富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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《オペレーション・チャイナドール》

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 《オペレーション・チャイナドール》。
 「チャイナドール」とは、凶暴化した《ニルヴァーナ》の犠牲者を指す。
 つまり、この作戦は中国国内の汚染された地域を浄化する作戦であり、《ニルヴァーナ》の感染者の駆逐を目的としている。
 そして同時に「業」に与する中国内部の人間を排除する目的もある。
 《ニルヴァーナ》に汚染されて凶暴化した状態の人間を、俺たちは《ソリッドバイオレンサー》と呼んで
 その《ソリッドバイオレンサー》は犠牲者だ。
 何も知らずに理性を奪われて怪物となった人たちだ。
 しかし、その原因を作った連中は人類の裏切り者だ。
 決して犯してなならない罪だ。

 中国は昔からだが利権によって様々な派閥があり、自国の国民性を知ってのことか、度々大規模な粛清が行なわれて来た歴史がある。
 利権の奪い合いで、敵対する人間たちを平然と殺してしまうのだ。
 しかも膨大な数をだ。
 「業」の出現により、派閥間の軋轢が激化し、一国の中で四分五裂するという状況が続いた。
 共産党という一党独裁でありながら、政権の交代の度に多くの人間が浮沈して来た。
 そのために国内の多くの場所で「業」に乗っ取られ、《ニルヴァーナ》の汚染被害も深刻になっている。
 そればかりか、政権が脆弱になるにつれ、各地が「業」の支配下に置かれ、《ハイヴ》などの建造も加速した。
 もう中国政府に任せてはおけない事態となり、俺たちが乗り出すことになった。
 もはや「虎」の軍で占領するという時期を超え、中国全土の浄化作戦しかなかった。

 作戦前日。
 鷹の「ブレイド・ハート」が集めた情報を伝えながら、作戦参加の全兵士にブリーフィングを行なった。
 各隊の作戦目標の映像を見せながら、現状を把握させた。
 多くの大都市が《ニルヴァーナ》の汚染によって壊滅的な状況だ。
 大都市は《ソリッドバイオレンサー》だらけになり、通りには腐敗した遺体が無数に転がっている。
 小さな町や村でも同じような状況だ。
 生存者の姿は一切無い。
 《ソリッドバイオレンサー》は生きている人間を襲う修正があるので、外には出られない状態とも考えられるが、死体の数からして、その可能性は低いだろう。
 全員が沈痛な面持ちで映像を観ている。

 その後、部隊ごとに詳細な作戦行動の説明に入る。
 俺は「紅六花」の説明に同席した。

 「お前たちは特に汚染の酷い大都市に侵攻してもらう。まだ感染していない人間がいる可能性もあるが、その救出は「トラキリー」に任せろ。お前たちは感染者の駆逐に専念しろ」
 「トラ、「Ωワクチン」の接種はしないのですか?」
 「必要ない。感染時間の判別に費やす時間が無い。救助者の呼びかけに応じた者だけを救い出せばいい。それは「トラキリー」に任せろ。とにかくお前たちは都市からの感染拡大を防ぐために、感染者を駆逐しろ」
 
 六花を始め、「紅六花」の全員が黙っている。
 任務とはいえ、非情な作戦だ。
 しかし中国国土はあまりにも広い。
 それに人口は10億もいたのだ。
 感染拡大を阻止するためには、感染者の「浄化」しか無い。
 さらに言えば、「Ωワクチン」の数が足りないのだ。
 蓮花は量産を必死で急がせているが、工程の複雑さからまだ余裕のある量ではない。

 「恐らく戦闘中に「業」の反撃がある。お前たちならば大抵の状況は大丈夫だろうが、危険な場合はすぐに石神家の剣聖たちも支援に飛ぶ」
 「攻撃の規模は?」
 「不明だ。ただ、お前たちが行く大都市は、「業」の側でも重要な土地と考えている。多くの感染者がいるということは、《ニルヴァーナ》の養殖場のようなものだからな」
 「分かりました」

 《ニルヴァーナ》はどこかの施設で増産されているはずだが、最も手軽に培養できるのは感染者を増やすことだ。
 だから中国が狙われたのだった。
 恐らくロシア国内でも同様以上の事態になっているのだろうが。

 よしこが具体的な説明をしていく。
 まず「トラキリー」による都市への呼びかけを行なう。
 生存者がいた場合には「トラキリー」が救出するが、その支援に「紅六花」も対応する。
 安全確保のために、生存者のいる場所を中心に周辺の感染者《ソリッドバイオレンサー》を駆逐していく。
 バイオノイドやライカンスロープもいるはずなので、それらも駆逐する。
 だが、恐らくはほとんど生存者はいないだろう。
 あの汚染の状況で、生き残るのは奇跡に近い。
 
 「カリン、お前は10名を率いて生存反応の無い場所をとにかく破壊しろ。お前たちが主力部隊となる。他は各5名ずつのチームに分かれ、生存反応のあった地域に向かえ。「トラキリー」のみなさんとの共同作戦が多いだろうから、戦闘があったらお助けしろ。生存者がいなくなったら、総長、お願いします」
 「分かった」

 都市ごと、六花が消滅させるのだ。
 六花の奥義「クリムゾン・ヘル」を使う。
 よしこは更に作戦中の反撃に対する対処を説明していく。
 よしことタケは作戦参謀として優秀になって来た。
 六花や仲間を護ろうとする愛が、そうさせたのだ。
 幾度もの出撃があったが、「紅六花」81名はただの一人も欠けていない。

 俺は他のブリーフィングも覗いて行ったが、どこも士気は旺盛だった。
 桜大隊の所へいた双子が俺を見つけて寄って来た。

 「タカさん、万一の場合は私たちも出るからね」
 「一江さんと大森さんが作戦指揮は執るから」
 「そうか」
 「タカさん、何か嫌な予感がするね」
 「分かるか」
 「「うん」」

 俺と同様に、二人にも戦場の勘が宿って来た。
 そもそもが未知の要素が多い作戦だ。
 支援体制も整えているし、西安基地にもソルジャーたちを増員している。
 西安基地には石神家の剣聖も10人常駐している。
 滅多なことでは対応出来ないはずがないのだが、俺は嫌な予感があった。

 3時間後。
 全ての部隊が「タイガーファング」へ搭乗し、中国大陸へ飛び立った。
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