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もう戻らないあの子ーやりてババアー
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たっく。
あの男また来やがった。
今日は水をかけてやった。
なのに、楼主に会わせろと
また来やがる。
この前は、若い衆に袋叩きに会っていた。
当然さ。
病気が蔓延してるなんて
客にばれてみろ!
妓楼の価値が下がるってもんだよ。
何度も何度も叩き出していると、
あの子を思い出してしてしまったよ。
怒っても、無視してもやってくる。
まあ、この男に似てひつこいガキだった。
ーーーーー10数年前ーーーーーーーーー
「なんで、ヤリテバァバは姉様たちに嫌われてるの?
元この桃梅屋のトップクラスの花魁だったんでしょ。
マサさんが言ってたもん。ヤリテバァバは本場の花魁だって。」
だからなんだい!
楼主のマサめ余計な事を。
私は領主の嫁さんのヒナ様が来る前から、桃橘國本場で花魁をしていた。
マサの父親がトワイライト帝国からスカウトしに来てこの国に連れて来た。
もう私は、あっちの国ではトップにはなれないと悟ったからコッチに来た。
と言うか、人に向かって直接嫌われてるとか言うんじゃないよ!
クソガキめ!
私だって好きで、こんな仕事してんじゃないよ!
生きていくにはこの道しかなかったんだ。
あのガキは松菊の禿の杏だろ。
松菊は何を教えてるんだい!
「ヤリテバァバ。
私はバァバのこと好きだよ。だって、口は悪いけど姉様たちがより良いとこに見受けされるように、吟味してるって知ってるもん。
厳しいけど、バァバが言う事が出来ないと此処では生きていけないもん。」
「ふん!生意気な口聞いてんじゃないよ!あっちいきな!私が儲かるからやってるだけだよ!」
この子は、貴族に売られて来た。来た時は、ボロボロで骨と皮だけの薄汚い気の毒なガキだった。
でも私はピンと来たね。
この子は、磨けば光る。
案の定、身ぎれいにすれば可愛らしかった。
そして杏は、
「あのお家に居るより、自分が頑張れば、ご飯が食べられる此処の方がずっとマシ。」
とか言って何するにも楽しそうに仕事をしていた。
顔も要領もいい。
最高の花魁になるだろう。
また来やがった。
懐くんじゃないよ!まったく!
「バァバ!松菊姉さんに、甘酒汁粉もらったの。バァバも半分あげるね!」
あの子は、こんな環境でも
愛らしく、楽しそうで、多くの花魁の姉さんやこの桃梅屋で働く皆んなから可愛がられた。
普通は恨まれたり、嫌がらせをされるが、
あの子は何故か、相手が求める事を敏感に察知し、提供した。
杏は、
「要望と需要を結びつけただけだよ。」
とキョトンとして言った。
そして、あの子はあっという間に春風という花魁になり太夫まで上り詰めた。
そして、あっという間に見受け話が持ち上がる。
しかしマサの次に楼主になったコジロウは、金に目が眩む。
数年で太夫まで上り詰めた春風には、年期がまだたくさん残っていた。
それも、見込んで私は春風を見受けしてくれる男の貴族に、金をキチンと査定して請求していたのに
あの馬鹿のコジロウは、春風を他の花魁をそそのかして足抜けの片棒を担いだことにされ、
酷い折檻を受けた。
暫く春風は、表舞台に出られず、寝込む。
その間に、事態を知った梅桃屋の女達は怒っり、春風を見受けしようとした貴族に顛末を話した。
あっという間に、遊郭中に噂は広まった。
松平屋の花魁の夕霧は春風がここに売られてくるまで、一緒に励ましながら街にやってきた子だった。
店が違っても、姿を見れば、お互いに怒られても手を振り合った。
普通は競って蹴落とし合うのに、あの子達は互いにライバルとして切磋琢磨し、芸を磨いた。
だから、誰も何も言わなくなった。
店がちがうのに、春風たちは中の良い親友だった。
本当にこの子も馬鹿な子だよ。
怒った夕霧は桃梅屋の楼主コジロウに殴り込みに来た。
コジロウは夕霧に罪を着せて街に火を放った。
夕霧は冤罪で、処刑された。
通常なら火炙りの刑だろうが、
斬首で苦しまないよう速やかに処刑された。
理由は遊郭での遊女たちの背景の悲惨さに同情した役人の温情だったようだ。
遊郭ではよく火事が起こる。
大体、絶望した女が放火する。
今回もその類だろうと詳しく調査される事はなかった。
春風は火災の際、行方不明になった。
あの火災で、丸こげの誰か分からない遺体が何体か発見されている。
皆が言うには、その中の誰かだろうと言う。
あれから、桃梅屋は信用をなくし、
貴族のお客は来なくなった。
逃げたコジロウは、恐らく春風を娶ろうとした貴族に捕まったのだろう。
その貴族の住む、近場のダウンタウンで遺体が発見された。遺体は腐敗して原形を留めてなかったが、拷問された跡があったらしい。
ーーーーーー
今は、私が実質の楼主だ。
表向きには、若い衆が楼主になっている。
この桃梅屋をまた高級遊郭に戻すまで、大変だった。
あの子達を守らなければならなかった。
安い店のままでは、あの子達は悲惨な目に遭う。
何としてでも、のし上がらなければならなかった。
情を捨て、人ならざる物。
忘八。
くっ。私に相応しい名だ。
あの子の、笑いながら
「私はバァバのことが好きだよ。」
と言う言葉が歳を取ったせいだろう。
時々、思い出す。
あの男また来やがった。
今日は水をかけてやった。
なのに、楼主に会わせろと
また来やがる。
この前は、若い衆に袋叩きに会っていた。
当然さ。
病気が蔓延してるなんて
客にばれてみろ!
妓楼の価値が下がるってもんだよ。
何度も何度も叩き出していると、
あの子を思い出してしてしまったよ。
怒っても、無視してもやってくる。
まあ、この男に似てひつこいガキだった。
ーーーーー10数年前ーーーーーーーーー
「なんで、ヤリテバァバは姉様たちに嫌われてるの?
元この桃梅屋のトップクラスの花魁だったんでしょ。
マサさんが言ってたもん。ヤリテバァバは本場の花魁だって。」
だからなんだい!
楼主のマサめ余計な事を。
私は領主の嫁さんのヒナ様が来る前から、桃橘國本場で花魁をしていた。
マサの父親がトワイライト帝国からスカウトしに来てこの国に連れて来た。
もう私は、あっちの国ではトップにはなれないと悟ったからコッチに来た。
と言うか、人に向かって直接嫌われてるとか言うんじゃないよ!
クソガキめ!
私だって好きで、こんな仕事してんじゃないよ!
生きていくにはこの道しかなかったんだ。
あのガキは松菊の禿の杏だろ。
松菊は何を教えてるんだい!
「ヤリテバァバ。
私はバァバのこと好きだよ。だって、口は悪いけど姉様たちがより良いとこに見受けされるように、吟味してるって知ってるもん。
厳しいけど、バァバが言う事が出来ないと此処では生きていけないもん。」
「ふん!生意気な口聞いてんじゃないよ!あっちいきな!私が儲かるからやってるだけだよ!」
この子は、貴族に売られて来た。来た時は、ボロボロで骨と皮だけの薄汚い気の毒なガキだった。
でも私はピンと来たね。
この子は、磨けば光る。
案の定、身ぎれいにすれば可愛らしかった。
そして杏は、
「あのお家に居るより、自分が頑張れば、ご飯が食べられる此処の方がずっとマシ。」
とか言って何するにも楽しそうに仕事をしていた。
顔も要領もいい。
最高の花魁になるだろう。
また来やがった。
懐くんじゃないよ!まったく!
「バァバ!松菊姉さんに、甘酒汁粉もらったの。バァバも半分あげるね!」
あの子は、こんな環境でも
愛らしく、楽しそうで、多くの花魁の姉さんやこの桃梅屋で働く皆んなから可愛がられた。
普通は恨まれたり、嫌がらせをされるが、
あの子は何故か、相手が求める事を敏感に察知し、提供した。
杏は、
「要望と需要を結びつけただけだよ。」
とキョトンとして言った。
そして、あの子はあっという間に春風という花魁になり太夫まで上り詰めた。
そして、あっという間に見受け話が持ち上がる。
しかしマサの次に楼主になったコジロウは、金に目が眩む。
数年で太夫まで上り詰めた春風には、年期がまだたくさん残っていた。
それも、見込んで私は春風を見受けしてくれる男の貴族に、金をキチンと査定して請求していたのに
あの馬鹿のコジロウは、春風を他の花魁をそそのかして足抜けの片棒を担いだことにされ、
酷い折檻を受けた。
暫く春風は、表舞台に出られず、寝込む。
その間に、事態を知った梅桃屋の女達は怒っり、春風を見受けしようとした貴族に顛末を話した。
あっという間に、遊郭中に噂は広まった。
松平屋の花魁の夕霧は春風がここに売られてくるまで、一緒に励ましながら街にやってきた子だった。
店が違っても、姿を見れば、お互いに怒られても手を振り合った。
普通は競って蹴落とし合うのに、あの子達は互いにライバルとして切磋琢磨し、芸を磨いた。
だから、誰も何も言わなくなった。
店がちがうのに、春風たちは中の良い親友だった。
本当にこの子も馬鹿な子だよ。
怒った夕霧は桃梅屋の楼主コジロウに殴り込みに来た。
コジロウは夕霧に罪を着せて街に火を放った。
夕霧は冤罪で、処刑された。
通常なら火炙りの刑だろうが、
斬首で苦しまないよう速やかに処刑された。
理由は遊郭での遊女たちの背景の悲惨さに同情した役人の温情だったようだ。
遊郭ではよく火事が起こる。
大体、絶望した女が放火する。
今回もその類だろうと詳しく調査される事はなかった。
春風は火災の際、行方不明になった。
あの火災で、丸こげの誰か分からない遺体が何体か発見されている。
皆が言うには、その中の誰かだろうと言う。
あれから、桃梅屋は信用をなくし、
貴族のお客は来なくなった。
逃げたコジロウは、恐らく春風を娶ろうとした貴族に捕まったのだろう。
その貴族の住む、近場のダウンタウンで遺体が発見された。遺体は腐敗して原形を留めてなかったが、拷問された跡があったらしい。
ーーーーーー
今は、私が実質の楼主だ。
表向きには、若い衆が楼主になっている。
この桃梅屋をまた高級遊郭に戻すまで、大変だった。
あの子達を守らなければならなかった。
安い店のままでは、あの子達は悲惨な目に遭う。
何としてでも、のし上がらなければならなかった。
情を捨て、人ならざる物。
忘八。
くっ。私に相応しい名だ。
あの子の、笑いながら
「私はバァバのことが好きだよ。」
と言う言葉が歳を取ったせいだろう。
時々、思い出す。
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