探偵少女の迷走

二二二

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後ろの席の奴への助言

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 時系列が行ったり来たりするが・・・・・・。
 えー、『今』から遡(さかのぼ)ること『二週間前』。
 『今』というのは、つまり今朝方のヘッドラインニュースにて地元での死体発見が報道された日のことであり。
 ということは、その『二週間前』と言えば俺は放課後に生徒会長と水島鈴音氏と三者面談的インタビューに頭を捻らせていた時のことである。
 俺はなんだかんだ言って、割と本気で真っ当なインタビューをやり通したと自負していたのだが・・・・・・現実とは残酷である。いや、水島が酷い奴というだけかな?
 もう改めて言うまでもないが、結論だけ述べれば――――――

「だめ、全然だめ。こんなインタビューを記事になんて出来ないから!」

 一刀両断。塵も残らない言い草であった。
 情状酌量の余地ぐらいはあっても良かったんじゃないか? せめて最終弁論する猶予(ゆうよ)をくれてもバチは当たらないだろうに。
 俺はそう思った。
 だが水島はそうは思わなかった。
 俺も俺で水島のダメ出しに面食らったが、生徒会長の方がずっとショックを受けていたのは間違いないと思った。元々部室に入った時から悪かった顔色をさらに青単色に近づけていく様といったら、真剣に119番も連絡すべきかどうか思案したぐらいだ。

「大丈夫ですか? ものスゴく顔色悪いですけど」
「い、いや・・・ちょっとね。・・・昨日、徹夜したものだから」

 そんな台詞を目の焦点が合ってない人に言われて、どんな反応をするべきか分かるほどに俺は人生経験に恵まれていない。一体、どれだけこのインタビューがストレスだったんだ、と富(と)みに興味が沸(わ)いてくる。そっちの方がインタビュー内容として魅力的だとも思う。
 俺のそんな興味深げな目を気にしてか、は判断しかねるが。
 生徒会長は眉間に皺を寄せに寄せた不健康そうな顔をして、小声で呟いた。

「なあ、君。僕の記憶だと新聞部はもう潰れているはずなんだが・・・・・・彼女は新聞部員の亡霊なのかい?」



 ◆ ◆ ◆

 二ノ宮の台詞を聞いて、生徒会長の言っていた事を思い出したのだが。
どいつも、こいつも。
 俺を含めて、発言・行動を大概に自重するべき奴らばっかりだ。

 ――――――と思ったので、俺は目の前に居るこいつにも何か言っておくとした。

「なあ、二ノ宮。お前が、その何だ、恋した(?)、とかいう女はだ。勝手に廃部になった新聞部部室を占拠して勝手に学校新聞を発行しようとして、それが学校側に却下されるや否や、誰の許可も得ずに新聞部のブログを開設するようなやつだ。その上、人使いが荒いし。なんというか『あんなの』の恋人になれるのは真性のマゾぐらいだと思うよ?」

 俺個人としては水島と付き合いが長い訳でもないし、そんな信憑性バツグンの事実だと主張つもりは髪の毛の先っちょ程も無いが、なにせ今の水島は何かに取り憑かれたように高校一年の春の時間を新聞部の活動の為だけに凄まじいパワーで食い潰して行っている。間近で見ていて「彼女は本当にイカれてるんではなかろうか?」と思った事がほんの二週間の間だけでもう二桁を超えている。ちなみに水島を除いて同様の統計を取ってみると、平均(アベレージ)は『0』となる。
 それを知って居ながら、二ノ宮に「そうか、さっさと告白してみれば?」というのも気の毒だ。
 だから俺としては、一度(いちど)くらい「少し待て」と言いたかった。
 水島だって無尽蔵のテンションの高さを蓄えているハズもないだろうから、諦められないと言うのならば。せめて五月の連休明けとか、六月の梅雨時期あたりの、水島の元気が一般平均並みに落ちそうな時期まで待ってからでも、二ノ宮の恋路は遅くはあるまいと考えた次第である。
 だが、まあなんと言うべきか。ここは、「やはり・・・」と言っておくとこだろう。
 やはり、どいつも、こいつも大概だ。
 二ノ宮はスクッと席を立ち上がると、実に運動部員らしい張りのある声で、高らかに宣言した。

「俺はMでも、Sでもいけるから!」

 教室がやけに静かになった。
 俺をはじめとして、教室内の生徒連中は皆(みな)ポカンとして二ノ宮の真剣な面持ちを眺めるだけであったし。
 不運な数学女教師(一限と二限ともに同じ先生が連続して数学を教えることになっていた、悲劇的な授業日程の妙である)は本日二度目の泣き顔を披露(ひろう)することになった。

 今、よーく分かったよ。
 二ノ宮と水島、実によく似たテンションで。
 先の読めない言動全般も含めて、お二人さんはこれ以上を想像出来ないって程に。
 ・・・・・・お似合いだ。
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