幸せの日記 〜Out diary〜

Yuki

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1章 「夏目 涼香」

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「いきなりでごめんね。幼稚園の時からずっと一緒で、私に優しくしてくれた遥希くん。遥希くんはリーダーシップがあって、頭の回転が早くて、人のために行動できる人だと思います。ずっと側にいてほしい。遥希くんの苦しみも分けて欲しい。男女の友情か、恋なのかわからなくなってしまったけど、私にはこれからも遥希くんが必要で、遥希くんが私を必要として欲しいと思い、告白しました。恋人関係になれなくても、これからもずっと仲良しでいられるといいな。遥希くんに、他に好きな人がいたとしても、私はずっとずっと遥希くんが好きです。」
  ーーー夏目涼香が高野遥希に送った手紙より

 夏目涼香は仲の良い夫婦のもと、最初の子供として生まれた。決して裕福でもなく、決して貧しくもなく、人並みの環境で育ち、幼稚園を卒園する頃、両親が離婚した。幼い涼香には親の仲が悪いようには見えず、なぜお父さんと離れるのか理解できず泣きじゃくった。
「ごめんな、涼香。俺たちの勝手な都合で悲しい思いをさせてしまうことになる。これからは一緒に過ごせない。でも、俺も涼香も生きてればまだ会えるんだ。これからも俺はお前の成長を見続けるよ。」
 そう言って父親は涼香の元から離れた。父親の自分に向ける寂しそうな目と、母親に向ける安らかな目を涼香は覚えていた。世間でいう離婚がどのようなものかわかった今の涼香には疑問の残る光景だった。
 そして小学校2年生の時、母親は再婚した。新しいお父さんは気さくな人で、涼香はすぐに懐いた。今にして思えば、新しい父親というだけで難しくなる距離感を、どうにか埋めようと努力する人だったのかもしれない。4年生に上がる頃には弟もできた。やはり可愛いもので、たくさん世話を焼いた覚えがあった。
 学校では明るく生活していた。宿題も欠かさず行い、友達とも遊びにいき、優等生の部類に入っていた。その影には、憧れでもあった遥希の存在もあったのかもしれない。しかし、涼香の中にあった大きな思いとして、親や弟に胸を張れる家族でいようとしたからだった。離婚したことを申し訳なく思っている母親の気持ちに、涼香は幼いながらに気づいていた。寂しい気持ちもあったけど、私は楽しくやっているよという気持ちを表現するためであった。
 しかし、勉強もできて友達に人気のある女子というのは妬みの対象になる。一部の同性からは嫌がらせを受けるようになる。その中には幼稚園の時よく遊んでいた友達、ゆうも含まれていた。人を信じられなくなった原因の1つである。
 嫌がらせをするのはほんの一部の人間であり、大多数は涼香の味方だった。ゆえに、目立った嫌がらせを受けたことはなかった。仲間外れにされたり、わざと筆箱を落とされたり、「嫌い」という感情を伝えるくらいにしかストレスを与えないものだった。優たちは、苦手な人と距離をおく、という誰でもする行動ではあった。ただ、優たちは傷つける方法で距離をとってしまったのだ。涼香は、優に嫌われた、という深い傷を負った。
 他に友達はたくさんいた。人によってはそんなこと、と笑い飛ばす出来事。それが涼香にとってはきつかった。しかし、涼香はその落胆を表に出さなかった。あくまで、親に心配をかけない優等生の長女であり続けた。少しずつ、彼女の中にギャップが生まれる。
 初めてリストカットをしたのは中学生1年目の冬。たまたま指につくった切傷に興味を惹かれた。長袖を着ているから他の人にバレることはない。そう思うと行動するまでは早かった。自分の体を傷つけることになんの抵抗もなかった。手の甲側の手首を傷つけるだけ。死ぬこともない。「私なんか誰も気にしない」そう言い聞かせて自分の血を見て落ち着くようになっていた。
 4月くらいまではリスカをすることでなんとか気持ちを保っていた。夏になり、制服や普段着が半袖になった頃が問題だった。半袖では手首を隠せない。リスカすることによって心を落ち着けることがもう癖になっていた。リスカをやめる代わりに依存したのが遥希だった。

  それから涼香はリスカと春樹への依存を繰り返し、今に至る。遥希だけを信じられるものとし、自分の殻に閉じこもっていた。外では明るく振る舞う仮 面ペルソナをつけ、そのストレスをリスカと遥希への想いでコントロールしながら。
 そして遥希への想いを告げ、能力に目覚めることで運命の渦に巻き込まれていく。
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