欠けては満ちて満ち満ちて

こうやさい

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 そんな時前に妃であった女性と婚約者として引き合わされた。
 この辺りは政略なので前のあるなしに拘わらず変わらないだろう。
 その彼女は型通りの礼を取りながらも、僕を見る目に嫌悪を隠し切れていない。
 一瞬懐かしいとすら思い、やはり変えられないのかと失望する。
 けれど次の瞬間おかしいと気づく。
 確かに彼女にこんな表情を向けられた記憶はある。
 しかしそれは結婚後、複数人と関係を持ったのがばれた後だ。
 前回は緊張した面持ちながらむしろ好意的な視線で見つめられたはず。
 うぬぼれでなければ、政略とはいえ当時彼女からなにかしらは好かれていたのに。

 それは僕が何か働きかける以外で初めて見つけた差異だった。

 浮かれて何かを見落としてはいけないと、深呼吸して幼い頃に会っていて何かやらかした可能性などを考えるが、前回まで行かなければ彼女の記憶は出て来ない。幼すぎる頃の記憶はないとはいえ、そうならば彼女はもっと覚えていないだろう。何かを聞かされたとしてもそこまで強い嫌悪が続くとは思えない。
 それに何かあったとしても今までつじつまが合わないままなのはおかしい。
 なのになぜか明らかに婚約を嫌がられている。
 嫌がられているのに喜ぶというのもおかしいが、それは今回見つけた唯一の希望だった。

 自然と彼女の動向を気に掛けるようになる。
 そうしなくても分かるであろうほど彼女は会う度に太っていった。

 この国の貴族は未婚女性が太ることをよしとしない。
 それは生活が乱れている、あるいは健康を害している証拠だからと。
 それを理由で彼女との婚約を解消したらどうかという話が何度も出た。
 これも前回はなかったことだ。表だって反対されたことなどなかった。
 そして恐らくそれが彼女の狙いなのだろう、何が理由か分からないけれど今も嫌われているようだし。

 本当はここで婚約を破棄すべきなのかもしれない。
 それは大きな変化になるし、彼女も嫌がっているわけだし、婚姻しなければ前のような苦労をかけることもない。
 問題がないとはいわないが、前回に比べればどこもかしこも丸く収まる。
 けれど今後あるかどうか分からない、あるいは唯一かもしれない変化に対して、何かに置き換わる危険を冒すつもりはどうにもおこらない。
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