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4章 「月摘 栞凪」
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「え!栞凪ちゃんランキング載ってるよ。」
「やば。クラス1位じゃん。学年4位だって。」
「やった。冬休み勉強したもん。」
涼香、真季、栞凪が冬休み明けテストの結果表の前で話す。
「すごいね。アイドル活動の裏でどれだけ勉強してるの…。」
「何言ってんの。涼香ちゃんも9位に着いてるじゃん。」
「え!!涼香…裏切ったの…。私の名前もないかな。」
「真季ちゃん、あの点数なら下から数えたほうが早いよ…。」
「本当だ…名前ない…。涼香はクリスマスデートしてて勉強してないと思ってた…。」
「真季ちゃん、その話詳しく。」
「ちょっと栞凪ちゃん?!聞かなくていいよ。」
冬休み明け、3人が話す場面も増え、教室でも見慣れた光景になってきた。そこにクラスで目立つタイプの女子が会話に入ってくる。
「え!すご…!月摘さん、今度一緒に勉強教えて!」
「う、うん…。時間見つけるね…。」
栞凪は勢いに負けたように頷く。
「私の名前、覚えてる?あのね…。」
「お、覚えてるよ。河 島 悠 里ちゃんだよね。」
「本当にクラスメイトの名前覚えてるんだね…。すご…。ねえ、今日一緒に帰ろうよ。」
「い、いいけど…今日は事務所に寄ってから帰るよ?涼香ちゃん達もいい?」
そうして4人で帰る話が盛り上がっていた。
優太は考えていた。
(事件は無事解決して俺の出番無くなったな…。栞凪に声かける理由無くなってしまったな。何を理由に一緒に帰ろうか…。)
優太が諦めていると、ホームルームも終わりに近づいていた。隣の教室からは下校が始まったようだ。優太が廊下の方に視線を向けると、栞凪が4人で帰っている姿が目に入った。
(あれは確か河島…か?去年同じクラスだったっけ。河島が栞凪と話すようになったのか。これならクラスに馴染むのも早いかもな。放送室ジャックも無駄じゃなかったか。)
ホームルームを終えた優太のクラスも下校が始まる。
「遥希、俺先に帰るわ。ちょっと用事があって。今日は係の仕事があるんだろ?ごめんな。」
優太は遥希と別れ、足早に靴箱を出た。上靴から下履に履き替え、かかとに手を運んだ時にふと我に帰る。
(これで俺が追ってっても俺がストーカーになるだけか?事件解決したばっかりなのにか?)
諦めて普通のペースで帰ろうと決意し、履き終えた足を地につけると、クシャっと音がした。せっかく履いた靴を脱ぎ、靴の中を確認する。
(やべ、ラブレター踏んじまった。なになに。美術室裏の踊り場?3階じゃねぇか。名前は…この子は去年同じクラスの…。)
優太は実はモテる。中学生の頃から女子人気は高かった。人当たりの良さと、影で見せるリーダー性が人を惹きつけていた。しかし、男友達が多く、女友達を異性として見ていない雰囲気が強いため、告白されることも、良い雰囲気になることもなく高2まで上がり、本人にモテる自覚がないまま放送室ジャックの日を迎える。その日、全員の意識が少し変えられたと同時に、女子に共通の認識をもたらした。『このままでは月摘 栞凪に優太を取られてしまう』
焦り始めた女子達は行動に出た。呼び出して告白する者、頻繁に話しかけに行くようになった者、まずは連絡先を手に入れようとする者。
今回の告白はあれから3度目くらいだろうか。
(毎日どっかに呼び出されるな…。靴箱とか引き出しとか筆箱の中とか。先に連絡先聞いてくんねぇかな。ん?もしかして俺モテ期か?)
優太はどの呼出にも応じていた。今は栞凪との関係が波に乗り始めた優太は、誰であっても断っている。優太は友達になりたい、連絡先を交換しよう、など友達を増やすことや、相手の女子を気遣った言葉掛けをするため、さらに燃える女子が増えていた。栞凪のことが好きだから、の一言を言わないため諦められることもなく、嫉妬に繋がることも無かった。実際、放送室ジャック事件から栞凪と優太が一緒に帰っているところを目撃した者はおらず、思い過ごしのような認識になりつつあった。
それから1ヶ月、栞凪のアイドル活動も再開し始め、優太は一緒に帰る理由を見つけては栞凪が学校に来る2回に1回は一緒に帰っていた。そのメンバーには涼香、真季、遥希、悠里が含まれているが。
優太は悠里と話すことも増えた。連絡先も交換し、頻繁にメッセージを送り合っていた。悠里は栞凪達ともすぐに仲良くなり、6人はよく見る集まりとなっていた。女子だけで出かけたりもしている話を優太は聞いていた。
6人の居心地が良くなった頃、事件は起きる。
平日の真ん中、優太が風呂上がりに携帯を触っているとメッセージの通知が鳴る。
『明日、2人で話がしたい。』
『どうしたんだ?相談事?』
『そんなところ。直接話させて…。』
『わかった。明日、朝でいいか?』
『放課後がいいな…』
『わかった…放課後な。』
優太はモヤモヤを抱えながら次の日を迎える。次の日、優太の予想は的中する。
放課後、人気のない部室棟の一角。待っていたのは緊張した面持ちの悠里。
「あ、あのね。私、去年から優太くんのことが好きで…。そ、その…最近一緒に帰れたりメッセージのやり取りしたりして、やっぱり楽しくて。………私と…付き合ってください」
優太の目をまっすぐ見上げ、気持ちを伝え切った悠里。
「ごめんな。俺、まだ好きとかよくわかんないんだ。でも、俺も河島と話すの楽しかった。もっと仲良くなってから考える、じゃ…だめ?」
「じゃあ今度の土曜、私とお出かけして。」
「おっ。いいね。じゃあ遥希達も誘って…。」
優太の言葉を遮り、悠里の言葉が吐き出される。その表情には影が落ちていた。
「嘘つき。」
「え?」
「栞凪のことが好きなんでしょ。まだ好きとかわかんないなんて嘘つき。」
「誰がそんなこと…」
「わかるよ。どれだけ一緒に帰って、話して、見てたか。去年からずっと見てるんだよ。」
「ありがとな…。俺を好きになってくれて。」
「あーあ、これじゃ報われない。せっかく声かけたのに。」
落ち込む悠里の姿に優太は心を痛めたが、拭いきれない違和感を感じた。
「…声をかけた、って今の言葉…俺に声かけた、じゃないよな。」
「……優太くんにだよ。」
「いや、俺に声をかけたのが報われないって…思ってないだろ。なんか、今のはもっと間接的な努力の言い方だろ。」
「…だったら何…?」
「俺の思ってる奴に話しかけたのが報われない努力って言うのか。」
「思ってる奴は栞凪でしょ。…そうよ。優太くんと仲良さそうだし、一緒に帰れるようになるかと思って。意味なかったな。」
「苦しんでるのわかっててダシにするやつなんだな。」
「私だって苦しいの!どうやったら気にかけてもらえるか、ずっと考えてたんだよ?!それなのに、栞凪のことが好きなんて。あんな女のどこがいいの?!アイドルだよ?どれだけ男がいるかも分からないし、どうせ振り向いてもらえないのに!栞凪と遊んでても、優太くんの話が出てきたことほとんどないよ?!…あ、一回あったか。誕生日か何かに本あげたでしょ?どれだけセンスないんだって言ってたよ。売ったらバレそうだし、置き場に困ってるって。私はそんなこと言わないよ?!振り向いてくれないアイドルなんかより私の方を好きにならない?!外見は負けるけど…。ブスでもないと思う!もっと可愛くなるために努力するから…」
必死に言葉を紡ぐ悠里から目を逸らし、優太は携帯を開く。
「俺はこんな酷い奴なんだ。告白してくれた女の子の連絡先をブロックするような。もう、俺のことも嫌いになってくれ。」
「な…なんでっ…。え?!」
「可愛さに優劣なんてないと思ってる。河島だって可愛いと思ってたよ。栞凪もクラスに馴染み始めたらしい。河島のおかげだよ。ありがとうな。」
「…?」
「俺は尊敬してたよ。頑張る人の味方ができる人なんだ、って思ってた。そう思ってる時が1番輝いて見えたよ。俺とも友達になってくれて嬉しかった。でも俺が尊敬した友達は幻だった。そうやって人を落とす時の表情って、どれだけ見るに耐えないか。誰も攻撃しない人になれた時、また声かけてくれ。」
そう言って振り返り、帰ろうとする優太。一瞬、思考が止まっていた悠里は背中に声をかける。
「ま、待ってよ。栞凪も優太の悪口を言ってた…」
「貴重な情報ありがとう。でも、俺の目のほうがまだ信用できるんだ。栞凪がその顔をしたことは無い。いつでも胸を張って人と向き合える、自慢の友達に見えてる。だから好きなんだ。そうやって最後まで人を落とさないと自分を上げられないなら、もう帰っていいか?」
「ご、ごめん。もう、人の悪口なんて言わないから…。友達に戻ろ…?お願い……。」
泣き崩れながら言葉をつなぐ悠里。
「だったら態度で見せてくれ。今、俺は河島と友達でいたくない。やり直させてくれ。明日から、また。」
座り込み、泣いている悠里に背をむけ優太は靴箱に向かった。
一部始終を見ていた存在に気づくことは無く。
次の日、悠里はいつも通り栞凪に声をかけていた。
「栞凪ちゃん、ごめん…。理由は聞かないで…。でも、謝らせて。ごめん。わがまま言って。」
「ど、どうしたの急に…。」
「ごめん、これからも友達で…いたい…。」
「え?!何があったの?泣いてる?私たち友達じゃなくなってたの?!」
「…ごめんね…。」
「私以外にも友達いっぱいいるじゃん。その…浮いてる私とそんな泣くまで友達になりたいってなんで思ってくれるの?」
「…正直に言うね。理由は二つあるの。私、優太くんが好き。優太くんとも友達でいられるために利用させて。もう一つの理由に昨日気づいたの。栞凪ちゃんと一緒に頑張っていれば、私も輝けるかな、と思って。私は何もしてあげられないけど…。自己中な理由だけど。私のために、栞凪ちゃんと友達でいたい。」
「友達って、そんなもんだよ。私も悠里ちゃん利用してクラスに居場所作ってるし。利用し合う関係だと思うよ。これからもお世話になります。」
「ふふっ…。お世話って…。何もできないよ。」
「何もしなくていいんだよ。いつも通りで。どんな理由があっても、どんなきっかけでも、信頼し合える関係なら友達に収束するんだよ。私と頑張ろ?」
「ありがと…。信用してもらえるよう…頑張るね…。」
「私も。そして、どっちが選ばれても応援できるようになろうね。」
「やば。クラス1位じゃん。学年4位だって。」
「やった。冬休み勉強したもん。」
涼香、真季、栞凪が冬休み明けテストの結果表の前で話す。
「すごいね。アイドル活動の裏でどれだけ勉強してるの…。」
「何言ってんの。涼香ちゃんも9位に着いてるじゃん。」
「え!!涼香…裏切ったの…。私の名前もないかな。」
「真季ちゃん、あの点数なら下から数えたほうが早いよ…。」
「本当だ…名前ない…。涼香はクリスマスデートしてて勉強してないと思ってた…。」
「真季ちゃん、その話詳しく。」
「ちょっと栞凪ちゃん?!聞かなくていいよ。」
冬休み明け、3人が話す場面も増え、教室でも見慣れた光景になってきた。そこにクラスで目立つタイプの女子が会話に入ってくる。
「え!すご…!月摘さん、今度一緒に勉強教えて!」
「う、うん…。時間見つけるね…。」
栞凪は勢いに負けたように頷く。
「私の名前、覚えてる?あのね…。」
「お、覚えてるよ。河 島 悠 里ちゃんだよね。」
「本当にクラスメイトの名前覚えてるんだね…。すご…。ねえ、今日一緒に帰ろうよ。」
「い、いいけど…今日は事務所に寄ってから帰るよ?涼香ちゃん達もいい?」
そうして4人で帰る話が盛り上がっていた。
優太は考えていた。
(事件は無事解決して俺の出番無くなったな…。栞凪に声かける理由無くなってしまったな。何を理由に一緒に帰ろうか…。)
優太が諦めていると、ホームルームも終わりに近づいていた。隣の教室からは下校が始まったようだ。優太が廊下の方に視線を向けると、栞凪が4人で帰っている姿が目に入った。
(あれは確か河島…か?去年同じクラスだったっけ。河島が栞凪と話すようになったのか。これならクラスに馴染むのも早いかもな。放送室ジャックも無駄じゃなかったか。)
ホームルームを終えた優太のクラスも下校が始まる。
「遥希、俺先に帰るわ。ちょっと用事があって。今日は係の仕事があるんだろ?ごめんな。」
優太は遥希と別れ、足早に靴箱を出た。上靴から下履に履き替え、かかとに手を運んだ時にふと我に帰る。
(これで俺が追ってっても俺がストーカーになるだけか?事件解決したばっかりなのにか?)
諦めて普通のペースで帰ろうと決意し、履き終えた足を地につけると、クシャっと音がした。せっかく履いた靴を脱ぎ、靴の中を確認する。
(やべ、ラブレター踏んじまった。なになに。美術室裏の踊り場?3階じゃねぇか。名前は…この子は去年同じクラスの…。)
優太は実はモテる。中学生の頃から女子人気は高かった。人当たりの良さと、影で見せるリーダー性が人を惹きつけていた。しかし、男友達が多く、女友達を異性として見ていない雰囲気が強いため、告白されることも、良い雰囲気になることもなく高2まで上がり、本人にモテる自覚がないまま放送室ジャックの日を迎える。その日、全員の意識が少し変えられたと同時に、女子に共通の認識をもたらした。『このままでは月摘 栞凪に優太を取られてしまう』
焦り始めた女子達は行動に出た。呼び出して告白する者、頻繁に話しかけに行くようになった者、まずは連絡先を手に入れようとする者。
今回の告白はあれから3度目くらいだろうか。
(毎日どっかに呼び出されるな…。靴箱とか引き出しとか筆箱の中とか。先に連絡先聞いてくんねぇかな。ん?もしかして俺モテ期か?)
優太はどの呼出にも応じていた。今は栞凪との関係が波に乗り始めた優太は、誰であっても断っている。優太は友達になりたい、連絡先を交換しよう、など友達を増やすことや、相手の女子を気遣った言葉掛けをするため、さらに燃える女子が増えていた。栞凪のことが好きだから、の一言を言わないため諦められることもなく、嫉妬に繋がることも無かった。実際、放送室ジャック事件から栞凪と優太が一緒に帰っているところを目撃した者はおらず、思い過ごしのような認識になりつつあった。
それから1ヶ月、栞凪のアイドル活動も再開し始め、優太は一緒に帰る理由を見つけては栞凪が学校に来る2回に1回は一緒に帰っていた。そのメンバーには涼香、真季、遥希、悠里が含まれているが。
優太は悠里と話すことも増えた。連絡先も交換し、頻繁にメッセージを送り合っていた。悠里は栞凪達ともすぐに仲良くなり、6人はよく見る集まりとなっていた。女子だけで出かけたりもしている話を優太は聞いていた。
6人の居心地が良くなった頃、事件は起きる。
平日の真ん中、優太が風呂上がりに携帯を触っているとメッセージの通知が鳴る。
『明日、2人で話がしたい。』
『どうしたんだ?相談事?』
『そんなところ。直接話させて…。』
『わかった。明日、朝でいいか?』
『放課後がいいな…』
『わかった…放課後な。』
優太はモヤモヤを抱えながら次の日を迎える。次の日、優太の予想は的中する。
放課後、人気のない部室棟の一角。待っていたのは緊張した面持ちの悠里。
「あ、あのね。私、去年から優太くんのことが好きで…。そ、その…最近一緒に帰れたりメッセージのやり取りしたりして、やっぱり楽しくて。………私と…付き合ってください」
優太の目をまっすぐ見上げ、気持ちを伝え切った悠里。
「ごめんな。俺、まだ好きとかよくわかんないんだ。でも、俺も河島と話すの楽しかった。もっと仲良くなってから考える、じゃ…だめ?」
「じゃあ今度の土曜、私とお出かけして。」
「おっ。いいね。じゃあ遥希達も誘って…。」
優太の言葉を遮り、悠里の言葉が吐き出される。その表情には影が落ちていた。
「嘘つき。」
「え?」
「栞凪のことが好きなんでしょ。まだ好きとかわかんないなんて嘘つき。」
「誰がそんなこと…」
「わかるよ。どれだけ一緒に帰って、話して、見てたか。去年からずっと見てるんだよ。」
「ありがとな…。俺を好きになってくれて。」
「あーあ、これじゃ報われない。せっかく声かけたのに。」
落ち込む悠里の姿に優太は心を痛めたが、拭いきれない違和感を感じた。
「…声をかけた、って今の言葉…俺に声かけた、じゃないよな。」
「……優太くんにだよ。」
「いや、俺に声をかけたのが報われないって…思ってないだろ。なんか、今のはもっと間接的な努力の言い方だろ。」
「…だったら何…?」
「俺の思ってる奴に話しかけたのが報われない努力って言うのか。」
「思ってる奴は栞凪でしょ。…そうよ。優太くんと仲良さそうだし、一緒に帰れるようになるかと思って。意味なかったな。」
「苦しんでるのわかっててダシにするやつなんだな。」
「私だって苦しいの!どうやったら気にかけてもらえるか、ずっと考えてたんだよ?!それなのに、栞凪のことが好きなんて。あんな女のどこがいいの?!アイドルだよ?どれだけ男がいるかも分からないし、どうせ振り向いてもらえないのに!栞凪と遊んでても、優太くんの話が出てきたことほとんどないよ?!…あ、一回あったか。誕生日か何かに本あげたでしょ?どれだけセンスないんだって言ってたよ。売ったらバレそうだし、置き場に困ってるって。私はそんなこと言わないよ?!振り向いてくれないアイドルなんかより私の方を好きにならない?!外見は負けるけど…。ブスでもないと思う!もっと可愛くなるために努力するから…」
必死に言葉を紡ぐ悠里から目を逸らし、優太は携帯を開く。
「俺はこんな酷い奴なんだ。告白してくれた女の子の連絡先をブロックするような。もう、俺のことも嫌いになってくれ。」
「な…なんでっ…。え?!」
「可愛さに優劣なんてないと思ってる。河島だって可愛いと思ってたよ。栞凪もクラスに馴染み始めたらしい。河島のおかげだよ。ありがとうな。」
「…?」
「俺は尊敬してたよ。頑張る人の味方ができる人なんだ、って思ってた。そう思ってる時が1番輝いて見えたよ。俺とも友達になってくれて嬉しかった。でも俺が尊敬した友達は幻だった。そうやって人を落とす時の表情って、どれだけ見るに耐えないか。誰も攻撃しない人になれた時、また声かけてくれ。」
そう言って振り返り、帰ろうとする優太。一瞬、思考が止まっていた悠里は背中に声をかける。
「ま、待ってよ。栞凪も優太の悪口を言ってた…」
「貴重な情報ありがとう。でも、俺の目のほうがまだ信用できるんだ。栞凪がその顔をしたことは無い。いつでも胸を張って人と向き合える、自慢の友達に見えてる。だから好きなんだ。そうやって最後まで人を落とさないと自分を上げられないなら、もう帰っていいか?」
「ご、ごめん。もう、人の悪口なんて言わないから…。友達に戻ろ…?お願い……。」
泣き崩れながら言葉をつなぐ悠里。
「だったら態度で見せてくれ。今、俺は河島と友達でいたくない。やり直させてくれ。明日から、また。」
座り込み、泣いている悠里に背をむけ優太は靴箱に向かった。
一部始終を見ていた存在に気づくことは無く。
次の日、悠里はいつも通り栞凪に声をかけていた。
「栞凪ちゃん、ごめん…。理由は聞かないで…。でも、謝らせて。ごめん。わがまま言って。」
「ど、どうしたの急に…。」
「ごめん、これからも友達で…いたい…。」
「え?!何があったの?泣いてる?私たち友達じゃなくなってたの?!」
「…ごめんね…。」
「私以外にも友達いっぱいいるじゃん。その…浮いてる私とそんな泣くまで友達になりたいってなんで思ってくれるの?」
「…正直に言うね。理由は二つあるの。私、優太くんが好き。優太くんとも友達でいられるために利用させて。もう一つの理由に昨日気づいたの。栞凪ちゃんと一緒に頑張っていれば、私も輝けるかな、と思って。私は何もしてあげられないけど…。自己中な理由だけど。私のために、栞凪ちゃんと友達でいたい。」
「友達って、そんなもんだよ。私も悠里ちゃん利用してクラスに居場所作ってるし。利用し合う関係だと思うよ。これからもお世話になります。」
「ふふっ…。お世話って…。何もできないよ。」
「何もしなくていいんだよ。いつも通りで。どんな理由があっても、どんなきっかけでも、信頼し合える関係なら友達に収束するんだよ。私と頑張ろ?」
「ありがと…。信用してもらえるよう…頑張るね…。」
「私も。そして、どっちが選ばれても応援できるようになろうね。」
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