婚約破棄でもざまぁでもお好きにどうぞ

こうやさい

文字の大きさ
1 / 2

前編

しおりを挟む
 足下には赤い高そうな絨毯。
 頭上からキラキラとした光を投げかけるシャンデリア。
 華やかに着飾った人々。
 けれど他がどれだけ綺麗でもそのやりとりの醜悪さは隠しきれないだろう。

 夜会の会場の真ん中にドーナツのように人が集まり、その更に中心には三人の男女がいる。
 一人はこの国の顔はいい王子殿下。
 もう一人は上品に着飾ったその婚約者の侯爵令嬢。
 最後の一人は本来なら迂闊にその二人に近付けないはずの下品な姿の男爵令嬢。
 甲高い声男爵令嬢と、やたらと怒鳴る王子殿下。
 一方、侯爵令嬢の方は落ち着いたものだった。

「しかもお前はその上非情にも彼女を階段から突き落としたそうじゃないか、この人殺し!!」
「そうです、私見ました。この人が私を突き落とすところをはっきりと」
「あら? わたくしが何時そんな事を?」
「誤魔化すな!!」
「先週の月曜日です。おかげで身体中が痛くて今日まで学校に来れなかったじゃないですか」
「まぁ、その日は王妃殿下に呼ばれて学校には来ていないのだけれど?」
「嘘をつくな!!」
「王妃殿下にもそれが言えまして?」
「きっ、きっと取り巻きに命じたんです」
「先ほどはっきりわたくしが突き落とすのを見たとおっしゃらなかったかしら?」
「……それは……」
「混乱してれば勘違いくらいあるだろう!?」
「それで殿下の妃が務まりまして?」

 そして、はその中にも周りにもいない。

 ……もう聞かなくて大丈夫か。
 念のため見てたけど、やっぱり茶番というかちゃんとテンプレ通りというか書いたとおり進んでるし。


 あたしが自分が昔書いたオンノベ内に転生しているかもと思ったのはこの学校に入学が決まったときだった。
 前世の記憶自体はそれ以前からあったんだけどまさか転生先が自作内とは。どうりで文化水準のわりに妙なところ整ってるはずだわ。
 いやオンノベ読むのは数こなしてたけど書くのは初めてでさ、学校舞台だからってそれ以外の設定はまともに作ってなくてテンプレ流用してさー。……いや話そのものもだけど。
 あんまりにも適当に書いたせいか流行のテンプレのはずなのに人気出ない出ない。ほぼ打ち切りに近いとはいえ何とか完結させたものの、それでも読んでくれる人がいなくて心が折れて読み専に戻ったよ。
 …………パクリだと炎上しなかっただけ良かったと思おう。

 まー、そんな感じなのでテンプレな世界だなーとは思っても自作内と確定は出来なかったわけだ。
 で、学校名聞いてさすがにあれれ~? と思い、入学してみたらテンプレはテンプレだけど組み合わせ方に既視感があるというか、目立つ人の名前に覚えがあるというか……要するに自作だと確信した。人物名以外でもちゃんと目の色髪の色くらいは描写したんだからねっ。

 とはいえ強制力があるかどうかまでは分からず、あったところで打ち切りにするためにすっ飛ばしたあれやこれやがどういう扱いになるかわかんないし。
 だいたい、あたし自体が名前すら出ないモブといっていいのかすら分からない存在だしなー。
 当事者たち以外には大して害のない……というか、いてもいなくても変わらないような話だったから、何かあっても多分直接的に巻き込まれるような事はないだろ。
 もし小説通りの展開になったら自作が実写化したとでも思って見物すればいいや。テンプレ過ぎて自作だから恥ずかしいとか多分ないし。


 という理由で普通にこれまでどーり過ごそうとしていたあたしの前に運命が現れた。


 名前は知ってた。てーか、あたしが適当につけた。
 容姿はあまり知らなかった。そこまで細かく設定してなかったから。
 当然モブではない。
 けれど作中に出番はなかった。打ち切るためにすっ飛ばしたからだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お姉様から婚約者を奪い取ってみたかったの♪そう言って妹は笑っているけれど笑っていられるのも今のうちです

山葵
恋愛
お父様から執務室に呼ばれた。 「ミシェル…ビルダー侯爵家からご子息の婚約者をミシェルからリシェルに換えたいと言ってきた」 「まぁそれは本当ですか?」 「すまないがミシェルではなくリシェルをビルダー侯爵家に嫁がせる」 「畏まりました」 部屋を出ると妹のリシェルが意地悪い笑顔をして待っていた。 「いつもチヤホヤされるお姉様から何かを奪ってみたかったの。だから婚約者のスタイン様を奪う事にしたのよ。スタイン様と結婚できなくて残念ね♪」 残念?いえいえスタイン様なんて熨斗付けてリシェルにあげるわ!

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

【完結】私の小さな復讐~愛し合う幼馴染みを婚約させてあげましょう~

山葵
恋愛
突然、幼馴染みのハリーとシルビアが屋敷を訪ねて来た。 2人とは距離を取っていたから、こうして会うのは久し振りだ。 「先触れも無く、突然訪問してくるなんて、そんなに急用なの?」 相変わらずベッタリとくっ付きソファに座る2人を見ても早急な用事が有るとは思えない。 「キャロル。俺達、良い事を思い付いたんだよ!お前にも悪い話ではない事だ」 ハリーの思い付いた事で私に良かった事なんて合ったかしら? もう悪い話にしか思えないけれど、取り合えずハリーの話を聞いてみる事にした。

【完結】悪役令嬢ですが、断罪した側が先に壊れました

あめとおと
恋愛
三日後、私は断罪される。 そう理解したうえで、悪役令嬢アリアンナは今日も王国のために働いていた。 平民出身のヒロインの「善意」、 王太子の「優しさ」、 そしてそれらが生み出す無数の歪み。 感情論で壊されていく現実を、誰にも知られず修正してきたのは――“悪役”と呼ばれる彼女だった。 やがて訪れる断罪。婚約破棄。国外追放。 それでも彼女は泣かず、縋らず、弁明もしない。 なぜなら、間違っていたつもりは一度もないから。 これは、 「断罪される側」が最後まで正しかった物語。 そして、悪役令嬢が舞台を降りた“その後”に始まる、静かで確かな人生の物語。

逆ハーレムの構成員になった後最終的に選ばれなかった男と結婚したら、人生薔薇色になりました。

下菊みこと
恋愛
逆ハーレム構成員のその後に寄り添う女性のお話。 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】さっさと婚約破棄しろよ!って、私はもう書類を出していますって。

BBやっこ
恋愛
幼い頃に親同士で婚約したものの、学園に上がってから当人同士合わない!と確信したので 親を説得して、婚約破棄にする事にした。 結婚したらいいねー。男女で同い歳だから婚約しちゃう?と軽い感じで結ばれたらしい。 はっきり言って迷惑。揶揄われるし、合わないしでもう婚約破棄にしようと合意は得た。 せいせいした!と思ってた時…でた。お呼びでないのに。 【2023/10/1 24h. 12,396 pt (151位)】達成

駄犬の話

毒島醜女
恋愛
駄犬がいた。 不幸な場所から拾って愛情を与えたのに裏切った畜生が。 もう思い出すことはない二匹の事を、令嬢は語る。 ※かわいそうな過去を持った不幸な人間がみんな善人というわけじゃないし、何でも許されるわけじゃねえぞという話。

処理中です...