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前編
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足下には赤い高そうな絨毯。
頭上からキラキラとした光を投げかけるシャンデリア。
華やかに着飾った人々。
けれど他がどれだけ綺麗でもそのやりとりの醜悪さは隠しきれないだろう。
夜会の会場の真ん中にドーナツのように人が集まり、その更に中心には三人の男女がいる。
一人はこの国の顔はいい王子殿下。
もう一人は上品に着飾ったその婚約者の侯爵令嬢。
最後の一人は本来なら迂闊にその二人に近付けないはずの下品な姿の男爵令嬢。
甲高い声男爵令嬢と、やたらと怒鳴る王子殿下。
一方、侯爵令嬢の方は落ち着いたものだった。
「しかもお前はその上非情にも彼女を階段から突き落としたそうじゃないか、この人殺し!!」
「そうです、私見ました。この人が私を突き落とすところをはっきりと」
「あら? わたくしが何時そんな事を?」
「誤魔化すな!!」
「先週の月曜日です。おかげで身体中が痛くて今日まで学校に来れなかったじゃないですか」
「まぁ、その日は王妃殿下に呼ばれて学校には来ていないのだけれど?」
「嘘をつくな!!」
「王妃殿下にもそれが言えまして?」
「きっ、きっと取り巻きに命じたんです」
「先ほどはっきりわたくしが突き落とすのを見たとおっしゃらなかったかしら?」
「……それは……」
「混乱してれば勘違いくらいあるだろう!?」
「それで殿下の妃が務まりまして?」
そして、彼はその中にも周りにもいない。
……もう聞かなくて大丈夫か。
念のため見てたけど、やっぱり茶番というかちゃんとテンプレ通りというか書いたとおり進んでるし。
あたしが自分が昔書いたオンノベ内に転生しているかもと思ったのはこの学校に入学が決まったときだった。
前世の記憶自体はそれ以前からあったんだけどまさか転生先が自作内とは。どうりで文化水準のわりに妙なところ整ってるはずだわ。
いやオンノベ読むのは数こなしてたけど書くのは初めてでさ、学校舞台だからってそれ以外の設定はまともに作ってなくてテンプレ流用してさー。……いや話そのものもだけど。
あんまりにも適当に書いたせいか流行のテンプレのはずなのに人気出ない出ない。ほぼ打ち切りに近いとはいえ何とか完結させたものの、それでも読んでくれる人がいなくて心が折れて読み専に戻ったよ。
…………パクリだと炎上しなかっただけ良かったと思おう。
まー、そんな感じなのでテンプレな世界だなーとは思っても自作内と確定は出来なかったわけだ。
で、学校名聞いてさすがにあれれ~? と思い、入学してみたらテンプレはテンプレだけど組み合わせ方に既視感があるというか、目立つ人の名前に覚えがあるというか……要するに自作だと確信した。人物名以外でもちゃんと目の色髪の色くらいは描写したんだからねっ。
とはいえ強制力があるかどうかまでは分からず、あったところで打ち切りにするためにすっ飛ばしたあれやこれやがどういう扱いになるかわかんないし。
だいたい、あたし自体が名前すら出ないモブといっていいのかすら分からない存在だしなー。
当事者たち以外には大して害のない……というか、いてもいなくても変わらないような話だったから、何かあっても多分直接的に巻き込まれるような事はないだろ。
もし小説通りの展開になったら自作が実写化したとでも思って見物すればいいや。テンプレ過ぎて自作だから恥ずかしいとか多分ないし。
という理由で普通に過ごそうとしていたあたしの前に運命が現れた。
名前は知ってた。てーか、あたしが適当につけた。
容姿はあまり知らなかった。そこまで細かく設定してなかったから。
当然モブではない。
けれど作中に出番はなかった。打ち切るためにすっ飛ばしたからだ。
頭上からキラキラとした光を投げかけるシャンデリア。
華やかに着飾った人々。
けれど他がどれだけ綺麗でもそのやりとりの醜悪さは隠しきれないだろう。
夜会の会場の真ん中にドーナツのように人が集まり、その更に中心には三人の男女がいる。
一人はこの国の顔はいい王子殿下。
もう一人は上品に着飾ったその婚約者の侯爵令嬢。
最後の一人は本来なら迂闊にその二人に近付けないはずの下品な姿の男爵令嬢。
甲高い声男爵令嬢と、やたらと怒鳴る王子殿下。
一方、侯爵令嬢の方は落ち着いたものだった。
「しかもお前はその上非情にも彼女を階段から突き落としたそうじゃないか、この人殺し!!」
「そうです、私見ました。この人が私を突き落とすところをはっきりと」
「あら? わたくしが何時そんな事を?」
「誤魔化すな!!」
「先週の月曜日です。おかげで身体中が痛くて今日まで学校に来れなかったじゃないですか」
「まぁ、その日は王妃殿下に呼ばれて学校には来ていないのだけれど?」
「嘘をつくな!!」
「王妃殿下にもそれが言えまして?」
「きっ、きっと取り巻きに命じたんです」
「先ほどはっきりわたくしが突き落とすのを見たとおっしゃらなかったかしら?」
「……それは……」
「混乱してれば勘違いくらいあるだろう!?」
「それで殿下の妃が務まりまして?」
そして、彼はその中にも周りにもいない。
……もう聞かなくて大丈夫か。
念のため見てたけど、やっぱり茶番というかちゃんとテンプレ通りというか書いたとおり進んでるし。
あたしが自分が昔書いたオンノベ内に転生しているかもと思ったのはこの学校に入学が決まったときだった。
前世の記憶自体はそれ以前からあったんだけどまさか転生先が自作内とは。どうりで文化水準のわりに妙なところ整ってるはずだわ。
いやオンノベ読むのは数こなしてたけど書くのは初めてでさ、学校舞台だからってそれ以外の設定はまともに作ってなくてテンプレ流用してさー。……いや話そのものもだけど。
あんまりにも適当に書いたせいか流行のテンプレのはずなのに人気出ない出ない。ほぼ打ち切りに近いとはいえ何とか完結させたものの、それでも読んでくれる人がいなくて心が折れて読み専に戻ったよ。
…………パクリだと炎上しなかっただけ良かったと思おう。
まー、そんな感じなのでテンプレな世界だなーとは思っても自作内と確定は出来なかったわけだ。
で、学校名聞いてさすがにあれれ~? と思い、入学してみたらテンプレはテンプレだけど組み合わせ方に既視感があるというか、目立つ人の名前に覚えがあるというか……要するに自作だと確信した。人物名以外でもちゃんと目の色髪の色くらいは描写したんだからねっ。
とはいえ強制力があるかどうかまでは分からず、あったところで打ち切りにするためにすっ飛ばしたあれやこれやがどういう扱いになるかわかんないし。
だいたい、あたし自体が名前すら出ないモブといっていいのかすら分からない存在だしなー。
当事者たち以外には大して害のない……というか、いてもいなくても変わらないような話だったから、何かあっても多分直接的に巻き込まれるような事はないだろ。
もし小説通りの展開になったら自作が実写化したとでも思って見物すればいいや。テンプレ過ぎて自作だから恥ずかしいとか多分ないし。
という理由で普通に過ごそうとしていたあたしの前に運命が現れた。
名前は知ってた。てーか、あたしが適当につけた。
容姿はあまり知らなかった。そこまで細かく設定してなかったから。
当然モブではない。
けれど作中に出番はなかった。打ち切るためにすっ飛ばしたからだ。
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