嘘発見器という名の天秤

こうやさい

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嘘発見器という名の天秤

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『――ちゃんの嘘吐き。もう絶交だからっ』
 懐かしい夢を見た。

 当時、自称親友がいた。
 確かに一緒にいる事は多かったが、こちらまでそう思う事に付き合うかどうかは自由だろう。
 彼女は親友と好きな人の話をするのが夢らしく、ほぼ毎日のようにいないのかと尋ねてきた。そして変わらない答えに不満を示していた。
 正直一日やそこらで出来るほど劇的な恋があるなら今からでもしてみたい。
 そう思うぐらいその手の話題に疎い相手に何を求めていたんだろうと思う。

 その時も彼女のませ方に内心ついて行けないと思っていた。子供なのに好きな人とかいわれても意味分かってるのかとしかいいようがない。
 こっちが分かっていたかといわれると……まぁ怪しいが、姉が三人居るせいで変に話を合わせることだけは出来る子供だったので、特に問題はなかった。
 だからといって居もしない具体的な好きな人の話まではする気はなく、「特に居ない」で済ませていた。

 ところで世の中には嘘発見器というものがある。
 正確に分かるものは未だないらしいが、ジョークグッズやパーティーグッズとしてならいくらでもあるし、当人が信じるならこっくりさんやあみだくじでもそう呼んで構わないだろう。
 その時彼女が持ってきたのは一瞬でも科学的に納得しそうな体温の上昇や心拍数の変化や発汗が測定できる機能なんてものはついてないおもちゃだったと思う。
 恐らくランダムにブザーが鳴るとかその程度のもので、冗談で済む質問をゲームと分かる相手とやっていたらそれなりに楽しく遊ぶことも出来たシロモノなんだろう。
 ただそれを彼女が理解していなかった。

 その機械の前でいつもの質問をされる。
 そしていつものを答えを返す。
 そして機械に嘘吐き認定されて、彼女に絶交を宣言された。

 その後、別に他に友人がいないわけでなし絶交されたところで彼女がクラスを支配しているわけでもないので特に支障はなかったが、彼女の方はそうではなかった。
 皆いじめようとしていた訳ではないが、既にグループは出来上がっており、他に周りに気を配るよりも仲間内でいる方が楽しかったせいで、結果彼女は孤立した。
 話しかけられば恐らく相手はしてくれたのだろうが、彼女はそれが出来ないタイプだった。新しい友達は出来づらい。
 そんな状況だったから無駄にこちらにコイバナまで求めてきたのだろう。
 担任が見かねたまではまぁいいが、こっちに仲直りするように言ってきたのには腹が立った。一方的に親友に仕立て上げようとしたのも絶交したのも向こうだ。
 だから言った。
 自分より嘘発見器きかいを信じる人と仲良くは出来ません、と。
 その時、自分も傷ついていたことに初めて気づいた。

 結局、それ以上仲良くも悪くもならず、クラスの切れ目が縁の切れ目となり、その後彼女とは特に関わっていない。
 何年か後に途中で転校したと聞いた。孤立が理由なのかどうかまでは聞いてない。

 たとえ親友相手でも嘘を吐いてはいけないわけじゃない。
 だから親友だからといって何もかも信じろと要求するのも間違っている。
 ましてやこちらは親友だとは思っていなかったはずなのに。

 それでも未だに覚えている。
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