【中間選考残作品】医大生が聖女として異世界に召喚されましたが、魔力はからっきしなので現代医術の力で治癒魔法を偽装します!【3章終】

みやこ。@他コン2作通過

文字の大きさ
42 / 43
王都誘致編

絶対零度の第一王子フリードリヒと時の賢人カイロスとの邂逅①

しおりを挟む



 ルイスの病は予想通りペストであった為、小夜は慣れた手付きで治療を施す。ミハエルとルイスは初めて見る医療器具や薬を興味深そうに眺めていたのが小夜には何だか可笑しく感じた。
 小夜の献身の甲斐も有りルイスの病状は大分落ち着いてきていた。峠は乗り越え、今後は快方に向かうだろう。

 忙しい日々を過ごす内に小夜が首都ディアマントにある離宮に来てから2週間程が立った。
 小夜は用意された煌びやかなドレスに袖を通す事無く、相変わらず白衣のままだ。分厚く重いスカートではいざという時動けない為、この世界にはミスマッチとは思いつつも頑なに元いた世界の格好を貫き通していた。(それ以外にも気恥ずかしいのと万が一汚れた時に弁償出来ないという理由も有る)

 そんなある日、遂に王様やミハエルの兄が生活する宮殿へ行く機会が出来た。
 何でも、月に一度だけ家族揃っての食事会を開くらしい。良い機会だから宮殿を案内するというミハエルに付いて離宮とは比べ物にならない程豪奢な建物内に足を踏み入れる。

「昔読んだ絵本の中の世界みたい! ⋯⋯一体幾らくらい掛かってるのかしら」
「サヨは元気だな。オレは晩餐会の事を考えると今から憂鬱だというのに⋯⋯」

 舞い上がる小夜に対して、青い顔をして口元を抑えるミハエル。その瞳には薄らと涙が滲んでいる。

(そういえば、ミハエルは家族仲が上手くいってないんだっけ⋯⋯)

「それって絶対参加しないといけないものなの?」
「此れも務めなんだ、放棄する訳にはいかない」
「⋯⋯そう。あっ、あれは何かしら!?」

 少しでもミハエルの気を紛らわせようと、咄嗟に目についた絵画についての話題を振る。
 金色の額縁に入ったその絵には4人の男性が描かれていた。神々しいオーラを放つ3人の男達はキトンの上にヒマティオンを纏い、その内の1人が月桂冠を掲げている。その前には跪く半裸姿の男がおり、察するにその男が月桂冠を戴くシーンを表現しているようだ。

「宗教画、かしら?」

 何故かその絵画に強く興味を惹かれた小夜は引き寄せられるように歩を進める。
 そして、余りに夢中になっていた小夜は前方から歩いて来る人物に気付かなかった。

「きゃっ!?」
「⋯⋯!」

 ドンっと強い衝撃を感じ、足を捻った小夜はそのまま前に倒れ込む。
 打つかったのは肩程の長さの金髪を青いリボンで緩く結んだ男性。男性越しに前を見れば彼に付き従うようにして控える優しい顔付きをした黒髪の男性が居た。

「サヨ、大丈夫か!」
「う、うん」

 心配そうな顔で駆け寄るミハエルに返事をしてから、目の前の男性に向き直る。

(此れはまた御伽話に登場するようなイケメンだわ⋯⋯。癖のない艶やかな金髪に吸い込まれそうな青い瞳、ツンと高い鼻と涼しげな印象の目元。神経質そうで少し怖いけれど⋯⋯この人、誰かに似ているような——)

 小夜は男に寄りかかった事を忘れ考えに耽《ふけ》る。
 すると、突進した小夜を受け止めるようにして身体を支える男は凍える様な青い瞳を向け、口を開いた。恐らく、無言のまま惚ける小夜に痺れを切らしての事だろう。

「⋯⋯そろそろ良いだろうか」

 頭上から冷たい声が降ってくる。背筋に走る悪寒にぶるりと身体を震わせた小夜は我に返り、直ぐにその男性から離れた。

「すっ、すみません!!」

 飛び退いた小夜が改めて金髪の男性を見ると、彼は青をその身に纏っていた。
 この国では高貴な者のみに許されるとされる青を、だ。


(ジャケットやスラックス、胸元の宝石にピアスまで⋯⋯きっと、それなりに位の高い人なんだわ)

 彼の衣服や装飾品に至るまで青色がふんだんに使われており、小夜は思わずまじまじと見つめてしまう。それに装飾品には全て貴重なブルーダイヤモンドがあしらわれていた。赤を纏うミハエルとは対極的なまでの青に目を奪われる——。
 しかし、それに気付いた男性はあからさまに顔を顰《しか》めた。

「何か?」
「いえ、何でも⋯⋯っ」

(不味いわ、私ってばつい知らない人の顔をジロジロと⋯⋯!)

 小夜が狼狽えていると、それを庇う様にミハエルが前に出る。

「⋯⋯兄上、申し訳ございません」
「!!」

(あ、兄上!? ⋯⋯ってお兄さんって事よね? 通りで顔の造りが似ている筈だわ)

 衝撃の事実に一頻り驚いた後、既視感の正体に合点がいった小夜はすっきりとした心持ちで2人を見やる。
 ミハエルの本性を知っていると正反対とも思える2人だったが目鼻立ちや骨格が似ており、やはり王族というだけあってどこか近付き難い雰囲気を放っていた。

「お前か。⋯⋯形ばかりとはいえ家族のよしみで一つだけ忠告してやろう。客人は選ぶ事だ、お前の品位までも落とす事になるぞ」

 感情の窺えない表情でミハエルの顔を一瞥し、そう言い放った兄王子。彼は何処からか現れたメイドから新しい手袋を受け取り付け替えると此方を振り返る事なくその場を後にする。

(え? それだけなの? 久しぶりに会った弟なのに?)

 2人の会話や流れる空気が余りに他人行儀で、黒宮家とはまるで違う事に小夜は戸惑いを隠せなかった。







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーレムです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

花嫁召喚 〜異世界で始まる一妻多夫の婚活記〜

文月・F・アキオ
恋愛
婚活に行き詰まっていた桜井美琴(23)は、ある日突然異世界へ召喚される。そこは女性が複数の夫を迎える“一妻多夫制”の国。 花嫁として召喚された美琴は、生きるために結婚しなければならなかった。 堅実な兵士、まとめ上手な書記官、温和な医師、おしゃべりな商人、寡黙な狩人、心優しい吟遊詩人、几帳面な官僚――多彩な男性たちとの出会いが、美琴の未来を大きく動かしていく。 帰れない現実と新たな絆の狭間で、彼女が選ぶ道とは? 異世界婚活ファンタジー、開幕。

男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜

タナん
ファンタジー
 オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。  その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。  モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。  温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。 それでも戦わなければならない。  それがこの世界における男だからだ。  湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。  そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。 挿絵:夢路ぽに様 https://www.pixiv.net/users/14840570 ※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

残念女子高生、実は伝説の白猫族でした。

具なっしー
恋愛
高校2年生!葉山空が一妻多夫制の男女比が20:1の世界に召喚される話。そしてなんやかんやあって自分が伝説の存在だったことが判明して…て!そんなことしるかぁ!残念女子高生がイケメンに甘やかされながらマイペースにだらだら生きてついでに世界を救っちゃう話。シリアス嫌いです。 ※表紙はAI画像です

異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜

キノア9g
ファンタジー
「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」 20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。 一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。 毎日19時更新予定。

甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜

具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」 居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。 幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。 そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。 しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。 そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。 盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。 ※表紙はAIです

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...