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第七章 俺の可愛い婚約者は渡さない!
第八十一話 衣装合わせのあと4 重鎮の夜会は肩身が狭い
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何度か袖を通しても未だに似合った試しのない夜会服に身を包み、一人で会場であるハーミング伯爵邸の玄関ホールに立つ。
ハーミング伯爵は王宮の財務部門の重鎮だ。若かりし頃には、当時宰相をしていたマグナレイ侯爵相手にかなりやりあったらしい。
いまは、領地の運営に尽力されていて登城するのは貴族院の会合に参加される時くらいだが、未だに王宮の文官達への影響力は大きい。財務部門で働いているケインなんて名前を聞いただけで身震いするくらいだ。
本日の夜会はハーミング伯爵家のお嬢様が近々ご結婚されるということで、そのお祝いを兼ねて開かれている。
結婚の相手は元近衛騎士団団長の息子で、王太子殿下からの信頼も厚く将来を有望視されている。
文官と武官の重鎮の子供同士の結婚のお祝いに、名だたる貴族やその子息令嬢達が駆けつけていた。
招待状を受付の使用人に見せただけで素通りしていく高位貴族達を尻目に、俺は招待状とマグナレイ侯爵家の蝋印が押された封書を渡しても待ちぼうけを食らっていた。
クソジジイ! 何が代理が来るのはあちらも織り込み済みだ。
受付の使用人が困惑してたじゃないか!
下っ端の使用人が家令だか執事だかに確認を済ませ終えたらしく、ようやく俺は受付を通される。
いつも通りクソジジイに振り回されていることに腹の中で悪態をつきながら、大広間へと歩を進めた。
さっさと伯爵に挨拶をして代理の役割を果たさなくては……
そう思って広間を見回してもハーミング伯爵はいない。
目についた使用人に尋ねると、他の領主達と個室で歓談されているとのことだった。夜会の会場はただのダンスホールではない。事業や投資の話などが裏では飛び交っている。盛り上がればなかなか出てこないだろう。
流石にハーミング伯爵に挨拶せずに帰るわけにはいかない。
誰か他に挨拶すべき相手がいればそちらを先に済ますことにしよう。
そう考えたが、挨拶できそうな相手がいない。知っている顔がいないわけではないが、領主や役職がかなり上の官吏ばかりだ。気軽に声をかけられるような相手ではない。
再び辺りを見回すと、王太子殿下の側近を見つけた。ハーミング伯爵令嬢の結婚相手が王立学園内での王太子殿下の護衛を任されていることもあり、親交が深いため参加されたのだろう。
王太子殿下の元で一緒に仕事をしている割にあまり話をしない側近の青年に声をかけるか躊躇う。
声をかけたところで話が弾まないことは目に見えている。
こんな時にお坊ちゃんでもいれば勝手に話をしてくれて気楽なのにな……
普段は煩わしい暢気なお坊ちゃんに会いたくなる日が来るなんて思ってもみなかった。
俺はため息をつき、外の風でも浴びようとバルコニーに向かう。
「ステファン様」
背後から聞き慣れない女性の声で呼び止められた。
ハーミング伯爵は王宮の財務部門の重鎮だ。若かりし頃には、当時宰相をしていたマグナレイ侯爵相手にかなりやりあったらしい。
いまは、領地の運営に尽力されていて登城するのは貴族院の会合に参加される時くらいだが、未だに王宮の文官達への影響力は大きい。財務部門で働いているケインなんて名前を聞いただけで身震いするくらいだ。
本日の夜会はハーミング伯爵家のお嬢様が近々ご結婚されるということで、そのお祝いを兼ねて開かれている。
結婚の相手は元近衛騎士団団長の息子で、王太子殿下からの信頼も厚く将来を有望視されている。
文官と武官の重鎮の子供同士の結婚のお祝いに、名だたる貴族やその子息令嬢達が駆けつけていた。
招待状を受付の使用人に見せただけで素通りしていく高位貴族達を尻目に、俺は招待状とマグナレイ侯爵家の蝋印が押された封書を渡しても待ちぼうけを食らっていた。
クソジジイ! 何が代理が来るのはあちらも織り込み済みだ。
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下っ端の使用人が家令だか執事だかに確認を済ませ終えたらしく、ようやく俺は受付を通される。
いつも通りクソジジイに振り回されていることに腹の中で悪態をつきながら、大広間へと歩を進めた。
さっさと伯爵に挨拶をして代理の役割を果たさなくては……
そう思って広間を見回してもハーミング伯爵はいない。
目についた使用人に尋ねると、他の領主達と個室で歓談されているとのことだった。夜会の会場はただのダンスホールではない。事業や投資の話などが裏では飛び交っている。盛り上がればなかなか出てこないだろう。
流石にハーミング伯爵に挨拶せずに帰るわけにはいかない。
誰か他に挨拶すべき相手がいればそちらを先に済ますことにしよう。
そう考えたが、挨拶できそうな相手がいない。知っている顔がいないわけではないが、領主や役職がかなり上の官吏ばかりだ。気軽に声をかけられるような相手ではない。
再び辺りを見回すと、王太子殿下の側近を見つけた。ハーミング伯爵令嬢の結婚相手が王立学園内での王太子殿下の護衛を任されていることもあり、親交が深いため参加されたのだろう。
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声をかけたところで話が弾まないことは目に見えている。
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普段は煩わしい暢気なお坊ちゃんに会いたくなる日が来るなんて思ってもみなかった。
俺はため息をつき、外の風でも浴びようとバルコニーに向かう。
「ステファン様」
背後から聞き慣れない女性の声で呼び止められた。
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