君にサヨナラは言いたくない

こうやさい

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後編

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 ゲームで一度、地下一階で仲間をしつこく変え続けたことがあったが、多少能力差や得手不得手はあれど突出したステータスを持つものはいなかった。
 それはそうだろう、極論最初から一人で魔王を倒せるようなのが仲間になったら、ゲームが変わるを通り越してやる意味が微妙になる。せめてマップがランダムでなければ後々のために詳細な地図を作るなりじっくり攻略法を考えるなりも出来るが、そうではないのだからよほどのポカをしなければただ作業するだけになってしまう。
 そして仲間を替えられるシステムの意味がなくなる。

 ゲームならば彼女のステータスは地下一階で仲間になったのだから、替え時をもう過ぎているいったところだ。
 次の階に降りるならこの先の戦闘は諦めて逃げつづけるしかないだろう。
 それに記憶する限り彼女が強くなっているとは思えない。こちらが成長しているせいもあってか、むしろ弱くなっているようにすら思う。
 それはレベルアップハイというか、主観によるものかもしれないが、だとしても歩く速度は意図的に合わせないとどんどんとずれていくし、加減をしても疲労が蓄積しているように見える。

 ゲームなら間違いなく新しい仲間を見つけに行くし、恐らくその仲間は彼女より強いので、彼女にサヨナラを言って、新しい仲間にヨロシクと言って、彼女をここにおきざりにするだろう。
 けれど現実にここに彼女を一人にするならば不安と心配しか残らないだろう。
 まず自力で帰れるかどうかが怪しい。
 そもそも帰れる方法が分かっていない。
 何より彼女は降りるための目的がある。弟を見つけるためにたとえ一人でも降りていくだろう。

 こうなるとこちらが彼女を放っておけない。
 ……というか、ぶっちゃけ惚れてしまっているわけで。
 記憶が戻る前の憧れのお姉さん的な想いと、前世の好みとが合わさればこうなるよなそりゃ。
 だが彼女と一緒に行く方法を考えても無理としか思えない。

 このまま単純にすすめば逃げ回れるうちはまだいいが、そのうちに彼女があるいは自分か、それとも両方が命を落とすことになるだろう。
 俺だけなら確認は出来ていないがやり直せる可能性もあるが、恐らく彼女とはゲーム的な意味か現実的な意味かは分からないが二度と会えないだろう。
 それまでに帰る方法が見つかって、態勢を立て直すでも何でもいいが、彼女が納得して一度でも一緒に帰ってくれれば時間稼ぎも出来る。
 彼女を鍛えれば何とかなるならこの階で経験を稼いでもいい。
 幸か不幸かアイテムもモンスターもこのダンジョンは時間経過でゲームの通り復活する。しないのは仲間だけだ。……いやモンスターも個体が違うのだろうが。
 この階なら二人ががりかつ成長の余地があるならぎりぎりだが何とかなる。

 けれど彼女はそれを無駄な時間と取らないだろうか?
 弟は彼女が心配するくらいの能力なのだ。仮に強かったしても彼女が安心して見守れないなら現状は意味はない。
 正直休憩も俺がいなければもっと短い時間で済ませて先を急ぐのではなかろうかという気がする。
 むしろ効率が落ちるなどと言っても、それが冷静に判断出来るならそもそも焦っているとは言わない。
 そのくせ俺を弟と重ねているせいでいい防具とかが見つかった場合こちらに渡してくる。いろいろな意味で庇われている状況というのは複雑だ。
 頼むからもし危機が迫ったときに俺を庇うことはやめてくれ。こちらは受けても死ななくとも彼女だと致命傷になりそうだ。

 幸か不幸か――原因なのだから不幸な気もするが、もっと下の階層で気づくよりもそれでも幸いだったのだろうと思わなくもない。帰る手段がある可能性が高いのだから――彼女に併せるせいで進むペースはゆっくりになって来ている。その間にできる限り彼女を守れるように鍛えよう。効率は悪いだろうし、彼女の安全確保した上で彼女に見つからないようにやらなければならないので正直キツいが、何もしないよりマシだろう。気も紛れる。
 せめて俺の方が強いと認識してくれればいいと思いながらも、そうされて庇うべき弟と重ならなくなり今更一緒いるのを嫌がられたらどうしようとも思う。

 いや、それで彼女が諦めてくれるならその方がいいのだろう。
 死にゆく彼女を見送るなんて絶対にしたくない。
 なんなら弟は俺が探すから。
 ……近くに、いられなくなってもいいから。
 けれどもそれで納得するなら彼女は最初から降りてこないだろう。


 ――そういえば俺はそもそも何のためにこのダンジョンを降りているのだろう?
 それが思い出せなかった。
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 お気に入り数で更新。しおりが一つも付いてないってどう判定すればいいだろう? 完結してから読むなら急がなくてもいいってことだろうし、次から停止しようかなぁ……とかデータが消えたりするとついつい思う訳ですよ。来週どうしよう?
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