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《轟霊号》初出撃 XⅢ
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「味方識別信号確認! 「サイレントタイガー」!」
「竹流!」
「あ、もう一人来ます! 「Cruel Disaster(残虐災害)」です!」
「斬さん!!
私も部隊の全員も喜んだ。
「虎」の軍の最強戦力の二人が来てくれたのだ。
竹流だけでも助かるのに、斬さんまで来ればもう十分だ。
三つ首のドラゴンは相当強いけど、あの二人ならば何とでもなる。
馬込の応援に続いて、もう言うことは無い。
「全員傾聴! 「クルエルディザスター」「サイレントタイガー」! 最強戦力が来た! これ以上無様は見せるなぁ!」
『アイ・サー!』
ソルジャーたちの動きが変わった。
100億もの妖魔に押されていた私たちは、最強の二人の応援を前にして吹き上がった。
もう不安は無いのだ。
竹流が私たちの前に出て、何度か三つ首のドラゴンを攻撃した。
初手から《マルミアドワーズ》をぶちかます。
ドラゴンを吹き飛ばすが、やはり殺し切れないで再生させてしまう。
その竹流が突然攻撃をやめ、私の隣に降りた。
「今、斬さんに手を出すなと言われました」
「ワハハハハハハハ!」
斬さんらしい。
途轍もない強敵を自分で屠りたいのだ。
斬さんは無防備にドラゴンの目の前に降りた。
ドラゴンの激しい高熱のブレスを吐く攻撃が厄介だ。
三つの首から放たれるブレスを避けながらの攻撃になり、ここまで思い切ったことが出来なかった。
ブレスは自分が引き受けなければ、他のソルジャーが狙われるためだ。
幾ら高速で避けても、三つの首のどれかが私を追って来ていた。
ドラゴンがブレスを吐いた。
私は当然斬さんが高速機動で避けると思っていた。
でも、斬さんは動かずにそのブレスをまともに喰らって行く。
「!」
斬さんの身体の周囲でブレスが大きく拡がっていた。
何をしたんだろう!
そして斬さんの前に幾つもの黒い渦が生じ、ドラゴンへ飛んで行く。
「「黒死花」! やっぱりあんなに出せたんだ!」
タカさんの言ったとおりだった。
前に蓮花さんの研究所で見た時には一つだけだった。
でも、タカさんは斬さんがもっと出せるはずだと言っていた。
味方にも見せないのは、万一にも見方が敵に回った場合を考えてのことだと。
修羅だなぁー。
実際に今、「黒死花」が30も生じている。
しかも、あれは「魔法陣」を通していない!
信じられない!
「花岡」の純粋な技だけだ!
「黒死花」はドラゴンの三つの頭に向かい、首にも胴体にも同時に幾つもぶつかっていく。
衝撃波が拡がった、
私たちも防御しなければ吹き飛びそうだった。
ドラゴンの全身が吹き飛び、跡形もなくなっていた。
もう再生うんぬんのレベルじゃない!
斬さん、スゴ過ぎだよー!
私と竹流は斬さんの隣に飛んだ。
「斬さん!」
「ふん、他愛のない奴じゃったわ」
「凄いですよ!」
斬さんは周囲を見渡していた。
「ふん、もう戦場はどこも終いか」
「え!」
「あやつも既に100兆の襲撃を終わらせるようだな。もう5兆も残っておらんわ」
「!」
《轟霊号》のタカさんのことだと分かる。
だったら斬さんは端末も持たずに、全ての戦場を把握しているのか!
「おい、お前の獲物を奪って悪かったな」
斬さんが竹流に言った。
「いいえ、僕では苦戦してましたよ」
「謙遜するな。まあお前の力はまだ見せずにおく方が良いだろうしな」
「はい!」
斬さんは竹流がまだまだ全力を出していないことを悟っていた。
そしてそう言う斬さんも、決して今のが本気では無かったのだろう。
実際、斬さんの「黒死花」は「魔法陣」を使わなかった。
それは敵に最大出力を知られないようにしたのだ。
この段階で全力を見せる人ではない。
斬さんは私よりもずっと先にいる。
それに斬さんの本当の凄さは、敵を見て一瞬で実力を測り、見合った技で対応したということだ。
決して他人に誇ることなく、己の為すべきことを為す。
それは戦いに於いて絶対に勝つという信念からのことだ。
「「業」もまだまだじゃな。これしきで我らを殺せると思っておるのか。まったく甘い奴よ」
斬さんはちょっと不満そうな顔をしていた。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「宇羅、《ヴィイ》をやったのは誰だ!」
「業」様が叫んだ。
驚かれ、同時に大層お怒りだと分かった。
《ヴィイ》は石神くらいにしか斃せないと我々は考えていたのだ。
《地獄の悪魔》以上の桁違いの戦力を持っている。
それが一撃で殺されてしまった。
石神は確実に出ていない。
そして信じられない奴が出て来たのだ。
「セイントです! あいつ、復活していました!」
「なんだと!」
妖魔の報告で分かっていた。
あれは間違いなくセイントだ。
しかしセイントは確かに《リェーズヴィエ(刃)》の攻撃で再起不能になったはずだった!
アメリカで療養していた時に、確かにそう診断されていた。
命こそ取り留めたようだったが、脊髄を損傷しtことで、両足と右腕の神経は寸断され、内臓の幾つかにも深刻なダメージがあった。
恐らくは数年の後に死ぬだろうと、確かにそう診断されていた。
それは潜り込ませたスパイの看護師が確かにカルテを見ており、実際に自分でもセイントを観察していた確実な情報だったはずだ。
それがどうして!
「セイントに間違いはないのか!」
「はい。あの「崋山」の銃を扱えるのはセイントだけです。死んだのであればともかく、セイントが生きているうちは誰にも扱えません」
「セイントを殺して次の人間が使っているのではないか?」
「それは考えにくいです。石神はセイントをこの上なく大切に思っておりました故」
「まんまと石神に騙されたか!」
「申し訳ありません!」
私の責任では無いのだが、「業」様にそれを言っても仕方がない。
それにもう一つお怒りの要件がある。
「《ズメイ》も一撃で殺されたな」
「はい。石神であればともかく、他の連中には簡単には斃せないはずでした」
《ズメイ》は《ヴィイ》以上に強力な大妖魔だった。
特に再生能力が高く、どんな攻撃も無効化してしまう。
誰が斃したのかも既に分かっていた。
「あのジジィがな」
「花岡斬です。間違いありません」
「あいつ、随分と強くなったものだ」
「……」
伏せていた顔を少しだけ持ち上げた。
「業」様が笑っていた。
「何とも憐れな。きっと必死になって石神に追いつきたいのだ。そして自分の手で私の首を奪いに来たいのだな」
「それは幾ら何でも」
「そうだ。ジジィが幾ら必死に努力しても、我と石神の間には到底立てない。それが滑稽で堪らん」
「はい、仰る通りかと」
「業」様は高らかに笑った。
「まあ、あのジジィには色々とやられもした。今度はあのジジィで遊んでみるか」
「それも一興です」
「石神もやはり100兆の妖魔でも殺せなかったな」
「はい、「業」様の予想通り、あやつもそれなりに高まっていることかと」
「良い。それでなくては我の敵として不足だ」
「業」様の御機嫌が戻った。
「宇羅、子どもたちはそろそろか?」
「はい、間もなく」
「それでは最後の花火を見ようか」
「はっ!」
「竹流!」
「あ、もう一人来ます! 「Cruel Disaster(残虐災害)」です!」
「斬さん!!
私も部隊の全員も喜んだ。
「虎」の軍の最強戦力の二人が来てくれたのだ。
竹流だけでも助かるのに、斬さんまで来ればもう十分だ。
三つ首のドラゴンは相当強いけど、あの二人ならば何とでもなる。
馬込の応援に続いて、もう言うことは無い。
「全員傾聴! 「クルエルディザスター」「サイレントタイガー」! 最強戦力が来た! これ以上無様は見せるなぁ!」
『アイ・サー!』
ソルジャーたちの動きが変わった。
100億もの妖魔に押されていた私たちは、最強の二人の応援を前にして吹き上がった。
もう不安は無いのだ。
竹流が私たちの前に出て、何度か三つ首のドラゴンを攻撃した。
初手から《マルミアドワーズ》をぶちかます。
ドラゴンを吹き飛ばすが、やはり殺し切れないで再生させてしまう。
その竹流が突然攻撃をやめ、私の隣に降りた。
「今、斬さんに手を出すなと言われました」
「ワハハハハハハハ!」
斬さんらしい。
途轍もない強敵を自分で屠りたいのだ。
斬さんは無防備にドラゴンの目の前に降りた。
ドラゴンの激しい高熱のブレスを吐く攻撃が厄介だ。
三つの首から放たれるブレスを避けながらの攻撃になり、ここまで思い切ったことが出来なかった。
ブレスは自分が引き受けなければ、他のソルジャーが狙われるためだ。
幾ら高速で避けても、三つの首のどれかが私を追って来ていた。
ドラゴンがブレスを吐いた。
私は当然斬さんが高速機動で避けると思っていた。
でも、斬さんは動かずにそのブレスをまともに喰らって行く。
「!」
斬さんの身体の周囲でブレスが大きく拡がっていた。
何をしたんだろう!
そして斬さんの前に幾つもの黒い渦が生じ、ドラゴンへ飛んで行く。
「「黒死花」! やっぱりあんなに出せたんだ!」
タカさんの言ったとおりだった。
前に蓮花さんの研究所で見た時には一つだけだった。
でも、タカさんは斬さんがもっと出せるはずだと言っていた。
味方にも見せないのは、万一にも見方が敵に回った場合を考えてのことだと。
修羅だなぁー。
実際に今、「黒死花」が30も生じている。
しかも、あれは「魔法陣」を通していない!
信じられない!
「花岡」の純粋な技だけだ!
「黒死花」はドラゴンの三つの頭に向かい、首にも胴体にも同時に幾つもぶつかっていく。
衝撃波が拡がった、
私たちも防御しなければ吹き飛びそうだった。
ドラゴンの全身が吹き飛び、跡形もなくなっていた。
もう再生うんぬんのレベルじゃない!
斬さん、スゴ過ぎだよー!
私と竹流は斬さんの隣に飛んだ。
「斬さん!」
「ふん、他愛のない奴じゃったわ」
「凄いですよ!」
斬さんは周囲を見渡していた。
「ふん、もう戦場はどこも終いか」
「え!」
「あやつも既に100兆の襲撃を終わらせるようだな。もう5兆も残っておらんわ」
「!」
《轟霊号》のタカさんのことだと分かる。
だったら斬さんは端末も持たずに、全ての戦場を把握しているのか!
「おい、お前の獲物を奪って悪かったな」
斬さんが竹流に言った。
「いいえ、僕では苦戦してましたよ」
「謙遜するな。まあお前の力はまだ見せずにおく方が良いだろうしな」
「はい!」
斬さんは竹流がまだまだ全力を出していないことを悟っていた。
そしてそう言う斬さんも、決して今のが本気では無かったのだろう。
実際、斬さんの「黒死花」は「魔法陣」を使わなかった。
それは敵に最大出力を知られないようにしたのだ。
この段階で全力を見せる人ではない。
斬さんは私よりもずっと先にいる。
それに斬さんの本当の凄さは、敵を見て一瞬で実力を測り、見合った技で対応したということだ。
決して他人に誇ることなく、己の為すべきことを為す。
それは戦いに於いて絶対に勝つという信念からのことだ。
「「業」もまだまだじゃな。これしきで我らを殺せると思っておるのか。まったく甘い奴よ」
斬さんはちょっと不満そうな顔をしていた。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「宇羅、《ヴィイ》をやったのは誰だ!」
「業」様が叫んだ。
驚かれ、同時に大層お怒りだと分かった。
《ヴィイ》は石神くらいにしか斃せないと我々は考えていたのだ。
《地獄の悪魔》以上の桁違いの戦力を持っている。
それが一撃で殺されてしまった。
石神は確実に出ていない。
そして信じられない奴が出て来たのだ。
「セイントです! あいつ、復活していました!」
「なんだと!」
妖魔の報告で分かっていた。
あれは間違いなくセイントだ。
しかしセイントは確かに《リェーズヴィエ(刃)》の攻撃で再起不能になったはずだった!
アメリカで療養していた時に、確かにそう診断されていた。
命こそ取り留めたようだったが、脊髄を損傷しtことで、両足と右腕の神経は寸断され、内臓の幾つかにも深刻なダメージがあった。
恐らくは数年の後に死ぬだろうと、確かにそう診断されていた。
それは潜り込ませたスパイの看護師が確かにカルテを見ており、実際に自分でもセイントを観察していた確実な情報だったはずだ。
それがどうして!
「セイントに間違いはないのか!」
「はい。あの「崋山」の銃を扱えるのはセイントだけです。死んだのであればともかく、セイントが生きているうちは誰にも扱えません」
「セイントを殺して次の人間が使っているのではないか?」
「それは考えにくいです。石神はセイントをこの上なく大切に思っておりました故」
「まんまと石神に騙されたか!」
「申し訳ありません!」
私の責任では無いのだが、「業」様にそれを言っても仕方がない。
それにもう一つお怒りの要件がある。
「《ズメイ》も一撃で殺されたな」
「はい。石神であればともかく、他の連中には簡単には斃せないはずでした」
《ズメイ》は《ヴィイ》以上に強力な大妖魔だった。
特に再生能力が高く、どんな攻撃も無効化してしまう。
誰が斃したのかも既に分かっていた。
「あのジジィがな」
「花岡斬です。間違いありません」
「あいつ、随分と強くなったものだ」
「……」
伏せていた顔を少しだけ持ち上げた。
「業」様が笑っていた。
「何とも憐れな。きっと必死になって石神に追いつきたいのだ。そして自分の手で私の首を奪いに来たいのだな」
「それは幾ら何でも」
「そうだ。ジジィが幾ら必死に努力しても、我と石神の間には到底立てない。それが滑稽で堪らん」
「はい、仰る通りかと」
「業」様は高らかに笑った。
「まあ、あのジジィには色々とやられもした。今度はあのジジィで遊んでみるか」
「それも一興です」
「石神もやはり100兆の妖魔でも殺せなかったな」
「はい、「業」様の予想通り、あやつもそれなりに高まっていることかと」
「良い。それでなくては我の敵として不足だ」
「業」様の御機嫌が戻った。
「宇羅、子どもたちはそろそろか?」
「はい、間もなく」
「それでは最後の花火を見ようか」
「はっ!」
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