富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

文字の大きさ
3,011 / 3,215

《オペレーション・チャイナドール》 XⅣ

しおりを挟む
 48時間が経過した。
 アラスカからの応援が来て、ソルジャーは交代である程度は休めることが出来たが、中核の聖さん、石神家や亜紀ちゃんたちは抜けるわけには行かなかった。
 一体どれほどの疲労が蓄積していることか。
 食事は時々持って行くが、身体を休めることは出来ない。
 短時間で食事と水分補給をするだけだ。
 上級ソルジャーとデュールゲリエたちは一撃で数百の妖魔を斃す。
 実際にはその程度の数では焼け石に水、というものだ。
 いないよりはましという程度だ。
 現実の戦線を支えているのは石神家の剣聖の方々、セイント、亜紀ちゃん、竹流だ。
 その人間たちは最低でも一撃で数十から数百億の妖魔を屠っている。
 特に後から参戦してくれた怒貪虎さんが桁違いに凄まじい。
 前にお会いしたことはあるが、カエルの仙人らしい。
 「タイガー」が抜けたことで乱れた戦線が、怒貪虎さんのお陰で見事に持ち直した。
 それに、石神家の剣聖の方々の気合が凄まじく高まった。
 だから大空洞から漏れ出る妖魔がほとんどいないのだ。
 時折漏れ出した妖魔も、「ハイドラ」が頑張って駆逐している。
 そちらも見事だった。
 とにかく中核の皆さんは大技を連続して撃っている。
 今の所は誰も脱落していないが、限界は必ず来る。
 「マルドゥック」たちも常に数百万の妖魔を駆逐している。
 最も凄まじいのは武神「ルシファー」だった。
 秒単位で数千億の妖魔を駆逐している。
 あれで全出力ではないのだ。
 「ルシファー」の周囲には、常時敵との間に空間がある。
 密集した敵の中にあって、攻撃がその空間を作っているのだ。
 先に《レイ》は武神の追加投入を提案しなかった。
 武神はまだあと4体いたはずだ。
 これほどの戦力でありながら、何故だろう。
 だが、「ルシファー」の戦闘を見ていると理由が分かる気がする。
 あれが決戦兵器だということは知識としてはあるのだが、どれほどの戦力かは私たちにも教えられていない。
 「タイガー」と、あとは蓮花さんだけが知っているのだ。
 何らかの理由で、制御出来ないのだろうか?
 いや、現実に今、限定的な戦闘を「タイガー」から命じられ、その通りに行動しているではないか。
 ではなぜ……
 誰もが限界の中で頑張っている。
 だから私もどうしても確認しておきたかった。
 私は蓮花さんに連絡した。

 「一江様、そのことでございますか」
 「ええ、他の武神を出撃させるわけには行かないのですか?」
 「……」

 蓮花さんはしばらく沈黙していた。
 映像通話なので、蓮花さんの表情も映っているが、とても沈痛なものであった。

 「お気持ちはよく分かりますが、やはりお話し出来ません。ですが、「武神」の運用は本当に出来ないのです」
 「制御法に問題があるのでしょうか?」
 「……そうとも言えます。ただ、本来は人類が扱ってはならぬ兵器なのです。いいえ、兵器と言うのも正しくはありません。石神様は《審判者》と言っておられました」
 「《審判者》……」
 「はい、最期の審判でございます。今回は危急のこととて、石神様が運用なさいました。ですので《ルシファー》も審判を下さないはずでございます」
 「それは一体……」

 私は独り言ち、蓮花さんは当然黙っていた。

 「分かりました。無理な質問をいたしました」
 「いいえ、そちらの戦場が大変なことは理解しております。今、「マルドゥック」の換装を急ピッチで進めております。必ず間に合わせますので」
 「はい、宜しくお願いします」

 「マルドゥック」の換装の話は聞いていなかったが、蓮花さんたちもこちらのために懸命に取り組んでくれているらしい。
 2時間後に新型「マルドゥック」が届き、蓮花さんの言葉通りに凄まじい攻撃力でまた戦線が安定した。
 それから更に6時間後、「タイガー」が帰還した。

 

 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■



 「高虎さん!」

 大空洞の中の「神」の結界が崩壊し、高虎さんが上がって来た。
 そのお姿がすっかり変わってしまっていた。
 途中で墜落しそうになった。
 私は思わず飛び出し、高虎さんを支えた。
 高虎さんから預かっている「常世渡理」を背中の鞘に納め、高虎さんを抱き締めた。
 お身体が痩せ細っている。
 あの美しく端正なお顔が、頬が大きく削げて酷くやつれてしまっている。
 一体どれほどの負担を強いられたことか。

 「虎蘭、「常世渡理」を抜け。戦線を離れるな」
 「でも! そのお身体は!」
 「大丈夫だ。まだまだ敵は多いぞ!」
 「高虎さん、一度下がって下さい!」
 「今はいい。お前たちもそろそろ限界だろう」
 「大丈夫です! でも高虎さんは!」
 
 高虎さんは一瞬笑顔を私に向け、上空から攻撃を再開した。
 私はお傍にいながら、やはり攻撃を始めるが心配でならない。
 高虎さんのお身体は凄まじい疲労が蓄積しているはずだが、お見事な攻撃を放っていた。
 でも口では大丈夫と言いながらも、あのお身体は厳し過ぎる。
 「神」との戦闘はやはり相当無理があったのだ。
 高虎さんだからこそ、何とか勝利した。
 そのことがありありと伺えるほどの衰弱だった。
 やはり技は凄まじいが精彩を欠いている。
 いつもの高虎さんではない。

 怒貪虎さんが来た。
 高虎さんに近づく。

 「ケロケロ」
 「はい?」 

 そのまま首の後ろを殴られ、怒貪虎さんが気絶した高虎さんを抱えて飛んで行った。
 強制的に休ませてくれるのだろう。
 私は一層気合を入れて攻撃した。
 他の剣聖たちも必死だ。
 でも止まるわけには行かない。




 私は見る見る小さくなって行く高虎さんを見送った。
 何とか御無事で。
 ここは私たちで必ずやりますから!
しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

裏切りの代償

中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。 尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。 取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。 自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

完結‼️翡翠の歌姫は 後宮で声を隠す〜特殊な眼を持つ歌姫が、2人の皇子と出会い、陰謀に巻き込まれながら王家の隠した真実に迫る

雪城 冴
キャラ文芸
1/23本編完結‼️ 【中華サスペンス】 皇帝が隠した禁忌の秘密。 それを“思い出してはいけない少女”がいた―― 【あらすじ】 特殊な眼を持つ少女・翠蓮(スイレン)は、不吉を呼ぶとして忌み嫌われ、育ての父を村人に殺されてしまう。 居場所を失った彼女は、宮廷直属の音楽団の選抜試験を受けることに。 しかし、早速差別の洗礼を受けてしまう。 そんな翠蓮を助けたのは、危険な香りをまとう皇子と、天女のように美しいもう一人の皇子だった。 それをきっかけに翠蓮は皇位争いに巻き込まれ、選抜試験も敵の妨害を受けてしまう。 彼女は無事合格できるのか。 ◆二章◆ 仲間と出会い、心を新たにするも次なる試練が待ち受ける。 それは、ライバル歌姫との二重唱と、メンバーからの嫌がらせだった。 なんとか迎えた本番。翠蓮は招かれた地方貴族から、忌み嫌われる眼の秘密に触れる。 ◆三章◆ 翠蓮の歌声と真心が貴妃の目にとまる。しかし後宮で"寵愛を受けている"と噂になり、皇后に目をつけられた。 皇后の息子から揺さぶりをかけられ、もう一人の皇子とは距離が急接近。 しかし、後宮特有の嫌がらせの中で翠蓮は、自分の存在が皇子に迷惑をかけていると知る。 わずかに芽生えていた恋心とも尊敬とも付かない気持ちは、押さえつけるしかなかった。 ◆最終章◆ 後宮で命を狙われ、生死をさまよう翠蓮は、忘れていた記憶を取り戻す。 かつて王家が封じた“力”とは? 翠蓮の正体とは? 身分違いの恋の行方は? 声を隠すか歌うのか。 運命に選ばれた少女が、最後に下す決断とは―― ※架空の中華風ファンタジーです ※アルファポリス様で先行公開しており、書き溜まったらなろう、カクヨム様に移しています ※表紙絵はAI生成

あまりさんののっぴきならない事情

菱沼あゆ
キャラ文芸
 強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。  充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。 「何故、こんなところに居る? 南条あまり」 「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」 「それ、俺だろ」  そーですね……。  カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。

✿ 私は夫のことが好きなのに、彼は私なんかよりずっと若くてきれいでスタイルの良い女が好きらしい 

設楽理沙
ライト文芸
累計ポイント110万ポイント超えました。皆さま、ありがとうございます。❀ 結婚後、2か月足らずで夫の心変わりを知ることに。 結婚前から他の女性と付き合っていたんだって。 それならそうと、ちゃんと話してくれていれば、結婚なんて しなかった。 呆れた私はすぐに家を出て自立の道を探すことにした。 それなのに、私と別れたくないなんて信じられない 世迷言を言ってくる夫。 だめだめ、信用できないからね~。 さようなら。 *******.✿..✿.******* ◇|日比野滉星《ひびのこうせい》32才   会社員 ◇ 日比野ひまり 32才 ◇ 石田唯    29才          滉星の同僚 ◇新堂冬也    25才 ひまりの転職先の先輩(鉄道会社) 2025.4.11 完結 25649字 

理想の『女の子』を演じ尽くしましたが、不倫した子は育てられないのでさようなら

赤羽夕夜
恋愛
親友と不倫した挙句に、黙って不倫相手の子供を生ませて育てさせようとした夫、サイレーンにほとほとあきれ果てたリリエル。 問い詰めるも、開き直り復縁を迫り、同情を誘おうとした夫には千年の恋も冷めてしまった。ショックを通りこして吹っ切れたリリエルはサイレーンと親友のユエルを追い出した。 もう男には懲り懲りだと夫に黙っていたホテル事業に没頭し、好きな物を我慢しない生活を送ろうと決めた。しかし、その矢先に距離を取っていた学生時代の友人たちが急にアピールし始めて……?

処理中です...