富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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おめでとう、雪野さん!

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 6月第1週の土曜日。
 今日は久し振りに早乙女たちと一緒に食事をする。




 先週末に、早乙女から電話が来た。
 生意気にも、早乙女が自分の家でバーベキューをやりたいとまた言って来やがった。

 「おまえよー。そんなこと言っても、いつも準備するのは俺たちじゃねぇか!」
 「いや、今回はうちで全部用意するから!」
 「そうは言ってもなー」

 うちの猛獣たちが大半を食べるのだから、申し訳ない。

 「ちょっとさ、お前たちに話したいこともあるんだ」
 「なんだ?」
 「それはさ、その時にな」
 「あんだよ!」

 早乙女の声が弾んでいた。
 まあ、早乙女がどうしてもそうしたいようだ。
 だったら仕方が無い。

 「じゃあ頼むわ。ああ、あんまり量はいらないからな」
 「そうはいかないよ!」
 「俺から話しておくから。帰ってからでも喰えるんだし」
 「それじゃ食事に招待した意味がないよ!」
 「うちは特別なんだから気にするな」
 「いや、必ず満足してもらうから!」

 いつになくやる気だった。
 俺は電話を切り、月曜日の昼に雪野さんに連絡した。
 早乙女は仕事で家にいないはずだ。

 「こんにちはー」
 「石神さん!」
 「あのさ、早乙女が完全早乙女家監修でバーベキューをやるって言ってたんだけど」
 「ええ! 是非いらしてくださいね!」
 「だけどね、ほら、うちの子どもたちって異常だから」
 「ウフフフ、それは大丈夫ですよ」
 「でもなー」
 「バーベキューなら食材を切っておくだけですから。ランたちもいますので、うちでやれます」
 
 普通の料理よりも準備は楽だろうが。
 
 「そうですかー。じゃあ本当にお世話になりますね」
 「はい! 楽しみです!」
 「ああ、あいつ、なんか話したいことがあるって言ってましたけど」
 「え、ああ、それは……」
 「二人目ですか?」
 「どうして! いえ、あの、それは当日に是非……」
 「アハハハハハハ!」

 なんだ、そういうことか。
 ならば遠慮なく招待されよう。




 全員でおしゃぶりを口に咥え、ロボがまたベビー帽子を付けて早乙女家へ行った。
 そして急遽用意した揃いのTシャツを着ている。
 3時に上着を着て出掛けた。

 「よう!」
 「……」

 出迎えた早乙女が苦い顔をしている。

 「今日は世話になるな!」
 「ああ」
 「お前の話が楽しみだよ!」
 「もういいよ」
 「なんだよ!」
 「もういいから」
 「水臭いな!」
 「それだから。どうして分かるんだぁ!」
 「「「「「ん?」」」」」」

 柱たちと挨拶する。
 久し振りなので柱たちが抱き着いて来て困った。
 3階のリヴィングへ行き、お茶を頂いた。
 俺たちのおしゃぶりを見て、雪野さんが爆笑した。

 コーヒーと俺が好きなキハチのフルーツロールケーキが出た。
 上品な甘さがいい。

 亜紀ちゃんに言って土産を渡す。

 「石神、今日は手ぶらで来てくれって言っただろう!」
 「ああ、そういうのじゃないから」

 小さな紙袋を早乙女が開く。

 「おい、これは!」
 「あちこちの神社や寺でな。子どもたちが集めて来たんだ」
 「そうなのか……」
 
 早乙女が雪野さんにも見せた。
 沢山の安産祈願のお守りだった。
 柳が抱えて来た大きな御札を風呂敷を解いて渡す。

 「こっちは麗星が送ってくれたんだ」
 「え!」
 
 そちらも安産祈願だ。

 「ありがとう、石神!」
 「ありがとうございます!」
 「いやいや」

 みんなで拍手をした。
 口々に「おめでとうございます」と言われ、雪野さんが嬉しそうに笑って礼を言っていた。
 ロボも雪野さんに駆け寄って顔をペロペロ舐める。
 分かっているのだろう。

 「ところで、早乙女の話って何なんだよ?」
 「もういいよ!」

 みんなで笑った。




 コーヒーを飲みながら話した。

 「予定日は?」
 「ああ、10月の中旬頃かな」
 「そうか!」
 「安定期に入ったから、お前たちには話しておこうって」
 
 早乙女がモハメドから最初に聞いたと言った。
 雪野さん自身も気付いていなかった。

 「そうなのかよ!」
 「うん、俺も驚いたよ」
 「まあ、モハメドは毎晩見てるしなー」
 「「エェ!」」
 「ん?」

 早乙女達が驚いている。

 「お前たちの健康状態をな」
 「「アァー!」」

 双子が「ギャハハハハハ」と笑う。
 亜紀ちゃんと柳が両脇から頭を引っぱたく。

 「モハメド!」
 《はーいー!》
 「こいつら、毎晩健康的にヤってるだろ?」
 《はーいー! 楽しそうですよー!》
 「そっか!」

 早乙女と雪野さんが真っ赤になった。

 「おい、この家のことは多少は分かっただろうな!」
 
 話題を変えてやった。
 千巻を超える仕様書を読んでおけと前に言ってある。

 「あ、ああ! 二人で仕様書を読むようにしてるよ。まだ45巻目だけど」
 「おっせぇーなー」
 「でも、目次を見て気になるものは先に読んでるよ」
 「そうかよー」

 「早乙女が結婚前に捨てたエロDVDとかも、ちゃんと仕舞ってあるからな!」
 「なんだと!」
 「冗談だよ!」
 「石神!」

 雪野さんが、「そういうのあったんですか?」と小声で聞いていた。
 早乙女がしどろもどろになっていた。
 早乙女のは回収していないが、俺のセレクションは仕舞っている。

 「怜花もお姉ちゃんかー!」

 俺が怜花の傍に行って頭を撫でてやると、怜花が笑って俺に手を伸ばすので抱き上げてやった。

 「石神、お前に頼みがあるんだ」
 「ああ、後でな。そろそろバーベキューの準備をしよう」
 「あ、ああ」
 「スープはうちで作らせてくれよな」
 「あ、うん。申し訳ないな」
 「いいって。こいつらも作りたいんだよ」
 「そうか」

 俺たちは4階の屋上に上がり、バーベキューの準備を始める。
 みんなで上着を脱いでTシャツになった。
 背中に文字をプリントしている。

 《名前は自分たちで考えろ!》

 「「……」」」

 子どもたちがランたちの間に入り、手伝い始める。
 俺は早乙女と雪野さんに向かって聞いた。

 「ところでさ、さっきの頼み事って何だよ?」
 「「……」」

 「おい!」
 「たのむよー、いしがみー」

 みんなで爆笑した。
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