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御堂、衆院選 東京ドーム
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翌朝。
俺と御堂は9時に起床した。
夕べは遅くなったので、俺がそう決めた。
子どもたちは朝から騒いでいる。
今日の東京ドームでは、子どもたちも「出演」する。
既に俺たち以外は朝食を済ませ、子どもたちは準備を始めた。
「花岡」の一部を披露する予定だ。
もちろん変装する。
10時に出発した。
今日は特別に用意した観光バスだ。
窓は全てフィルムで覆われ、中は見えない。
11時前に東京ドームに入った。
午後2時の開演だが、既に長蛇の列が出来ていた。
先着制だが席は順番に決められている。
チケットの配布で混雑しそうだった。
特設ステージがあり、様々なパフォーマンスの予定もある。
特段何も説明していないので、多くの観客が驚くことだろう。
5万人の観客を収容する予定だが、その他に各局のメディアが入る。
海外メディアも多い。
御堂に注目しているのと、噂で「虎」の軍も来ると言われていたためだ。
昨日のヤマトテレビの番組でテレビ初登場となるはずだったが、あのザマで立ち消えた。
だから今日が多くのテレビメディアが捉える初めての機会になるはずだった。
反対に、今日はヤマトテレビは一切立ち入り禁止だ。
俺たちが特設ステージに向かうと、ジャングル・マスターの怒号が聞こえて来た。
今日のパフォーマンスは、彼が直接指揮を執っている。
「おい! ライトはもっと右を照らせ! 司会が眩しくてしょうがねぇだろう!」
ジャングル・マスターが俺たちを見つけて駆け寄って来た。
「トラ! 今日は燃えるぜぇ! 絶対に満足するステージにするからな!」
「宜しく頼む。お前なら安心だ」
「任せろ!」
今日は楽団も入っている。
ベルリンフィルだった。
指揮はバーンスタインの弟子であった日本人。
司会は「紅白」の司会の経験のあるベテランタレント。
そして大歌手北一郎や韓国の人気デュオの東洋神秘、や日本のアイドルグループ。
そしてアメリカからセイントーラやセリーヌ・ディオン等の大物歌手。
俺も謎のギタリスト「TORA」として出演する。
最後に橘弥生とのセッションもやる。
子どもたちの「花岡」パフォーマンスもある。
サプライズで合衆国大統領が出る。
御堂も知らないサプライズもある。
楽しみだ。
開演は、俺のギターソロで始まった。
顔はギラギラのネコの仮面を被り、ストラトキャスターで派手に大音量で掻き鳴らす。
御堂と正巳さんが、ネコ仮面を被って天使の衣装を着た双子に抱えられて空中から壇上に着地。
大歓声が起きた。
双子はそのまままた空中を舞って佩ける。
俺は普通に袖に入って消えた。
御堂と正巳さんが挨拶し、まずはステージを楽しんで欲しいと言った。
演目が始まり、歌手たちがベルリンフィルの演奏で歌い、踊った。
盛り上がったところで、御堂の演説が始まり、観客はその内容に歓喜の涙を流した。
ジャングル・マスターのシナリオ通りだ。
「みんな! 何もせずに死ぬな! 僕たちは何かをするために生まれたんだ! ジャコモ・レオパルディは『カンティ』の中で書いています。《それでも君は生まれたのだ。清澄な日のために》。僕たちはそれを目指そう! それに向かって死のう!」
大きな拍手が湧いた。
大歓声がいつまでも止まなかった。
「今日は盟友「虎」の軍から友人たちが来てくれました! 彼らの力の一部を皆さんに見てもらいたい!」
子どもたちが俺と同じネコ仮面と天使の衣装で出て来る。
空中に小さな「轟雷」や「トールハンマー」を放ち、美しい光の乱舞を見せた。
亜紀ちゃんが双子と超高速の組み手を披露する。
見えないスピードの応酬で、また観客が興奮した。
CGや加工映像ではない、本物の超高速バトルだ。
観客が度肝を抜かれていた。
クレーンで吊られた大岩を拳で粉砕し、別な大岩を「槍雷」で破壊した。
司会の隣にいた御堂を、正装の「マンモスの牙隊」が登場して囲んだ。
「おい! 聞いてないぞ!」
叫ぶ御堂を全員で神輿に乗せ、空中に上がって旋回した。
絶叫する御堂を観客が笑った。
再びステージに戻して、「マンモスの牙隊」は急いで逃げ去った。
「彼らは僕の家を守ってくれている連中です。あの衣装だけは辞めろと言っているのに」
観客が爆笑する。
御堂の後ろにステージ下から誰かがせり上がって来た。
御堂が後ろを向いて迎える。
米大統領だった。
二人は抱き合い、握手する。
大統領が御堂を最高の友人と述べ、アメリカが今後もずっと御堂を応援し、共に「業」と戦うことを誓った。
司会者が御堂に送られた祝電を読み上げる。
数多くの各国首脳の祝いと期待、そして盟友として御堂を賞賛する内容だった。
再び歌手たちのステージに引き継がれ、セイントーラのパフォーマンと歌が始まり、そこへデュール・ゲリエが20体乱入し、見事なブレイクダンスを披露した。
最後に俺と橘弥生のセッションで締められた。
会場でアンコールを求める大合唱が始まった。
日本語と英語で、「虎」からのメッセージが流れた。
《我が親友・御堂正嗣。共に戦いを始めよう。ここに集った人たち。一緒に未来を築こう。苦難を乗り越え、次の世代に美しい世界を遺そう。我々はそのために生きる。そのために死ぬ。共に行こう》
大歓声の中で多くの観客が泣いた。
3時間に及ぶステージが終了し、観客たちはいつまでも帰らなかった。
ステージの模様は各局が報道し、御堂の評価は更に上がった。
日本中が新しい風を感じていた。
全ての観客とメディアがいなくなり、会場はそのまま打ち上げ会場となった。
準備していた屋台がグランドに入り、ケータリングの各種料理が運ばれて行く。
「虎」の軍である俺と子どもたちは参加できなかったが、子どもたちが立ち去る前に「ヒモダンス」を披露した。
大爆笑で送り出された。
御堂も正巳さんも笑っていた。
俺たちは別途回していたハマーに乗り込んで帰った。
「今日は外食でもするかぁ」
「「「「「さんせー!」」」」」
「よし、何が喰いたい?」
「「「「「肉!」」」」」
「じゃあ、吉野屋に行くぞ!」
双子に頭を引っぱたかれた。
「おい!」
みんなで笑い、いつもの新宿の焼き肉屋へ行った。
大歓迎で迎えられ、店の松坂牛は喰い尽くされ、特上カルビ、特上ロースも全て俺たちが喰った。
850万円を支払った。
最高記録だった。
「やったね!」
「やり過ぎだぁ!」
ロボを預けていた早乙女家に寄り、みんなでテレビを観た。
放映の途中で事故があったらしいが、テレビで今日のステージの一部が紹介され、みんなで楽しんだ。
「俺も見たかったな」
「今度ブルーレイで渡すよ」
「ほんとか!」
早乙女と雪野さんが喜んだ。
ロボはずっと雪野さんにベッタリだ。
「お前、ここの子になるか?」
「ニャァァァァー!」
俺に飛びついて甘えた。
ロボを抱いて俺たちは家に帰った。
御堂や正巳さんたちが帰って来た。
今日はジャングル・マスターも一緒だ。
男たちで「虎温泉」に入り、ジャングル・マスターが大喜びだった。
みんなで「幻想空間」で一緒に飲む。
「御堂、これでお前は世界的な有名人になったな」
「これからが大変だよ」
「大変じゃない人生はないよ。まあ、頑張れ」
「分かったよ、親友」
御堂が輝く笑顔を見せた。
俺と御堂は9時に起床した。
夕べは遅くなったので、俺がそう決めた。
子どもたちは朝から騒いでいる。
今日の東京ドームでは、子どもたちも「出演」する。
既に俺たち以外は朝食を済ませ、子どもたちは準備を始めた。
「花岡」の一部を披露する予定だ。
もちろん変装する。
10時に出発した。
今日は特別に用意した観光バスだ。
窓は全てフィルムで覆われ、中は見えない。
11時前に東京ドームに入った。
午後2時の開演だが、既に長蛇の列が出来ていた。
先着制だが席は順番に決められている。
チケットの配布で混雑しそうだった。
特設ステージがあり、様々なパフォーマンスの予定もある。
特段何も説明していないので、多くの観客が驚くことだろう。
5万人の観客を収容する予定だが、その他に各局のメディアが入る。
海外メディアも多い。
御堂に注目しているのと、噂で「虎」の軍も来ると言われていたためだ。
昨日のヤマトテレビの番組でテレビ初登場となるはずだったが、あのザマで立ち消えた。
だから今日が多くのテレビメディアが捉える初めての機会になるはずだった。
反対に、今日はヤマトテレビは一切立ち入り禁止だ。
俺たちが特設ステージに向かうと、ジャングル・マスターの怒号が聞こえて来た。
今日のパフォーマンスは、彼が直接指揮を執っている。
「おい! ライトはもっと右を照らせ! 司会が眩しくてしょうがねぇだろう!」
ジャングル・マスターが俺たちを見つけて駆け寄って来た。
「トラ! 今日は燃えるぜぇ! 絶対に満足するステージにするからな!」
「宜しく頼む。お前なら安心だ」
「任せろ!」
今日は楽団も入っている。
ベルリンフィルだった。
指揮はバーンスタインの弟子であった日本人。
司会は「紅白」の司会の経験のあるベテランタレント。
そして大歌手北一郎や韓国の人気デュオの東洋神秘、や日本のアイドルグループ。
そしてアメリカからセイントーラやセリーヌ・ディオン等の大物歌手。
俺も謎のギタリスト「TORA」として出演する。
最後に橘弥生とのセッションもやる。
子どもたちの「花岡」パフォーマンスもある。
サプライズで合衆国大統領が出る。
御堂も知らないサプライズもある。
楽しみだ。
開演は、俺のギターソロで始まった。
顔はギラギラのネコの仮面を被り、ストラトキャスターで派手に大音量で掻き鳴らす。
御堂と正巳さんが、ネコ仮面を被って天使の衣装を着た双子に抱えられて空中から壇上に着地。
大歓声が起きた。
双子はそのまままた空中を舞って佩ける。
俺は普通に袖に入って消えた。
御堂と正巳さんが挨拶し、まずはステージを楽しんで欲しいと言った。
演目が始まり、歌手たちがベルリンフィルの演奏で歌い、踊った。
盛り上がったところで、御堂の演説が始まり、観客はその内容に歓喜の涙を流した。
ジャングル・マスターのシナリオ通りだ。
「みんな! 何もせずに死ぬな! 僕たちは何かをするために生まれたんだ! ジャコモ・レオパルディは『カンティ』の中で書いています。《それでも君は生まれたのだ。清澄な日のために》。僕たちはそれを目指そう! それに向かって死のう!」
大きな拍手が湧いた。
大歓声がいつまでも止まなかった。
「今日は盟友「虎」の軍から友人たちが来てくれました! 彼らの力の一部を皆さんに見てもらいたい!」
子どもたちが俺と同じネコ仮面と天使の衣装で出て来る。
空中に小さな「轟雷」や「トールハンマー」を放ち、美しい光の乱舞を見せた。
亜紀ちゃんが双子と超高速の組み手を披露する。
見えないスピードの応酬で、また観客が興奮した。
CGや加工映像ではない、本物の超高速バトルだ。
観客が度肝を抜かれていた。
クレーンで吊られた大岩を拳で粉砕し、別な大岩を「槍雷」で破壊した。
司会の隣にいた御堂を、正装の「マンモスの牙隊」が登場して囲んだ。
「おい! 聞いてないぞ!」
叫ぶ御堂を全員で神輿に乗せ、空中に上がって旋回した。
絶叫する御堂を観客が笑った。
再びステージに戻して、「マンモスの牙隊」は急いで逃げ去った。
「彼らは僕の家を守ってくれている連中です。あの衣装だけは辞めろと言っているのに」
観客が爆笑する。
御堂の後ろにステージ下から誰かがせり上がって来た。
御堂が後ろを向いて迎える。
米大統領だった。
二人は抱き合い、握手する。
大統領が御堂を最高の友人と述べ、アメリカが今後もずっと御堂を応援し、共に「業」と戦うことを誓った。
司会者が御堂に送られた祝電を読み上げる。
数多くの各国首脳の祝いと期待、そして盟友として御堂を賞賛する内容だった。
再び歌手たちのステージに引き継がれ、セイントーラのパフォーマンと歌が始まり、そこへデュール・ゲリエが20体乱入し、見事なブレイクダンスを披露した。
最後に俺と橘弥生のセッションで締められた。
会場でアンコールを求める大合唱が始まった。
日本語と英語で、「虎」からのメッセージが流れた。
《我が親友・御堂正嗣。共に戦いを始めよう。ここに集った人たち。一緒に未来を築こう。苦難を乗り越え、次の世代に美しい世界を遺そう。我々はそのために生きる。そのために死ぬ。共に行こう》
大歓声の中で多くの観客が泣いた。
3時間に及ぶステージが終了し、観客たちはいつまでも帰らなかった。
ステージの模様は各局が報道し、御堂の評価は更に上がった。
日本中が新しい風を感じていた。
全ての観客とメディアがいなくなり、会場はそのまま打ち上げ会場となった。
準備していた屋台がグランドに入り、ケータリングの各種料理が運ばれて行く。
「虎」の軍である俺と子どもたちは参加できなかったが、子どもたちが立ち去る前に「ヒモダンス」を披露した。
大爆笑で送り出された。
御堂も正巳さんも笑っていた。
俺たちは別途回していたハマーに乗り込んで帰った。
「今日は外食でもするかぁ」
「「「「「さんせー!」」」」」
「よし、何が喰いたい?」
「「「「「肉!」」」」」
「じゃあ、吉野屋に行くぞ!」
双子に頭を引っぱたかれた。
「おい!」
みんなで笑い、いつもの新宿の焼き肉屋へ行った。
大歓迎で迎えられ、店の松坂牛は喰い尽くされ、特上カルビ、特上ロースも全て俺たちが喰った。
850万円を支払った。
最高記録だった。
「やったね!」
「やり過ぎだぁ!」
ロボを預けていた早乙女家に寄り、みんなでテレビを観た。
放映の途中で事故があったらしいが、テレビで今日のステージの一部が紹介され、みんなで楽しんだ。
「俺も見たかったな」
「今度ブルーレイで渡すよ」
「ほんとか!」
早乙女と雪野さんが喜んだ。
ロボはずっと雪野さんにベッタリだ。
「お前、ここの子になるか?」
「ニャァァァァー!」
俺に飛びついて甘えた。
ロボを抱いて俺たちは家に帰った。
御堂や正巳さんたちが帰って来た。
今日はジャングル・マスターも一緒だ。
男たちで「虎温泉」に入り、ジャングル・マスターが大喜びだった。
みんなで「幻想空間」で一緒に飲む。
「御堂、これでお前は世界的な有名人になったな」
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