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早乙女家 出産祝い
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11月の第二週の土曜日。
先週、早乙女の子どもを見に行ったが、早乙女が週末に出産祝いに来てくれと言った。
俺はもっと落ち着いてからにしろと言ったが、二人がどうしてもやりたいと言う。
じゃあ、うちでやろうと言うと、早乙女の家に来てくれと言った。
「お前なぁ。雪野さんは全然動けないだろう」
「何とかするよ! どうしてもうちでやりたいんだ」
「うーん」
気持ちは分からないでもないが、やはり無理がある。
「じゃあ、行ってやるけど、料理はうちに任せてくれ」
「いや、それはダメだよ」
「お前が無理を言ってんだ! いいからこっちに任せろ! とにかく、無理は絶対に禁止な? 雪野さんと子どもがちょっとでも体調が悪かったら、またあらためてだ」
「分かった、申し訳ない」
「いいって。お前たちの祝いだ。俺たちも嬉しいよ」
「ありがとう! 石神!」
まあ、本当に嬉しい。
雪野さんは初産だったが、非常に分娩も軽く、産後の経過もいい。
だから早くお祝いをしたいのだろうが。
「雪野さんと子どもは顔出しだけな。まあ、雪野さんはもうちょっといてもいいけどな」
「分かった」
「いいか、絶対に無理はダメだぞ!」
「ああ、分かった。本当にありがとう」
士王は特に何もしてねぇんだが。
まあいい。
俺は亜紀ちゃんを呼んで、メニューの打ち合わせなどをした。
そうして、俺は第二週の土曜日に子どもたちを連れて早乙女の家に行く予定を組んだ。
「タカさん! 鯛が焼けましたけど、冷めちゃってもいいんですか?」
「構わない。祝いの席ではそういうものだ。ああ他の料理もそうだが、早乙女の家で温めてもいいしな」
「なるほど! じゃあ、ホタテに掛かりますね」
「おう!」
朝から準備で大変だ。
何でうちでこんなに苦労するのか分からん。
早乙女は手伝いにも来ない。
鯛の焼き物。
伊勢海老のテルミドール。
ホタテの甘辛煮。
ローストビーフ。
それらをメインに、フォアグラやキャビア、ウニ、イクラ、などの高級食材、それに里芋や昆布、黒豆などの祝いの食材。
赤飯も用意する。
ロボがいい匂いなのでしょっちゅう鳴きながら寄って来る。
柳が「ロボ当番」になり、何か食べさせる。
全員で掛かって、昼時になった。
亜紀ちゃんがタイミングをみて昼食を作る。
今日はほうとう鍋だ。
自分の担当のきりのいい時に、それぞれが食べる。
俺の分を亜紀ちゃんが持って来る。
「タカさん、私が引き継ぎますから、ちょっと食べておいて下さい」
「おお、悪いな」
俺は食べながら、早乙女に電話をした。
「おい、雪野さんと子どもは大丈夫か?」
「ああ、今一緒に食事をしてるんだ」
「そうか。こっちは大変で飯喰う暇もねぇ」
「え!」
「朝から全員で取り掛かってよ。今、ようやく交代で喰ってるんだ。素うどんだけどな!」
「すぐに行くよ!」
早乙女が慌てていた。
「いいよ。この後で一回運ぶからな。そっちで受け取ってくれ」
「わ、分かった! 悪かった!」
「おう!」
子どもたちが笑っていた。
ハマーにワゴンを積む。
料理の皿にはラップを掛けている。
早乙女が玄関で待っていた。
俺と柳が気を付けながらワゴンを降ろし、三人で引いていく。
「こんなに豪華なものを」
「お前が作らせたんだろう!」
「いや、申し訳ない」
豪奢な通路を進む。
三人が並んで進める。
奥のエレベーターに着いた。
「おい?」
「なんだ、石神」
「この柱って、手が付いてたか?」
「え?」
小さな、50センチほどの子どものような手があった。
「あれ? どうだったかな」
「お前! ちゃんと見てろよ!」
「ああ。無かったと思う」
「そうだよな!」
なんなんだ。
俺は折角の祝いなので、それ以上は追及しなかった。
雪野さんを怖がらせたくない。
3階の居住スペースで、雪野さんが待っていた。
「こら! 寝てなきゃダメでしょう!」
「ウフフフ、すいません」
俺はソファに座っているように言い、三人で3階の本格リヴィング(100畳)に運んだ。
俺と柳で20人が掛けられるテーブルを運び、椅子も用意した。
壁際に折り畳みテーブルを5台出し、白布を掛けて運んだ料理を並べて行く。
早乙女が俺たちを見て手伝い始める。
「白布は前を長めに足らせ! そうすれば壁際の下がりが隠れる!」
「なるほど!」
俺と柳に指示されながら、手伝ってくれた。
「じゃあ、また後でまた来るからな!」
「ああ、俺も行くよ」
「お前は邪魔だ!」
「す、すまん!」
二回目の運搬で、邪魔なロボを一緒に連れて来た。
早乙女と雪野さんにロボを預ける。
4時頃にようやく終わり、俺たちはコーヒーを飲んで少し寛いだ。
「大変でしたねー」
「ちょっとハリキリ過ぎたか」
「アハハハハ!」
亜紀ちゃんと完成を喜んだ。
他の子どもたちも満足そうに笑っている。
「そう言えば、こんなに豪華な食事を頑張って作ったのってありませんよね?」
「前に鷹の指揮でお節を作ったけどなぁ」
「あれは一江さんとか大森さんが」
「そうだよな」
「うちの中だけで作ったのは初めてですよ!」
「うちの祝いでもねぇのにな!」
「アハハハハ!」
まあいい。
俺たちは最後のワゴンを積み、早乙女の家に向かった。
俺と亜紀ちゃんが車に乗り、あとは全員で歩いた。
すぐ近くだ。
一応、みんなちょっといい服に着替えた。
俺と皇紀はスーツだが、他の女性陣はみんなオートクチュールのドレスだ。
こういう機会じゃないと、なかなか着れない。
みんなで料理を運び上げ、温めたりした。
雪野さんがまた手伝いそうになるので、俺が怒って座らせた。
まだ「怜花」はいない。
亜紀ちゃんがテーブルに飲み物を並べて行く。
俺と早乙女、亜紀ちゃんと柳はクリュッグのロゼ。
雪野さんと他の子どもたちはノンアルコールのスパークリング・ワインだ。
栞は止めると隠れて飲む女なので、量を制限して飲ませたが、母乳を与える間はアルコールは飲まない方がいい。
栞も分かっているので、味見程度だった。
テーブルに鯛以外の料理は並べない。
着席ビュッフェのスタイルにした。
食器も全てうちで用意した。
本当にどこの祝いなのか。
乾杯の音頭は早乙女にやらせた。
「今日は皆さん、本当にありがとう。大いに食べて飲んで下さい」
「うちが用意したけどな」
みんなが笑った。
「ありがとう、石神! 亜紀ちゃん、皇紀くん、ルーちゃん、ハーちゃん、柳さん! かんぱーい!」
「「「「「「かんぱーい!」」」」」」
楽しい宴が始まった。
先週、早乙女の子どもを見に行ったが、早乙女が週末に出産祝いに来てくれと言った。
俺はもっと落ち着いてからにしろと言ったが、二人がどうしてもやりたいと言う。
じゃあ、うちでやろうと言うと、早乙女の家に来てくれと言った。
「お前なぁ。雪野さんは全然動けないだろう」
「何とかするよ! どうしてもうちでやりたいんだ」
「うーん」
気持ちは分からないでもないが、やはり無理がある。
「じゃあ、行ってやるけど、料理はうちに任せてくれ」
「いや、それはダメだよ」
「お前が無理を言ってんだ! いいからこっちに任せろ! とにかく、無理は絶対に禁止な? 雪野さんと子どもがちょっとでも体調が悪かったら、またあらためてだ」
「分かった、申し訳ない」
「いいって。お前たちの祝いだ。俺たちも嬉しいよ」
「ありがとう! 石神!」
まあ、本当に嬉しい。
雪野さんは初産だったが、非常に分娩も軽く、産後の経過もいい。
だから早くお祝いをしたいのだろうが。
「雪野さんと子どもは顔出しだけな。まあ、雪野さんはもうちょっといてもいいけどな」
「分かった」
「いいか、絶対に無理はダメだぞ!」
「ああ、分かった。本当にありがとう」
士王は特に何もしてねぇんだが。
まあいい。
俺は亜紀ちゃんを呼んで、メニューの打ち合わせなどをした。
そうして、俺は第二週の土曜日に子どもたちを連れて早乙女の家に行く予定を組んだ。
「タカさん! 鯛が焼けましたけど、冷めちゃってもいいんですか?」
「構わない。祝いの席ではそういうものだ。ああ他の料理もそうだが、早乙女の家で温めてもいいしな」
「なるほど! じゃあ、ホタテに掛かりますね」
「おう!」
朝から準備で大変だ。
何でうちでこんなに苦労するのか分からん。
早乙女は手伝いにも来ない。
鯛の焼き物。
伊勢海老のテルミドール。
ホタテの甘辛煮。
ローストビーフ。
それらをメインに、フォアグラやキャビア、ウニ、イクラ、などの高級食材、それに里芋や昆布、黒豆などの祝いの食材。
赤飯も用意する。
ロボがいい匂いなのでしょっちゅう鳴きながら寄って来る。
柳が「ロボ当番」になり、何か食べさせる。
全員で掛かって、昼時になった。
亜紀ちゃんがタイミングをみて昼食を作る。
今日はほうとう鍋だ。
自分の担当のきりのいい時に、それぞれが食べる。
俺の分を亜紀ちゃんが持って来る。
「タカさん、私が引き継ぎますから、ちょっと食べておいて下さい」
「おお、悪いな」
俺は食べながら、早乙女に電話をした。
「おい、雪野さんと子どもは大丈夫か?」
「ああ、今一緒に食事をしてるんだ」
「そうか。こっちは大変で飯喰う暇もねぇ」
「え!」
「朝から全員で取り掛かってよ。今、ようやく交代で喰ってるんだ。素うどんだけどな!」
「すぐに行くよ!」
早乙女が慌てていた。
「いいよ。この後で一回運ぶからな。そっちで受け取ってくれ」
「わ、分かった! 悪かった!」
「おう!」
子どもたちが笑っていた。
ハマーにワゴンを積む。
料理の皿にはラップを掛けている。
早乙女が玄関で待っていた。
俺と柳が気を付けながらワゴンを降ろし、三人で引いていく。
「こんなに豪華なものを」
「お前が作らせたんだろう!」
「いや、申し訳ない」
豪奢な通路を進む。
三人が並んで進める。
奥のエレベーターに着いた。
「おい?」
「なんだ、石神」
「この柱って、手が付いてたか?」
「え?」
小さな、50センチほどの子どものような手があった。
「あれ? どうだったかな」
「お前! ちゃんと見てろよ!」
「ああ。無かったと思う」
「そうだよな!」
なんなんだ。
俺は折角の祝いなので、それ以上は追及しなかった。
雪野さんを怖がらせたくない。
3階の居住スペースで、雪野さんが待っていた。
「こら! 寝てなきゃダメでしょう!」
「ウフフフ、すいません」
俺はソファに座っているように言い、三人で3階の本格リヴィング(100畳)に運んだ。
俺と柳で20人が掛けられるテーブルを運び、椅子も用意した。
壁際に折り畳みテーブルを5台出し、白布を掛けて運んだ料理を並べて行く。
早乙女が俺たちを見て手伝い始める。
「白布は前を長めに足らせ! そうすれば壁際の下がりが隠れる!」
「なるほど!」
俺と柳に指示されながら、手伝ってくれた。
「じゃあ、また後でまた来るからな!」
「ああ、俺も行くよ」
「お前は邪魔だ!」
「す、すまん!」
二回目の運搬で、邪魔なロボを一緒に連れて来た。
早乙女と雪野さんにロボを預ける。
4時頃にようやく終わり、俺たちはコーヒーを飲んで少し寛いだ。
「大変でしたねー」
「ちょっとハリキリ過ぎたか」
「アハハハハ!」
亜紀ちゃんと完成を喜んだ。
他の子どもたちも満足そうに笑っている。
「そう言えば、こんなに豪華な食事を頑張って作ったのってありませんよね?」
「前に鷹の指揮でお節を作ったけどなぁ」
「あれは一江さんとか大森さんが」
「そうだよな」
「うちの中だけで作ったのは初めてですよ!」
「うちの祝いでもねぇのにな!」
「アハハハハ!」
まあいい。
俺たちは最後のワゴンを積み、早乙女の家に向かった。
俺と亜紀ちゃんが車に乗り、あとは全員で歩いた。
すぐ近くだ。
一応、みんなちょっといい服に着替えた。
俺と皇紀はスーツだが、他の女性陣はみんなオートクチュールのドレスだ。
こういう機会じゃないと、なかなか着れない。
みんなで料理を運び上げ、温めたりした。
雪野さんがまた手伝いそうになるので、俺が怒って座らせた。
まだ「怜花」はいない。
亜紀ちゃんがテーブルに飲み物を並べて行く。
俺と早乙女、亜紀ちゃんと柳はクリュッグのロゼ。
雪野さんと他の子どもたちはノンアルコールのスパークリング・ワインだ。
栞は止めると隠れて飲む女なので、量を制限して飲ませたが、母乳を与える間はアルコールは飲まない方がいい。
栞も分かっているので、味見程度だった。
テーブルに鯛以外の料理は並べない。
着席ビュッフェのスタイルにした。
食器も全てうちで用意した。
本当にどこの祝いなのか。
乾杯の音頭は早乙女にやらせた。
「今日は皆さん、本当にありがとう。大いに食べて飲んで下さい」
「うちが用意したけどな」
みんなが笑った。
「ありがとう、石神! 亜紀ちゃん、皇紀くん、ルーちゃん、ハーちゃん、柳さん! かんぱーい!」
「「「「「「かんぱーい!」」」」」」
楽しい宴が始まった。
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