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妹ーアルフォンス イル ブラックー
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俺は、寮から家に帰る。
馬車に揺られながら、
俺はうんざりしながら帰る。
理由は、血の繋がった10歳下の妹バイオレットだ。
あいつさえいなければ、我が家は前のように完璧な家族だ。
ウジウジして、ブクブク太りやがって。
学園でも貴族の令嬢や子息たちと上手く付き合えない。
貴族令嬢として恥ずかしくないのかよ。
アイツは俺をイラつかせる。
そして、1週間後はコイツの誕生日だ。
面倒くせー。去年もやらなかっただろ!
今年も同じでいいだろ!
親父に帰ってこいと言われて帰らざるえなかった。
家に帰ると、愛しの異母妹ティアラがいつも飛び出してくるはずだ。
俺と同じ黒目をクリクリさせて、俺を見てくるんだ。
可愛く。愛くるしい。癒しだ。
継母のパティー様も、母上とよく似ていてホッとする。
今日は、あれパティー様だけが迎えにでる。
えっ?
ティアラは?
そして、父上が泣きながら飛び出してくる。
「アルフォンス!どうしよう!バイオレットが!バイオレットがケーキなんて要らないわ!誕生日会しなくていいって言うんだ。
お前から説得してくれ?」
「いや、去年しなかったんだから別にいいんじゃね。」
その言葉を聞いた親父は、
「・・・。そうだよね。去年、すっかり忘れてたんだ。だからだよね。
お前や、ティアラちゃんの誕生日はしっかりやったのに、バイオレットちゃんだけ・・・。
こんな父親死んでしまった方が良いのかも・・・。
死にたい。消えてなくなりたい。
アルフォンス。私は、私はどうしたらいい?」
・・・。うぜー。じゃあ死んだらと言いたいとこだが、何となく今言ったらヤバい感じがする。
それに、今までとキャラ全然違うじゃねーか。厳格な親父はどこに行った?
何なんだ!一体ウチはどうなってるんだ。
俺は、バイオレットがいると言う厨房でに入る。
「おい!バイオレット!親父に何をしたんだ!」
ドアの入口から入ろうとした、俺の顔のサイドに包丁が飛ぶ。
「あら。ごめん遊ばせ!ここは、不特定多数の方にお菓子を提供してるの!
衛生的に小汚い方や検便がちゃんと終わってない方は、立ち入り禁止と書いてあったでしょ!あんたの目は節穴なの!」
黒目をクリクリさせた大小の可愛らしい女の子が白い白衣と帽子をかぶってマスクを付けて、こちらを睨みながら言う。
「えっ?俺?小汚い・・・。」
「ええ。何処ぞと知らない場所を歩いた服でしょ。服のゴミも粘着テープで取ってない。
手も洗ってない。
異物混入や食事にお腹を壊す菌が混入するかもしれないでしょっ!!
出ていけ!!
話なら外で聞くわ!」
足で器用に俺をどついて、ドアを足で器用に閉めた。
・・・。誰だ?コイツ?よく見ると、可愛い。でも性格キツっ!何処となしか母上を思い出す。
そう思っていると、執事がすっ飛んできて
「アルフォンス様。誰だ?って顔やめてくださいよ。
バイオレット様です!
貴方の妹ですよ。
もう、何度お客様や親戚の方に説明してきたか!!
それに、アルフォンス様ダメですよ。
厨房の中に、そのように入っていかれれば、命がいくらあっても足りません。
はあ、5月6月になって気温が上がると同時に、バイオレット様は食中毒に気を使い、気が立っていらっしゃるのに!
旦那様は昨年度、誕生日会をしなかったからと言って、
「バイオレット!お前や、ティアラちゃんが大好きなクリームたっぷりのお菓子を沢山準備して、
沢山の人を呼んで、
お前の好きな中庭で盛大にパーティーをしよう。」
と言うものだから、
「はぁ?冷蔵機能もないのにクリームたっぷりケーキ?!
外で沢山の人を呼んでやる?
あのクソ暑い中庭で??
ふざけてるのか!!食中毒者が出たらどうするんだ!!
頭、お花畑も大概にしろ!
因みに、私はね。クリームより餡子の方が好きだって言ってるだろ!
皆んな知ってるのに、お父様は何処に目がついてるのよ!!お前の目はケツに付いてるのかーっ!!
食中毒出すぐらいなら、誕生日パーティーなんて要らないわ。
クリームたっぷりのケーキとか論外よ!!」
と大騒ぎなんですよ。」
執事は、俺に助けを求めるように泣き出す。
・・・。なんかさ。より面倒だな。
バイオレットって、大人しく、親父の言う事に逆らう事をしなかった筈なんだけど。
親父完全に負けてね?!
「はぁ。」
俺は、バイオレットが指定した新しく作られた和室という部屋で、
バイオレットを待つ。
畳と呼ばれる床は、なぜだろうな。
独特の匂いがするが心地よい。
椅子じゃなくて、座布団と呼ばれるクッションに胡座で座る。
丸い、ガラスの窓からは、
庭の初夏の美しい花々と緑。
蝶や蜂が花から花へと飛ぶ姿は
まるで丸く切り取られた動く絵の様だ。
五感が研ぎ澄まされるそんな空間だ。
俺がいかに、感じるという事をしない生活をしていたのか思い知らされる。
セッセと領地経営の勉強、学園の騎士科の訓練。生徒会役員としての仕事。
目まぐるしい日々だった。
すると、
「お兄様。入りますね。」
バイオレットは、お茶を持ち入ってきた。
黒髪を結い上げて、異国の服を着ていた。
俺は思い出す。母上?
友人のヒナ様から着物を貰って母上がよくきていた。
バイオレットは、
いつもとは違う、緑色のお茶を出してくる。
そして、和菓子という色とりどりのお菓子を目の前に出してきた。
そういえば、皇后様のお茶会で話題になったお菓子だ。
何処の店で売ってるのか分からなくて、貴族の中で話題になっていた。
はっ?まさかコイツが作ってるのか?
サッサと選べと睨むので、俺はシンプルな黒い物が白いものに包まれた謎のお菓子にした。
涼しげだ。
バイオレット曰く
「これは、葛饅頭といいます。
葛粉と小豆で作ったおやつです。」
と静かに答える。
バイオレットは、何も言わずに、静かにお茶を飲みながらお菓子を口に入れる。
そして、ニッコリ幸せそうな顔をした。
俺はその顔を見て、身体中に電気が走る。
昔のバイオレットを思い出したのだ。
中庭の木下で、よく家族でお茶をした。
親父は疲れていつも爆睡。
母上は、お友達のヒナ様から貰った変わったお菓子を俺たちに出してくれた。
そして、バイオレットはいつも幸せそうに、
「お兄ちゃま。お母ちゃま。おいちいね。」
そう言って笑いかけたバイオレットを思い出したのだ。
何故だろうな。
妹を見て、俺は涙が溢れる。
変わったのは、妹では無かった。
母上を失って、俺は変わりばかりを探していたのだ。
死を受け入れなかった。
受け入れられない自分をまた受け入れなかった。
過去に囚われ、ティアラの事、パティー様の事も変わりのように扱っていた。
変わってしまったのは、
俺自身だったんだ。
バイオレットは、変わってなかった。
ずっと、俺たちを待っていたのだ。
どれだけ寂しかっただろう。
パティー様も、ティアラの事も別な人として捉えていたのだ。
なのに、
俺たちが、バイオレットを変えようとしていたのだ。
俺はバイオレットにティアラと比べ、お前はお前であるなと言いながら・・・。
昔の妹を求めた。
何かあるたびに、妹は我を忘れた様に食べ物を口に入れた事を思い出す。
いや。我を忘れたと言うよりは、自分であろうと必死に食べたいたのかもしれない。
「ごめん。バイオレット・・・。」
バイオレットは、涙を流す俺を見て
何も言わなかった。
静かに景色を眺めてお茶をスズっと啜った。
どのくらい時間が経っただろう。
この空間は、俺に取って心地よかった。
バイオレットは、
「藤の花綺麗。熊蜂は毛むくじゃらで何だか、虫より動物みたいで可愛い。」
そう呟く。
俺はそれを聞いて、
「ああ。そうだな。初夏なんだな。」
そう答える。
俺は、妹とこんな会話をするのは何年ぶりだろうと気がつく。
すると、バイオレットはニッコリ笑って
「お帰りなさい。お兄様。」
そう答えた。
俺は、ドキッとした。
するとティアラが、
「ああ!おねえちゃま!こんなとこにいた!」
と入ってくる。
俺は少しイラッとしたが、
楽しそうに、2人でお菓子を選んでいる妹達を見ると、
ああ、そうか過去に問わられて今を生きていないのは俺なのかと悟った。
そして、俺のアドバイスで
バイオレットの誕生日会は、
中庭で親しい友人達と家族だけでやることになった。
クリーム系は暑さで腐るのがダメだと聞いたので、
最近、第二王立学園の生徒達が開発した、冷蔵庫というものを公爵家で買った。
食べ物が長期保存できて、便利だと使用人達からも泣いて喜ばれた。
色とりどりの和菓子と共に、洋菓子も準備され、ドライアイスや氷で冷やされた。
沢山の料理が並ぶ。
どれも、腐らない様、衛生には徹底的に気をつけた。
日差しは、傘や簾などで遮ると、
涼しくなった。
バイオレットは、その光景を見て
喜んだ。
「お兄様ありがとう!!」
そう言って抱きついて来た。可愛い。
親父は、悔しそうに、俺を睨みつける。
俺は、バイオレットに友人がいない事を、危惧していた。
いじめに遭ってる事を知っていたのに、何もしなかった自分をグーで殴りたい。
だが、バイオレットはいつの間にか第一王立学園を退学し、第二王立学園に通っていた様だ。
友人ができ、
楽しそうにキャッキャとはしゃぎ回るバイオレットを見て俺は顔が綻ぶ。
コレが、本当のバイオレットなのだと知った。
俺は、本当の意味で他の誰の、代わりでも無い、
パティ様やティアラを家族として迎える事が出来た。
母上は母上しかいない。
寂しいが、しょうがないのだ。
受け入れて、
バイオレットのように前に進む。
そうすればきっと、また新しい幸せが訪れるような気がした。
母上は、それを見てきっと笑っているはずだ。
バイオレットのお陰で俺は、本当の意味で家族になれたのだ。
親父は、バイオレットへ
「ほら、お前が好きなお人形さんだよ!」
とプレゼントを渡して、
「はぁ?人形?いつの話よ!!私は、六法全書が欲しいって言ったのに、何でそうなるのよ!!その耳は飾りか!!」
と、バイオレットに怒られていた。
「娘が怖い!
だって、だって、
7歳の女の子の誕生日だよ。
六法全書なんて、冗談だと思ったんだよ。」
執事とパティー様に泣きつく親父。
親父がバイオレットと分かり合える日はまだ遠そうだ。
馬車に揺られながら、
俺はうんざりしながら帰る。
理由は、血の繋がった10歳下の妹バイオレットだ。
あいつさえいなければ、我が家は前のように完璧な家族だ。
ウジウジして、ブクブク太りやがって。
学園でも貴族の令嬢や子息たちと上手く付き合えない。
貴族令嬢として恥ずかしくないのかよ。
アイツは俺をイラつかせる。
そして、1週間後はコイツの誕生日だ。
面倒くせー。去年もやらなかっただろ!
今年も同じでいいだろ!
親父に帰ってこいと言われて帰らざるえなかった。
家に帰ると、愛しの異母妹ティアラがいつも飛び出してくるはずだ。
俺と同じ黒目をクリクリさせて、俺を見てくるんだ。
可愛く。愛くるしい。癒しだ。
継母のパティー様も、母上とよく似ていてホッとする。
今日は、あれパティー様だけが迎えにでる。
えっ?
ティアラは?
そして、父上が泣きながら飛び出してくる。
「アルフォンス!どうしよう!バイオレットが!バイオレットがケーキなんて要らないわ!誕生日会しなくていいって言うんだ。
お前から説得してくれ?」
「いや、去年しなかったんだから別にいいんじゃね。」
その言葉を聞いた親父は、
「・・・。そうだよね。去年、すっかり忘れてたんだ。だからだよね。
お前や、ティアラちゃんの誕生日はしっかりやったのに、バイオレットちゃんだけ・・・。
こんな父親死んでしまった方が良いのかも・・・。
死にたい。消えてなくなりたい。
アルフォンス。私は、私はどうしたらいい?」
・・・。うぜー。じゃあ死んだらと言いたいとこだが、何となく今言ったらヤバい感じがする。
それに、今までとキャラ全然違うじゃねーか。厳格な親父はどこに行った?
何なんだ!一体ウチはどうなってるんだ。
俺は、バイオレットがいると言う厨房でに入る。
「おい!バイオレット!親父に何をしたんだ!」
ドアの入口から入ろうとした、俺の顔のサイドに包丁が飛ぶ。
「あら。ごめん遊ばせ!ここは、不特定多数の方にお菓子を提供してるの!
衛生的に小汚い方や検便がちゃんと終わってない方は、立ち入り禁止と書いてあったでしょ!あんたの目は節穴なの!」
黒目をクリクリさせた大小の可愛らしい女の子が白い白衣と帽子をかぶってマスクを付けて、こちらを睨みながら言う。
「えっ?俺?小汚い・・・。」
「ええ。何処ぞと知らない場所を歩いた服でしょ。服のゴミも粘着テープで取ってない。
手も洗ってない。
異物混入や食事にお腹を壊す菌が混入するかもしれないでしょっ!!
出ていけ!!
話なら外で聞くわ!」
足で器用に俺をどついて、ドアを足で器用に閉めた。
・・・。誰だ?コイツ?よく見ると、可愛い。でも性格キツっ!何処となしか母上を思い出す。
そう思っていると、執事がすっ飛んできて
「アルフォンス様。誰だ?って顔やめてくださいよ。
バイオレット様です!
貴方の妹ですよ。
もう、何度お客様や親戚の方に説明してきたか!!
それに、アルフォンス様ダメですよ。
厨房の中に、そのように入っていかれれば、命がいくらあっても足りません。
はあ、5月6月になって気温が上がると同時に、バイオレット様は食中毒に気を使い、気が立っていらっしゃるのに!
旦那様は昨年度、誕生日会をしなかったからと言って、
「バイオレット!お前や、ティアラちゃんが大好きなクリームたっぷりのお菓子を沢山準備して、
沢山の人を呼んで、
お前の好きな中庭で盛大にパーティーをしよう。」
と言うものだから、
「はぁ?冷蔵機能もないのにクリームたっぷりケーキ?!
外で沢山の人を呼んでやる?
あのクソ暑い中庭で??
ふざけてるのか!!食中毒者が出たらどうするんだ!!
頭、お花畑も大概にしろ!
因みに、私はね。クリームより餡子の方が好きだって言ってるだろ!
皆んな知ってるのに、お父様は何処に目がついてるのよ!!お前の目はケツに付いてるのかーっ!!
食中毒出すぐらいなら、誕生日パーティーなんて要らないわ。
クリームたっぷりのケーキとか論外よ!!」
と大騒ぎなんですよ。」
執事は、俺に助けを求めるように泣き出す。
・・・。なんかさ。より面倒だな。
バイオレットって、大人しく、親父の言う事に逆らう事をしなかった筈なんだけど。
親父完全に負けてね?!
「はぁ。」
俺は、バイオレットが指定した新しく作られた和室という部屋で、
バイオレットを待つ。
畳と呼ばれる床は、なぜだろうな。
独特の匂いがするが心地よい。
椅子じゃなくて、座布団と呼ばれるクッションに胡座で座る。
丸い、ガラスの窓からは、
庭の初夏の美しい花々と緑。
蝶や蜂が花から花へと飛ぶ姿は
まるで丸く切り取られた動く絵の様だ。
五感が研ぎ澄まされるそんな空間だ。
俺がいかに、感じるという事をしない生活をしていたのか思い知らされる。
セッセと領地経営の勉強、学園の騎士科の訓練。生徒会役員としての仕事。
目まぐるしい日々だった。
すると、
「お兄様。入りますね。」
バイオレットは、お茶を持ち入ってきた。
黒髪を結い上げて、異国の服を着ていた。
俺は思い出す。母上?
友人のヒナ様から着物を貰って母上がよくきていた。
バイオレットは、
いつもとは違う、緑色のお茶を出してくる。
そして、和菓子という色とりどりのお菓子を目の前に出してきた。
そういえば、皇后様のお茶会で話題になったお菓子だ。
何処の店で売ってるのか分からなくて、貴族の中で話題になっていた。
はっ?まさかコイツが作ってるのか?
サッサと選べと睨むので、俺はシンプルな黒い物が白いものに包まれた謎のお菓子にした。
涼しげだ。
バイオレット曰く
「これは、葛饅頭といいます。
葛粉と小豆で作ったおやつです。」
と静かに答える。
バイオレットは、何も言わずに、静かにお茶を飲みながらお菓子を口に入れる。
そして、ニッコリ幸せそうな顔をした。
俺はその顔を見て、身体中に電気が走る。
昔のバイオレットを思い出したのだ。
中庭の木下で、よく家族でお茶をした。
親父は疲れていつも爆睡。
母上は、お友達のヒナ様から貰った変わったお菓子を俺たちに出してくれた。
そして、バイオレットはいつも幸せそうに、
「お兄ちゃま。お母ちゃま。おいちいね。」
そう言って笑いかけたバイオレットを思い出したのだ。
何故だろうな。
妹を見て、俺は涙が溢れる。
変わったのは、妹では無かった。
母上を失って、俺は変わりばかりを探していたのだ。
死を受け入れなかった。
受け入れられない自分をまた受け入れなかった。
過去に囚われ、ティアラの事、パティー様の事も変わりのように扱っていた。
変わってしまったのは、
俺自身だったんだ。
バイオレットは、変わってなかった。
ずっと、俺たちを待っていたのだ。
どれだけ寂しかっただろう。
パティー様も、ティアラの事も別な人として捉えていたのだ。
なのに、
俺たちが、バイオレットを変えようとしていたのだ。
俺はバイオレットにティアラと比べ、お前はお前であるなと言いながら・・・。
昔の妹を求めた。
何かあるたびに、妹は我を忘れた様に食べ物を口に入れた事を思い出す。
いや。我を忘れたと言うよりは、自分であろうと必死に食べたいたのかもしれない。
「ごめん。バイオレット・・・。」
バイオレットは、涙を流す俺を見て
何も言わなかった。
静かに景色を眺めてお茶をスズっと啜った。
どのくらい時間が経っただろう。
この空間は、俺に取って心地よかった。
バイオレットは、
「藤の花綺麗。熊蜂は毛むくじゃらで何だか、虫より動物みたいで可愛い。」
そう呟く。
俺はそれを聞いて、
「ああ。そうだな。初夏なんだな。」
そう答える。
俺は、妹とこんな会話をするのは何年ぶりだろうと気がつく。
すると、バイオレットはニッコリ笑って
「お帰りなさい。お兄様。」
そう答えた。
俺は、ドキッとした。
するとティアラが、
「ああ!おねえちゃま!こんなとこにいた!」
と入ってくる。
俺は少しイラッとしたが、
楽しそうに、2人でお菓子を選んでいる妹達を見ると、
ああ、そうか過去に問わられて今を生きていないのは俺なのかと悟った。
そして、俺のアドバイスで
バイオレットの誕生日会は、
中庭で親しい友人達と家族だけでやることになった。
クリーム系は暑さで腐るのがダメだと聞いたので、
最近、第二王立学園の生徒達が開発した、冷蔵庫というものを公爵家で買った。
食べ物が長期保存できて、便利だと使用人達からも泣いて喜ばれた。
色とりどりの和菓子と共に、洋菓子も準備され、ドライアイスや氷で冷やされた。
沢山の料理が並ぶ。
どれも、腐らない様、衛生には徹底的に気をつけた。
日差しは、傘や簾などで遮ると、
涼しくなった。
バイオレットは、その光景を見て
喜んだ。
「お兄様ありがとう!!」
そう言って抱きついて来た。可愛い。
親父は、悔しそうに、俺を睨みつける。
俺は、バイオレットに友人がいない事を、危惧していた。
いじめに遭ってる事を知っていたのに、何もしなかった自分をグーで殴りたい。
だが、バイオレットはいつの間にか第一王立学園を退学し、第二王立学園に通っていた様だ。
友人ができ、
楽しそうにキャッキャとはしゃぎ回るバイオレットを見て俺は顔が綻ぶ。
コレが、本当のバイオレットなのだと知った。
俺は、本当の意味で他の誰の、代わりでも無い、
パティ様やティアラを家族として迎える事が出来た。
母上は母上しかいない。
寂しいが、しょうがないのだ。
受け入れて、
バイオレットのように前に進む。
そうすればきっと、また新しい幸せが訪れるような気がした。
母上は、それを見てきっと笑っているはずだ。
バイオレットのお陰で俺は、本当の意味で家族になれたのだ。
親父は、バイオレットへ
「ほら、お前が好きなお人形さんだよ!」
とプレゼントを渡して、
「はぁ?人形?いつの話よ!!私は、六法全書が欲しいって言ったのに、何でそうなるのよ!!その耳は飾りか!!」
と、バイオレットに怒られていた。
「娘が怖い!
だって、だって、
7歳の女の子の誕生日だよ。
六法全書なんて、冗談だと思ったんだよ。」
執事とパティー様に泣きつく親父。
親父がバイオレットと分かり合える日はまだ遠そうだ。
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