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108回目の悪役令嬢
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「お嬢様、お気づきになりましたか!?」
事故の衝撃から目を覚ましたところ、侍女らしい格好をしたおねーさんの泣きそうな表情が視界に飛び込んできた。
見覚えがある。
当然だろう、彼女は昔からあたしに仕えてくれていた侍女だったし、断罪シーンで悪役令嬢に嫌がらせを命令されたと証言したのでスチルの隅に描かれていた。
「またか」
どうも記憶を取り戻したらしい。
昔々、どれくらい昔かといえば産まれるより昔、あたしはとある中世ヨーロッパ風乙女ゲームのとある攻略対象が好きになった。
初恋で、ガチ恋だった。
もう少し幼ければ恋にはならなかっただろう。
もう少しゲーム慣れしていたならば推しと認識していただろう。
けれど、その時出会ってしまった以上、恋になってしまった。
相手が悪いとしかいいようがない。
二次元にしかいない存在だというのもそうだが、なまじ恋愛シミュレーションゲームの攻略対象だったばっかりに、自分の気持ちなのか、プレイヤーキャラに感情移入したのかの区別が付かなかった。
あの人へのときめきを乙女ゲームの楽しさとはき違え、短いのやら長いのやら攻略が簡単なのやら難しいのやらやりこんだのやら適当に流したのやら最後までやったのやら途中で放り出したのやらいろいろと乙女ゲームをやった。
それだけ数をこなして、やっとその違いに気づいた。
鈍い、鈍すぎる。いやゲーム自体が結構楽しかったせいもあったんだけど。
とはいえ、なにがどうでも叶う恋ではないし、その後は普通に他の人に恋をして結婚した……たぶん。
実はその辺りの記憶とかごっそり抜け落ちてる。闘病した記憶とか事故った記憶とかもないから、若いうちに死んだんじゃないだろうなと予想をつけただけ。
そしてあたしは生まれ変わった。
……ゲーム内だったのも、悪役令嬢だったのもこの際許容しよう。そういうオンノベをゲームの合間に少し読んだ事がある。
けど、そーゆー場合好きだったゲームに転生しない!?
いやこれも好きではあるんだけど、あの人のいるゲームじゃない。
……と、いう感じの転生をもう何度じゃすまないくらい繰り返している。
中には乙女ゲームと確信出来なかったものも混じってるけど、多分数こなしたせいで忘れてるだけだと思う。
なんか妙なとこにゲームっぽさというか、違和感があるのよね。
故事成語とかゲーム中にもつっこんだなぁ、うん。
この転生には幾つか法則がある。
強制力があるのかゲーム開始以前の設定の大きな部分は変えられない。
たとえばヒロインの母親が事故死しなければ貴族に引き取られることはないんだからそれを防ごうと思っても無理。正確には防ぐことは出来ても別の理由で結局死んでしまう。
ゲーム開始前の設定があってそれに悪役令嬢がわがままとか極悪とか婚約者が冷たいとか付いてたらどう行動変えても最終的にはつじつまが合ってどうにもならないんだよ!?
婚約者と不仲とか政略とかは攻略対象の婚約者やってるんだからわりとついてて、恋をしたいわけじゃないとはいえ胃がきりきりした。
冷遇された結果ぐれて悪役になったってのが混じってなかったのがせめてもの救いだ。強制力で死なないのは分かってても体験はしたくない。
もっともこの強制力があるせいで途中から記憶が戻ったときに不審がられなくてすむのだから良し悪しだろう。
ゲーム開始後は強制力は緩まるが、舞台そのものから逃げることは出来ない。
家も学校も放り出して平民になるとか出来ない訳だよ、これが。
ただ立ち回り次第で変化が出るので、婚約をしていたら穏便に解消して、その後ひたすら地味に過ごす努力をするがデフォになった。大概は高位貴族だったから限度はあるけど。
細かく覚えてるゲームなら破滅フラグを潰すだけじゃなくヒロイン乗っ取りとかも出来たかもしれないけど、相手あの人じゃないし。
不必要に活躍して国に縛られたくはない。
ゲームが終われば強制力はなくなるが、その時既に一国の王子と結婚決まってたとかしたらゲームじゃなく周りの状況が逃がしてくれるわけないじゃん。
絶対にあの人じゃなきゃ嫌と頑なになってた訳じゃたぶんないけど、乙女ゲームの関係者とは縁がないなら距離を置きたい。
そうやって、ひたすらゲーム終了まで耐える。
その後はいろいろだ。
ゲーム終了とほぼ変わらずに次に行くのもあれは、その後ある程度自由に行動出来るのもある。
多分エンディングにその後の含みがあるかないかの差だろう。
ヒロインが「末永く幸せに暮らしました」をやってる間は悪役令嬢も処刑でもされなきゃどっかにいるわけで。
だからってヒロインを応援しようとかはやらない方がいいみたいだけど。とにかく関わらない方がいい。
そんな感じで転生し続けた訳ですが……未だあの人のいるゲームにはたどり着けず。
転生してもヒロインじゃなきゃ恋は出来ないかもしれないけどさ。
なんかもう、それ以外希望がない辺り、違う意味で強制力に縛られている気がする。
いい加減諦めるべきか、今後あの人に出会える可能性を信じ練習と思ってこなすべきか。
そもそも死ぬまで執着してたかどうか分からないのに転生してるんだから、諦めたからって止まるとは限らないよなぁ。
今回は婚約者ヒロインに取られて嫉妬に狂って侍女に嫌がらせするよう命じるんだけど、その侍女が裏切って証言して断罪された令嬢だったっけ。
……そっか、彼女裏切るのか、シナリオ通りに行くならだけど。
どっちが正義かといわれると彼女の方だと思いはするけどさ。
それでも今までほどに信じることはきっと出来ない。
いつまであたしは壊れずにいられるだろう?
事故の衝撃から目を覚ましたところ、侍女らしい格好をしたおねーさんの泣きそうな表情が視界に飛び込んできた。
見覚えがある。
当然だろう、彼女は昔からあたしに仕えてくれていた侍女だったし、断罪シーンで悪役令嬢に嫌がらせを命令されたと証言したのでスチルの隅に描かれていた。
「またか」
どうも記憶を取り戻したらしい。
昔々、どれくらい昔かといえば産まれるより昔、あたしはとある中世ヨーロッパ風乙女ゲームのとある攻略対象が好きになった。
初恋で、ガチ恋だった。
もう少し幼ければ恋にはならなかっただろう。
もう少しゲーム慣れしていたならば推しと認識していただろう。
けれど、その時出会ってしまった以上、恋になってしまった。
相手が悪いとしかいいようがない。
二次元にしかいない存在だというのもそうだが、なまじ恋愛シミュレーションゲームの攻略対象だったばっかりに、自分の気持ちなのか、プレイヤーキャラに感情移入したのかの区別が付かなかった。
あの人へのときめきを乙女ゲームの楽しさとはき違え、短いのやら長いのやら攻略が簡単なのやら難しいのやらやりこんだのやら適当に流したのやら最後までやったのやら途中で放り出したのやらいろいろと乙女ゲームをやった。
それだけ数をこなして、やっとその違いに気づいた。
鈍い、鈍すぎる。いやゲーム自体が結構楽しかったせいもあったんだけど。
とはいえ、なにがどうでも叶う恋ではないし、その後は普通に他の人に恋をして結婚した……たぶん。
実はその辺りの記憶とかごっそり抜け落ちてる。闘病した記憶とか事故った記憶とかもないから、若いうちに死んだんじゃないだろうなと予想をつけただけ。
そしてあたしは生まれ変わった。
……ゲーム内だったのも、悪役令嬢だったのもこの際許容しよう。そういうオンノベをゲームの合間に少し読んだ事がある。
けど、そーゆー場合好きだったゲームに転生しない!?
いやこれも好きではあるんだけど、あの人のいるゲームじゃない。
……と、いう感じの転生をもう何度じゃすまないくらい繰り返している。
中には乙女ゲームと確信出来なかったものも混じってるけど、多分数こなしたせいで忘れてるだけだと思う。
なんか妙なとこにゲームっぽさというか、違和感があるのよね。
故事成語とかゲーム中にもつっこんだなぁ、うん。
この転生には幾つか法則がある。
強制力があるのかゲーム開始以前の設定の大きな部分は変えられない。
たとえばヒロインの母親が事故死しなければ貴族に引き取られることはないんだからそれを防ごうと思っても無理。正確には防ぐことは出来ても別の理由で結局死んでしまう。
ゲーム開始前の設定があってそれに悪役令嬢がわがままとか極悪とか婚約者が冷たいとか付いてたらどう行動変えても最終的にはつじつまが合ってどうにもならないんだよ!?
婚約者と不仲とか政略とかは攻略対象の婚約者やってるんだからわりとついてて、恋をしたいわけじゃないとはいえ胃がきりきりした。
冷遇された結果ぐれて悪役になったってのが混じってなかったのがせめてもの救いだ。強制力で死なないのは分かってても体験はしたくない。
もっともこの強制力があるせいで途中から記憶が戻ったときに不審がられなくてすむのだから良し悪しだろう。
ゲーム開始後は強制力は緩まるが、舞台そのものから逃げることは出来ない。
家も学校も放り出して平民になるとか出来ない訳だよ、これが。
ただ立ち回り次第で変化が出るので、婚約をしていたら穏便に解消して、その後ひたすら地味に過ごす努力をするがデフォになった。大概は高位貴族だったから限度はあるけど。
細かく覚えてるゲームなら破滅フラグを潰すだけじゃなくヒロイン乗っ取りとかも出来たかもしれないけど、相手あの人じゃないし。
不必要に活躍して国に縛られたくはない。
ゲームが終われば強制力はなくなるが、その時既に一国の王子と結婚決まってたとかしたらゲームじゃなく周りの状況が逃がしてくれるわけないじゃん。
絶対にあの人じゃなきゃ嫌と頑なになってた訳じゃたぶんないけど、乙女ゲームの関係者とは縁がないなら距離を置きたい。
そうやって、ひたすらゲーム終了まで耐える。
その後はいろいろだ。
ゲーム終了とほぼ変わらずに次に行くのもあれは、その後ある程度自由に行動出来るのもある。
多分エンディングにその後の含みがあるかないかの差だろう。
ヒロインが「末永く幸せに暮らしました」をやってる間は悪役令嬢も処刑でもされなきゃどっかにいるわけで。
だからってヒロインを応援しようとかはやらない方がいいみたいだけど。とにかく関わらない方がいい。
そんな感じで転生し続けた訳ですが……未だあの人のいるゲームにはたどり着けず。
転生してもヒロインじゃなきゃ恋は出来ないかもしれないけどさ。
なんかもう、それ以外希望がない辺り、違う意味で強制力に縛られている気がする。
いい加減諦めるべきか、今後あの人に出会える可能性を信じ練習と思ってこなすべきか。
そもそも死ぬまで執着してたかどうか分からないのに転生してるんだから、諦めたからって止まるとは限らないよなぁ。
今回は婚約者ヒロインに取られて嫉妬に狂って侍女に嫌がらせするよう命じるんだけど、その侍女が裏切って証言して断罪された令嬢だったっけ。
……そっか、彼女裏切るのか、シナリオ通りに行くならだけど。
どっちが正義かといわれると彼女の方だと思いはするけどさ。
それでも今までほどに信じることはきっと出来ない。
いつまであたしは壊れずにいられるだろう?
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