富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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竹流 アゼルバイジャンへ Ⅲ

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 西野さんに連絡して、お逢いした。
 よく行く、最初に出会ったあのテラスレストランだ。
 テーブルが離れているテラス席が、他の人間に聞かれたくない話題に適している。
 僕は早速切り出した。
 
 「西野さん、良かったらなんですけど」
 「なに、竹流君?」
 「僕に「花岡」を教えさせてもらえませんか?」
 「え?」
 「僕は「花岡」を少し習得してるんです」
 「ほんとなの!」
 「はい!」

 西野さんが驚いていた。

 「「花岡」って知ってるけど、あれは「虎」の軍の機密なんでしょ?」
 「はい。基礎的なものは公開されてますが、本格的な戦闘に使える技は「虎」の軍の人間だけにしか明かされません」
 「じゃあ、竹流君は「虎」の軍の人間だったの!」
 「そうです。隠していてすみません。あの時はお話し出来なかったんで」
 「でも、じゃあ今はいいってことなの?」
 「はい! 神様に許可を頂きましたから! 僕が信頼する人間にはどんどん教えていいと言ってもらえました」
 「そうなの! 本当にいいの!」
 「はい!」

 西野さんが大層喜んでくれた。
 西野さんから伺ったお話では、銃器を使うこともあるけど、本格的な訓練を受けたわけではないので、銃での戦闘は限界がある。
 だから、「花岡」を学べるのならば、それで危機を脱することが出来る。

 その日から、二人で時間を合わせて訓練を始めた。
 僕の任務は主に基地の防衛だけど、何かあれば「飛行」でいつでも帰れるので、東雲さんが僕に結構な時間を空けてくれた。
 西野さんと街の外で訓練して行った。
 他の人間に知られないようにということと同時に、大きな破壊力の技もあるからだ。
 基本の「花足」から「花岡」の型を教え、エネルギーの使い方を感じさせていく。
 西野さんはどんどん吸収して行った。

 「西野さん、才能がありますよ!」
 「そう?」
 「はい!」
 「エヘヘヘヘヘ、私って結構やるでしょ!」
 「本当に!」

 実際、西野さんには才能があった。
 数日で「螺旋花」を習得し、僕も驚いた。
 どこまで教えるのかは決めていなかったが、西野さんが覚えられる限りはと考えるようになった。
 この人は信頼出来る。

 「今まではね、私も銃を握ることもあったの」
 「そうなんですか。でも、それって本当に危ない状況ですよね?」
 「うん。何人か殺したこともある。辛かったわ」
 「はい」
 「私たちは誰かを助けるために活動しているのにね。本当に悔しい。でも、仲間を守るためには仕方がないの」
 「はい、その通りだと思います」

 西野さんとは今まで以上に親しくなり、お互いの私的なことも少しずつ話すようになった。

 「私の両親がね、大学を卒業してしばらく後に離婚したのね。それまでは普通の家だと思っていたんだけど、なんだか人間関係が信じられなくなっちゃって」
 「そうなんですか」

 訓練の合間に二人で休んで、そんなことをよく話していた。

 「だから勤めていた病院を辞めてね。昔の恋人に会いに行こうと思ったの。私が一番信じていた人だから」
 「それは思い切りましたね」
 「まあ、今じゃ結婚して子どももいるかもね。でもそれでもいいんだ。会いたいだけ」
 「はい。会えるといいですね」
 「うん。その時も今も、本当は会えるなんて思ってない。でも、私はそうしようと思った。後悔はしていないわ」
 「そうですか」

 僕も自然に両親のことを話した。

 「僕の父親は、自衛隊の特殊部隊だったそうです。極秘に戦地にも行くようになって、それで母が僕を連れて家を出て」
 「そうだったんだ……」
 「でも、母は自殺しました。僕は孤児になって、「暁園」という施設に引き取られたんです」
 「大変だったね」

 母の死と突然の環境の変化でショックを受けていた僕を、神様が救ってくれたことを話した。

 「僕を抱いて空を飛んでくれたんです。あの時の感動は忘れません!」
 「そうなんだ!」
 「飛びながら神様が話してくれたんです。自分以外の誰かのために生きれば、奇跡は起きるんだって」
 「素晴らしい人ね!」
 「僕は生きるってことが素晴らしいことなんだって分かりました。辛いことも多いけど、自分のやるべきこと、決めたことをやればそれでいいんだって」
 「そう! 私もそう思うよ!」
 「そうですよね!」

 西野さんはどんどん強くなり、中級の技も習得していった。
 中には「ブリューナク」や「轟閃花」など、威力の大きな技も覚えたものもあった。
 ただ、「鷹閃花」だけは、一生懸命になったけど習得出来なかった。
 でもこれで、西野さんは通常戦力の軍隊には負けない実力を持っただろうと思った。





 西野さんの移動が決まった。
 僕たちの訓練も終わりになる。
 最後の訓練をし、日が暮れて来てそこまでとした。

 「竹流君、これまで本当にありがとう」
 「いいえ、僕も西野さんと親しくなれて、本当に嬉しかったです」
 「私も!」

 僕は西野さんへプレゼントを渡した。

 「これは?」

 大きなケースと細長いケース。

 「師匠から弟子へのプレゼントですよ」
 「えぇ!」

 西野さんが笑ってケースを開けた。
 驚いていた。
 何が入っているのか分かったようだ。

 「竹流君! これって、まさか!」
 「はい。「Ωコンバットスーツ」です」
 「これは「虎」の軍のものでしょう!」
 「よく御存知ですね」
 「実は私たちも何着か持っているの。随分と古いタイプだけどね」
 「そうなんですか!」

 「Ωコンバットスーツ」は機密扱いのはずだ。
 どうして西野さんたちが持っているのだろう。

 「うちの団長は特殊な伝手があってね。昔米軍に貸与されたもののうち、上下一着と上着を一着、譲ってもらったらしいのね」
 「そうなんですか」

 ちょっと不穏な話だった。
 東雲さんに後で報告しておこう。

 「西野さん、これは最新のタイプです。これは西野さんに差し上げるものなので、他の方には渡さないで下さい」
 「うん、分かった。絶対に約束する」
 「それとこちらは」

 僕が細長いケースの方を開いて見せた。
 見ただけでは、どういうものかは分からないだろう。

 「え、これは?」
 「「カサンドラ」と呼ばれている「虎」の軍の武器です。中級妖魔までは斬れるはずですから」
 「そんなものが!」

 僕は実際に使い方を説明した。

 「ガンモード、ソードモード、ロングソードモードの三種類です。これも最新型で、ガンモードであればほぼ無限に使えます。ソードモードでは1時間、ロングソードモードでは15分。クールタイムはそれぞれ30分です」
 「!」

 西野さんは驚いてガンモードで実際に使ってみた。
 離れた岩が四散して驚いていた。

 「こんなもの、私にくれていいの?」
 「はい!」
 「ありがとう!」

 西野さんが突然抱き着いて、僕にキスをしてくれた。

 「ごめんね、こんな御礼しか出来なくて」
 「い、いいえ」

 驚いて呆然としてしまった。

 「いつか恋人を見つけたら、もっとちゃんとしたお礼をするね」
 「はい、待ってます!」
 「いつになるか分からないけどね」
 「アハハハハ! 西野さん、奇跡は起きるんですよ!」
 「そうだね!」

 夕暮れの中で、僕たちは別れた。
 西野さんの姿が見えなくなるまで、僕は見送った。
 僕は市街の荒野の中で、夕陽に照らされる西野さんを見ていた。
 
 「どうか西野さんが恋人を見つけられますように」

 目を閉じて祈った。







 僕はとんでもない間違いを犯してしてしまった。
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