6歳で死んでしまう少女は 精霊さんと共に生き延びる。

マキマキ

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国境沿いービリジアン辺境伯ー

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本来なら嫡男である、我が息子

マッズルが、この辺境の領地経営を行うはずだった。

未だ、老体に鞭を打ち私が頑張っている。

姉の方は、親交のあったライムグリーン辺境伯に嫁いだはずが、ホットドッグにハマり伯爵と共に、ホットドッグ店を営んでいる。


娘も娘婿もこんな感じだ。
アッチの国境は、大丈夫だろうか?
まあ、あの2人は人間離れした強さだから問題ないだろうが・・・。


我が息子の筋肉バカは魔獣退治や、戦闘、音楽ばかりやるものだから、勉強させようと沢山の教師を雇ったがダメだった。

この領地は国境沿いに、年々ほんの少しずつ高くなる山がある。大陸プレートが動いているのだ。よって、地震が起きやすい。

昔、津波などで大きな被害を出して来たと聞く。

よって、アホじゃ管理ができんのに。

我が息子は勉強しなかった。

全ての能力を駆使して、勉強から逃げた。

その力を何故、勉強に使わないのか頭を抱えた。


そんな、このビリジアン伯爵領を心配したアルベルト殿下より、殿下の元で学んでみないかと提案があった。

藁にも縋るつもりで、その提案に頷いた。


そんなわけで我が息子は今アルベルト殿下の元で、学校教育に携わっている。


今日、その息子が教え子を連れて里帰りする。

我が領地と隣接する国の言語の、ベルトラン語を学んだことのない子供達で、ベルトラン語の習得と共に文化や国際交流が目的のようだった。

アルベルト殿下に教えてもらったが、
マッズルは語学が堪能だったようだ。
直ぐに外国の人と陽気に
楽器を弾いたり、歌い、
サッカーやラグビー、野球、クリケットなど様々なスポーツを楽しんでうち溶けることができる才能があった。

そして、手で触り、実際に見て学び、実地に足を運び学ぶことで色んなことを吸収したようだった。

マッズルは、座って本やノートに書く勉強が退屈で嫌いだったらしい。

記憶力も良く、ノートやメモしなくても丸暗記しており、かなり優秀だったらしい。


勉強が苦手ばかりと思っていたが、アルベルト殿下に言われて息子の良さに初めて気がついたが、

「エッ?おれ、勉強は嫌いだぜ!
は?アレが勉強?なのか?!てっきり遊んでんだと思ってたぜ!俺が教師?
あっ!確かになんか子供達から先生と言われてるなって思ったわ。
俺は、てっきり子供と一緒に遊んで、お金をもらっていると思ってたぜ!ハッハッハ!」

前言撤回だ!このアホがっ!!

生徒さん達も、引いてるではないか!!

子供たちは、我が伯爵家でベルトランの子供たちと触れ合い、自国のお勧めのものを紹介したり、互いの国の料理、スポーツ、をして1週間合宿するそうだ。全て、マッズルが手配をした。

まあ、マッズル自身がどう捉えようと、あやつはいい先生をしているようだ。

なにより、勉強嫌いなアイツが考える授業は実践的で座学がない。

子供達も楽しそうで何よりだ。


そして、筋トレが所々に入っている・・・。

子供達も慣れたように、
「仕方ねーな。マッズル先生だもんな!なあ、お前らも一緒にやるぞ!」
と筋トレ国際交流をしている・・・。




我が領地は今では栄えて、豊かになった。

約400から500年前は、荒れ果てて、人が暮らしにくい土地だったそうだ。


ビリジアン伯爵領のテスロスは、
ベルトラン国境沿いにあり、海にも面した地域である。


ベルトラン国境沿いは、地殻変動によって出来た世界有数の山脈地帯だ。


この街は、赤い街と言われている。
多くの死者が出た街だからだ。

400年~500年前、
この間の暴君が納めた3年の間、
我が国の中で、最も被害が大きかった所でもある。

そして、復興までかなり時間がかかったと言われている。

暴君がいた時期の、領主やその部下たちは、ベルトラン王国のスパイと冤罪をかけられて処刑された。

そこから悲劇が始まる。

ベルトラン王国と国境沿いのこの街は昔は仲が良かった。

理由は魔獣を共に討伐し、自然災害の協力体制が出来ていたからだ。

両国共に自然災害、魔獣被害が多い地域にも関わらず、栄えていた。

しかし、討伐隊も災害対策に携わる官僚達も領主も、隣国に情報を漏らしたと言いがかりをつけられて、処刑されてしまった。


魔獣被害、地震、津波、貿易摩擦、自国の通貨没落、世界恐慌などで、街はあっという間に荒れ果てた。

役人は愚王の息の掛かった、不正ばかりする役人になり、税は高くなった。

街が貧しくなり、役人の不正で都市の管理機能は失われた。

役所が機能しなくなると、現れるのが、誘拐、人身売買、などだ。

そして、住めなくなった人々は他国に逃げる。


ベルトランへ難民として多くの人間が国境に押し寄せたそうだ。

危険な山脈地帯を越え、魔獣地帯を超えて、沢山の死者を出しながら、やってきた者たちは、

他国へ移れば未来は明るいと願いながら、困難を乗り越えて、国境沿いにやってくる。

実際は、言語の違いに苦しみ、仕事にも就けず、迫害など新たな苦しみが加わるだけだった。

治安が悪くなったベルトラン王国は早々に、難民受け入れを打ち切る。

民衆は、不公平だと怒った。理由は、打ち切ったと言いながら、ベルトランに有利な情報や技術を持った者はこっそり受け入れた事が発覚したからだ。

これもトワイライト帝国の暴君が流した情報だとされている。

さらにトワイライト帝国の暴君は、ごろつきを雇い、ベルトラン王国の騎士の格好をして難民の周りに火を放つよう命令する。

そしてトワイライト帝国軍を派遣し、

「ベルトランは非道な国!我らの富を奪うあの国から全てを取り返そう!」

と民衆を、煽る。

知識を沢山持ち、考える力があり、皆んなを纏める力のある人間は、恐怖政治で殺された。擦り切った民衆は簡単に騙された。

怒った民衆はベルトラン王国に傾れ込み、虐殺、略奪や強姦など様々な犯罪を犯した。

その後、新しい国王になった後、この犯罪に関わったものは全て、兵士でない妊婦であろうが、子であろうが処刑された。


裁判記録では、トワイライトの一般の民衆は鎮圧されるまで、ベルトランの捉えた住民を拷問、虐待など残虐に人を殺した内容が記載されていた。

気分が悪くなる内容だった。

証言では、その時は、それが正義だと思ったのだと多くの人が語った記録が残されている。


人間は、状況によっては残虐になってしまう。普通の人間がだ。

そうならないよう、自分もいつそうなるか分からないと捉える必要がある。

あの調書を読んで、情報は多角的に捉え、一つの情報に偏ってないか常に見直す必要があると強く思った。

そして、街や国を壊すのは、災害や魔獣じゃない。

人間だ。

災害で魔獣を退治する討伐隊がいなくなったり、管理する役人が全員死亡してしまう事は、記録によると、何度も起こって来た。

その度に亡くなった人を思いながら、何度も立ち上がり、人々は手を取り合い発展をして来た。

愚王が人間を踏みつけ、不安が人々の中に広がる。疑心暗鬼になる。

なぜ、俺たちばかり。不公平だ。

信じられるのは、富だけ。

やられる前に、やってしまおう。

人間は不安に駆られると、そう思ってしまう。

そして、自分が勝てる弱い相手から奪い取る。



絶望した人間が、国や街を荒れ果てさせたのだ。



裁判当時、トワイライトの新国王は幼く連合国の傀儡となるしかなく、発言力がまったくなかった。弁解の余地もなく、子供まで処刑される事態になったと言われている。


その裁判と処刑が行われたのが、テスロスの赤い街だった。

多くの血が流れた。


その後、元領主の息子が愚王の人質として王宮の牢の中にいることが発覚した。

私の祖先のタイラー ビリジアン伯爵だ。

彼は、テスロスに戻るなり、怒りと憎しみを、街の復興と国際協調にぶつけた。

本来なら、立て直しも困難であるとしていたが、世代を越えて何年も掛かり街を復興した。


そして、歴代領主は教育に力をそそぐ。
もう二度と、あの悲しい事件が起きないよう。自分で考える力を養うために。

そのお陰で、読み書き計算はほぼ領民全てが出来る。

我が領はお金の計算ができないものはほぼいないと統計が出ている。

学を身につけた領民達は、言葉を、巧みに操り、国益と共に国際協調もこなすようになった。

次第に、ベルトラン人達は我々を信頼してくれるようになった。


だが、完全に信頼されている訳ではない。
トワイライト帝国が原因で、何か起こるとベルトランの人の中には、あの時の報復をと言う人がいる。

戦争になりかけることもあるのが現状で、

まだ確執は残っている。



約500年経った今、ベルトランの国境沿いのベルトラン人は、よく言う。

「許すけど。忘れない!」


我々は、その言葉を胸に刻みつけている。
そして、我が領民達は、よくこう言う。

「自分の頭で考えろ。人のせいにするな!最善の結果を考え、そこに到達する為に何が出来るか考えろ、出来ることからやれ。」

我が祖先のタイラーがよく言っていたらしい。

家を創造し、煉瓦を一つ一つ積み上げればいつか家ができるように、

目標とやる事を見つける為に、我々は学ぶ。


私は、ビリジアン伯爵家にある

歴代の領主の絵が飾られた廊下で

領主の顔を見ながら、

そんな想いに耽っていた。


その時だった。

突然大きな揺れが襲った。


ドッシーン、ドッシーンと

近づいてくる。









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