富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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聖、帰国。

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 翌朝。
 今日は金曜日だが、全員休みとする。
 俺の方は一江と大森が何とでもするし、子どもたちも問題ない。
 栞と鷹はちゃんと出勤するだろう。
 響子は六花が一緒だ。
 念のため、今日一日は大使館にいる。
 もちろん、無事に片付いたと連絡は入れてある。

 俺はやめておけと言ったが、双子が聖の寝込みを襲うと言った。

 「常在戦場!」
 「一度はボコっておかないとね!」

 そっと客室のドアを開け、中に忍び込んだ。
 いきなり、廊下へ吹っ飛ばされてきた。
 俺が受け止める。
 二人とも失神していた。

 「おう! よく眠れたか?」
 「おう! 最高だぜー!」
 俺は笑って朝食を用意すると言った。
 双子を抱えてリヴィングのソファに座らせると、目を覚まして悔しそうな顔をする。
 亜紀ちゃんが聖のためにハンバーガーを作っている。
 これもやめておけと言ったが、作りたいらしい。

 俺はロボのために、ひき肉をもらい、小さなハンバーグを3つ作った。
 少なめの油で炒める。
 ロボはガツガツと食べた。

 「タカさん、どうでしょうか?」
 亜紀ちゃんが出来たハンバーガーを持って来る。

 「あいつの好みじゃねぇなぁ」
 「そうですか」
 「ハンバーグが良すぎる。バンズとのバランスが悪い。俺が作ろうか?」
 「お願いしていいですか?」
 俺は亜紀ちゃんのものよりも薄く2枚作った。
 チリソースをかけ、アボガドと炒めたタマネギ、レタスを挟む。
 バンズを少し燻製にする。

 「聖を呼んできてくれ」
 「はい!」
 皇紀が起こしに行った。
 普通に連れてくる。

 「ハンバーガーを作ったんだ。味見してくれよ」
 「おう!」
 聖は亜紀ちゃんのから掴んだ。
 挟んだ側面を見ている。

 「なんだ、こりゃ」
 かぶりついた。

 「まっずいなぁ」
 「すいません!」

 俺の作ったものを掴んだ。
 かぶりつく。

 「こっちはうっめぇー! おい、なんだよこれは!」
 亜紀ちゃんが驚いている。
 聖は3口で全部食べた。
 亜紀ちゃんがコーラを持って行くと、ゴクゴクと飲んだ。

 「最高だな!」
 俺は笑ってもう三つほど作ってやる。

 「やっぱ、トラの作ったもんはうめぇな!」
 「そうかよ。もっと喰うなら言ってくれ」
 「お前! なんでそんなに優しいんだ?」
 「お前が大好きだからな」
 「そっか!」
 亜紀ちゃんと皇紀が笑っている。
 双子は睨んでいる。





 みんなも食事をし、コーヒーを飲んだ。

 「トラ」
 「なんだよ」
 「あの機械人形な」
 「ああ」
 「あれは気を付けろよ」
 「そうだな」

 「俺たちはどんな戦場でも戦える」
 「ああ、そうだな」
 「でも、あれは戦場のものじゃねぇ」
 「ああ」
 「掃除機みてぇなもんだ」
 「なるほどな」
 「次はフレシットでもダメかもしれねぇ。とにかくもっと強力な武器が必要だ」
 「用意しておく」
 聖の戦闘センスは最高だ。
 次は必ず撃破するだろう。

 「おし! じゃあ帰るか!」
 「おい、ちょっとはゆっくりしろよ。久しぶりにいろいろ話そう」
 「もう十分に話したよ。お前は相変わらず面白いことやってるしな。俺も楽しんだ」
 「そうか」





 「ああ、俺、結婚するかも」

 「「「「「なにぃ!」」」」」
 俺たちは驚いた。

 「こないだトラに呼ばれたじゃん」
 「ああ!」
 「ハワイでメイドを雇ってさ」
 「おう!」
 「そいつ」
 分からねぇ。

 「相手は何歳だよ?」
 「あ? 知らねぇけど30前後じゃね?」
 「お前、ババァ趣味だったじゃねぇか!」
 「そうだけどよ。あいつ、美味いハンバーガーを作るんだよ」
 「それで?」
 「あとセックスの相性がいいかな」

 「十分だな!」
 「おう!」

 写真を見せろと言うと、スマホの画面を開いた。

 「すっげぇ美人じゃねぇか!」
 「そうか? まあ女は顔じゃねぇけど」
 噛み合わない。
 しかし、アメリカ的な美人だ。
 プレイボーイのグラビアが飾れる。
 金髪で胸が大きい。
 子どもたちも見て驚いている。

 「一緒にいれば、いずれ俺好みにもなるしな」
 「そうだな」
 「お前も結婚しろよ」
 「俺はいいよ」
 「傍で世話焼いてくれるのっていいもんだぞ?」
 亜紀ちゃんが立ち上がった。
 自分を指さしている。
 笑った。

 「ああ、そうだな」
 亜紀ちゃんも笑った。
 聖はスマホでチケットを取った。
 俺は羽田まで送ることにした。




 「なんだよ、この車は!」
 アヴェンタドールだ。
 
 「カッチョイイだろう?」
 「バカみてぇ」
 「あんだと!」
 「お前もそろそろ落ち着けよ」
 「!」
 まあ、結婚祝いだ。
 今日は喧嘩しない。
 聖は小さなボストンバッグを抱えて乗り込んだ。

 「お前、そん中何が入ってんだよ?」
 「ああ、聖書とテンガとDVD」
 「聖書?」
 「そうだよ。お前も読めよな」
 「読んだよ」
 「まじか!」
 「おう」

 聖の変化に驚いた。

 「アンジーが勧めるから読んでるんだ」
 「へぇ」
 彼女はアンジェラか。

 「よく分かんねぇけどさ。毎日読んでる」
 「そ、そうか」
 夕べ、俺に教会へ行こうと言ったのは、そのせいか。
 大分アンジーに惚れているらしい。

 



 空港で、また出発ロビーで別れようとした。
 聖が手荷物検査を受けていた。
 俺は何げなく見ていた。
 最後の背中に声を掛けようと思っていた。

 「ウエェーー!」

 検査員が叫んだ。
 あのバカはガンとか入れてたか!
 俺は不測の事態に備えた。
 何かあれば全員ぶちのめして、聖と逃げ出すつもりだ。

 検査員が顔をしかめて「テンガ」を摘まみ出した。
 中からドロリと白いものが零れる。

 「あ、洗ってなかった!」
 「!」
 「おい、トラ! これ持ち帰ってくれよ!」
 聖が俺に向かって言った。

 「悪いけど、持ち帰って!」

 



 俺はダッシュで逃げた。 
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