富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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早乙女家のロボ

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 石神家が御堂たちと一緒に東京ドームでの演説会に行った日。

 「ロボちゃーん!」
 「にゃー(雪野さんだぁー!)」

 9時半に迎えに来た早乙女と雪野に、ロボは預けられた。

 「悪いが、今日はロボを頼むな」
 「ああ、ちゃんと預かるから心配しないでくれ」

 ロボは雪野の足にまとわりつき、甘えた。
 早乙女が笑ってロボの頭を撫で、背中から尻尾まで撫で上げる。
 ロボも早乙女を見て口を開いて嬉しがった。

 「じゃあ、ロボちゃん、行きましょうか」
 「にゃー」

 石神たちが出掛けるのを、ロボは理解していた。
 早乙女たちに預けられることも。
 今日はしばらく、あっちで過ごすのだ。
 石神がいないのは寂しいが、仕方が無いことも分かっていた。

 ロボはどこへ行くのかが分かっているので、ダッシュで道を駆ける。
 30メートルほど先に行って二人を待つ。
 二人は微笑みながら自分を見て近づく。
 またダッシュする。

 「ロボちゃーん! 待ってぇー!」

 雪野が笑って声を掛けた。

 (ん? なんかいるぞ)

 ロボが気配を感じた。
 時々来る、敵の妖魔のようだった。

 (モハメドがいるけど、やっちゃおうかな)

 曲がり角で空中に飛んだ。

 《スン ぶす スン》

 100メートル上空のカラスのような妖魔を爪の一撃で斃して戻った。

 「待ってぇー! あ、いたぁー!」

 雪野がロボの頭を撫でる。

 「にゃー(もう大丈夫だよ!)」
 「ウフフフ、可愛い!」
 「にゃー(にゃー)」

 三人で、早乙女家の門を潜った。




 広い通路を歩き、突き当りのエレベーターホールの「柱」が三人を迎える。
 両手を上げて歓迎した。

 「「柱」さん、ただいま」
 「にゃー(今日はよろしくー)」

 《柱!(よろしくお願いします!)》

 エレベーターで3階まで上がった。

 「はい、じゃああんよを拭きましょうね」
 
 雪野が優しくロボの足を拭った。
 早乙女はロボの食事用の皿とトイレなどを持って奥に行った。

 リヴィングに入り、早乙女が廊下にトイレを置いた。
 
 「ロボさん、ここに置きますね?」
 「にゃー(分かった)」

 三人でソファに座った。
 ロボは雪野に甘えて膝に上半身を預けた。
 しばらくまったりとする。

 ロボがウトウトしていると、早乙女がパソコンを持って来て、ソファの前のテレビに配線を繋げ始めた。

 「あなた、どうですか?」
 「うーん、大丈夫だと思うけど」
 「すいません、私もよく分からなくて」
 「いや、俺が全部ルーちゃんに聞いているから。パソコンを立ち上げるね?」
 「はい」

 早乙女がネットを検索し、認証コードなどを打ち込んでいく。

 「あ! 出ましたよ!」
 「うん!」

 100インチのテレビに、東京ドームの映像が映り始めた。

 「カメラを切り替えられるはずなんだ」

 早乙女がメニューから操作した。

 「替わりました!」
 「良かった! これでやり方は分かったよ」

 早乙女が切り替えると、映像は正面のステージを捉えるものから、角度を替えて映るもの、ステージから観客席を映すもの、上空からの俯瞰、様々な映像が観られた。

 「石神たちだ」
 「にゃー!(ほんとだ!)」

 ネコの仮面を被っているが、体格や波動で分かる。
 もちろん、ロボには明確に分かった。

 「よし、セッティングは出来たから、お昼にしようか」
 「はい!」
 「ロボはここでゆっくりしててね」
 「にゃー(うん)」

 


 ロボは新鮮なマグロと鯛の刺身をもらい、大満足だった。
 怜花が早乙女に抱かれて笑いながら食べている。
 モハメドもロボと同じマグロの切り身を食べていた。

 「ロボちゃん、まだ食べる?」
 「にゃ(もういいよ)」

 毛づくろいを始めた。

 二時前になり、早乙女と雪野はロボを誘ってまたソファに座る。
 ソファの横にロボ用のミルクが置かれ、早乙女たちは紅茶を用意していた。

 「いよいよかな」
 「そうですね」

 早乙女が怜花を抱き、雪野はロボを膝に乗せていた。
 
 「始まった!」
 「にゃー!(愛しのタカトラー!)」

 変装した石神がアップになる。
 華麗にエレキギターを掻き鳴らしている。

 「石神はやっぱりカッコイイなぁ」
 「そうですね!」
 「にゃ(その通り!)」

 興奮したロボがテレビの前でジルバを踊った。
 早乙女と雪野が大笑いした。
 早乙女の腕の中で、怜花も身体を動かした。

 「あれ、お前も?」

 二人が笑った。

 「「あ!」」
 「にゃ!」

 突然、映像が途切れた。
 画面が暗くなり、何も映らなくなった。

 「あれ!」

 早乙女が急いで機器を確認する。
 ロボはしゃがんだ早乙女の背中に乗り、頭をはたいて早くしろとせがんだ。
 パソコンも操作しようとしたが、もう映像は観られなかった。

 「あなた、ダメですか」
 「うん、なんだろう」

 三人は諦めた。
 後に、何者かのハッキングのためだと分かった。

 「仕方ない。ロボさん、ごめんね」
 「にゃー(なんなんだよ!)」
 
 雪野に撫でられて機嫌を直した。

 「ルーちゃんたちに聞きたいけど、今は連絡出来ないだろうしなぁ」
 「しょうがないですよ」

 ロボの機嫌を取るために、雪野が「ロボピンポン」をやった。
 その後でロボは怜花と寝た。





 ロボが目を覚ますと、外はもう暗かった。
 
 「にゃー(愛しのタカトラァー!)」

 ロボが寂しく鳴くと、雪野が寄って来てロボを抱き締めた。

 「もうちょっと待っててね。石神さんが迎えに来るからね」
 
 ロボは雪野に甘えて顔を舐めた。

 「にゃ?(アレ?)」

 敷地の外に嫌な気配がする。

 《おい、気付いたか?》
 《にゃ(うん)》

 モハメドからテレパシーが来た。
 早乙女たちには伝わらない。

 《どうする、お前がまた行くか?》
 《にゃ(うん)》

 ロボがリヴィングのドアの前で雪野を向いて鳴いた。

 「どうしたの?」

 ロボはドアの外に出て、また振り向いて鳴く。

 「外に出たいの?」
 「にゃ(そう)」

 雪野はちょっと迷ったが、ロボの高い知性を知っているので、一緒に廊下に出た。
 ロボはエレベーターまで雪野を導く。

 「本当に外に出たいんだ」
 「にゃ(早くー)」 
 「はいはい」

 雪野は一緒にエレベーターに乗り、1階の玄関に行く。
 玄関を開いた。

 「あんまり遠くへ行っちゃ……あれ?」

 ロボの姿が見えなくなった。
 
 「どこに行ったのかしら? そこにいたのに」

 



 敷地に入れば防衛システムが作動する。
 それを知ってか、妖魔は敷地から離れてこちらを見ていた。
 三つの頭を持つ、翼を持った蛇。

 《スン》

 《お前は! いつの間に!》

 《ぶす》
 《ギャァァァァァーーー!》

 《スン》

 「ロボちゃーん! あ! いた!」
 「にゃー(終わったよ)」

 玄関から出て呼び掛けていた雪野は、自分の背後にいるロボに気付いた。

 「いなくなっちゃって驚いちゃった」
 「にゃ(大丈夫だよ)」

 ロボは雪野の足に絡みついて甘えた。

 丁度その時、石神と子どもたちが歩いて来た。

 「なんだ、ロボが雪野さんにベッタリだな」
 「にゃー!(愛しのタカトラー!)」

 ロボが石神に駆け寄った。
 みんなで玄関に入り、3階に上がる。
 お茶を出され、みんなでテレビの報道を見た。

 「途中で回線が途切れてしまったんだ」
 「そうだったのか」
 「俺も観たかったなー」
 「今度、ブルーレイで渡すよ」
 「ほんとか!」

 ロボが雪野にくっついた。

 「にゃー(良かったね)」
 「お前、ここの子になるか?」
 「ニャァァァァー!(誤解だよ、タカトラァー!)」

 ロボが石神に飛びついた。
 石神は笑ってロボを抱きかかえて帰った。

 


 「タカさん、妖魔の死骸だよ?」

 ハーが蛇の妖魔を掴んで石神に見せた。

 「来る時にもカラスみたいなのがあったよね」
 「そうだなぁ。ああ、ロボがやったか?」
 「にゃー(そうだよ)」
 「よしよし」

 石神に撫でられ、ロボが目を閉じて喜んだ。

 「どうも、この辺一帯をうろつくようになったな」
 「最近ロボが外に出たがるのは、これかな」
 「そうだろうなぁ」
 「ロボ、頼むね!」
 「にゃ(うん)」

 ロボは石神に抱かれて幸せそうに笑った。  
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