富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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七年後 Ⅶ

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 2日後。
 「紅六花」専用の補給要塞「バビロン」が完成し、私も真夜と真昼を連れて見に行った。
 [紅六花」の広大な演習場に運び込まれ、その威容に驚いた。
 タカさんと《エアリアル》さん、それに蓮花さんたちも来ていた。

 「リッカァー!」
 「パティ! 会いたかったぁ!」

 六花さんと《エアリアル》さんがハグしている。
 本当に仲良しだ。
 設計は《エアリアル》さんで、建造は《レンカ・ラボラトリー》の兵器開発工廠だ。
 蓮花さんの護衛でミユキさんたちも来ていて再会を喜んだ。
 蓮花さんも《エアリアル》さんと仲良しなのだが、今日はゴツい外部骨格を着ているので《エアリアル》さんにハグを断られてしょんぼりしていた。
 可愛らしい。

 それにしてもでかい。
 円形の巨大な移動要塞で、直径は1300メートルらしい。
 中心にはやはり「ヘッジホッグ」が搭載されており、その他の防衛機構や宿舎や巨大ハンガーもある。
 恐らくデュールゲリエや「マルドゥック」のハンガーだ。
 蓮花さんが「紅六花」のメンバーを案内し、説明している。

 「「ヘッジホッグ」や防衛機構の他、「マルドゥック」のアサルトタイプ8、ディフェンスタイプ4、デュールゲリエ2000と《スズメバチ》4万を格納しています。宿舎は300名が宿泊出来、食糧は約2か月分を積載しております」

 各設備を案内された後で、宿舎の大ホールで説明を受けた。
 ここがそのまま作戦会議室にもなるようだ。
 巨大スクリーンに設備を紹介されながら説明される。

 「レッドオーガの格納は先ほど参りました外部レーンですが、みなさんであれば、そのまま地上から飛んでも来れるでしょう」

 要塞の甲板は高さ40メートルになっている。
 通常はそこから随時伸びるレーンを走って登る仕組みらしい。
 《轟霊号》の地上版という感じか。
 規模は大分小さいが。 
 タカさんが説明した。

 「今後は派遣部隊にこの《バビロン》を随行させようと考えている。補給艦でもあるし、救助者を収容することも出来る。お前ら、戦闘そっちのけで人助けしやがるからな!」

 みんなが笑った。
 そうなのだ。
 戦闘力は高い部隊なのだが、救助者を見つけるとそちらを優先するのも「紅六花」だった。
 もちろんその上で任務はちっちりと完遂するのだが。
 「トラキリー」の到着まで保護しているので、茜さんたちにいつも感謝されている。
 六花さんたちらしい。

 「この最初の移動要塞を《クリムゾン・バビロン》と命名する。お前らのものだ。十分に使え」

 大歓声が沸いた。

 「じゃあ、食事にしましょう。今日は特別な料理人を呼んでいますのよ?」

 蓮花さんの案内で食堂に移動した。
 100名が一度に座れる広いものだ。
 
 「小鉄!」

 タケさんが叫んだ。
 小鉄さんが厨房から出て来てみんな驚いた。

 「姉ちゃん! 総長もお久し振りです!」

 小鉄さんは日本にいて、「紅市」で『弱肉強食』を今も営業している。
 戦闘には向かないので、残ったのだ。
 最初は一緒にアラスカに来ると言っていたのだが、タケさんに断られた。
 ここでご両親の遺志を継いで欲しいと言われ、泣きながらそれに従った。
 「紅市」は「暁園」の亜蘭さんと子どもたちが防衛を引き継いでいる。
 「紅六花二代目」を名乗り、街の様々な慈善事業も引き継いでいる。
 小鉄さんもそこで暮らしているのだ。

 「どうしてお前が!」
 「姉ちゃんたちに、久し振りに俺の飯を喰って欲しくてさ。石神さんに頼んだんだ」
 「そうなのかよ!」

 タカさんが笑って言った。

 「小鉄がここの初代料理長だ。まあ、今日でクビだけどな!」
 「アハハハハハ」

 みんなが爆笑した。

 「デュールゲリエたちが料理を作ってくれる。まあ、小鉄がレシピと調理法を教えているから、いつでも注文しろ。今日は小鉄が「トラチャーハン」と「リッカチャンハン」を作ってくれる」

 みんなが叫んだ。
 小鉄さんが厨房に戻り、料理が出て来た。
 みんなで食べ始める。

 「小鉄! 腕を上げたな!」

 ラケさんが厨房に向かって叫んだ。
 大皿に盛られたチャーハンだったが、後から別なチャーハンが来た。
 小鉄さん自身で運んで来た。

 「おい、なんだコレ?」
 「俺が作らせた。「コテッチャンハン」だ!」

 みんなが爆笑し、群がって食べ始めた。
 ハムカツが乗っており、濃厚なソースが掛かっている。
 これも美味しかった!

 「美味いぞ!」
 「やるな、小鉄!」
 「バカ! トラの旦那のお陰だ!」
 「あ、そっか!」

 食事を終え、蓮花さんに案内されて甲板に出た。

 「それではこれから移動します」

 演習場には高さ40メートルの壁がある。
 《クリムゾン・バビロン》が壁に向かって移動を開始した。
 揺れは全くなく、無音に近い。
 壁が迫って来た。
 どうなるのか?
 すると垂直に上昇し、壁を軽々と乗り越えてそのまま飛行した。

 「空も飛べるのかよ!」

 みんなが驚いている。
 完全に水平を保ち、甲板でも抵抗は無い。
 時速は300キロというところか。

 「それでは加速いたします」

 そう言った蓮花さんをミユキさんが後ろから支えた。
 結構なGが掛かる。

 「えーと、現在マッハ3です。最大マッハ90まで加速出来ます。ですが甲板上では加速Gの制御が出来ませんので、今日はここまで」

 《クリムゾン・バビロン》が減速し、地上に降りた。
 地上から10メートルに浮かんでいるようだ。
 そのまま時速500キロで推進していく。
 大体、「レッドオーガ」の進軍速度だ。
 しばらくアラスカの原野を疾走した。
 凹凸や斜面も水平を保ったままで移動するのが分かった。
 
 「タカさん! 私もこういうの欲しい!」
 「お前、いつもボッチだろう!」
 「えーん!」

 真夜が蓮花さんに頼んでいた。

 「まあ、小型のものなら」
 「おい、無駄なものを作るな!」
 「でも……」
 「お前はちゃんと休め!」
 
 ルーとハーが寄って来た。

 「亜紀ちゃん、サバイバルだよ!」
 「どこでも食糧は手に入るよ!」
 「……」

 あんたらはそれで楽しいんだろうけどさ。
 
 「亜紀ちゃん、今度は一緒だから食べに来なよ!」
 「いいんですかぁ!」
 「もちろんだよ」
 「はい! ありがとうございます!」

 みんなが笑った。
 タカさんも苦笑してた。
 じゃあ、いいってことだぁ!



 その後の2週間。
 「紅六花」の皆さんは《クリムゾン・バビロン》を使った演習をしていた。
 いよいよ中国侵攻作戦《オペレーション・チャイナドール》が始まる。
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