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魔獣狩り3

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私達は王宮の遺跡を模した建物の中を歩く。

一応遺跡だけど、
何世紀か前のお城だ。
3階建ての建物だ。

地図によると、地下はない。

人工魔物に捕まったり、攻撃をモロに喰らうと退場だ。

全て審判達が見えるようになっているそうだ。

廃墟のような建物だ。

蔦が生い茂り、
所々ピチョンピチョンと水が滴る音が聞こえる。

古臭い家具が白いシーツで覆われて埃をかぶっている。

カーテンは破れて、所々から太陽の光が漏れる。

絵は、埃まみれで微かに自画像であるのがわかる。

お化け屋敷のようだ。

私が前世の記憶が戻るまで暮らしてた別邸みたいだ。

朝だけど、木や蔦で生い茂った部分は暗い。

何故だろう?

静かだけど物々しい。


よそのチームの男の子達も近くにいる。

ベリル達は、温室の方に行ったようだ。
ココには居なかった。

よそのチームの男の子達は、

「なあ?なんかいつもと違わなくない?」

「ああ。いつもなら、そろそろ弱い魔物が出るんだが・・・。」


「こんなに静かなのは初めてだ。」


すると、前方のトウ先輩と歩いていたらジャッカス君が何かにつまづく。

「おい大丈夫か?ジャッカス。」

ボルド兄さんが起こそうとすると、

ジャッカス君は、指を刺して

ガタガタと震え出した。

私達は、そっちを見て驚く。




目から血を流した

大人の男性が首や身体中に、

蔦に巻き付かれて、

こちらに手を伸ばし助けを求めている。

極度に圧迫されたのか毒でやられたのかわからないが顔の一部が紫になっている。


そして、ジワジワと蔦の中に飲み込まれている。

「だ  ず  げで。」

一緒にいたよそのチームの男の子達はパニックに陥る。

「ゔぁ~」

「本物だー。」

「なんだ。これは。」

「こんなん聞いてない。」

私達は、走り去ろうとする男の子の襟ぐりを引っ張る。

バラバラに逃げると、今回は危険だと私達の経験が言っている。

私達は落ち着いていた。

「パニックになるな!落ち着け!」
ボルド兄さんが言う。

何度も何度も本物の魔物と遭遇したことを想定して、シュミレーションしていたから落ち着いていられる。

アップル先輩と私は本物の魔物と戦った実績があるので、その中でもかなり落ち着いていた。

すると、バイオレットちゃんは

「コレは本物の魔物なのね!ジェフ君この魔物は何?」

「S級の魔物だ。蔦に化けて建物に寄生し、ダンジョンを作り上げる。

魔物を寄せつけ、人間や動物の遺体や骨を栄養にして成長する。

花を咲かせたり、蔦を成長させようと大きくする時、自ら内部に入った動物、魔物を襲うこともある。

厄介なのは、花が魔素を取り込んで、魔法が使えないんだ。


迷宮蔦状ピンギキュラ 

倒し方は、徐々に蔦を切り弱らせて、最新部にある根っこにある魔核を壊すことだ。

ジャック監督は、蔦を高速で切りる時、必ず襲いかかるから、背後に気をつけろと言っていた。

魔法を使う時は、近くにある上方部にある花を切るんだ。」


「確か、蔦を切る方向と光を取り込む方法を考えながら、光を嫌う魔物を追い込むのよね。」

私達はとにかく、目の前の大人の男性を救出する為に蔦を切る。

切っている最中植物はそこを目掛けて攻撃してくる。

襲いかかる蔦を、ライ君が草取り用の鎌を二刀流で、凄い勢いで刈っていった。


「フン!俺は毎日草を全力で刈ってるんだこんなの簡単だ!」

「お前らもぼさっとしてないで、背後を守りながら剣をフレ!草ぐらい刈れるだろ!光を入れろ!」


皆んなで一斉に草を刈る。


大人の男性を救う事ができた。

皆んなで光が入る様に蔦を切っていく。

何とか一部屋分だけ蔦を切ることに成功した。


光を入れて、魔物がくるのを防ぐ。
蔦は編み込んで方向を変えることにより、再度此方に伸びない様にする。


私達は、出入り口を探すが
蔦で覆われてしまったことに気がついた。

ここは、建物の中心部だ。


完全に孤立してしまっている。

ここにいるチームは

私たちを含めて3チーム。

そして、弱った20代男性1人。


子供達の中には、

「お母ざまー。父上ー。」

「怖いよー。」

と泣き出す子もいる。

多分この魔獣狩りが本物でない事を心の中でどこか思っていたのだろう。


私達は、ジャックさんに言われていた。

「魔獣刈りは、本物だって思って対応しろ!でないと、本当にでくわしたとき時戦えんぞ!むしろ奢りになって、死ぬかもしれん。本気でやるかやらないかどっちかにしろ!」

だから、たった2週間だけど私達は本気だった。

常に死を考えて行動していたのだ。

泣く子に、バイオレットちゃんは言う。

「君達!生きたい?生きたいなら泣くのをやめて!体力と水分の無駄よ!」

子供達は無理に泣くのをやめた。

すると、バイオレットちゃんはにっこり笑って、自分の水筒を差し出す。

「絶対脱出するわよ!誰一人死なせないわ!」



私のスキルも魔法も蔦の花によって使えない事がわかった。

非常に厄介な状態だ。


私達は作戦を立てる事にした。




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