫しました。運転手不足の折、ドキドキしながら72歳を雇ったところ、右折で事故。ドライブレコーダーを見ながら「何で赤で右折するんだ!!」「私が見たときは確かに青でした」「お前が遠くに見た青は右折するときには立派に赤だ!!ドライブレコーダーにそのまま映ってるだろ!!赤も青も分からない奴なんか車に乗せられるかーっっっ!!」とカンカンに怒って叫んでいる私に、後ろにまだいた警察官2人が高速で激しく頷き、怯えたよう帰っていきました。で、更新のお知らせが。読みながら声を出して笑っていると「事故続きで、ついにおかしくなったんでは?」と社員にも怯えられました。お陰様で気分も変わったので、また頑張りまーす。

2025.02.04 青夜

いつもありがとうございます!
事故、大変でしたね。
私もよくタクシーを使うのですが、ちょっと足が悪く、毎日帰りは大隊タクシーです。
先日、40年運転しているという運転手さんが、これまで一番怖かったことという体験を聞かせてくれました。
新宿でいかつい男性二人を拾って「〇〇埋め立て地へ」と。
そうしたら一人が後ろへ、もう一人は助手席へと座ります。
明らかにおかしい。
誰もいない、街灯も無い埋め立て地に行けというのはどういうことか?
当時は車載カメラも無い時代で、必死で無線で話す振りをして「今、こういうお客さんを○○埋め立て地へ運んでます」とか話していると、「もういい」と途中で降りて行ったそうです。
「幽霊なんて怖くない。人間ですよ、おっかねぇのは」と語っていました。
タクシーの運転手さんも大変ですね。

解除
ミーチャンママ
2025.01.04 ミーチャンママ

 ボリス・サヴィンコフですかぁ。確か「蒼い馬」とかありましたね。ロシアのように凍てつく大地とか只管砂漠の続く国々とか、人間の抗い難い厳しい自然の中でしか一神教や哲学思考は育たないのでしょうね。日本なんて待ってれば春が来るし、水も土も豊かで自然の恵みを享受できる国ではメシアを求める必要がない。救いではなく、多方面に御利益を願う宗教しか育たない。思想にも甘さが残るのは仕方がないかもしれません。
 ロシアの美少女を頭に描きながら、六花ちゃんの美貌を想像していますが、殆どのロシア女性が樽のような体型になるのは何故なんでしょう。あまり太りそうなもの食べてなさそうですけど…。 
 年末韓国料理を食べに行き、カンジャンセウ(生エビの醤油漬け)にハマってしまいました。そこは元割烹旅館の娘であるワタクシ、料理の再現率はかなり高いので、せっせと量産しては冷蔵庫に常備してます。お店で見つけたら食べてみて下さい。

2025.01.05 青夜

ロシアの思想はスゴイですよね。
仰るようなことは私も以前から感じています。
中学の時にチェーホフの『桜の園』を読んで。「この物語は大地が主役なのだ」と感じたことが最初です。
過酷な土地に住むことで人間の中に鋭利な何かが生まれる。
その過酷な大地を受け入れて愛して来た人間の中に芽生えて行く。
共産主義は当時の世界中のエリートを席巻しましたが、ロシアは一層にそれを求めたと考えています。

日本画の安田靫彦が好きなのですが、あの人も日本橋の料亭の生まれですね!
ミーチャンママさんもきっと物凄い才能がおありなのでしょう!
私も料理が好きなのですが、辛いのが苦手で韓国料理はあまり近づいて来ませんでした。
カンジャンセウですか、今度見掛けたら食べて見ます。友人に韓国人もいますし。
ああ、井上総長の「アヒル係」のエピソード(1291話「奈津江 XⅧ」)。
手打ちで焼き肉屋に行って相手がアヒルを食べるのを見て席を立ったというエピソード。
あれ、実話です(爆)。
こないだタクシーで帰って運転手さんが「極悪(亀戸方面の族)」で、うちの総長を知ってたので話が盛り上がりました(笑)。
私、ろくな生き方をしてません(笑)。

解除

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