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いつも通りオレは勝手に勉強机に備え付けられている椅子に腰掛ける。
4畳半程度の部屋にでかいテレビと音響セットを置いているからか、他の家具は勉強机と夢がいっぱい詰まった本棚しか置かれていない。
蒸し暑くなってきたというのに冷房もかけずに部屋の窓は全開だ。いつも俺が来る時は部屋の片隅に畳んで置かれている布団は、本当に体調が悪かったからか広げられたままだった。
そんな豪華なんだか殺風景なんだかどっちつかずの部屋で、部屋の主は布団の上に所在なさげに座り込んでいる。
「気持ちの整理がつかないのは分かったからさ。明日は学校に来いよ」
「無理」
「体調が悪いのか?」
「そういうわけじゃないけど……」
そう言って俯いたまま沈黙する。
カロン……
氷が溶けて麦茶のコップを鳴らす音が響く。
待ってくれ。ヲタトークしか話題を盛り上げられないオレはこんな時に気の利いたことは言えない。
オマエが黙ると間がもたない……
何か言うべきか?
いまテレビをつけるのは違うよな。
どうすりゃいい?
「だって……男達がみんな私に傅いていた記憶がどんどん思い出されていくのに、いまの現実は妹にさえ、蔑まれていて……」
オレが戸惑っていると、ポツリポツリとどう反応していいのかわからない話が始まる。
「私は小さい頃から村一番の美少女で、みんなにチヤホヤされて育ったの。でも貧しい村の、貧しい農民の娘だった私は都会の華やかな暮らしに憧れていて……ある日、村にやってきた旅一座に踊り子として一緒に連れいってもらうことにしたの」
想像以上にベタな話にオレは耳を傾けるフリをしながら、勉強机に広がるラノベやパソコンを盗み見る。
そろそろ文化祭に毎年文芸部で発行する部誌に載せる小説の締め切りだ。
流行りに乗っかって異世界転生物の小説を書くって息巻いていたから、締め切りに追われて現実と妄想の区別がつかなくなってきたんだろうか……
「……私を見た皇帝陛下が一目惚れして、側妃として後宮に召し上げられたの」
どっぷり世界にはまり込んでいるのか、女言葉で喋っているコイツはなんだか艶かしい。
暑いからなのか、大きめのTシャツ一枚だけ羽織っていてるだけだ。
いや。別にコイツは俺が遊びにきても楽なカッコでいたいからと、いつもこんなカッコなんだけど……横座りしてしどけなく投げ出された脚が妙に目に焼き付く。
コイツの脚ってすね毛もなくて白くてほっそりとしていたっけ?
脚ばかり見ていることに気がつき慌てて視線をあげる。
目にかかるほど伸びた髪の毛を耳にかきあげる指先をじっと見つめていると、俺の視線を感じたのかゆっくりと視線を合わせるように、潤んだ大きな瞳が俺を捉える。
「……なのにいまの現実は冴えないオタクの男子高校生で、今朝も妹に汚物を見るような目で見られたの。傾国の美女の記憶と冴えない男子高校生の記憶が混濁していて気持ちの整理がつかないわ」
その大きな瞳から涙が一筋溢れた。
4畳半程度の部屋にでかいテレビと音響セットを置いているからか、他の家具は勉強机と夢がいっぱい詰まった本棚しか置かれていない。
蒸し暑くなってきたというのに冷房もかけずに部屋の窓は全開だ。いつも俺が来る時は部屋の片隅に畳んで置かれている布団は、本当に体調が悪かったからか広げられたままだった。
そんな豪華なんだか殺風景なんだかどっちつかずの部屋で、部屋の主は布団の上に所在なさげに座り込んでいる。
「気持ちの整理がつかないのは分かったからさ。明日は学校に来いよ」
「無理」
「体調が悪いのか?」
「そういうわけじゃないけど……」
そう言って俯いたまま沈黙する。
カロン……
氷が溶けて麦茶のコップを鳴らす音が響く。
待ってくれ。ヲタトークしか話題を盛り上げられないオレはこんな時に気の利いたことは言えない。
オマエが黙ると間がもたない……
何か言うべきか?
いまテレビをつけるのは違うよな。
どうすりゃいい?
「だって……男達がみんな私に傅いていた記憶がどんどん思い出されていくのに、いまの現実は妹にさえ、蔑まれていて……」
オレが戸惑っていると、ポツリポツリとどう反応していいのかわからない話が始まる。
「私は小さい頃から村一番の美少女で、みんなにチヤホヤされて育ったの。でも貧しい村の、貧しい農民の娘だった私は都会の華やかな暮らしに憧れていて……ある日、村にやってきた旅一座に踊り子として一緒に連れいってもらうことにしたの」
想像以上にベタな話にオレは耳を傾けるフリをしながら、勉強机に広がるラノベやパソコンを盗み見る。
そろそろ文化祭に毎年文芸部で発行する部誌に載せる小説の締め切りだ。
流行りに乗っかって異世界転生物の小説を書くって息巻いていたから、締め切りに追われて現実と妄想の区別がつかなくなってきたんだろうか……
「……私を見た皇帝陛下が一目惚れして、側妃として後宮に召し上げられたの」
どっぷり世界にはまり込んでいるのか、女言葉で喋っているコイツはなんだか艶かしい。
暑いからなのか、大きめのTシャツ一枚だけ羽織っていてるだけだ。
いや。別にコイツは俺が遊びにきても楽なカッコでいたいからと、いつもこんなカッコなんだけど……横座りしてしどけなく投げ出された脚が妙に目に焼き付く。
コイツの脚ってすね毛もなくて白くてほっそりとしていたっけ?
脚ばかり見ていることに気がつき慌てて視線をあげる。
目にかかるほど伸びた髪の毛を耳にかきあげる指先をじっと見つめていると、俺の視線を感じたのかゆっくりと視線を合わせるように、潤んだ大きな瞳が俺を捉える。
「……なのにいまの現実は冴えないオタクの男子高校生で、今朝も妹に汚物を見るような目で見られたの。傾国の美女の記憶と冴えない男子高校生の記憶が混濁していて気持ちの整理がつかないわ」
その大きな瞳から涙が一筋溢れた。
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