富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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理事会忘年会

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 12月初旬。
 病院内の各部課との忘年会がある。
 うちの第一外科部は人事部との合同忘年会になった。
 それは問題ない。
 鬱陶しいのは、理事会だ。
 年寄り連中のくせに、やたらとハッスルする。
 最近は料亭で比較的おとなしくやっていたが、今年はコンパニオンを呼んでの宴会がしたいと言いやがった。

 「じゃあ、石神君、また手配を頼むね」
 「ちょっと、俺は結構忙しいんですけど!」

 料亭ならともかく、コンパニオンなど呼びたくない。

 「君が一番若いんだし、しょうがないだろう」
 「それは関係ないでしょう!」
 「何、嫌なわけ?」
 「嫌です!」
 
 先月の理事会で言われ、俺も頭に来て断固反発した。

 「じゃあ、しょうがない。僕たちが仕切るよ」
 「お願いします!」
 
 ということになった。





 宴会当日。
 理事の長谷部さんが手配した西日暮里の店に行った。
 なんでこんな遠方の場所で取るのか。
 院長と一緒にタクシーで行き、夕方5時に店に入った。

 「なんだ、ここは……」

 院長が呆然と見ている。
 飲み屋ではない。
 かと言って、何の店かと聞かれても困る。
 敷地の周囲は2メートルの塀で囲まれている。
 門をくぐると一応鉄筋の建物だが、ピンク色の外壁の2階建て。
 入り口は大きなガラスの扉で、「ソープ宴会 イヤンダフル」という看板が掛かっている。
 店名の「イヤンダフル」だけ聞いていた。
 塀に囲まれた門には何の看板も無かったので、もしかしたら違法風俗かもしれない。

 「アンダ、コリャ?」
 「石神……」
 「とにかく、入りましょうか」
 「おお」

 院長は緊張している。
 俺は大体のことが読めている。

 玄関に入ると年配の女が俺たちを出迎えた。

 「ようこそー、イヤンダフルのケイコでーす!」
 「どうも」
 「みなさん、もう集まってますよ!」
 「そうですか」

 俺たちは靴を脱いで、靴箱に適当に入れた。

 「あら、オニイサン、いい男ね」
 「どうも」

 女が俺の手を組んで案内した。
 院長は後ろをついてくる。

 広間に出た。

 「「……」」

 先に来ていた5人の理事の全員が全裸だった。
 それと若いのから中年までの20人の女たち。
 もちろん、彼女らも全裸だ。

 「遅かったじゃないか!」
 「5時からでしょう!」
 「早く脱ぎたまえ!」
 「何でですか!」
 
 仕切った理事が言った。

 「だって、ここ、ソープだよ?」
 「「……」」

 院長が俺の肩に手を置き、首を横に振っていた。
 諦めろということだ。
 それでも、悲し気な顔をしていた。
 静子さんのことでも思い出しているのだろう。
 可愛そうに。

 俺も自棄になって服を脱いだ。
 案内した女が下着などをかごに入れ、スーツはハンガーに掛けて別な部屋へ持って行った。
 財布や時計も一緒に預けたが、多分大丈夫だろう。

 ビールが運ばれ、女たちが栓を抜いてコップに注いでいく。
 流石に暖房は効いていて、少し暑いくらいだ。
 院長には事前に言ってあったか、ジュースが出される。

 「では、かんぱーい!」

 挨拶も何もないのはいつも通りだ。
 この人たちは、ただ飲んで喰って楽しみたいだけだ。
 仕切りの長谷部理事が近寄って来た。

 「石神君、どうよ?」
 「どうって、なんでこんななんですか」
 「楽しいだろう!」
 「いや、全然」

 嫌な顔をされる。

 「まあ、僕に押し付けたのは君だからね!」
 「そうですね」

 もう仕方がない。
 しかし、これだけの規模だ。
 結構金が掛かるはずだ。
 理事会の宴会費用は理事会規約で決まっている。

 「随分高いんじゃないですか?」
 「ああ、まあね」
 「まあねって、予算は上限が決まっているでしょう?」
 「いいんだよ。僕らのおごりだよ」
 「え?」
 「たまにはね、こういう遊びもしたいじゃない」
 「いや、俺は全然」
 「石神君にはお宅で毎年迷惑掛けちゃったからね。そのお詫びだよ」
 「いいですよ、そんなの!」

 却って迷惑だ。

 「まあ、今日は楽しんでよ」

 何を楽しむのかと言えば、恐ろしくくだらないことだ。
 まあ、長谷部理事が言う通り、俺が投げたことだ。
 俺のせいではないのだが、全裸の院長が可哀そうだ。
 病院では地位のある人で、こんな目に遭っていい人ではない。
 俺は院長にビールの入ったコップを渡した。
 院長が俺を涙目で見詰めている。
 まるで一家心中で子どもに毒でも飲ませるような感じだ。
 
 俺が軽くうなずくと、院長も意を決してビールを喉に流し込んだ。
 寝た。

 店の人間に頼んで、適当な部屋に布団を敷いて寝かせるように言った。

 「あぁー! 蓼科君がいないぞー!」
 
 少ししてから誰かが叫んだ。

 「さっきビールを飲んじゃって。潰れちゃいました」
 「そうなのか! あー! これからなのにー!」
 「まあまあ」

 でかいテーブルが運ばれて来た。
 裸の女が横たわっていた。
 その上に、様々な刺身が乗っている。
 
 「女体盛……」

 「「「「「来た来たぁー!」」」」」
 「……」

 女は目を閉じてジッとしている。
 皿か何かになったつもりか。
 まあ、目を開けて見られても気まずいが。
 全員に小皿が配られ、コンパニオンたちが醤油などを注いで行く。

 「さあ、石神君も来たまえ!」

 俺も傍に呼ばれた。
 どうにも衛生的にアウトな気がした。
 女がどれだけ清潔なのかも、いつ刺身が盛られたのかも分からん。
 女の体温で、刺身の傷み方は加速しているはず。
 しかも、この量は盛り付けに相当な時間が掛かっていると思われる。

 理事の一人が腹のヒラメの切り身を取った。
 物凄いニヤケ方で、女の股間を切り身で嬲る。

 「アッ」

 女が反応した。

 「ウヒヒヒヒヒ」

 丁寧に股間に擦り付けたヒラメをちょっと醤油に付けて口に入れた。

 「うまい!」
 「「「「ワハハハハハハ!」」」」
 「……」

 他の理事たちも、つぎつぎに股間タレに漬けてから切り身を口にしていった。

 「ほら、石神君も!」
 「いや、俺は結構です」
 「何! 君はアナル派かぁ!」
 「いや、そういうわけじゃ!」

 仕方なく俺もオッパイの赤貝を箸で摘まみ、ちょっと乳首を転がしてから口に入れた。
 ヤバい。
 ちょっと傷み始めている。
 俺はすぐに小皿に戻した。

 「みなさん、刺身が傷んでますよ!」
 「何を言うか! 何のためのアルコール消毒かね!」

 そう言って、酒を口に流し込む。
 もうしらねー。
 女体盛の刺身がほぼ無くなり、女は自分の足で去って行った。
 情緒の欠片もねぇ。

 理事たちは盛り上がり、気に入ったコンパニオンを隣にし、身体を触り始める。
 俺の周りにも集まって来たが、今日はあの人たちを歓待してくれと断った。
 それでも若い女が俺の隣に座っていた。
 俺の身体を撫で始める。

 数時間が過ぎ、理事たちは段々羽目を外し、股間をいじらせ始める。
 女たちはそういう仕事なので喜んで触り、自分の身体も自由にさせた。
 そのうちに二人の理事が風呂に行くと言って、数人のコンパニオンを連れて出て行った。
 残る二人はもう始めている。
 ジジィなのに元気な連中だ。

 「ねえ、私たちも」

 よく見るとカワイイ女だった。
 20代前半だ。

 「いや、俺はいいよ」
 「だって、もうこんなだよ?」
 「……」

 散々触られ、臨戦態勢になっている。
 女が口を使い始めた。
 上手い。

 「……」

 女に手拭いで目隠しをされた。

 「奥さんのことなんか忘れちゃって」
 「……」

 女が俺の手を引いて、どこかの部屋へ導く。
 俺も抵抗なく付いて行った。

 布団が敷かれる音がした。
 あおむけに寝かされ、女が口をまた使う。

 「ウフフフフ」

 女の中に入ったのを感じた。
  
 「ああ! おっきい!」

 女が俺の上で動いた。
 俺も段々盛り上がり、手拭いを外して女を後ろから貫いた。
 薄暗い部屋だった。

 「アァァァァ!」

 声の大きな女だった。
 まあ、全然構わない。
 女が大声で何度も達していく。

 「スゴイスゴイスゴイ! 壊れちゃうよー!」
 「ワハハハハハハ!」

 女が数十回もイキ、俺もラストスパートをかけた。

 「もう、ダメダメダメダメダメダメぇー!」
 「行くぞぉー!」

 「石神?」
 「?」

 部屋の隅から名前を呼ばれた。

 「!」

 院長が布団から半身を持ち上げて俺を見ていた。
 女の中に大量にぶちまけた。

 「あ! お前!」
 「いや、あのですね!」

 「「キャァァァァ-!」」

 部屋の外から女たちの悲鳴が聞こえた。
 俺は慌てて襖を開ける。
 ジジィ共がとんでもない変態行為でもしたか。

 「……」

 宴会場でヤっていた理事二人が尻から大量の下痢便を垂れ流していた。
 二人は腹を抑えて苦しんでいる。

 離れた場所でも、同様に数人の女たちの悲鳴が聞こえた。
 俺はゆっくりと歩いて向かった。
 風呂場から女たちが裸で飛び出して来る。
 風呂場を見た。

 「……」

 ジジィたちが大量の下痢便と嘔吐で失神している。
 あの「女体盛」の結果だろう。
 院長と救急車を呼んだ。
 店の女を呼んで急いで服を着た。

 「困りますよ、これ!」

 最初に出迎えたケイコという女が怒鳴った。

 「女体盛だぞ」
 「え?」
 「刺身が傷んでたんだよ!」
 「証拠はあるんです?」
 「お前ぇ!」

 俺たちが医者であることを話し、警察に知り合いも多いことも付け加えた。

 「じゃあ、規定の料金だけでいいですよ」
 「幾らなんだよ?」

 500万円だそうだ。
 もう入金されているので、返金は出来ないと言われた。

 「……それでいいよ」

 院長と一緒に搬送された病院についていった。
 理事たちの服は俺が全部抱えた。
 鞄の一つが開いていて、バイアグラの錠剤が零れた。

 「……」

 比較的軽い大腸菌の食中毒だったので、理事たちは翌日には元気になった。

 「手間を掛けたね」
 「「……」」


 


 院長から黙っていてやると言われた。

 「お前も人の親になったんだ。あんまりああいうことはな」
 「すいませんでした」

 物凄く後味が悪かった。 
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