Proof

Yuki

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3章

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 その轟音の正体は、王室の窓の外からも見える位置に飛び出した。
ヴァイツ「あればなんだ?蝶か?」
ケーニヒ「なんだ、【クロライド】の者じゃないのか?なんだあの禍々しい力は…」
 空中に浮かぶそれは、女性だった。しかし、背中からは黒い羽を生やし、蝶のように見える。その禍々しさに一同が目を奪われた次の瞬間、蝶は複数の黒い触手のようなものを飛ばし、王室を襲った。
 王室にいた各々は飛び退いて躱したかわした。ケーニヒは、ハーンが覆い被さる形で伏せ、躱すことができた。
 身動きのとれないヴァイツは、スキャットの盾にされ、攻撃をもろに受けた。
ヴァイツ「こいつ…エネルギー密度もたかい…」
 ヴァイツの傷口は、黒く変色していく。
「毒か?!」
 王室にいた全員が混乱を極める中、成実は窓から飛び出していた。
成実「遥!」
 成実は気づいたのだ。蝶の姿をした、遥であることに。しかし、遥の顔に生気は無く、成実の叫びにも応えない。遥は無表情のまま、毒の攻撃を成実に向けて放った。
 成実は考えるよりも身体が反応していたため、無策で空中に飛び出ていた。遥の攻撃が直撃しそうになる。
成実「っ…!!」
 身構えた成実は、後ろから飛び出したハーンに掴まれ、王室へと投げられる。そしてハーンは剣を構え、攻撃を受止めた。
ハーン「ぐっ!」
 攻撃の勢いで王室へと弾かれる。
ハーン「はぁ…物理攻撃ではあって良かった。剣で防げる。」
 ハーンが分析を口にしたが、突然膝をついた。
ケーニヒ「これは…薄いが、気化した毒も入ってきているのか…」
成実「遥…なにしてんだ…」
ハーン「彼女は、柿崎隊の人間かな?様子がおかしい。あんな力を持っていたのかい?」
成実「違う!あいつとは幼なじみだが、初めて見る!なんなんだ…」
ハーン「とにかく止める!まだ動けるかい?」
成実「ああ!」
 遥の黒い毒の攻撃は、王室以外にも飛んでいる。しかし、市街地に向けた攻撃よりも王室への攻撃の方が多い。高いエネルギー反応に向けてオートで攻撃が行われているのだろう。
成実「今日、柿崎隊は戦闘体を1度解除している!今の遥が戦闘体である可能性は低い!」
ハーン「シールドでも攻撃は防げるようだ。伊沖隊長は生身だからシールドを出せない…。僕が攻撃を防ぎながら突撃する。伊沖隊長は、後ろを着いてきて、彼女の感情を揺さぶるんだ。自我を取り戻せば、収まるかもしれない。」
成実「了解!」
 ハーンがまず窓から飛び出す。毒の弾丸を防いだシールドは、黒く変色し崩れ落ちる。ハーンは立て続けにシールドを貼っては崩し、遥までの道を作る。
 間を置いて成実が後を追う。
 シールドで防がれる毒の弾丸を見て、遥はその弾速、弾数、毒の濃度を上げた。
ハーン「くっ!」
 ハーンはとにかくシールドを無数に作る。エネルギー効率は悪く、魔力は枯渇し始める頃だ。
 しかし、ハーンはシールドの質と量を落とすことなく、手前手前へと作る。
成実「失礼します!」
 成実はハーンを踏み台に、ハーンとシールドの間に飛び出し、遥との距離を詰める。
成実「遥!目を覚ませ!」
 成実は両手で遥の両腕を掴んだ。
成実「やべっ!落ちるっ!おい!遥!」
 ぶら下がる形ではあるが、成実は遥かに呼びかける。
 このとき、遥の体表からも毒は出ていて、掴んでいる成実を蝕むはずだった。
 成実は無意識に身体の周りに魔力を通わせ、毒が手から侵入するのを防いでいた。
成実「遥!」
遥「我が名は黒揚羽くろあげは。やっと目覚めたのだ。その名で呼ぶでない。」
 遥は無表情のまま応えた。
ハーン「まずい!もう防ぎきれない!」
 ハーンの推進力も落ち、緩やかに落下を始める。
ハーン「まだ俺に力があれば!この国も…彼らも…護る…!」
 シールドには物理的作用が存在しない。故に、シールドを足場に空中で戦うということができない。
 ハーンの身体はその場で浮いた。シールドに乗ったわけでもなく。
 ハーンはシールドを貼り続けることができた。成実を毒の弾丸から守り続ける。
成実「遥!帰ろう!もう戦わなくていいんだ!」
遥「うるさい!私の魔力が今は勝っている!このまま、まずはこの国から手に入れる!」
成実(くそ!どうやったら…)
 もみ合う成実は、はずみで遥の首元にある、フードのボタンを外してしまった。
 外れたフードは宙を舞う。
成実(そうだ…すっかり…忘れてた…。)
 成実の中には、ずっと疑問があった。それは柿崎隊の隊服が決まってから。
 柿崎隊の隊服にはフードが付いている。しかしそれは、トップスとは別で独立していて、フードだけで取り外しできる。
成実(オシャレぐらいにしか思ってなかった…。でも…)
 成実が今、抱えてきた疑問を思い出したのには意味があった。成実の目に入っていたのは、遥の首と鎖骨の間にある蝶の模様をしたアザだった。
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