君にサヨナラは言いたくない

こうやさい

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前編

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「おはよう。今日も攻略を頑張ろうな」
 そういう彼女の顔には明らかに疲れが見えた。


 仲間内で使っていると、その言葉が一般に通じるのか、そもそも一般の定義が何なのか分からなくなるときがある。
 おかげで無関係な人に説明するときはこの言葉は通じるのか、それとも巨細説明しなればならないのか、あるいは同じ意味で一般的に通じる言葉があるのか悩む。
 もっとも俺はゲームの中に転生して、あなたはゲームのキャラですよというのはそういうレベルの話ではない気がする。

 いわゆるターン式ローグライクRPGというヤツになるんだろうか? 最初レベル一から初めて、戦闘したりアイテムを拾ったり使ったり交換したり休憩したりレベルを上げたりしながらどこまで深くランダムに作成されるダンジョンに潜れるかというゲームだった。一応最奥にいる魔王を倒すという目的はあったが、名目なのか俺がたどり着けていないのか、忘れているのか見た記憶はない。
 そして拾うものの中に仲間もいる。仲間というか戦闘の協力者か。
 連れて行ける仲間は一人だけで、仲間のレベルは上がらず、新たに違う仲間になるキャラと知り合ったとき、比べて必要と思う能力を持っている方を選べる。
 ……ゲームだとさ、仲間といいつつ自律する攻略アイテムみたいなみたいな感じだったから躊躇なくぽんぽん替えてたけど、現実的に考えるとレベル的に厳しい階層まで連れてきてそこで置き去りって鬼畜だよな。考えたらゲームで別れた仲間と再会したことなかったんだけど、単純に下に降りる実力がなくて追いつけないんじゃなくて、敵に殺されてたんじゃ。
 てか、普通に戦闘で死んでたし。

 そんなゲームのプレイヤーキャラに転生したと気づいた時、既に俺はダンジョンの中で、彼女が仲間として側にいた。
 ゲームではなくこちらの世界の方のどこがあやふやな部分がある記憶を思い出してみると、彼女は反対を押し切ってダンジョンに潜っていった弟を探すために一緒に潜ってくれる人を探していて、俺と知り合い一緒に行くことになった。弟を見ているようで放っておけないらしい。
 だからっていくら少し年下とはいえ初対面の男と二人でパーティーを組むな。そんなとこばっかりゲームかよ。
 と、今更ながらつっこんだが、実際問題どこまでゲームなのだろう?
 死んだらレベル一しょきじょうたいで入口からやり直せるかどうかは意図的には絶対試したくない。……仮にやり直せたとしても繰り返すのは相当精神力がいるだろうな。
 お腹はゲームでも普通に空いてたし、ゲームなら足踏みきゅうけいすればHPつかれは少しずつ回復すとれる。薬系はまだまだ試した数は少ないが効果はあった、前世の現実の薬的な意味でなくまさにゲーム的な意味で。
 あいにくとステータスはなぜか見えないが、体力は付いてきた気はするし、動きも少しずつ無駄が無くなってきているのでレベルが上がっていると表現してもいいと思う。
 ダンションの地形がランダムかどうかは分からないが、降りてきた場所から戻れないのはゲームと同じだ。……脱出出来なきゃ延々とさまようことになるので、多分何か別ルートか救済策があると信じたい。ゲームはそういうのなかった、ひたすら記録を競うだけだったし、それで良かったが、現実に誰も帰ってこないダンジョンなんて少なくともレベル一しょしんしゃは入らないよう忠告や噂ぐらいはされるだろう。
 そのルートが見つかっていないことも問題だが、仲間のレベルが上がらないというのがどうなっているのか気になる。
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