2,997 / 3,202
七年後 Ⅶ
しおりを挟む
2日後。
「紅六花」専用の補給要塞「バビロン」が完成し、私も真夜と真昼を連れて見に行った。
[紅六花」の広大な演習場に運び込まれ、その威容に驚いた。
タカさんと《エアリアル》さん、それに蓮花さんたちも来ていた。
「リッカァー!」
「パティ! 会いたかったぁ!」
六花さんと《エアリアル》さんがハグしている。
本当に仲良しだ。
設計は《エアリアル》さんで、建造は《レンカ・ラボラトリー》の兵器開発工廠だ。
蓮花さんの護衛でミユキさんたちも来ていて再会を喜んだ。
蓮花さんも《エアリアル》さんと仲良しなのだが、今日はゴツい外部骨格を着ているので《エアリアル》さんにハグを断られてしょんぼりしていた。
可愛らしい。
それにしてもでかい。
円形の巨大な移動要塞で、直径は1300メートルらしい。
中心にはやはり「ヘッジホッグ」が搭載されており、その他の防衛機構や宿舎や巨大ハンガーもある。
恐らくデュールゲリエや「マルドゥック」のハンガーだ。
蓮花さんが「紅六花」のメンバーを案内し、説明している。
「「ヘッジホッグ」や防衛機構の他、「マルドゥック」のアサルトタイプ8、ディフェンスタイプ4、デュールゲリエ2000と《スズメバチ》4万を格納しています。宿舎は300名が宿泊出来、食糧は約2か月分を積載しております」
各設備を案内された後で、宿舎の大ホールで説明を受けた。
ここがそのまま作戦会議室にもなるようだ。
巨大スクリーンに設備を紹介されながら説明される。
「レッドオーガの格納は先ほど参りました外部レーンですが、みなさんであれば、そのまま地上から飛んでも来れるでしょう」
要塞の甲板は高さ40メートルになっている。
通常はそこから随時伸びるレーンを走って登る仕組みらしい。
《轟霊号》の地上版という感じか。
規模は大分小さいが。
タカさんが説明した。
「今後は派遣部隊にこの《バビロン》を随行させようと考えている。補給艦でもあるし、救助者を収容することも出来る。お前ら、戦闘そっちのけで人助けしやがるからな!」
みんなが笑った。
そうなのだ。
戦闘力は高い部隊なのだが、救助者を見つけるとそちらを優先するのも「紅六花」だった。
もちろんその上で任務はちっちりと完遂するのだが。
「トラキリー」の到着まで保護しているので、茜さんたちにいつも感謝されている。
六花さんたちらしい。
「この最初の移動要塞を《クリムゾン・バビロン》と命名する。お前らのものだ。十分に使え」
大歓声が沸いた。
「じゃあ、食事にしましょう。今日は特別な料理人を呼んでいますのよ?」
蓮花さんの案内で食堂に移動した。
100名が一度に座れる広いものだ。
「小鉄!」
タケさんが叫んだ。
小鉄さんが厨房から出て来てみんな驚いた。
「姉ちゃん! 総長もお久し振りです!」
小鉄さんは日本にいて、「紅市」で『弱肉強食』を今も営業している。
戦闘には向かないので、残ったのだ。
最初は一緒にアラスカに来ると言っていたのだが、タケさんに断られた。
ここでご両親の遺志を継いで欲しいと言われ、泣きながらそれに従った。
「紅市」は「暁園」の亜蘭さんと子どもたちが防衛を引き継いでいる。
「紅六花二代目」を名乗り、街の様々な慈善事業も引き継いでいる。
小鉄さんもそこで暮らしているのだ。
「どうしてお前が!」
「姉ちゃんたちに、久し振りに俺の飯を喰って欲しくてさ。石神さんに頼んだんだ」
「そうなのかよ!」
タカさんが笑って言った。
「小鉄がここの初代料理長だ。まあ、今日でクビだけどな!」
「アハハハハハ」
みんなが爆笑した。
「デュールゲリエたちが料理を作ってくれる。まあ、小鉄がレシピと調理法を教えているから、いつでも注文しろ。今日は小鉄が「トラチャーハン」と「リッカチャンハン」を作ってくれる」
みんなが叫んだ。
小鉄さんが厨房に戻り、料理が出て来た。
みんなで食べ始める。
「小鉄! 腕を上げたな!」
ラケさんが厨房に向かって叫んだ。
大皿に盛られたチャーハンだったが、後から別なチャーハンが来た。
小鉄さん自身で運んで来た。
「おい、なんだコレ?」
「俺が作らせた。「コテッチャンハン」だ!」
みんなが爆笑し、群がって食べ始めた。
ハムカツが乗っており、濃厚なソースが掛かっている。
これも美味しかった!
「美味いぞ!」
「やるな、小鉄!」
「バカ! トラの旦那のお陰だ!」
「あ、そっか!」
食事を終え、蓮花さんに案内されて甲板に出た。
「それではこれから移動します」
演習場には高さ40メートルの壁がある。
《クリムゾン・バビロン》が壁に向かって移動を開始した。
揺れは全くなく、無音に近い。
壁が迫って来た。
どうなるのか?
すると垂直に上昇し、壁を軽々と乗り越えてそのまま飛行した。
「空も飛べるのかよ!」
みんなが驚いている。
完全に水平を保ち、甲板でも抵抗は無い。
時速は300キロというところか。
「それでは加速いたします」
そう言った蓮花さんをミユキさんが後ろから支えた。
結構なGが掛かる。
「えーと、現在マッハ3です。最大マッハ90まで加速出来ます。ですが甲板上では加速Gの制御が出来ませんので、今日はここまで」
《クリムゾン・バビロン》が減速し、地上に降りた。
地上から10メートルに浮かんでいるようだ。
そのまま時速500キロで推進していく。
大体、「レッドオーガ」の進軍速度だ。
しばらくアラスカの原野を疾走した。
凹凸や斜面も水平を保ったままで移動するのが分かった。
「タカさん! 私もこういうの欲しい!」
「お前、いつもボッチだろう!」
「えーん!」
真夜が蓮花さんに頼んでいた。
「まあ、小型のものなら」
「おい、無駄なものを作るな!」
「でも……」
「お前はちゃんと休め!」
ルーとハーが寄って来た。
「亜紀ちゃん、サバイバルだよ!」
「どこでも食糧は手に入るよ!」
「……」
あんたらはそれで楽しいんだろうけどさ。
「亜紀ちゃん、今度は一緒だから食べに来なよ!」
「いいんですかぁ!」
「もちろんだよ」
「はい! ありがとうございます!」
みんなが笑った。
タカさんも苦笑してた。
じゃあ、いいってことだぁ!
その後の2週間。
「紅六花」の皆さんは《クリムゾン・バビロン》を使った演習をしていた。
いよいよ中国侵攻作戦《オペレーション・チャイナドール》が始まる。
「紅六花」専用の補給要塞「バビロン」が完成し、私も真夜と真昼を連れて見に行った。
[紅六花」の広大な演習場に運び込まれ、その威容に驚いた。
タカさんと《エアリアル》さん、それに蓮花さんたちも来ていた。
「リッカァー!」
「パティ! 会いたかったぁ!」
六花さんと《エアリアル》さんがハグしている。
本当に仲良しだ。
設計は《エアリアル》さんで、建造は《レンカ・ラボラトリー》の兵器開発工廠だ。
蓮花さんの護衛でミユキさんたちも来ていて再会を喜んだ。
蓮花さんも《エアリアル》さんと仲良しなのだが、今日はゴツい外部骨格を着ているので《エアリアル》さんにハグを断られてしょんぼりしていた。
可愛らしい。
それにしてもでかい。
円形の巨大な移動要塞で、直径は1300メートルらしい。
中心にはやはり「ヘッジホッグ」が搭載されており、その他の防衛機構や宿舎や巨大ハンガーもある。
恐らくデュールゲリエや「マルドゥック」のハンガーだ。
蓮花さんが「紅六花」のメンバーを案内し、説明している。
「「ヘッジホッグ」や防衛機構の他、「マルドゥック」のアサルトタイプ8、ディフェンスタイプ4、デュールゲリエ2000と《スズメバチ》4万を格納しています。宿舎は300名が宿泊出来、食糧は約2か月分を積載しております」
各設備を案内された後で、宿舎の大ホールで説明を受けた。
ここがそのまま作戦会議室にもなるようだ。
巨大スクリーンに設備を紹介されながら説明される。
「レッドオーガの格納は先ほど参りました外部レーンですが、みなさんであれば、そのまま地上から飛んでも来れるでしょう」
要塞の甲板は高さ40メートルになっている。
通常はそこから随時伸びるレーンを走って登る仕組みらしい。
《轟霊号》の地上版という感じか。
規模は大分小さいが。
タカさんが説明した。
「今後は派遣部隊にこの《バビロン》を随行させようと考えている。補給艦でもあるし、救助者を収容することも出来る。お前ら、戦闘そっちのけで人助けしやがるからな!」
みんなが笑った。
そうなのだ。
戦闘力は高い部隊なのだが、救助者を見つけるとそちらを優先するのも「紅六花」だった。
もちろんその上で任務はちっちりと完遂するのだが。
「トラキリー」の到着まで保護しているので、茜さんたちにいつも感謝されている。
六花さんたちらしい。
「この最初の移動要塞を《クリムゾン・バビロン》と命名する。お前らのものだ。十分に使え」
大歓声が沸いた。
「じゃあ、食事にしましょう。今日は特別な料理人を呼んでいますのよ?」
蓮花さんの案内で食堂に移動した。
100名が一度に座れる広いものだ。
「小鉄!」
タケさんが叫んだ。
小鉄さんが厨房から出て来てみんな驚いた。
「姉ちゃん! 総長もお久し振りです!」
小鉄さんは日本にいて、「紅市」で『弱肉強食』を今も営業している。
戦闘には向かないので、残ったのだ。
最初は一緒にアラスカに来ると言っていたのだが、タケさんに断られた。
ここでご両親の遺志を継いで欲しいと言われ、泣きながらそれに従った。
「紅市」は「暁園」の亜蘭さんと子どもたちが防衛を引き継いでいる。
「紅六花二代目」を名乗り、街の様々な慈善事業も引き継いでいる。
小鉄さんもそこで暮らしているのだ。
「どうしてお前が!」
「姉ちゃんたちに、久し振りに俺の飯を喰って欲しくてさ。石神さんに頼んだんだ」
「そうなのかよ!」
タカさんが笑って言った。
「小鉄がここの初代料理長だ。まあ、今日でクビだけどな!」
「アハハハハハ」
みんなが爆笑した。
「デュールゲリエたちが料理を作ってくれる。まあ、小鉄がレシピと調理法を教えているから、いつでも注文しろ。今日は小鉄が「トラチャーハン」と「リッカチャンハン」を作ってくれる」
みんなが叫んだ。
小鉄さんが厨房に戻り、料理が出て来た。
みんなで食べ始める。
「小鉄! 腕を上げたな!」
ラケさんが厨房に向かって叫んだ。
大皿に盛られたチャーハンだったが、後から別なチャーハンが来た。
小鉄さん自身で運んで来た。
「おい、なんだコレ?」
「俺が作らせた。「コテッチャンハン」だ!」
みんなが爆笑し、群がって食べ始めた。
ハムカツが乗っており、濃厚なソースが掛かっている。
これも美味しかった!
「美味いぞ!」
「やるな、小鉄!」
「バカ! トラの旦那のお陰だ!」
「あ、そっか!」
食事を終え、蓮花さんに案内されて甲板に出た。
「それではこれから移動します」
演習場には高さ40メートルの壁がある。
《クリムゾン・バビロン》が壁に向かって移動を開始した。
揺れは全くなく、無音に近い。
壁が迫って来た。
どうなるのか?
すると垂直に上昇し、壁を軽々と乗り越えてそのまま飛行した。
「空も飛べるのかよ!」
みんなが驚いている。
完全に水平を保ち、甲板でも抵抗は無い。
時速は300キロというところか。
「それでは加速いたします」
そう言った蓮花さんをミユキさんが後ろから支えた。
結構なGが掛かる。
「えーと、現在マッハ3です。最大マッハ90まで加速出来ます。ですが甲板上では加速Gの制御が出来ませんので、今日はここまで」
《クリムゾン・バビロン》が減速し、地上に降りた。
地上から10メートルに浮かんでいるようだ。
そのまま時速500キロで推進していく。
大体、「レッドオーガ」の進軍速度だ。
しばらくアラスカの原野を疾走した。
凹凸や斜面も水平を保ったままで移動するのが分かった。
「タカさん! 私もこういうの欲しい!」
「お前、いつもボッチだろう!」
「えーん!」
真夜が蓮花さんに頼んでいた。
「まあ、小型のものなら」
「おい、無駄なものを作るな!」
「でも……」
「お前はちゃんと休め!」
ルーとハーが寄って来た。
「亜紀ちゃん、サバイバルだよ!」
「どこでも食糧は手に入るよ!」
「……」
あんたらはそれで楽しいんだろうけどさ。
「亜紀ちゃん、今度は一緒だから食べに来なよ!」
「いいんですかぁ!」
「もちろんだよ」
「はい! ありがとうございます!」
みんなが笑った。
タカさんも苦笑してた。
じゃあ、いいってことだぁ!
その後の2週間。
「紅六花」の皆さんは《クリムゾン・バビロン》を使った演習をしていた。
いよいよ中国侵攻作戦《オペレーション・チャイナドール》が始まる。
3
あなたにおすすめの小説
芙蓉は後宮で花開く
速見 沙弥
キャラ文芸
下級貴族の親をもつ5人姉弟の長女 蓮花《リェンファ》。
借金返済で苦しむ家計を助けるために後宮へと働きに出る。忙しくも穏やかな暮らしの中、出会ったのは翡翠の色の目をした青年。さらに思いもよらぬ思惑に巻き込まれてゆくーーー
カクヨムでも連載しております。
【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。
文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。
父王に一番愛される姫。
ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。
優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。
しかし、彼は居なくなった。
聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。
そして、二年後。
レティシアナは、大国の王の妻となっていた。
※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。
小説家になろうにも投稿しています。
エールありがとうございます!
後宮なりきり夫婦録
石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」
「はあ……?」
雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。
あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。
空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。
かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。
影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。
サイトより転載になります。
【完結】狡い人
ジュレヌク
恋愛
双子のライラは、言う。
レイラは、狡い。
レイラの功績を盗み、賞を受賞し、母の愛も全て自分のものにしたくせに、事あるごとに、レイラを責める。
双子のライラに狡いと責められ、レイラは、黙る。
口に出して言いたいことは山ほどあるのに、おし黙る。
そこには、人それぞれの『狡さ』があった。
そんな二人の関係が、ある一つの出来事で大きく変わっていく。
恋を知り、大きく羽ばたくレイラと、地に落ちていくライラ。
2人の違いは、一体なんだったのか?
烏の王と宵の花嫁
水川サキ
キャラ文芸
吸血鬼の末裔として生まれた華族の娘、月夜は家族から虐げられ孤独に生きていた。
唯一の慰めは、年に一度届く〈からす〉からの手紙。
その送り主は太陽の化身と称される上級華族、縁樹だった。
ある日、姉の縁談相手を誤って傷つけた月夜は、父に遊郭へ売られそうになり屋敷を脱出するが、陽の下で倒れてしまう。
死を覚悟した瞬間〈からす〉の正体である縁樹が現れ、互いの思惑から契約結婚を結ぶことになる。
※初出2024年7月
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる